サンシャイン・クリーニング

サンシャイン・クリーニング

これは前々から見たいと思っていた。WOWOWでやったので早速。結果は・・う~ん残念、何もかも中途はんぱだ。いいキャストなのに。ハウスクリーニングの仕事をしているローズ(エイミー・アダムス)はシングルマザー。息子オスカーは問題児でしょっちゅう学校に呼び出されている。高校時代はスター・チアリーダーで、アメフト選手マック(スティーヴ・ザーン)とつき合っていたが、彼はなぜかヘザーと結婚してしまった。それでも彼はローズと浮気している。刑事であるマックから特殊な場所・・自殺現場など・・のクリーニングはいい金になると聞いたローズは、妹ノラ(エミリー・ブラント)を巻き込んでこの仕事を始める。オスカーを別の学校へやるのにお金がいるし、ノラはまたしても仕事クビになったばかり。うまくいかない人生が、一歩を踏み出す・・この場合変わった仕事を始めることで変化し始める・・そういう展開を期待して見ているわけだが、何か・・この仕事でなくちゃだめだったんだ・・という感じがしない。私はこの映画ダイエット映画だと思いながら見ていた。それは死体があった場所見せられて食欲なくなるからとかじゃなくて、腹八分目・・いや六分目くらいで終わっているから。おなかいっぱい満足するということがない。常にプチ飢餓状態。オスカーの父親は誰?私はマックかな?・・と。ローズはオスカーの転校のこと相談していたし。マックは資格取るための学校の費用の援助申し出ていたし。途中で二人は別れるけど、マックは残念そうではあるがわりと簡単に去っていく。ローズが別れる気になったのはヘザーにねじ込まれたせいもあるだろうが(このシーンはなかなか恐ろしいが、ヘザーの怒りはもっともだ)、ウィンストン(クリフトン・コリンズ・Jr)と知り合ったせいもあるだろう。こういう映画のヒロインにはすぐ次の相手が都合よく出現するのだ。ローズは働き者でがんばりや。時には心がくじけそうになるが、私は強い、私は勝者と暗示をかけ、気持ちをふるい立たせる。ハウス・クリーニングはつなぎで、不動産取引の資格取ろうと学校へ通っているらしい。しかし授業を受けてるシーンは出てこないし、授業を口実にオスカーをノラへ預け、マックと逢引きを重ねる。いい気なものである。偶然会った元チームメイト、ポーラは彼女を出産前祝いに招待。仕事はノラに、息子はウィンストンへ押しつけ、パーティにかけつける。

サンシャイン・クリーニング2

みんな裕福で幸せそうだが、ローズも負けじとやりがいのある将来有望なビジネス・・と吹聴する。見栄っ張りだなあ。で、ノラのところへかけつけると、何と依頼人の家が燃えている。ノラは事故だと言い張るが、もちろん彼女のうっかりミス。オスカーが問題起こして学校に呼び出された時、ローズは「あなたは悪くない」と息子に言うんだけど・・それでいいんですか?あなたは悪くないけどこの次からは先生の足なめたりしちゃだめよ・・とかつけ加えるべきでしょ。あれじゃあまた同じことしてもいいんだママはボクは悪くないって言ってるし・・となるよ。姉妹の和解シーンにしても「(同級生を)見返したくて」とローズが言うと、ノラが「姉さんはりっぱよ」と言って・・。日本人なら「見栄なんか張らず、人は人、自分は自分でいいじゃない」と諭すところだ。向こうの人はホント「アンタは悪くない」「アンタはりっぱだ」「私はおまえを誇りに思う」と相手をおだてまくるなあ。そりゃ頭から否定するよりはいいけど、あれじゃあ自分はこれでいいのかと立ち止まって思いをめぐらすことがなくなる。反省しないで前へ進むからまた同じ間違いくり返す。さて、今度のクリーニングの仕事に関しては二人とも素人。いちおうローズはハウス・クリーニングの仕事してるけど、たいていはお金持ちの家。血や肉が飛び散っていたり、腐敗臭が立ち込めていたり・・なんてことはない。二人がエプロンとかキャップなしで、普段着のままなのには呆れた。とにかく何でもゴミ捨て場へ運べばいい・・とやって、後で違法だと言われて初めて気づく。ウィンストンに血液媒介病原体のことを言われ、注意しなくちゃいけないのだと気づく。仕事ぶりもワーワーキャーキャーって感じ。仕事していると言うより、つつき回している感じ。「私がクマにキレた理由(わけ)」のところでも書いたけど、こういう労働の描写っていくら大変そうでも場面が切り替わってしまい、それですんでしまう。そのせいでちっとも大変そうに見えない。さすがに普段着のままじゃ、一般の洗剤じゃだめだ・・と気づいてあれこれ買いに行き、ついでに店主のウィンストンと知り合う。彼はなぜか片腕だが理由は不明。通りすがりの人物ならともかく普通説明すると思うが。器用に模型を作り、オスカーとも仲良くなる。ローズは彼をオスカーの誕生日パーティに招くが、別にくっつくこともなく映画は終わってしまう。

サンシャイン・クリーニング3

・・と言うか、ウィンストンが独身かどうかも不明なんだけど。独身であるという前提で彼のキャラは作られている。火事のせいでボロボロになったローズが彼に(わざわざ)「私は遊ばれる女」とか言って卑下するんだけど、それ違いますってば。ウィンストンの方こそいいようにもてあそばれていますってば。マックの代わりになる男、これから面倒見てくれそうな男、オスカーの父親になってくれそうな男。ウィンストンにだって都合も好みもあるはずだが、そういうのは無視される。せっかくコリンズに久しぶりに会えて喜んだけど、彼の100%善人役は初めてでうれしいけど、でもあまりなキャラ設定ではあるな。姉妹の母親は女優だったらしいが、なぜか自殺。美人で才能があったのに芽が出ず、悲観したとか?やっぱアレでしょう「アンタは美しい」「アンタは才能がある」「大スター間違いなし」とおだてられ、その気になったせいでしょう。「美貌や才能があってもスターになれるとは限らない」「愛する夫とかわいい娘がいるじゃないか」と気づかせてくれる人がいなかったのだ。あるいはそれを聞く耳を持ってなかったとか。ついでに言うと父親ジョー(アラン・アーキン)が妻の死をどう感じているのかも不明。あまり過去を引きずらず、いい年こいて一攫千金をもくろみ、失敗をくり返している。まあこのこりないしたたかジイサンはなかなかよかった。母親が死んでいるのを発見した幼いローズは、私が妹の面倒を見なければ・・と決心する。しかしノラにとってはそれが負担。別に頼んだわけでもないのに。ノラはある女性の遺品(娘の写真)をかってに持ち帰り、その娘リン(メアリー・リン・ライスカブ)に近づくが、ストーカーと勘違いされる。その後親しくなるが、いざとなると写真のことを言い出せない。後でわかるがリンの母親は酒びたり。そのせいで彼女は酒もクスリもやらない。自分を守ろうと警戒心が強く、人と打ち解けない。それでもノラとつき合い始めると、レズの気があるのか、好意を見せ始める。ノラが思いきって母親と写真のことを持ち出すと、好意を持ってくれたと思ったのに・・と怒る。そりゃあねえ・・親切ヅラして自分と母親の問題にずかずか踏み込んでこられたんだから怒るのあたりまえ。普通の映画ならそれでも後でフォロー場面入れるはずだが、リンはそれっきり出てこない。信頼していた人に裏切られ、傷ついたままかよッ!

サンシャイン・クリーニング4

ノラ自身ローズと同じことしてるのよね。相手が望んでもいないのにかってに領域に踏み込む。さて火事の件だが、ローズがウィンストンにどうすればいい?と聞くと「保険だな」という返事。それで終わり。つまり燃えた家に保険がかかっていたかどうかってこと?火災保険とか。それともこういう仕事していて不慮の事故で相手に損害与えた場合に備え、クリーニング業者は保険に入るとか?でも彼女達入っていなさそう。仕事が軌道に乗りかけていたのに4万ドル弁償しなければならなくなって大ピンチ。やっぱり保険は・・。こうなったら根性入れ直して決意も新たに仕事にはげむと思うでしょ皆さん。何でもやります!仕事ください!って。見てる方も応援しようという気になってる。でも・・そうはならない。まずパパはローズと同居すると言い出す。家を売って弁済の足しにするのか。いや、バンを買った。この車で二人でクリーニング業を?一方ノラはいきなり旅に出る・・と宣言。うそッ!家を燃やしたの借金作ったのアンタだぞ!あまりの無責任さに見ていてポッカーン。きっと「私は自分捜しの旅に出るのよ」とかアホなこと考えて酔っているんだろう。アンタ自分捜す前に仕事捜せ!金を返す方法捜せ!自分の良心を捜せ!オスカーは金のかかる(たぶん)私立の学校へ移ります。映画終わっちゃいますけどこんなんでいいんですか?仕事ちゃんとやろうよ。子供ちゃんと躾けようよ。特殊な仕事を通じてかいま見た人間の死という現実・・それをきっかけに自分見つめ直す・・そういう映画じゃなかったのかよ。こんなお気楽ラストでいいのかよ。腹を立ててる私がおかしいのかよ。・・コリンズはヒゲを生やし、髪はお下げにしていて別人のよう。まあこういうにこやかな善人もいいけど、ふるえ上がるような異常な役もまたやってください。ヘザー役エイミー・レッドフォードは名前でわかるけどロバート・レッドフォードの娘。ライスカブは「ファイヤーウォール」や「リトル・ミス・サンシャイン」に出ている。「24」は見たことなし(ごめんねキーファー)。そう言えばこの映画「リトル」によく似ている。でも深みも感動もなく、感じるのは無責任さ。どうしてもこの仕事でなきゃ姉妹の成長描けなかったってわけでもない。と言うか成長したの?日本でも孤独死とか増えて、特殊清掃というビジネスがあるようですな。