20 謎の発狂石

謎の円盤UFO20 謎の発狂石

先日テレビを見ていたらCMでいきなり「サンダーバード」が!どうやらデアゴスティーニからジェリー・アンダーソンの作品が出るらしい。でも・・組み合わせなのね。私は「サンダーバード」も「UFO」も「スティングレイ」もすでに持ってる。あと「キャプテン・スカーレット」が欲しいけど・・「スカーレット」だけのなら欲しいけど。たぶん多くのアンダーソンファンはすでにある程度持っていて・・だから二重に買うことになるんだけど。だから売り手の方もガイドブックつけたり、オマケつけたりあの手この手。私はオマケは別にいいけど、ガイドブックは欲しい。でも新しい情報や写真あるのかな。もう出尽くしていると思うけど。さて「UFO」だけど初放映時は見られなかった。田舎ではやってくれなかった。「テレビジョンエイジ」の写真や記事を見て指をくわえてるしかなかった。人気投票では若くてハンサムなマイケル・ビリントンより、変なヘアスタイルでギョロ目のオッサン、エド・ビショップの方が上だった。でも写真だけ見ていてもビショップはステキだった。「UFO」を見ることができたのは関東へ出てきてからだったと思う。あの頃はこれとか「電撃スパイ作戦」を再放送してくれていた。そして今はDVDがある。今回の発売を機に「サンダーバード」人気が再燃して欲しい。それと同時に、一般にはあまり知られていない(たぶん)「UFO」のことも多くの人に知って欲しい。だってすごくいい作品だから。今のCG満載のSF映画よりずっとなかみが濃いよ。全26話の中では私はこの「謎の発狂石」と「UFO時間凍結作戦」が好きだ。ほとんどのエピソードは何回か見ているが、中には避けてるものもある。「サンダーバード」とは違い、「UFO」には悲しすぎて見ていて辛いエピソードがいくつかあるのだ。話は変わるが、「謎の円盤UFO とことんツッコミ・ネタばらし」という本がある。ほじくることでは誰にも負けない私も負けるほど、細かくほじっている。いやホント偉い。でも一つ残念なことがあって、ゲストについてほとんど触れていないこと。「謎の発狂石」で言うと「電撃」のクレイグ・スターリングことスチュアート・ダモンが出ているんだけど、無視されている。

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これってファンにとっては大変なことなんですよお宝映像。うれしいことに声もちゃんと中田浩二氏!・・ムーンベースに6キロの地点まで接近しながらなぜかUFOが自爆。最新式の設備備えた基地だけど、ニナ・バリー中尉(ドロレス・マンテッツ)は窓から双眼鏡でUFOを確認。アナログだなあ。窓以外の方向から飛んできたらどうするのかな。なぜ自爆したのかとストレイカーは月へ。ずいぶん気軽に出かけるなあ。爆発したあたりを調べるが何もわからない。そのうち調査に加わっていた隊員の一人コンロイがおかしくなり、同僚を殺傷したあげく射殺される。このシーンを最初に見た時はびっくりした。いきなり西部劇風。後でわかるが、コンロイは西部劇のシナリオ考えていたらしい。だから幻覚も・・。そのうちストレイカーとフォスターも幻覚の一部に。他の者はヒゲもじゃでむさくるしい無法者風だが、この二人はヒゲなしできれいなまま(ありがとう!)。女好きらしいコンロイだが、女性隊員達もヒゲもじゃ男に見えてしまうのはなぜだろう。一人くらいは酒場女とか・・。地球に戻ると今度はビーバーという男がおかしくなる。彼は足が悪い。宇宙飛行士だったけど、足のせいで地上勤務(シャドー本部は地下にあるけど)になったのか。今は備品係みたいな・・。でもプライドがあって、宇宙人と戦いたいと心の中では思っていて。それでまわりの者が宇宙人に見えてしまう。彼も何人か殺した後、射殺される。それにしても銃があるからこういうことになる。特にムーンベースではあんなにふんだんに銃は置かないと思うが。このわけのわからない事件の他に、ヘンダーソン長官(グラント・テイラー)が委員会がどうの予算がどうのとうるさく言ってくるのが、ストレイカーには悩みの種だ。昔見ていた時は、金がかかりすぎるだの何だのいつも文句言われているのが不思議だった。だって地球の、人類の危機ですぜ。ケチってる場合じゃないでしょ。でも今見ると・・どうでもいいようなことに予算つくかと思えば、本当に必要なのに削られるとか・・現実にあるもんね。ストレイカーがUFOとの戦いと同じくらい予算の獲得や委員会への対応に神経すり減らしているのは・・。たぶんUFOより委員の方が手強いだろう。

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それにしても長官はどっちの味方なんだろう。シャドー誕生のいきさつからして、ストレイカーの肩をもっと持ってもいいはずだが。テイラーは前に「火星人地球大襲撃」のところでちょこっと書いたが、病気のせいでやせてきている。何ともないようにふるまっているが、ちょっと痛々しい。さて責め立てる長官に、ストレイカーはとうとうキレる。殴ろうとした瞬間「カット」の声がかかる。ちょうど始まってから30分のところ。以後ストレイカーの悪夢世界。冷静で意志強固な彼が内部にかかえる苦悩が明らかになる。彼にとっては息子ジョンの死と、妻メリー(スザンヌ・ニーヴ)との別れが何よりも辛い記憶。この二つが描かれるエピソードはあまり見てない。悲しすぎるし気の毒すぎる。たぶん多くの人はメリーの苦悩に同情しつつも、少しはストレイカーのことわかってやれよ・・と思うだろう。重い責任、弁解できない立場・・そのせいで離婚。たまに息子に会うことだけが心の支えだったのに、その息子さえ交通事故で失う。あの時だってメリーがストレイカーに早く帰れと言わんばかりの態度取って、そのせいであんなことになったんでしょ。全部ストレイカーのせいにするなっちゅーの。いやもちろんあんたの気持ちわかるけどさ。そんな一生苦しめられ続けるであろう悪夢を、映画として見せられて・・。彼の幻覚はコンロイやビーバーのような単純なものではなく、苦悩や後悔が幾重にも重なっている。彼は絶えず自分を責め、離婚や息子の死やUFOの存在が映画の中の出来事であって欲しいと思っているのだ。ダモンが扮するのはテレビの人気スター、バーン。天狗になっていて、台本にケチをつけるなどでかい態度でストレイカーをいら立たせる。でも悪夢の中では彼はバーンと呼ばれるのだ。自分のオフィスに入ろうとすると秘書のミス・イーランドに止められる。彼はストレイカーにはなれないし、ストレイカーに会えない。自分の居場所がない。外に出ると自分にそっくりな男が歩いていて、追いかけるけど追いつけない。やっと追いついたと思ったらそれはバーンで、でも彼は自分はあなたのスタンドインだと言う。ではやっぱり自分がバーンなのだ。

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ちなみにダモンは出番が二か所しかなく、別に彼でなくてもいいような役なのがすごく残念。しかもいやなやつだし。でもダモンには元々ちょっと意地悪そうな雰囲気あるんだよな。とにかく出てくれてありがとう!話を戻して、たぶんストレイカーはバーンをいやなやつだと軽蔑しつつ、一方ではうらやましく思っているのだと思う。バーンは役者で、演技が終わればその世界とおさらばできる。でも自分は・・苦しい過去は現実で、そこから逃げることはできない。自分がバーンだったらどんなにいいだろう。悪夢の中でストレイカーが出てこないのは・・自分のオフィスに入れないのは・・その存在を消してしまいたいと思っているからでは?自分はもっと別の生き方ができたはず、やり直せるならやり直したい。地球を守るなんてそんなごたいそうなことはどうでもいい。家族三人で幸せに暮らしたい!でもその一方でやっぱり自分がやらなきゃ・・と思ってるのよ。UFOとの戦い、予算の獲得(←あれ?)。こんな悲しすぎるストレイカーの境遇に、放映当時とまどいの声があったのも確か。普通はここまでやらない。私が思ったのは・・こういうストレスの多い生活していたのでは彼は長生きできないだろうなあ・・と。でも家族はいないし、メリーは再婚したしある意味気楽なのよね。「もう二度と会いたくない」って言われたし。さて、あちこち経めぐった後ストレイカーはまた長官の前に戻ってきて、あることがきっかけで我に返る。つまりUFOがわざと落とした人の心をあやつる謎の石・・コンロイの遺品として地球へ運ばれ、ビーバーの手を経てストレイカーのところへ。でも彼がそれと知らずに投げて、砕けたことによって威力がなくなる。フムフムなるほど。でも一つ疑問が・・石は一個?たぶんストレイカーが狂気に陥り、暴れ回っていたのはそんなに長い時間ではないだろう。その間はフォスターが指揮を取っていたのだろうが、前の二人とは違い射殺するわけにもいかず・・困っただろうな。そのフォスターは悪夢の中では何かを企んでいるような悪人ぽい雰囲気。ここがちょっと興味深い。ストレイカーにとっては片腕ともたのむ存在だが、それでもなお隔たりのようなものを感じているのか。

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フォスターは自分のような家庭の悲劇も、シャドー創設時の苦労も経験していない。彼には自分の苦しみはわかってもらえない。映画を見て苦しんでいる自分を、「映画ですよ」「子役ですよ」と鼻で笑い、あげくの果てに「いかれてる」。たぶんストレイカーはフォスターのこともうらやましく思っているのだ。彼がフォスターではなく、マイクという名前なのは、本当のフォスターはこんな軽薄なやつじゃないと思いたいからか(それとも単にマイケル・ビリントンだからマイク?)。それにしてもこのストーリー考えた人は偉いな。いつも通り始まると見せかけ、途中で遊び心いっぱいの展開。いささか悪乗りじゃないの?・・と呆れるが、そのうちしゃれにならないような苦悩シーンに転じる。シャドー本部やムーンベースのセットを見せるというのは、危険な賭けでもある。あんなに狭いの?とか、これってお芝居なのね・・とか、夢が壊れるわけでしょ。でも、あえて見せる。こういうおふざけっぽいことやってるけど、でも根底にあるのは、本当に見せたいのは一人の人間の苦悩。どんなに文明が発達しても、UFOが姿現わしても、いつの世も変わらずくり返される悲劇。今回はUFOはろくに出てこないし、途中でスカイ1が出動したけど何もなかった。はっきり言ってこのシーンは意味不明。でもちょっぴりでもルー・ウォーターマン大尉(ゲイリー・メイヤーズ)を見ることができるのはうれしい。彼ってすごいハンサム!ビリントンもハンサムだけどどっちかと言うと野性的。それに対しメイヤーズは優雅で端正で気品がある。・・話を戻して動きが少なくて、幻覚がどうのという小手先チックなストーリー。メカファンには物足りないだろうが私は大満足。ラスト、事件は解決したけどストレイカーの苦悩はそのまんま。死ぬまで癒えることはないのさッ!ニーヴは「モスキート爆撃隊」に出ている。金髪が美しいが、あまり美人ではなく平凡な感じ。でもいかにもストレイカーが好きになりそうなタイプ。きっとお互い一目ぼれで・・この人となら絶対幸せになれると確信したんだろうなあ。他にミントという役名でスティーヴン・バーコフが出ている。ええ、あの「ツーリスト」のおっかないじいさんですよ。こんな若い時もあったのねえ・・。