ザ・フィースト
最初はよくわからない。いや、最後までよくわからないんだけどさ、この映画。暗闇で真ん中に四角い窓があってそこから外が見える。ぐるーっと見回しても砂漠なのか何にもなくて。後になってあの窓は宇宙船のなんだろう・・と。着陸してまわりの様子うかがっていたのだろう・・と。乗組員(それとも荷物?)の怪物に関しては何も説明されないけど、私は宇宙人だと思う。宇宙船(高度な技術)とやってること(下品、汚い、情緒ゼロ)が全然結びつかないのは腑に落ちないけど。何と言うか、ごたごたした映画でつながりが悪い。特に冒頭部分は・・。今書いた窓のシーン、車が事故か事件に巻き込まれたような・・。何者かが酒場に近づいている。若い女性が二人何かにぶつからなかったっけ?酒場の中には10人くらいいて、みんなろくでもない人生送っていて。呼び名と特技と寿命がそれぞれ出るんだけど、10人は多すぎる。覚えてらんない。男どもは似たような顔してるし。ところでこの映画の予告は何度か見たのよ。ここ(渋谷のシアターN)には「28週後...」とか「シスターズ」とか見に来たから。マット・デイモンとベン・アフレックとウェス・クレイヴンが製作者というの(だけ)が宣伝材料・・みたいな。予告見た限りでは登場人物が少なくて場所も限られていてモンスターと戦って人数減っていくという・・ただそれだけ。しかも出てくるのが特殊部隊の・・とかじゃなくてパンピー。と言うか飲んだくれ、敗残者、ぼんくら。ホラーには違いないけどコメディーっぽくもあるようだ。内容のしょぼさは愛敬でカバー・・みたいな。でもって見に行ったのが何と引越しの前日。時間をやりくりしてね。有楽町、新宿、渋谷、上野、川崎、横浜、平塚、国府津・・皆さんお世話になりましたさようなら~という時に「ザ・フィースト」ですよ。よりにもよってこの上なくアホでおバカな映画。他にもっと見ておくべき映画いくらでもあるでしょうに。でも私の場合最後はやっぱりおバカ映画じゃなきゃいけませんの。それが私のB学・・NO!NO!美学ですの。故郷にあるシネコンじゃこういう映画絶対かからないだろうから見納め。どうしたってお客の入る無難な映画かけるでしょ「ライラ」とか「クローバーフィールド」とか。話を戻してお客は11人くらい。女性は私一人だったと思う。もうちょっと笑えるかな~と思ったけどそっちの方はあまり・・。
ザ・フィースト2
どういうタイプの映画としてとらえるべきか、お客さんも迷っていたんじゃないの?怖くないし笑えないし・・。出演者で知っているのは老バーテン役クルー・ギャラガーだけ。監督の名前もギャラガーなので、もしかしたら・・と思ったらやっぱり息子。こんなしょうもないバカ映画でも父親はありがたいものねえ・・。出てくれて、しかも映画の質いくらかは上げてくれている。クルーは1928年生まれだからもうかなりの年。テレビの「西部の対決」で知られているけど、私の住んでたところではやってくれなかったと思う。でも「テレビジョンエイジ」とかで名前と顔だけは知っていたのよ。映画はリー・マーヴィンと共演した「殺人者たち」。若い頃の彼はすっきりした色男。そりゃマーヴィンと並べば誰だって・・。それから20年ほどたって「ヒドゥン」に出てる。それからまた20年ほどたって今回の作品。髪は真っ白になったけど、薄くもないし、うまく渋く年重ねてるなって感じ?髪と言えば「NEXT」のチラシが置いてあったけど、ニコラス・ケイジのヘアスタイルはひどいね。2分先の未来が見えるらしいけど、髪が2分間ぶんずれてるように見える。過去にずれようか未来にずれようか迷ってるみたい。あれじゃ映画ヒットするわけないよな。ストーリーよりヘアスタイルの方が気になって気になって。あッ!またカツラがずれた・・じゃない、話がそれた。・・だって書くことないのよ(と言いつつこれからも書くんだけどさ)。パンフ買ったけど、内容ほとんどなし。ストーリーだってたったの8行!こんなに短いの初めて。まあ書きようがないんだろうけど。なぜかモンスターが現われ、その晩運悪く酒場にいた連中食べましたオワリ・・なんだもん。背景ゼロ。深みゼロ。うつし方も例によって何が何だかさっぱり。ドンドン(扉叩く音)、シュパーッ、グチョグチョ、ズドーン(これは銃声)。ウジがうじゃうじゃ、ゲロは吐くわ浴びるわ(きったねー!)、目は足は・・(以下省略)。まあとにかく・・わけわからん。でもってパンフですけど、もうちょっとさあ・・。やる気見せようよ。予告の宣伝コピー並みに。それでなくても誰が誰だかわかんないんだからさあ。せめてキャストのところに写真くらいつけてよ。・・何とか記憶たどって書くけどさ。コーチ役のヘンリー・ロリンズはコリン・ファレルに似ていたな。
ザ・フィースト3
ウエートレスのハニー・パイのナンパに成功しかけるんだけど、結婚指輪チャリーンのせいで失敗。すぐ演説ぶつので、「おまえゲイか?」なんて言われるんだけど、これってギャグなんだろう。パンフによればロリンズはゲイの権利拡大運動に熱心らしいから。だからアメリカならこのセリフで大爆笑なんだろうけど、日本じゃね。ボス役デュエイン・ウィテカーはパヴァロッティそっくり。どうせなら口パクでもいいからオペラ歌わせて笑わせて欲しかった。ステキだったのはヒーロー役エリック・デイン。ハンサムの出現で、ハズレ映画かしら・・と、ぼーっと見ていた私もぱっと目を覚まし、これからの展開に希望を持ったけど、それもつかの間、食べられちゃう。あちゃ~出演時間は5分かそこら?パンフにも書いてあるけど、この後最後まで生き残ったぼんくらどもで映画持つのかよ・・って心配になる。他には車椅子の少年がちょっとかわいかったな。途中でハニー・パイはモンスターの目(あるの?)かすめてうまくトラックにたどり着き、これで脱出できる!・・とみんなを喜ばせるが、何と一人で逃げちゃう。何たる自己チュー・・みんなは呆然。でも逃げてしまう気持ちわかりますってば。ハニー・パイを責められない。ホラー映画のお約束としてハニー・パイは途中で絶対死ぬはず。トラックにはモンスターが乗り込んでいて、助かったー!と狂喜するハニー・パイをガブリ!となるはず。でもそのシーンは出てこない。どうも彼女はうまく逃げおおせたらしい。定番破りがこの映画の売りらしいから。いつものことだけど、男と女とでは女の方がしぶとく生き残る。頭も回る。男はたいていバカ。すぐ演説して物事をはっきりさせたがる。誰がリーダーで誰が子分か。モンスターの弱点は・・。経験から言ってこうなるはず・・ってのがあって、それを試す。モンスターには常識も今までの経験も通用しないってわかるのは、やらなくてもいいことやって事態をいっそう悪くした後。ヒロインのうち、黒髪の方はリプリー意識しているような。夫(ヒーロー)をなくしたけど、悲しんでいるヒマはない。残してきた娘のところに何としてでも生きて戻らなければ・・。でも彼女もやられちゃって(しかも味方に!)、次のヒロイン登場。彼女は息子をモンスターに食われちゃって呆然とするが・・息子の代わりに娘でもいいや・・ってそんなに簡単に気持ちの切り替えできないと思うが・・。
ザ・フィースト4
ところでこの息子役の子、後でわかったけどタイラー・パトリック・ジョーンズ。「レッド・ドラゴン」や「がんばれ!ベアーズ ニュー・シーズン」の子だ。相変わらず頼りなさそうなひ弱な感じ。普通なら絶対助かるこういう子供が食べられちゃうなど、いろいろやってるけど、それらがうまくいってるとは思えない。何と言うか歯切れが悪い。例えば若くて美しいハニー・パイは、ヒーローの血を浴びて、気持ちが悪い・・とせっせと体を拭くんだけど、それが一回だけ。どうせならきれいにしてもまたどばーっと血を浴びるとか。二回三回とくり返せばこっちも笑えるのにそれをしない。セリフの端々にも笑える部分はあるのだが、お客が気づいて笑う前にもう次行っちゃってる。タイミングがずれてる。おばあちゃんだって老バーテンと組ませてシルバーコンビで活躍させるとか何かいい方法あったはず。いい材料なのに使われずじまいってのが多い。おばあちゃんと言えば途中でトイレか何かに隠れていなくなってしまう。夜が明けて、生存者達が酒場から出て行ってしまうので、あれ?おばあちゃんはどうなったの?・・と気になるんだけど、そのままエンドクレジットが始まる。でもすぐにまた酒場の内部がうつって、もう安全かしら・・とおそるおそる出てきたおばあちゃんの運命をちゃんと見せる。ああ、忘れていたわけじゃなかったのね・・と思いつつも、すぐ見せるなんて親切すぎる、芸がなさすぎる・・と思う。エンドクレジット後の方がインパクトあったと思うが。あるいはおばあちゃんが出てきたところまで見せといて、助かったのだと思わせておき、またクレジットに戻って、全部終わったところでおばあちゃんの本当の運命見せるとか工夫すればいいのに。内容もああいう後味の悪いありきたりのじゃなくて、もっと笑えるのにするとか、何かひねりが欲しかった。呆れたことに作り手は「ザ・フィースト2」、「ザ・フィースト3」も作るつもりなんですってさ(パンフによれば主人公はハニー・パイらしい)。と言うか同時進行で現在撮影中だそうな。だから人間もモンスターも全滅させずにおいたのね。ラスト、車がエンコしかかって、でもどうにか動き始めたってのもそれを暗示しているのかしら。普通あんなエンジントラブルのシーンなんて映画が終わるって時にうつさないでしょ。
ザ・フィースト5
それにしても「2」「3」作るなんて評判よかったの?こんなバカ映画が?モンスターはわけわからんかった(速すぎて)けど、途中でパカッと外側が取れて、筋肉マンみたいになっていたような・・。変身と言うと「ザ・フライ」みたいにもっとおぞましくなるかと思ったら意外でしたな。この映画で意外と言ったらこの部分だけで・・。さて題名だけど、フィーストって饗宴とか宴会っていう意味なのかしら。こんな「ザ・フィースト」なんていうまんまな題名じゃなくて、もっと他のはなかったのかしら。だって「ザ・フィースト」って聞いて何か頭に浮かびます?浮かんだとして?マークくらいでしょ?少し前の「スリザー」もそうだけど、ただ片仮名並んでるだけ。もっとインパクトのある題つけりゃいいのに。「ザ・フィースト/ごちそう」とか「フィーストフードメニュー/人肉」とか「人間で夕食を(「ティファニーで朝食を」をもじって)」とか。パンフの表紙にはTHEY’RE HUNGRY.・・そりゃあ長い宇宙旅行の後ではおなかすいてるでしょうよ。生鮮食品に飢えているでしょうよ。YOU’RE DINNER.・・モンスターも一日三食なのかしら。でもあの感じだと食べられる時に食いだめを・・という食習慣みたい。モンスターの中には子供もいて、酒場の連中には何で子供だとわかるのかぼんくらのくせに・・と不思議だった。画面を見ていても我々には大小はわからない。動きが速すぎるし全部はっきりとは見せないし・・。子供のモンスターっていうセリフが出てきて、えッそうなの?と思うわけ。大人のモンスターは自分達の子供であるはずの、それの死骸を食べちゃうし、その後すぐ・・(以下省略)。まあいかにアホな映画かは見て確認してくださいませ。とは言うものの、見終わっても何も残らない・・感動も失望も怒りも満足感も見事なまでに何もなし!・・映画ではあるけれど、あまりのバカさかげんに頭の中が空白になるような映画だけど、見なきゃよかったという気持ちはない。見てよかったという気持ちもないけど。まあとにかくこういう映画は見なきゃならないんです私は。義務なんです・・なんちゃってウフ。「2」や「3」ができたら見ますよ。劇場で公開されるとは思えないけどさ。まあそのためにもクルー・ギャラガーの老バーテンは生かしておいて欲しかったな。一人くらいまともなのが生きていてくれないと・・。