霊視

霊視

テレビ東京の「午後のロードショー」でやってくれた。キーファー・サザーランド主演とくりゃ見ないわけにはいきません!1999年ということは「ダークシティ」の頃ね。「24」でブレイクする前。すさんだ暮らしをする刑事。最初はただの飲んだくれのオッサンだと思っていたから刑事と知ってびっくりよ。タバコは吸うわお酒は飲むわオ○○ョはするわ。冒頭のシーンはファンにとっては(ファンでなくたって)ショックかも。キーファーったらオ○○ョしてるぅ、悪夢を見てチビッちゃったのね。ミック(キーファー)は今日も今日とて酒を買いになじみの店へ。ところがチンピラに酒をかっぱらわれてしまう。追いかけたもののドジを踏んで転落。そのショックで霊視能力が目覚める。死体や持ち物に触れると、その時の状況が目に浮かぶのだ。殺人の場合はその恐怖や痛みまで。冒頭ではまだその能力は目覚めていないはずだが、それでもチビッたということは、時間の流れを前後させているのかな。でもそうするとあの海辺の死体は何なのかな。海辺の死体の夢を見て飛び起きたミックは自分がチビッているのに気づき泣き出すんですの。また怖い夢見たよ~えーん。あるいは、またチビッちゃったよ~情けないえーん。キーファーファンの皆様すみませんねえ何度もオ○○ョだのチビッただのって。悪気はないんですよ。ただびっくりしたんですよ、のっけからこんなシーン見せられたら引いちゃいますってば。でも泣いてるミック見てわかるわけですよ。彼ひとりぼっちなんだわ・・って。誰もパンツやシーツ洗ってくれない。自然乾燥・・いや、自分で洗濯しなくちゃならない。そのわびしさ。年齢から言って奥さんいるはずだけど一人暮らし。どうも奥さんは彼を捨て、上司のジョンの元へ走ったらしい。何があったの?彼が酒びたりなのはそのせい?どうもあんまりよくわからないんですよ。海辺の死体が誰なのかも最後まで不明。次々に殺人事件が起こり、そっちの方に集中しろ!ミックの過去なんかどうでもいい・・みたいな作り方。すさんだ暮らしのミックは何となく汚らしくて、暗いカゲがあって、そのせいで陰惨な事件引きつけているようだ。相棒のレイも迷惑顔。転落したのにケガもせず、事件発生の報にかけつけてみると犠牲者は何とあのチンピラ。このチンピラ役の人ポール・ベタニーに似ていますな。

霊視2

思いがけない偶然にとまどいつつも死体に手を触れるとあーら不思議。こういう超常現象扱うとなると、どうしても二流と言うか安っぽいムードが漂う。科学的、あるいは心理的な真っ当な捜査とは違い、見ている方も「ほんとかよ」とか「まあかってにやってよ」とか、一歩引いた感じで見ている。それでいて別にチャンネル変える気もない。何となくつき合って見ている。「霊視」というタイトルに引かれて見る人もいるだろうけど、私の場合はキーファー目当て。前「フラットライナーズ」もやって、途中からだけど見て、わりとおもしろかったのよ。今回もヒマつぶしに見ているぶんにはおもしろいわけ。大スターが出ているわけでも、お金かかっているわけでもないけど、アイデアで見せようとストーリーを工夫している。それがうまくいってるとは必ずしも言えないんだけど、努力しているのはわかる。何となく先は見えてるけど、いちおうちゃんとした答(つまり真犯人)知りたい。ついつい最後まで乗せられて見てしまう・・そんな映画。日本では未公開だが、お金払って映画館で見たとしても満足すると思う。さて、連続して起こる殺人事件。その手口から10年ほど前世間を騒がせたジャバウォッキーの復活のように思える。上司のジョンは、以前容疑者として名前の上がったウッドという男を監視しろ・・とミックに命じる。ミックにはウッドが犯人だとは思えないのだが命令なので仕方がない。彼は自分に何が起こったのかまだよくわからない。ハービィという男がなれなれしく近づいてくるのが腹立たしい。君には見えてる。ボクも見えるんだ。・・そんなこと信じられるか!酒びたりで今のままじゃクビになりかねない・・とジョンに神経科医の診察を受けるよう言われ、てっきりその医者だと思って会いに行ったのがべラ・スワンという美しい女性。あとでハービィにまんまと乗せられたのだとわかるが、べラと会った屋敷でミックはまたも幻影を見る。何とこの屋敷はジャバウォッキーの一人目の犠牲者アリスの殺害現場らしい。べラは超心理学者で、霊イコールエネルギーと考え、いろんな怪現象の起きるこの屋敷を調査していたのだ。べラを演じているのはポリー・ウォーカー。知的な顔立ちのせいか、医者とか学者みたいな役が多い(「コントロール」とか「D-TOX」とか)。

霊視3

ハービィ役はヘンリー・ツェーニー。どこかで見たような顔だと思ったら「カオス」に出ていた。他に検死担当のオーウェン役の人は「キャプテン・ウルフ」で北朝鮮のスパイやった人。デニス・アキヤマという名前だから日系か?あとは知らない人ばかり。似たような顔の人ばかりで区別がつかないと書いてる人が多いが確かにそう。ジョン、ハービィ、ウッドの三人が似ているし、ミックの同僚も皆似たような顔している。殺人事件もたくさん起きるので、映画が終わる頃には一つや二つ忘れてしまっている。後で見直してああそう言えば・・となる。そう、この映画録画したのよ。しといてよかった。何度見てもおもしろいから。もちろんCMはやたら入るし、キーファーの吹き替えの声はあんまり合っていないんだけどさ。さて、見ていておかしいのは最初の方でやたらゲイが出てくること。お酒を買いに行くと店主に「一緒に暮らさないか」なんて持ちかけられる(言い寄られるとも言う)。恋人が出て行ったのでさびしいらしい。後でミックがゲイバーで飲んでいるとハービィが寄ってくる。一人で飲んでいたいのにうるさくつきまとうのが鬱陶しい。こいつオレをナンパしてるのか?ハービィはどう見てもゲイだ。霊視能力があり、ミックの能力を見抜き、ジャバウォッキーが活動を再開したのを感じ取る。ミックとべラを引き合わせる。正体不明な彼だが、そのうち大学の講師か何かやってるインテリだとわかる。べラとは親友らしい。べラはハービィを「軽々しくものを言う人だから」と評す。確かにハービィは開けっぴろげすぎる。花や小鳥ならまだしも、相手は殺人などの犯罪者だ。見えたことをペラペラしゃべるのは危険極まりない。この予感は後で的中する。で、話を戻すとこのゲイバーのマスターが、例の店主の恋人なのだ。ミックは両方の知り合いで両方の話(言いぶん)を聞くわけ。そこがおかしかった。ミックはゲイではないが、そっちの人達を引きつける魅力がある・・というふうに見えるのがよかった。普通なら女性が寄ってくるところだが、それだとありきたりでおもしろくない。妻に逃げられたという設定は「ザ・センチネル」もそうだし、その後一人暮らしで次の女性のカゲなしというのも共通している。結局まだ奥さんが忘れられないってことなのかな。酒びたりの原因はそれなのかな。

霊視4

しかしミックの場合、ジョンへの嫌がらせ、当てつけの意味も含まれているように思える。ミックを見る度にジョンは気まずい思いをしたはずだ。生活が荒れれば荒れるほど負い目を感じたはずだ。普通の映画なら奥さん登場して何やらひともめ(私はあなたと一緒に生活していた時には不幸だったけど、ジョンに出会ったおかげで安らぎを得ることができたとか何とか)するところだがそれもなし。ミックはどういうわけかネコを飼っているのだが、例えば奥さんがかわいがっていたんだけどジョンはネコの毛アレルギーなので連れていけない。それで仕方なく置いていったのをミックがそのまま何となく飼ってるとかさ、そういうエピソードあってもいいと思うんだけど。わりと寄り道せず、殺人事件とかミックに突然備わった能力とかに描写をしぼっているのよ。ただそれがあんまり整理されていなくて、一回見ただけじゃよくわからない。例えばジャバウォッキーが現場に残すトランプのカード。ミックの引き出しにトランプがあって「あれッ?」と思わせたり、ウッドの自宅にやはりトランプがあったり。もしかしてミックが犯人?自分でも知らないうちに殺人を?海辺の死体の謎もそのままだし・・。あるいはやっぱりウッドが犯人なのか。ミックと相棒のレイが家宅捜索してもあのトランプは見つからなかったの?さて・・先が見えると前に書いたけど、ジョンの態度が怪しいのよ。警官が犯人というのは反則だけど、でも見え見えなの。ウッド犯人説に固執するのがまず怪しい。またなぜミックに捜査をまかせるのか。酒びたりで能力が低下しているから捜査も適当で、真犯人なんか突きとめられるはずないとたかをくくっていたのか。まあこういう映画の常として、目的与えられるとダメ刑事が一転、優秀な刑事に変身しちゃうのよ。元々は優秀なんだからアルコールが抜ければシャキッとするわけ。そうなるともう適当なところでやめさせようとしてもだめなのよ。真実に向かって一直線。寝た子を起こす、薮ヘビ・・とにかくジョンの立場が危うくなってくるわけ。キーファーは「ダークシティ」の頃はちょっと太め。この作品でもやっぱりちょっと太め。冒頭のオ○○ョシーンでそれがわかるのよ。でもって何度も書いてるけどすさんでいてむさくるしくて、まあ「16ブロック」のブルース・ウィリスとまではいかないけどさ。

霊視5

でもやっぱりステキなのよ。男性にほれられちゃうのもムリはない。途中で犠牲になる男娼もミックに気があるみたいだし、まるでハエにたかられているみたいなミック。女じゃなく男を引きつけるミック。捜査に駆けずり回っているうちにだんだん生気が甦ってきて、そうなるとますます魅力的。事件のことで頭がいっぱいだから奥さんのことなんかどうでもよくなったんだわ。それにべラと出会ったしね。間にハービィがいるからかえってよかったんだと思う。二人を結びつけ、ある時はクッション代わりになる。ハービィには危なっかしいところがあるから二人して見守ってあげなくちゃならない。最初からミックとべラが顔突き合わせていたら反発していたかもしれない。とにかくそのうちに夕食一緒に取ってミックが転落した思い出の場所(?)行って、どさくさにまぎれてキスなんかしちゃって、その後で「ごめん」なんて照れて頭かいてあやまっちゃったりして、ミックったらかわいいんだわ~うくく。その間にも事件は起こるし霊視で苦しむしでごちゃごちゃしている。ついでにCMもせっせとはさまれるんだけど、だんだん事件の概要が見えてくる。要するに相手が自滅しちゃうの。ミックの能力は備わったばかりのせいかどうか知らないが一定しない。死体や所持品にさわっても見えたり見えなかったり。見えても被害者から見た映像だったり加害者から見た映像だったり。主婦が殺された時は夫の犯行だというのが見えた。でもその後どうしたのか不明。べラに時計を渡された時には何も見えなかった。レイのカギをさわった時にはとんでもないものが見えた。チンピラの時にはチンピラ自身しか見えなかった。相手・・つまり加害者が見えていれば事件は一挙に解決できたのだが・・。ミックが霊視して苦しむシーンは何度か出てくるが、なかなかジャバウォッキーの正体が見えてこないのでこっちもいらいらさせられる。犠牲者が増えるだけでちっとも捜査が進展していないように思えるのだ。ただ、二回目を見た時には同一犯の仕業じゃない、誰かがジャバウォッキーの仕業に見せかけているのだというミックの主張が重要な伏線になっているのだとわかる。一連の殺人事件は別々の犯人によるものなのに、それがみんなジャバウォッキーのせいにされてしまっている。

霊視6

しかもウッドがジャバウォッキーだとジョンが主張するので、捜査はますます見当違いの方向へ向き、いつまでたっても解決しない。もしかしたら10年前の一連の事件もそうなのでは?どの事件も別々の人間による殺人で、しかも誰も逮捕されず、犯人達は大手を振って町を歩き回っているのでは?こういう設定は珍しいと思う。普通は一人の人間がたくさんの事件を起こし、自分がつかまらないよう複数の人間の仕業に見せかける。この映画は逆だ。ただこっちの方はボロが出やすいと言うか・・。男娼が殺された時には自分の同棲相手が犯人では・・と言ってきた女性がいた。また犯人によってはジャバウォッキーの仕業にされて安堵する者もいれば、あいつの犯行じゃない自分がやったのだと心外に思って(出頭はしないだろうが)声明発表する者だっているはずだ。誰かがランダムに起こす犯罪のはずなのに、いちいち細工してジャバウォッキーの仕業に見せかけているとしたら、それができる人間は限られてくる。警察内部の者の仕業に決まってる。そうなりゃジョンあたりが怪しいとすぐわかる。一回目は霊視能力の描写に気を取られ、そっちばかり注目するが、二回目はかわされるセリフにも注意が行く。そうするとけっこう早い段階でジョンの行動に不審な点があるのがわかるのよ。・・でもって前に書いたようにジョンは自滅する。最初の方の自信たっぷりな態度は崩れ、弱気になる。元々は小心な性格なのではないか。ミックの奥さんとのことだって、彼が誘惑したから夫婦仲が壊れたとも思えない。つまり奥さんがジョンに走ったのはミックに落ち度があったからだろう。それでもジョンはミックに対して後ろめたい思いをずっといだき、悩んでいたのでは?こういう小心な男に限って追いつめられると暴力に走る。ジャバウォッキーをでっちあげたのもそもそもは自分の犯行を隠すためだった。例の屋敷でアリスに手を出そうとして誤って転落死させてしまう。そしてアリスと自分が結びつかないよう、殺人事件が起きると細工をして(トランプのカードとか)ジャバウォッキーのせいにしていたのだ。一つの犯行を隠すために細工を重ね、今またミックを始末しなくちゃならないはめに陥る不運な男。ミックはまだジョンの正体はっきりとは見破っていないんだろうなあ。簡単に殴られ気絶し海にほうり込まれ・・。正体見破っていればもうちょっと身辺警戒するはずだが・・。

霊視7

それにしてもこのあたりでは「あれッミック死んじゃうの!?」と見ていてびっくりしたな。顔はうつさないけどミック引きずっているのジョンってバレバレ。何だキーファー事件解決直前降板かよ。ハービィが仇討つのね。真相のヒント嗅ぎつけたらしいし。そのヒントって誰かの靴なのよ。さぞかし臭ったでしょうよ!ところが・・そのハービィが今度は襲われているわ!えッ彼も降板?やっぱりねえ危ないとは思っていたのよ彼警戒心なさすぎだし。じゃあべラが真相あばくんですか?男二人の仇討ちだいッ!・・と思ったら溺れ死んだはずのミックが家に無事に帰ってきて、ネコに「何も言うな」なんて釘をさしているわ。そりゃずぶぬれだしネコはぬれるの嫌がるし・・って関係ないか。とにかく転落してもケガなし、気絶させられ海に投げ込まれても死なない。どうやらミックは不死身らしい。とは言えファンにとってはうれしい限り。よかったわぁ生きていて。都合がよすぎる?いやいや気にしない気にしない。それにしてもネコちゃんいつもほったらかしにされているみたいでちと気の毒。ちゃんと食べさせてもらっているのか、トイレはきれいにしてもらっているのか。さて、ミックは事件追ってるうちに、ジャバウォッキー事件の報道で売り上げを大きくのばしたミラー新聞社に目をつける。犯行後声明文と記念品(被害者の所持品)送りつけられるのはいつもここ。女編集長(?)の弟トムは行方不明。記事を書きまくっていた彼は、ジャバウォッキーに近づきすぎて消されたのか。それとも彼自身がジャバウォッキーだったのか。トムとジョンは親友で、トムの遺品のライターに触れたミックは、トムが海に飛び込むところを霊視する。自分から飛び込んだのか誰かに突き落とされたのか。とにかくミックはジョンと対決し、いったん事件は解決したように見える。アリスの母親が遺品のペンダントをミックに渡すが、もう事件は解決(アリスとハービィを殺したのはジョン。一連の殺人事件はそれぞれ別の、まだわかっていない犯人によるもの)したのだから、今更このペンダント渡されても遅いのよ。ペンダントに触れてミックに何か見えたんだか見えなかったんだか。何しろ彼の能力は気まぐれだから。見えたとしてもそれはジョンのはずだが・・。しかしそう思わせといて・・引っくり返る。

霊視8

でも別のもの見えたとして、ジョンは死んじゃったし、これ以上追及できるのかな。ミックはある人物に会いに行くんだけど証拠は何もない。霊視能力で見えたからってそれだけじゃ何もできない。開き直った相手のセリフ録音でもしていない限り実証は難しいのよ。裏で糸を引いていた張本人は罰せられることもなく生きのびるのか。正義は通じないのか・・と、いや~な気分にさせといて、いやいや因果応報、自分がやったことはめぐりめぐって自分に返ってくるのよ。お天道様(この場合は夜だけど)はすべてお見通し。だから悪いことはしちゃいけないんだぜい・・とまことに胸のすく結末。そりゃ人生メチャクチャにされた○○○にとって、解決法はこれしかなかった。これをやることでジャバウォッキーは自分ということになり、表面的には今までの殺人事件は解決。(ミックも含め)誰もこれ以上事件をほじくり返さない。まあいちおう推理物なので、感想もちょっとぼかして書いてますよ。全部はっきり書いたらこれから見る人の興味そぐでしょ。いちおうDVDも発売されている。キーファーの生の声ぜひ聞きたいけど・・どこにも売っとりませんの残念。レンタル店にも置いてないし。時間的にはカットされてる部分はほとんどないと思う。ノーカット版を見て明らかになることがあるとも思えない。つまり整理されてなくてゴチャゴチャしたままなんだろうってことだけど。そのゴチャゴチャ感のせいで、この映画には二流感、B級感がぷんぷんしてるんだけど、そのせいで私はいっそう好きになったのよ。あの海辺の死体はトムかしら。いやいやただ男の死体が見えたってだけならチビるほどの悪夢とは言えないよな。もしかしてミック自身の死体かも。それだったらチビッても不思議じゃない。海に投げ込まれ、あのまま溺死する運命だったのかも。でも何かの力が働いて運命はチビッた・・じゃない、違った方向に向かったのよ。事件が解決する頃にはミックからはもうアルコール分もすっかり抜けてる。べラともいい感じだし過去とはおさらばしてシャキッとするんだぜい!あ、でも霊視能力はそのまんまなんだよな。悪夢だってこれからも見るんだろうし、チビッたなあ・・じゃない、困ったなあ。こういう妄想しがいのある映画って大好き!ミックのキャラ・・すさんでいてもどこかに暖かいもの持ってるところ(男娼の死に際して見せる思いやりとか)がよかった。