ラッシュアワーシリーズ

ラッシュアワー

ジャッキー・チェンの映画は「プロジェクトA」以来だから、10数年ぶりということになる。ジャッキーも年を取ったなあ。しかし手を使わないでほとんど足だけで木とか壁を登っちゃうところは本当にすごいと思う。もう一つ印象的だったのは、他の人が銃をバンバン撃ちまくるのに対し、ジャッキーは一発も撃たないこと。銃を構えたり、もみ合っている時に相手が撃ったりというシーンはあるが、相手に向かって撃つことは一度もなし。この映画で一番心に残ったのはこのことである。クリス・タッカーは異常に目が大きく、しかも白目の部分が真っ白なので、今にも目玉がポロリとこぼれそうで気持ちが悪い。セリフで、「そんなはずないだろ」というのが「ねえ、そうなんでしょ」となり、「あの、そうなんですか」となるのがおかしかった。音楽は何と「燃えよドラゴン」のラロ・シフリンで、懐かし~とうれしくなったが、印象に残るような曲はなし。”ウォー”の曲はテレビのビールのCMで使われている。・・これを書いたのは1999年の1月で、見たのは川崎チネチッタ。たぶんこの頃は入れ替えではなく、二回見ることができたと思う。NHKBSでやったので久しぶりに見た。実家で父と一緒に。最近は家族揃って安心して見ることができて、何度見ても楽しい映画ってホント少ない。「ポリスアカデミー」シリーズや「刑事ジョー/ママにお手げ」くらいだ。この映画の頃ジャッキーは40過ぎてるけど、動きは若々しい。考えてみりゃ今のジャッキーは日本で人気が出始めた頃の、「酔拳」などの老師匠の役をやる年齢なんだよな。でも老師匠ジャッキーが若い弟子をしごく映画なんて見たくないけど。ジャッキーはしごかれる方でなくちゃ!さてこの映画、「2、「3」と劣化して行ったけど一作目だからよくできてる。ジュンタオという謎の人物がいて、国の宝を集めているけど、それを阻止したのがハン(ツィ・マー)の指令を受けた香港警察警部リー(ジャッキー)。その後ハンは総領事としてアメリカへ渡るが、娘のスーヤンが誘拐されてしまう。FBIが指揮をとるが、ハンはリーに捜査して欲しい。邪魔されたくないFBIのラス捜査官(マーク・ロルストン)達は市警の誰かにおもりをさせ、観光にでも連れ出せ・・となる。

ラッシュアワー2

これを任されたのが刑事のカーター(タッカー)。ペチャクチャとうるさく、水素みたいに軽い男。自信だけはたっぷりあるけど、まわりは迷惑こうむりっぱなしのチャラ男。FBIで捜査・・と喜んだものの、言葉も通じないような東洋人の相手かとクサるが、前向きな性格なので、自分が犯人見つけてやる・・となる。相棒物のお約束として片方はおしゃべりで軽薄、片方は無口で冷静。カーターは地元なので知り合いも多く、情報も都合よく手に入る。落ち込みとは無縁・・ついでに誇りとも無縁で、細かいことは気にせず暴走する。リーは異国で勝手がわからないので、最初のうちは黙ってる。黙っていれば相手は勝手にしゃべって情報をくれる。そこらへんは日本人にもなじみの考え方だが、向こうではしゃべっていないと存在していないも同然なのかな。映画で印象に残ったのはジュンタオの手下サン役ケン・リョン。彼を最初に見たのがこの映画だったので、てっきりアクションスターだと思ってた。でも「レッド・ドラゴン」とか「イカとクジラ」とかアクションとは無縁の役ばかりで、アララと思ったものだ。誘拐される時のスーヤンの暴れっぷりがいい。こんなに抵抗する子も珍しい。スーヤンはちょっと目が垂れていて、お笑い芸人の横澤夏子さんに似ている。グリフィン警視長・・実はジュンタオ役はトム・ウィルキンソン。今なら出てきたとたんこいつが黒幕ってわかるけど、この頃はまだ彼のこと知らなくて。カーターの上司ディール警部がフィリップ・ベイカー・ホール。この人今年(2022年)亡くなったのね。90歳。亡くなったと言えばジョンソン役エリザベス・ペーニャは55歳で死亡。声がハスキーでいい味出してる。それ以上に惜しいのがクリス・ペン。たった40歳で死んじゃった。20年以上前の映画だから、見た直後とは別の感想持つ。他に、名前はわからないけどジャッキーの映画でおなじみの顔がちらほら。監督はブレット・ラトナー。香港映画ならもっとジャッキーのアクションも長くなるんだろうけど、タッカーのしゃべりを入れなきゃならないからな。トークのおもしろさも大事ってね。もっとも私はこういう軽薄でやかましいのは苦手。自分の脳みそまで水っぽくなりそうで耐えられない。

ラッシュアワー2

これを見るのは三度目くらいか。チャン・ツィイーがおっそろしく単細胞なキャラで出ていたことしか記憶に残っていない。休暇で香港にやってきて、リー(ジャッキー・チェン)に案内させるカーター(クリス・タッカー)。おりしもアメリカ領事館が爆破され、二人死亡。シークレット・サービスのスターリングが乗り込んでくる。密輸が関係しているらしいが、黒幕と思われるタン(ジョン・ローン)は、リーの父親の相棒だった。父の死にはタンが関係しているに違いない・・と、リーはずっと思っている。途中で舞台はロス、続いてベガスに移る。精巧な100ドル札の偽札の原版があって、ホテル王レインはカジノの客を通じて偽札をばらまこうとしているようだ。その潜入捜査をしているのがシークレット・サービスのイザベラ(ロゼリン・サンチェス)で、この人はサンドラ・ブロックにそっくりだ。カーターの知り合いケニー役でドン・チードル。監督は「1」に続きブレット・ラトナー。船の名前やカジノの名前が”レッド・ドラゴン”というのが笑える。それはいいとして、ラトナーならもうちょっとちゃんとした映画になるはずと思うのは私だけ?何でこんなメチャクチャなゴミ映画に?ロス市警のカーターは香港では何の権限もないはずだ。なくしたパスポートはどうなったのだろう。なぜタンは死んだように見せかけたのか。ツィイーのフー・リは何を考えているのかさっぱりわからない。ただ、1970年代にどっと公開された香港製功夫映画のヒロインは、だいたいあんな感じだった。親の仇、兄の仇、それでなければ師匠の仇を討つことしか考えてなくて。思いつめていてひきつった顔をしていて、最後は死ぬ。それにしたってツィイーはこの頃まだ20を過ぎたばかりだ。何であんな汚い感じになってしまうのか。ファンが残念がるのも無理はない。カーターのキャラは最悪だ。これほどまでに行き当たりばったりで、節操がなく、好色で、うぬぼれやで、自分勝手で、下品というのも珍しい。ホント汚物のような生き物で、まわりに毒素をまき散らす。本人からは腐臭が漂っている。「2」にして早くも劣化が進んでいるという感じ。

ラッシュアワー3

公開一週目のレディス・デー、近くのシネコン。お客は40人くらいか。一作目はいい出来だった。二作目は印象うすい。待ちに待った三作目は・・。映画が終わって出る時「組織のこととかよくわからなかった」と言ってる人がいて・・確かにそう。笑えたしアクションもよかったけど、ストーリーはメチャクチャ。香港映画ならこんな雑なストーリーもありだけど、いちおうハリウッド映画ですぜ。しかも監督ブレット・ラトナー。もうちょっとちゃんと作ってあると思ったのに・・。いやいやお金かけてちゃんと作ってある。アクションもどこかのアホと違って変にゆらしたりせずまとも。でもストーリーが・・。ぴしっと筋が通っていない。何のためにリー(ジャッキー・チェン)やカーター(クリス・タッカー)が動き回っているのかはっきりしない。敵もはっきりしない。今回はパリが舞台。英語、フランス語、中国語、日本語が飛びかう。ケンジ(真田広之氏)とリーが兄弟で、エッ日本も中国も一緒くたかよ!とびっくりしたが、実の兄弟ではなく孤児院で兄弟同様に育ったという設定。かたや犯罪者、かたや警官というわけで、愛情と憎しみがまじり合う。そのへんの複雑さを描きたかったらしいが、私が思うにこれが一番の欠点。しがらみに苦悩するリー、その一方では成長したスーヤンが忘れないで、約束して・・と迫ってくる。あのさ~いいかげんにしろっての。頼りになるから、言うこと聞いてくれるからっていつまでもリーをがんじがらめにするな!リーはケンジのこと、スーヤンのことで両方束縛受ける。板ばさみになって苦悩する。それでいてラスト、事件解決するとカーターと例のダンスやる。アンタ兄弟同然のケンジなくしたばかりなんですぜ。あの苦悩はどこに?こんな変にしめっぽい設定なんかくっつけず、ケンジを冷酷な悪人として出してきて、ストレートにリーと対決させた方がよかったと思う。ケンジが結局どういう役回りだったのかはっきりしないまま終わってしまっていた。真田氏自身は演技もアクションもたたずまいも異彩を放っていて非常に新鮮。ジャッキーには「1」で登場した時のような新鮮さはもうない。それだけに余計。我々から見れば真田氏は日本を代表するアクションスター。我々にとっても彼のアクションは久しぶりで、そうそうこれが見たかったのよ!とうれしかった。

ラッシュアワー3 2

若い頃とは一味違う無駄のなさ、冷静さの感じられる動き。ジャッキーも真田氏も小細工なんか必要なし。正面から堂々とうつしても大丈夫。それでこそアクションスターってなもんよ!だからエッフェル塔での対決は見ごたえありますよ。こういう部分がすばらしいだけに、変なおまけ(苦悩)つけないで欲しかった。単純に白と黒、善と悪でいいじゃんよ。さてクリス・タッカー・・どうなっちゃってるんですか彼。太っちゃってフーフー言ってる。まるで魅力なし。頭の中は女性引っかけることだけ。最初から最後までずっと。非常に下卑た印象。一緒にいるとリーまで汚れそう。もっと距離を置いて清らかさ保たなきゃだめよリー。こんな輝きを失った相棒と一緒じゃいくらジャッキーががんばったってだめ。はっきり言って作品の質と言うか品位は落ちてる。パリに着いてすぐ二人をひどい目に合わせる警部がロマン・ポランスキー。よく出たねこんな役で。アメリカへ入国できない彼が、アメリカから来た二人をいじめるというのはギャグなんですか?フランスの警察ってあんなにムチャクチャなのかって呆れるけど「TAXi4」なんてもっとムチャクチャだし。期待した三作目・・でも思ったほどじゃなくて、でもいちおうお金かかっていて豪華。でもその豪華さを私は楽しめなかった。見どころは真田氏で、うまく使われているとは言えないけど実力はちゃんと見せていて、ジャッキーを食ってしまうほど。もう一人工藤夕貴嬢が出てるけど、正体がはっきりしない。名前がジャスミンと言うことは中国人?裏付けも何もないうすっぺらなキャラで、ただ出てきてあばれて死んじゃう(「かわいい女」のブルース・リーみたい)。まだそんな年でもないのに顔とか汚くてどうしちゃったのかな。他にマックス・フォン・シドー。出てきたとたんすぐ、こいつが黒幕ってわかる。ホント呆れるほど安っぽいストーリー。敵をつかまえたら中国人なのにフランス語しかしゃべれず、リーやカーターが修道女に通訳頼む。修道女が低俗なやり取り通訳するはめになるというギャグも、笑うより長すぎてうんざり。作り手のピントのずれ具合ばかり目についた。「4」はやめた方がいいよジャッキー。