レインディア・ゲーム

レインディア・ゲーム

ファーストシーンで結末が予測できる映画。途中でシャーリーズ・セロンが悪女だとわかるところと、最後に死んだはずの友人が現われて、皆彼の企みだとわかるところと、二回どんでん返しがあり、この二つは予想していなかったので、意外性があった。セロンは、悪女役の方が生き生きとしていて、似合う。途中の、カジノ強盗計画のくだりはお粗末で、ベン・アフレック扮するルーディのへたな演技に、ガブリエル達がだまされるのはどう考えてもおかしい。ころころ言うことが変わり、言ったことがウソとばれても相手を信用するなんてありえない。せっかくゲイリー・シニーズが凄みをきかせてるってのに。ココアとペカンパイのシーンだってアホらしくて、出演者全員がバカに見える。アフレックっていつも同じような役だし、演技も同じ。意志の弱さから、トラブルに巻き込まれ困っている小心な好青年役ばっかり。彼が自動車泥棒で、その才能(?)を生かして危機を乗り越えるところは、なかなかよかった。・・以上は、WOWOWで見て書いた感想。「午後のロードショー」でやったので、久しぶりに見た。監督は「終身犯」や「D.N.A.」などのジョン・フランケンハイマー。劇場公開作品としては遺作にあたるらしい。そんなにひどい出来ではないと言いたいのだが、やっぱり展開に無理があり、それを最後まで引きずる。前に見た時はたぶんガブリエル役のシニーズに注目していたと思う。「スネーク・アイズ」で見て、印象強かったから。で、これを見てずっこけた・・と。彼のイメージとしては、短くきちんとした髪、ヒゲの剃りあともすがすがしく、スーツをビシッと着込む。それがここではロンゲにヒゲに、オレだって脱げばムキムキだぞよとランニング姿で二の腕強調。似合わないんだってば、ムリすんなってば。あの頃はアフレックとセロンとシニーズの三人しか知らなくて。でも今回見たら・・。まず刑務所でルーディと同房だったニック。「ミディアム」や「メンタリスト」に出ていたジェームズ・フレインだ。あと三日で仮釈放という時に、アラモという凶暴なやつにニックは殺されてしまう。アラモ役はアイザック・ヘイズか。ニックが自分の身代わりになったことでルーディはショックを受け、釈放されても心は重い。ニックにはアシュリー(セロン)という文通相手がいて、待っていたけれど、彼が現われるはずもなく・・。そこでついつい・・。ニックのために文面考えてやっていたし、手紙見せられたし、写真もべたべた貼ってあったし・・いつの間にか自分も彼女のこと好きになってて・・。

レインディア・ゲーム2

だってどう考えたって、彼女にはニックより自分の方がふさわしい。ニックの性格からすると、彼女を本当に大事にするとは思えない。実物の彼女見たらすごくいい女だし、一人ぽつんと取り残されて当惑してるし・・。で、ルーディはニックのふりして彼女に近づいて。そのせいでとんでもない目に会うんだけど、肝腎のアフレックがボケーッとしていて、トローンとしていて、デレーッとしていて、要するにいついかなる時も締まりがない。いつ口の端からよだれがタラーンと垂れるのかって感じ。対するセロンは元気いっぱい。この頃の彼女はいろんなのに出まくっていて。来る仕事全部引き受けているんじゃないかって思うほど。彼女のいいところは、美人でスタイルがよくて健康的で生き生きとしているところ。脱ぎっぷりもいい。変に隠したりせず、堂々としているのがいい。さて・・いい思いをしたのもつかの間、アシュリーの兄ガブリエルが現われ、カジノ襲撃の手引きを強要される。ニックは以前カジノの警備員をしており、アシュリーへの手紙にもそれを書いていた。それを見たガブリエルが、仲間を集め、釈放を待っていたというわけ。で、ピンチに陥ったルーディが、オレはニックじゃないとか、そうだオレはニックだとか、コロコロ言うことが変わって、ここがこの映画の一番の泣きどころで。久しぶりに見て、まああんまり辛らつな批評はするまい・・と思っても、やっぱりここだけはどんなに寛大な見方しようとしてもだめなのだ。だまされるガブリエル達はやっぱりバカにしか見えない。彼はトラックの運転手だが、裏では銃の密売をやっている。集まった仲間もそっち関係か。銃には詳しくても、誰も強盗に入った経験はなし。何だかんだ脅しても、結局はニックが頼み。彼がいないとどうしていいかわからない。と言うか、誰かが警備員として雇われ、情報を集めればいいのに。セロンがウエートレスとして働き、支配人や警備員骨抜きにして情報漏らさせることもできた。そういうの全然思いつかず、ニックさえ加われば・・と思い込んでいる。だから、本物のニックではなく(カジノのことは何も知らない)ルーディだってことになると、彼らも困るのだ。つまり彼らは、ニック本人だと信じたい。自分からだまされたがっているのだ。ルーディが何とか生き延びられるのは、相手のこういう心理のおかげだが、アフレックにはそれを納得させるような演技力もなし。

レインディア・ゲーム3

仲間の一人ジャンピーはダニー・トレホのおっさんだ。出てくれているだけでうれしい。黒人のメルリンは「将軍の娘」などのクラレンス・ウィリアムズ三世。もう一人は「ブレイド」などのドナル・ローグ。彼らが襲うカジノの支配人が「スリー・リバーズ」などのデニス・ファリナ。ルーディが自分の身代わりに仕立て上げようとした若者はアシュトン・カッチャー。けっこういろんな人が出ていたんだ。途中でルーディは、アシュリーがガブリエルの妹ではなく、情婦だと知ってショックを受ける。二人は最初からニックをだましていたのか?これが後でもう一度引っくり返る。金の強奪には成功したものの、仲間三人は死亡。ガブリエルはルーディを殺そうとする。見ている我々は、アシュリーが土壇場で裏切って、ルーディを助けてくれるのでは・・と思っている。でもルーディはアシュリーには心を許さないだろうけど。そんなふうに結末を想像していると・・死んだはずのニックが現われ、びっくりする。彼が刑務所に入ったのは、恋人のミリーのせいだが、アシュリーがそのミリーだった!さあ、驚け。うん、だからびっくりはしましたよ。ルーディは別にニックのふりをする必要はなくて、最初からニックは死んだ、自分は同房にいたルーディで、君のことはよく知ってる・・となってもいっこうに差し支えなかった。それができなかったのは、自分のせいでニックが死んだとわかるのが怖かったから。彼女の前を通り過ぎ、故郷へ直行するつもりだった。それをしなかったのは、ニックが前々からそう仕向けていたせいもあるが、要するにスケベごころのせいで。一方ニックはミリーをガブリエルに近づけ、虜にさせ、カジノ襲撃を企てさせる。自分は死んだことにして、危ないことは全部ルーディにやらせ、後で金だけいただくつもり。でもそうなら、ルーディにもっとカジノの情報それとなく与えておくはずでしょ?何も知らない(まじない金庫のことは別として)からこそ、ルーディはピンチの連続だったわけで。ラスト・・サンタクロース姿のルーディは、あっちこっちの郵便受けに札束を入れて回る。我が家にたどり着き、家族と一緒にテーブルにつく。自分が経験した、信じられないような数日間のことは、一生誰にも話すまい。てなわけで、巻き込まれ型犯罪サスペンスとして、大成功するはずだった本作は、結果的には失敗作に。せめてアフレックにもう少しきりりとしたところがあればねえ・・。「車泥棒を車に乗せるな!」というセリフは決まっていたけれど。ちなみに、レインディアというのは、トナカイのことらしい。