三十九夜

三十九夜

原作が出たのが1915年、この映画は1935年で、監督はヒッチコック。1950年代にラルフ・トーマスでリメイクされているらしいが、某書の紹介では原作にもヒッチのにも遠く及ばないとある。ネットで調べるとみんなヒッチの今作を絶賛。そんなに出来がいいとは私には思えんが。内容が原作とかけ離れているのは当然として、リメイクがヒッチのと同じ筋というのは解せない。わざわざリメイクする意味がない。ヒッチと張り合ったって勝てっこない。少しでも原作に近づけるとか特徴を出せばよかったのに。ハネイ役ロバート・ドーナットは「チップス先生さようなら」でアカデミー賞をとっている。でも私にはチップスもこのハネイもあんまりうまい演技とも思えん。映画を見ていてもハネイの職業がはっきりしないが、外交官らしい。ミュージック・ホールで発砲騒ぎがあり、アナベラとか言う女性を連れ帰るが、ここらへんもよくわからない。見ず知らずの女性を何で自分のアパートに?アナベラもここに住んでいるのかと思ったら違うようだし。彼女は諜報員で、二人の男に狙われているので、わざと発砲し、騒ぎにまぎれて逃げようとしたらしい。銃を持ってるのにナイフで刺されてあっさり死亡。ハネイは殺人の罪を着せられ、逃げ回る。スコットランドで手がかりとなりそうな男に会うが、実はこのジョーダン教授が敵のボスで。原作には「鷹のようにまぶたを垂らすことのできる男」とあって期待させるが、映画ではそんな微妙なことできるかよとばかりに小指の先のない男に変更。原作と違い、妻も娘もいて、彼が国家機密を国外へ持ち出そうとしてるのを知ってる。ハネイが一緒に逃げるはめになるパメラ(マデリーン・キャロル)とのあれこれは無理やりという感じ。ニセ刑事が彼を連行するのに、彼女を同行させるはずがない。二人を手錠で繋ぐこともありえない。もちろん二人は手錠のまま逃げ出し、駆け落ちカップルを装って宿に泊まる。ストッキングを脱ぐとか、ストーリーとは関係ないシーンを入れるので、英国の防空の危機などどこかに吹っ飛んでしまう。途中で出てくるハネイとマーガレットとその強欲な亭主とのあれこれも、思わせぶりなわりには通り過ぎてしまう。事件は都合よく解決し、美男美女カップルが誕生して終わり。どこが傑作なんだ?