ザ・インターセクションズ

ザ・インターセクションズ

隅々まで目の行き届いた、練りに練られた脚本。大スターは出ていないけど、手堅いのが揃っている。話はさほど広がらないし、ハデな銃撃戦もカーチェイスもなし。画面がチャカチャカ揺れたりしてイラつかされることもなし。画面はきれいだ。大学生のハーパーは弁護士志望か。三ヶ月前、母と継父の乗った車が事故を起こし、母は昏睡状態。今にも生命維持装置をはずされそうなのが、彼の心を暗くする。その代わり継父ヴィンセントへの反感がつのる。一度しか見舞いに行ってない。若い女と浮気している。今度の出張だって・・ベガスで女と会う気だ。女にケータイで愛してるとか言ってる。遺言書の母のサインを偽造している。本当は車を運転していたのはあいつなのでは?夜、バーで一人で酒を飲んでいる時、知り合ったのがジョニー。ついヴィンセントに対する憎悪を話してしまった。翌朝家へ彼と愛人のチェリーが現われた。昨夜の話・・2万ドルでヴィンセントを殺す・・はなかったことにしてくれと頼んだけど、聞いてくれるわけもなく。この時から画面は二つに分割される。片方は何とか断ったのかそのまま家にとどまり、もう片方は車に乗ってベガスへ向かう。こりゃ新しい趣向かな・・と思っていると、家にいる方のハーパーが、ヴィンセントを殺してしまう。あれれ?さて、殺すのは簡単だが(←?)、後始末は難しい。プールに落ちたヴィンセントを引き上げ、家の中へ。大きなビニールシートにくるんで・・そこへやってきたのが、友人のポール。ハーパーはヴィンセントを困らせてやれ・・と、ポールにヤクを手に入れるよう頼んでいた。空港で見つかるよう荷物の中に隠しておくつもりだったのか。それなのに彼はヴィンセントの荷物にナイフを入れていて。それを見つけたヴィンセントとケンカになり、刺し殺してしまう。結局ポールはヤクを手に入れられなかった。その代わり向精神薬を渡してくれる。効果のほどはポール自身が経験ずみ。と言うか、もうヴィンセントを殺してしまった後なので、ヤクは必要なくなったのだが。一方ベガスへ向かう車の方は・・。途中で巡査に怪しまれ、あれこれあって車のトランクへ閉じ込める。トランクを開けた時、巡査が驚いた理由は不明。でも、カンのいい人はここでぴんとくる。ハーパーは坑道があるとか言っていて、この頃になると、話が枝分かれしたのではないのだとわかってくる。

ザ・インターセクションズ2

家でのあれこれは、ジョニーとチェリーが来る前に起きた出来事なのだ。もちろんトランクに入っているのはヴィンセントの死体。ジョニー達はこのことを知らず、ベガスにいるヴィンセントを殺すのだと思い込んでいる。途中でフランクのところへ寄る。どうやらジョニーはフランクに借りがあり、早急に金を用意しなければならないようだ。だからハーパーを脅してでもヴィンセントを片づけ、報酬2万ドルを手に入れないと。もっともフランクは予想以上に腹を立てており、チェリーを置いていくか、5万ドル渡せと言ってくる。そして手下のラルフにジョニー達のあとをつけさせる。さてベガスへ着き、ホテルに落ち着いた三人。ハーパーは別の車を用意し、一緒に逃げるようチェリーを誘う。警察にトランクの件を通報し、ジョニーが逮捕されるよう仕向ける。トランクには死体の他に巡査の帽子も。もっとも、ハーパーは例の向精神薬を巡査に飲ませ、何が何だかわからない状態にしてあるのだが。ジョニーはチェリーに、フランクに狙われていることを知らせようとするが、彼女は彼のケータイを捨ててしまい、結局警告は聞かずじまい。途中でハーパーはチェリーに金を渡し、置き去りにする。そのうち自分はつかまるだろうから。しかし無事国境を越え、メキシコへ。置き去りにしたはずのチェリーはなぜかトランクに隠れていて、ここでも時間を前後させ、見ている者をだます。ラストで、そもそもはハーパーの勘違いから悲劇が起きたのだとわかる。ヴィンセントの浮気相手の女の名はロージー・ヒル。ヒルってことは建物の、あるいは開発している場所の名前なのだと予想はつく。遺言書の件も、そのままではハーパーに不利になるから、彼にちゃんと財産が行くようにという配慮だったのだろう。愛人への電話も・・実は妻宛てのものだった。仕事が忙しくて見舞いに行けないが、せめて声だけでも聞かせてやりたいという。ハーパーは反発から、ヴィンセントは忙しさにかまけてちゃんと向き合うことをしなかった。そのせいで・・。ハーパーは一生このことを知らずにいるだろう。思えばヴィンセントも気の毒に。ジョニーはそのうち殺しはやってないと判明するだろう。車はハーパーのだし、巡査もクスリが切れれば姿を現わす。ハーパー役はタイ・シェリダン、チェリー役ベル・パウリーは「ロスト・エモーション」に出ていた。ヴィンセント役はスティーブン・モイヤー。てなわけで、よく考えられた映画でした。