リーサルドーズ

リーサルドーズ

「リーサルドーズ」とは致死量という意味らしい。DVDをレンタルして見たのはフィリップ・ウィンチェスターが出ているから。内容はだいたい予測できる。若くて知られてない(ギャラの安い)俳優がまず何人か出てくる。限られた空間(人里離れた古い屋敷、幽霊屋敷、あるいは今回のような秘密の研究所)の中をぐるぐるぐるぐる。回るうちに一人また一人と殺されていく。みんな無名だから誰が生き残るかわからない。クライマックスは血がどばー、内臓びろーん、加えて今回は脳が剥き出し。その残酷さが売り物の低予算映画。こういう映画には多くの場合意味もなくいちゃいちゃシーンが入る。時間稼ぎのため、あるいはお客に媚びるため。今回はありがたいことにいちゃいちゃはなかったが(フィリップの・・イコールスコットのいちゃいちゃなんか見たくないッ!)、二回ほどハッパを吸うシーンがあって、ストーリーが停滞する。ラストはたいてい美男美女が生き残る。となるとフィリップは不利だな・・主役じゃないし美男でもない。やられ役に決まってるな。まあそんな・・高校生あたりがキャーキャー言いながら見るようなお決まりのホラー映画。冒頭数人の男女が動物実験をしている研究所に忍び込む。虐待されている動物達を逃がすのだ!そりゃ逃がしたくなる気持ちはわかる。でもそれが何かに感染している動物だったらどうするのかな。・・と言うか、全員が動物のこと考えて行動しているわけじゃなくて、ある者は単に有名になりたいとか、ぱーっとハデなことしたいとか・・。だからビデオカメラは必需品。考えていることがばらばらで統率が取れていない。中でもゲイリーは人と一緒はいやというタイプ。かってな行動取ったあげく、しかけてあった罠に足がかかってしまう。助けようにも罠ははずれず、そのうち警察もかけつけてきた様子。やむなく彼を置き去りにする。仲間のことは黙っているよう口止めして・・。一年後マット(トム・ハーディ)は仕事をしていても気が晴れない。ゲイリーのことが気になる。ゲイリーの恋人だったヘレンも心がゆれている。安寧を求めてヨガ教室に通っているが、無の境地には程遠い。中にはあれは若げの至りだったのだと気持ちをすっぱり切り替え、仕事に取り組んで成功しているジェニーのような者もいる。

リーサルドーズ2

ある日彼らは久しぶりに集まる。マット、ヘレン、ジャスティン、ダニー、ルイーズ、それと新しく加わったルイーズの恋人ヴォーン。このヴォーン役がフィリップ。まあホント、ノーテンキで頭からっぽキャラ。一番おかしかったのは、秘密研究所に潜入してあれこれあって、彼が両手に太いコード持つところ。もちろんコードを接触させてスパークさせるのだが、これがあなた「サンダーバード」の7話のゴードンとまんま同じ状況。しかもノーテンキでお気楽なキャラ。もう見ていてうれしくてうれしくて・・。この映画は前にも書いたけどいやらしいシーンゼロで、ヴォーンが着替えのためちらりと上半身裸になるくらい。でもその肩や胸がつるつるで四角い感じなのが、これまたゴードンぽいの!アンタスコットよりゴードンの方が断然お似合いよ!と見ながら突っ込み入れてました。まあ空しい突っ込みですけどね。永遠に作られないであろう「サンダーバード」実写版2!!・・とほほ。さて、ダニーはゲイリーと定期的に面会しているんだけど、ゲイリーはどうも減刑と引き換えにグッドウィンという男に、何かの実験台にされてるらしい。ダニーのサイトには謎めいたメールが入っていて、解いてみるとある研究所の位置と、助けてくれというゲイリーのメッセージが現われる。もちろんかってな行動を取ってつかまったゲイリーは自業自得だ。しかしマット達には彼を置き去りにしたという後ろめたさがある。自分達が今こうしていられるのもゲイリーが口をつぐんでいてくれるおかげだ。何かの実験台にされて苦しんでいるのなら助けてあげなくては。ここらへんで何かの形でけりをつけないと、一生心の重荷を背負うことになる。で、装備を整えて出発。途中で元海兵隊員だというスプークが加わる。まあここらへんでいちおう顔ぶれが揃い、あとは建物の中に入ってぐるぐるぐるぐる。この映画の欠点は、冒頭部分で誰が誰なのかはっきりしないことがまず上げられる。顔の知られていない俳優、しかも夜だから暗い。さらに顔には迷彩をほどこしているからますますわからない。私は冒頭フィリップを一生懸命捜したけど見つからず、それもそのはず彼はこのシーンには出てなくて一年後に加わるのさッ!もう一つまずいのは、せっかくエキスパートのスプークを加えたのにちっとも生かしていないこと。

リーサルドーズ3

彼が加わるのなら、彼が作戦を立て、指図し、偵察に出るはず。しかし研究所に忍び込んだ後偵察に出るのはジャスティン。しかも一人。リーダー格が真っ先に死ぬというセオリー通り、ジャスティンはいつの間にか死体になってる。スプークはネズミに噛まれ、その後具合が悪くなるというのもお約束。当然何かに感染し・・って思うけど、結局そっち方面にはいかない。彼の頭の中には金属片が入ったままで、後でそれを介してゲイリーの頭のなかみがスプークに移る。乗り移られたスプークはマットやヘレンを殺そうとする。それだとネズミに噛まれたのは何も関係ないってことになる。マット達には忍び込んではみたものの、何をどうしようというはっきりした目当ても計画もないようだ。ただ漠然とゲイリーを見つけよう、助けよう・・それだけ。ジャスティンが偵察に出るとヒマだから早速ハッパ持ち出してみんなで吸う。普通なら見取り図見つけてゲイリーのいそうなところ目星つけてさっさと行動起こすだろッ!こんな薄気味の悪いところとは早くおさらばしようとするだろッ!ハッパ吸って寝っころがってる場合じゃないだろッ!とにかく盛り上がりに欠ける、おもしろくないストーリー。ネットで見た二つほどの批評もつまんないとけなしていたし。何が起きているのかという描写も間接的。ジャスティンにしろルイーズにしろ、死ぬところは見せない。そのうち警備員や所員も死体で見つかるが、なぜ、どうやって殺されたのか不明。たくさんのコード(ケーブル)とか、計器に現われるグラフとか、そういうもので不安をあおり立てる。そのうち少しずつ事情がわかってくる。ゲイリーが何をやってるにせよ、それは電気エネルギーを利用している。したがって電源を切れば無力になるはずだ。一方ダニーが隠していたことも明らかになってくる。彼がゲイリーと面会する時にはいつでも後ろに男が立っていて、あれじゃ話している内容が筒抜けじゃないか・・と思うのだが、この男は・・。後になってここは刑務所ではなく研究所で、したがって男は看守ではなくて警備員なのではないか。しかし今では殺されて水槽に突っ込まれていて・・。実はダニーはゲイリーの言いつけで動いていて、あのメールも彼が作ったもの。マット達を集めてここへ来させた張本人はゲイリー。

リーサルドーズ4

この研究所でやっていたのは、肉体から精神を分離すること。精神は一種の電気エネルギーだから、それを増幅し操作できればとんでもない武器となる。ポルターガイストみたいなことを起こして・・。エネルギーを使いこなせるようになったゲイリーは研究所員達を殺し、今また仲間達を殺そうと・・。自分を利用しようとしたグッドウィン達を逆に利用し、彼を見捨てた仲間達に復讐してやるのだ。元々自分のことしか考えない究極のエゴイスト、ゲイリー。脳が剥き出しで、頭が電極だらけなのでイバラの冠をかぶったキリストのようだ。しかも宙吊りになって両手広げてるし、まさに磔になったキリスト。ここらへんはいちおうドラマチックで(かなりエグイけど)、見ていてドキドキする。この頃になると、ヴォーンは無理だろうけどマットには生き残って欲しいなあと思うようになる。トム・ハーディはライアン・フィリップ似のかわいいハンサム。ややジョナサン・リース・マイヤーズ風味入ってる(ぼってり感)。「レイヤーケーキ」に出演していたようだが、あんまり記憶にない。もっともあの映画は「パフューム」のベン・ウィショーの印象が強烈だからね。まあ要するにおばさんとしてはトムみたいなかわいいコには生き残って欲しいわけ。すっきりした髪、色はあくまで白くすべすべお肌、唇は赤く目はぱっちり。そんな望みも空しく、マットはスプークにボコボコにやられちゃう。あちゃ~だめかしら。でもはっきり死ぬシーンは見せないしぃ(まだかすかに望みはあるわッ!)。スプーク役スティーブン・ロードはちょっとクリスチャン・ベール入ってる。ヘレンがゲイリーやっつけて(「殺したみたい」とマットに言ってましたが「みたい」とは何ですか!でもよく考えりゃ脳が剥き出しですもんあれで生きてると言えるのか・・ってことになりますわな)、意外とあっさり味のクライマックスだな~と思っていたらそれじゃ終わらなくて。しぶといゲイリーはちゃっかりスプークに乗り移っていましたとさ。そんな都合のいい・・なんて文句言われないようスプークの頭の中には金属片が入ったままで、そのせいで幻聴があるとか何とか。幻覚も見てるし・・。しかし安易な設定であることは確かですな。

リーサルドーズ5

もっとも動けなかったゲイリーがスプークの肉体使って動き回れるようになったわけだから、マットやヘレンにとっては大ピンチ。しかも元海兵隊員ってことは体鍛えてあるってことだし・・。あッところでスプーク自身の人格はどこへ行っちゃったんですか?そんな疑問もわくけど、そんな細かいことにかまってられるか!こういう映画の常として、絶体絶命のピンチに立たされたへレンは俄然強い女に変身するわけです。いざとなると女性の方がしぶといんです。簡単にくたばってたまるか!ずっと心がゆれていたヘレンだけど、今ようやくはっきりわかったのよ。私はゲイリーなんか愛していなかった。あんなことになったのはゲイリーがかってな行動取ったせい。自業自得なのよ。彼女は水槽に潜む。息を殺して・・。でも見つかってしまう。スプークのゲイリーは彼女を沈めて溺れさせようとする。しかしヘレンの頭に浮かんでいたことは・・あの時のヨガの教え。あの時は集中できなかった。無になれなかった。でも耳に入っていた講師の言葉はそのまま記憶にとどまった。彼女は他のみんながハッパを吸っていた時も加わらなかった。その時ふと目にした研究所の見取り図を無意識に記憶していた。一番あやふやで頼りなさそうなヘレンだが芯はしっかりしているのだ。ピンチになってそれが表面に出てきたのだ。水中に沈められても彼女はあわてない。スプークは、マットは死んだと言った。だったらもう執着するものは何もない。彼女は無になれる。恐怖は感じない。逆に水に引っ張り込まれたスプークはあわててしまう。彼には心がまえができていなかった。相手は女、しかもケガをしている。簡単に殺せるとたかをくくっていた。ヘレン役キャサリン・タウンはどことなくリリー・ソビエスキー風。「俺たちフィギュアスケーター」に出ていたらしい。セックス依存症の一人かな?さて、前にも書いたように「リーサルドーズ」の評価は低い。でも私はそれほどひどいとも思わなかったな。確かに盛り上がりに欠けるし、描写は単調でつまらない。でも出演者はわりとよかったし、特にヘレンには心引かれるものがあった。それとこういう古くてだだっぴろい研究所も私好み。「D-TOX」みたいで・・。

リーサルドーズ6

さて、ボロボロになりながらもマットは何とか生きていた(ばんざーい!)。ヘレンは彼に肩を貸し、二人は研究所を脱出する。まあいちおうハッピーエンドなのでホッ。ヴォーンを殺し、顔半分にヤケドを負ったダニーは一人取り残される。コンピューターをいじくって何とか外部と連絡を取ろうとするが・・。画面にうつっている会社の名前は・・あらら、今回の行動に参加するのを断ったジェニーの会社じゃないの?ちゃんとしたビジネスだとジェニーはいばっていたけど、もしかしたら裏では汚いことやっているんじゃないの?まあとにかく電気は切れ、コンピューターも切れ、ついでにダニーもぶち切れる。だけど彼はケータイ持ってるはずで、何でそれを試さないのかな。前試した時はつながらなかったけど。マットとヘレンが警察呼ぶだろうが、その前にダニーには悲惨な運命が待っている。ゲイリーはまだ生きている。ヘレンに溺れさせられたスプークの肉体から抜け出し、またゲイリーの中へ戻ったのだ。でもこの先ダニーがどんな目に会おうとやっぱりそれも自業自得で・・。この映画何度もこの言葉が出てくる。自分がやったことは結局自分にはね返ってくる。人をだませば自分もいつかだまされる。人を殺せば自分も殺される。マットは迷いながらもいつも物事には誠実にあたろうとしたし、ヘレンは無の境地を求めていた。二人が助かったのは自身の心がけのせいでもある。さて、DVDにはオリジナルと日本用ビデオ予告の二種類がついているんだけど、オリジナルにはあるワンシーンが日本用のではカットされている。何でかなーと思ったけど本編を見たら理由がわかった。そのシーンはラストシーンなのだ。いくら何でも予告でラストシーン見せるなんて・・とカットしたんだろう。あら、これで私が予告先に見たってばれちゃいましたね。と言うか、本編を見ている途中でいったん止めて予告見たのよ、気分変えるためにね。つまりそれほどもったらもったらしてつまんなかったってこと。でも見終わると不思議なことにまた見たくなるのよ。こればっかりは名作だからどう、駄作だからどうって言えないわね。さて、スコットの次はジョンことレックス・シャープネルの「ナイン・ライブス」でも借りてきましょうかね。レックスは地味なのでついあとまわしにしちゃうのよね、ゴメンネ。