ライフ・アクアティック

ライフ・アクアティック

体力も家庭も仕事も盛りを過ぎて落ち目の中年をやらせたら、ビル・マーレイはぴったりはまる。でもそういう役ばっかりなのは俳優としていいのか悪いのか・・。冷えきった仲の妻エレノア役はアンジェリカ・ヒューストン。無表情のままでコメディーを乗り切る彼女は、「アクションなしのバスター・キートン」か。フーセンガムをふくらませ、ついでにおなかもふくらんでいる記者ジェーン役はケイト・ブランシェット。正面から撃たれたのになぜか走ってるジェフ・ゴールドブラム。意外と背が低く、マーレイ扮するズィスーに不器用な愛情をいだいているらしいクラウス役のウィレム・デフォー。「二重誘拐」でがっくりさせられた後だから、今回のすぐすねる変なおっさんの役はよかったな。他に相変わらず声のすばらしいマイケル・ガンボン、目つきの悪いノア・テイラー。落ち目の監督とクルーが海洋ドキュメンタリー映画をとるという話。途中で海賊に襲われたり(日本語が聞こえたところをみると、日本人もまじっているのか)。コメディーと言ってもいろんな要素があり、人間がドタバタしてすむところはそれですませるが、描きにくいところは他の方法を採用する。海の生物はアニメ、狭くてうつしにくい船の中は舞台みたいなセット、ピンチを脱するには突然ズィスーをスーパーヒーローに変身させるという具合。まあそんなことは実はどうでもよくて、私が一番印象深かったのはオーウェン・ウィルソン。いつもはおしゃべりでノーテンキで女をくどいてばっかの迷惑男。つまり「シャンハイ」シリーズのキャラの印象。この映画もてっきりそうだと。でもズィスーの息子(隠し子)として名乗り出たものの、このネッド、別に何を要求するわけでもなく・・。母親は病気を苦にして自殺、一人になったことだしまだ見ぬ父親に会ってみようかなあ・・っていう感じ。子供のいないズィスーは複雑な心境。本当に自分の息子なのか。しかし一緒に行動していれば何やら父親めいた感情も生まれる。次回作が資金難で製作中止になりかけたのを母親の遺産で救ってくれたり、同じ女(ジェーン)にほれたり。ほのぼのと言うにはお互い不器用すぎるが、何かいい感じ。変にべたついたりしめっぽいところがない。ズィスーやクルーに「本当に息子なのか」と聞かれても、ネッドは「わからない」と答える。正直な青年だと思う。

ライフ・アクアティック2

彼はあまり知られていない航空会社の副パイロットらしい。父親がいなくても、ぐれもせずまともに育ったらしい。子供の頃ズィスーにファンレターを書いた。ズィスーから返事も来た。両方の手紙をさらりと見せる。なぜかファンレターを取っておいたズィスー。妻ある男性の子供を身ごもっているジェーン。ナンパキャラのオーウェンも今回は控えめ。大人しく、人恋しい感じでジェーンに近づく。家族の温もりが欲しいなあ・・。エリートと言うにはちょっとずれているネッド。そりゃ映画がコケてばっかりのズィスー達にくらべれば安定した職業。身なりもきちんとしているし。・・で、何が言いたいかというと、こういう真面目キャラのオーウェンは初めてで、こういうのもできるんだなあ・・と。で、こういうキャラのオーウェンは何とも胸キュンだなあ・・と。ズィスーはネッドを本当の息子のように思うが、エレノアは冷静だから、医学的にズィスーには子供ができないことを知っている。ネッドは通り過ぎる存在である。いきなり現われ、ちょっとした事故であっけなく死んでしまう。彼が死んでしまうのには正直言ってびっくりしたな。コメディーなのに死人?でも彼にはふさわしいかも・・。波打つ金髪と無垢な表情はまるで天使のよう。まわりに影響を与えつつも控えめで、役目を終えたかのように姿を消す。私にとっては、足から血を流し、生気を失っていくネッドのシーンで、この映画は終わりだったな。その後のシーンはつけ足し。今いちはじけたコメディーにならず、かと言ってじめじめしたところもない。日本映画ならジェーンが号泣するところだが、手紙の束をさりげなく棺に入れる。これでネッドもさびしくないかも・・と思わせるいいシーンだ。一人いつもギターかかえて歌っているのがいて、アンタ仕事は?なんて思いながら見ていた。歌がたくさん入るので聞き流していたが、ある時「ん?どこかで聞いたような・・」。あッ!スコットの「30世紀の男」じゃん!いやー全く意外でびっくりこきました。アハハ使ってくれてありがとう!ちなみに私の王子様スコット自作の曲は、「ジョアンナが恋するとき」が「ジョアンナ」に、「やさしい悪魔」が「キッスは殺しのサイン」に使われております。他にイザベル・アジャーニの「可愛いだけじゃダメかしら」に二曲、「ポーラX」では音楽担当です。40年前は天使のようだったスコット。今頃どうしているかしら。