リピーテッド

リピーテッド

朝、ベッドで目覚めると自分は素っ裸で、横に夫が眠っている。夫婦なら珍しくもない光景だが、違っているのは彼女クリスティーン(ニコール・キッドマン)が記憶障害を患っていること。彼女は一日しか記憶が持たない。壁には夫ベン(コリン・ファース)とのたくさんの写真、やっておくことのリストが貼ってある。彼女は14年前に結婚し、現在40歳だが、頭の中は20代前半のまま。毎朝同じ説明をベンから受け、教師である彼が出かけると何をするでもなく一日を過ごす。二週間前、彼女はドクター・ナッシュ(マーク・ストロング)に出会う。神経心理学者の彼はクリスティーンの症状に興味を持ち、研究のため無料で治療させてくれと申し出る。ベンは治療には否定的なので・・何をやってもうまくいかなかったのだから当然だが・・彼には秘密にしておく。毎晩寝る前にカメラに向かってしゃべり、翌朝起きたらそれを見る。カメラのことを忘れてしまうので、毎朝ナッシュが電話をかけてくる。彼女は10年前、裸で血まみれで瀕死の状態で放置されていた。ベンは事故だと言ったが、どうも誰かに襲われたようだ。空港の近くでホテルも多いから、そこにいた理由はあまりまともなことじゃなさそう。治療に使った写真のうちの一枚は、クレアのもの。どうやら彼女は親友らしい。しかしもっと思い出そうとクレアの写真を壁に貼っておいたら、ベンがはがしてしまった。これもカメラのおかげでわかったことだ。そのうち彼女は自分には息子がいるらしいと気づく。ベン役がファースなので、見ている者は何と気の毒な・・と同情する。いくら美女とは言え、毎朝他人を見るような目つきで見られる。毎朝同じ説明をしなくてはならない。こんな生活がもう10年も続いている。しかも最愛の息子アダムは、8歳の時病気で死んでしまった。こんなこと話したくないけど、クリスティーンがほじくり出してしまった。しかもその晩の映像日誌で彼女は、「彼は悲しみに慣れている。私の傷は新しい。これからずっと悲しむ」とか何とか言うので、アンタそりゃあんまりな言い方でっせ・・と呆れる。クレアを始めとする友人達が離れていったのは病気のせい。アダムのことを隠していたのは、知らない方が幸せだろうという気遣い。ベンの説明はいちいちもっともだ。

リピーテッド2

クリスティーンは時々夢の中とかで記憶が蘇るが、断片的ではっきりしない。ベンを信じられなくなったり、深い愛情に感謝したり、気持ちが揺れ動く。それでいてナッシュに引かれていったり。ナッシュがストロングなので、見ている者は今いち彼を信用できない。彼がクリスティーンを襲った誰かであるはずはないのだが・・襲った当人だったら記憶を戻す手伝いをするはずがない・・、クリスティーンが彼を疑うシーンをわざとらしく入れる。そのためナッシュはこのままではまずいと、別の医者紹介しようとしたりする。もちろんクリスティーンが承知するわけもなく・・。そのうちとんでもないことがわかる。何とベンは四年前にクリスティーンと離婚していたのだ。息子の死と、入退院をくり返し、治る見込みもなさそうな妻。そんな状態に耐えきれず・・。でもやっぱり愛してるから戻ってきた。何とまあこんないいダンナさんめったにいませんぜ。次にやっとクレアと会って話を聞くことができた。最初はよかったが、そのうち聞きたくないことまで・・。クリスティーンは教師の仕事を始め、一ヶ月もしないうちに様子が変わってきた。もちろん愛人ができて、いきいきしてきたのだ。それはまあ自分が発見された時の状況から、うすうすわかっていたことだが。しかし事件後苦悩しているベンに同情したクレアは、一線を越えてしまう。それを聞いてとたんに表情が硬くなるクリスティーン。あなただって浮気したんだし・・まあそう言われても、浮気したこと自体忘れて思い出せないんだから同意もできませんわな。とは言え、ベンがクレアに託した自分宛ての手紙を読んだクリスティーンは、改めて自分への深い愛を知り・・。これで彼女はすっかりベンへの信用を取り戻すわけですな。忘れないようカメラに向かってあなたを許すわとか私を許してとか言う。この「あなたを許す」の部分には、何ふざけたこと言ってるんだと呆れましたけど。そこへ帰ってきたのがベン。カメラのこと、医者にかかっていることを白状するはめに。怒ったベンは彼女を殴り飛ばす。で、翌朝が映画冒頭のシーンなわけですな。

リピーテッド3

私は彼女の顔にアザがあるのは事故のせいだと思っていたけど、前の晩殴られたせいなのだとここでわかる。昨夜殴られた後でクリスティーンはクレアに電話するんだけど、そこでまたまたとんでもないことがわかる。クレアはそれまで遠慮していたけど思いきってベンと連絡取ってみた。すると離婚後のベンはずっと一人暮らし。クリスティーンとは会っていない。彼女が暮らしているベンはどうやら別人のようなのだ。それらのことも翌朝には忘れている。カメラに向かって夫への愛を語っているのに、なぜ顔が腫れているのかわからない状態。記念日だから荷造りしろとベンに言われ、連れてこられたのは空港近くのホテル。ここがそもそもの始まりだったわけ。教師として働き始めたクリスティーンは、一ヶ月もしないうちに同僚のマイクと浮気。このマイクが、彼女の記憶障害をいいことに、本物のベンが離婚して去った後、夫になりすまし、同棲し始めたのだ。それくらい彼女に執着しているのだ。クレアとクリスティーンが話している時、互いに別のベンのこと話しているんだけど、それで話が通じちゃう。それはいいんだけど、アダムが死んだと思い込まされているクリスティーンがアダムのことを話さないのはありうるけど、クレアがアダムのこと話題にしないのはありえないでしょ。ベンは一人暮らしと言ったのは、たぶん再婚してないという意味でそう言ったのだろう。実際のベンはアダムと暮らしているはずだ。すべてが終わって、本物のベンが負傷して入院しているクリスティーンを見舞いにくる。見ている人の多くは、はあ?これが本物のベン?と思っただろう。蛇みたいな顔つきなんだもの。でもアダム(ディーン=チャールズ・チャップマン)が出てきてホッとする。親父に似なくてよかった!目が大きく、女のコみたいな美少年。今のクリスティーンは記憶を取り戻したようだ。都合よすぎるけど、アンタ誰?で終わるよりはいい。ナッシュによろめきかかったことは忘れているのかな?まあ筋の通らないところはいくつかあるけど、実力派三人の共演なので、それなりに楽しめる。原作が出ているようなので、機会があったら読んでみたい。