ニーベルングの指環
どうも神話の類は苦手である。あまり興味がわかない。この映画は・・北欧神話か。テレビムービーだが劇場用超大作と言ってもよいくらいちゃんと作ってある。日本とは大違いだ。3時間もあるが別に退屈はしなかった(ところどころもう先へ進んだら?と思うところはあるが)。景色は美しく雄大で、澄んだ空気を感じる。CGを多用しているがさほど安っぽい感じはしない。画面は暗く、最初のうちは何が何やら・・誰が誰やら。記憶を失い、鍛冶屋(マックス・フォン・シドー)の息子として育ったエリック(ベンノ・フユルマン)。空から落ちてきたかたまりで剣を作るが、その時出会って結ばれたのがアイスランドの女王ブリュンヒルデ(クリスタナ・ローケン)。二人はいったん別れるが、必ず再会し、結婚するだろう。自国へ戻ったブリュンヒルデは、求婚を受け付けず、エリックが訪れるのを待ち続ける。求婚者をはねつけるところが出てきてもおかしくないが、そういうのはなかったな。一方エリックは剣を完成させる。その剣でグンター王(サミュエル・ウェスト)に代わってドラゴンを退治。ドラゴンの血を浴びて不死身になり、黄金も手に入れる。その際元々の黄金の持ち主である幽霊みたいな連中から、我々に返さないと呪いがかかるぞと警告されるが、エリックは無視する。グンター王に宝を渡すが、一番の宝である指環は自分のものとする。グンター王は喜び、王の妹グリームヒルド(アリシア・ウィット)はエリックに恋し、王の弟ギーゼンへール王子(ロバート・パティンソン)はエリックにあこがれる。まあエリックとドラゴンの戦いが前半の見せ場か。私自身はエリックが剣を作るシーンが印象に残った。1500年くらい前という設定らしいが、その頃はこういう作り方をしていたのね。一ヶ月くらい前出雲に旅行して「たたら製鉄」について学んできたばかりなもんで・・見ながら比較していた。さて、エリックは欲はなく、善人なのだが、若いだけに呪いだの何だのは信じない。そのせいで見ている者は、将来の悲劇が今から気になる。ドラゴンはトカゲを大うつしにしたような感じでちょっと拍子抜けするが、そのうち「らしく」なる。洞窟の中にいるのでそんなに巨大ってわけでもないし、吐く火も控えめ。グンター王がドラゴンと戦うシーンは出てこない。簡単にやられたところをみると、この軍隊あまり強くないようで・・。グンター君戦上手じゃないらしい。
ニーベルングの指環2
さて、大量の黄金は災いをも引き寄せる。黄金を狙って攻めてくる者も。ただ、その連中と戦ったおかげでエリックは記憶を取り戻す。自分はクサンテン王の息子ジークフリートだ!グリームヒルドは、悪臣ハーゲン(ジュリアン・サンズ)にそそのかされ、媚薬を使ってジークフリートの心をつかむ。彼は薬のせいでブリュンヒルデのことを忘れ、グリームヒルドを愛し始める。今ではジークフリートは家柄がいいとわかったし、領土も取り戻したから、グリームヒルドとの結婚に支障はない。ただ、王であるグンターが未婚なので、先に結婚するわけにはいかない。王の意中の人はブリュンヒルデ。彼女は自分を負かした者でなければ結婚しないと宣言している(彼女を負かすことができるのはジークフリートだけなのだ)ので、グンターはジークフリートに身代わりを頼む。ジークフリートは、ハーゲンの父親から奪った「隠れ頭巾」を持っている。これをかぶって呪文を唱えれば、なりたい人に変身できる。船を連ねてアイスランドへやってきた一行。待ちこがれていたブリュンヒルデは喜ぶが、ジークフリートは彼女への愛を忘れていた。ブリちゃん大ショック!!中盤の見せ場はグンターとブリュンヒルデの戦いか。何で外でやるのかな~寒いのに。滝から落ちそうになったブリュンヒルデは、グンター(に化けたジークフリート)に救われる。彼女の負けだ。領地に戻って二組の結婚式が行なわれる。しかしブリュンヒルデは、夜になると簡単にグンターをしばり上げ、そこらにころがして自分だけさっさと寝てしまう。困ったグンターはまたしてもジークフリートに代役を頼む。ブリュンヒルデが強いのは、神々の力が宿ったベルトのおかげ(チャンピオン・ベルトかよ!)。それさえ奪えば力はなくなる。このまま拒まれ続けたのでは王の面目丸つぶれ。跡継ぎもできず、王としては困る。そこでまたジークフリートがグンターに化け、ベルトを奪う。こそこそ闇にまぎれて何やらやっている(二人の)グンターは、ギーゼンへールとその恋人レナの目にとまってしまう。また、ベルトを手に戻ってきたジークフリートは、グリームヒルドに見つかってしまう。「どこへ行っていたのよ。何を持っているのよ」・・ここらへんはやや喜劇ムードだが、そのうち一挙に悲劇に突入する。予想していたこととは言え、見ていてあまり気持ちのいいものじゃない。
ニーべルングの指環3
神話だったら都合よく生き返っても不思議じゃないけど、この映画では死んだまま。そこがちょっと意外で。ジークフリートが弱点(ドラゴンの血を浴びていない部分)を突かれてあっけなく死んでしまうせいで、クライマックスが弱い。大規模な戦いではなく、人間の弱さ、愚かさを描くだけで終わりというのは物足りない。さて・・これを見ようと思ったのは、サミュエル・ウェストが出ているから。彼は出演作が少ないし、出ていても出番が少なかったりするので、この作品もあまり期待していなかった。でも思ったより出番多くて、それはすごくうれしかった。2004年頃の作品だが、ちょっと顔が丸くなったかな。ほっぺのあたりがぷっくりしてきて・・このままだとたるんだ感じでまずいんですけど。若い頃はシワもたるみもなくきりっとしていたのに・・。元々はどういう髪質なのかしら。今まで見たのはまっすぐで真ん中分けが多かった。今回のようなチリチリ頭だと、パーマ代ケチってるオバサンに見える。そう、今回のウェストはなぜかオバサンに見える・・これはまずいぞ。グンター王は心のやさしい、いい人。平和な時代ならそれでいいけど、戦いの多い時代だとちょっと困る。勇気はあるし正義感もあるけど強い王ってわけじゃない。ハーゲンが支えているから何とかなってる。ハーゲンは悪役だが、どうもはっきりしない。普通こういうのだと王の地位を狙うとか、王の妹に言い寄るとか、宝奪おうとするとか、何かしら企む。これらすべてをものにする絶好のチャンスが王達のアイスランド行き。ジークフリートもギーゼンへールもいなくて国はからっぽ。障害ゼロ。それなのにハーゲンもアイスランドへついて来るのだ・・なぜ?この映画が物足りないのは悪の存在がはっきりしないせい。途中までのハーゲンの行動は、王のため、国のためである。将来自分が王位につきたいのなら、宝を一人じめしたいのなら、あらかじめ手を打っておくべきだ。何もしなくて終盤になってやっとジークフリートを倒す。王も倒し、金をちらつかせ、国を乗っ取ろうとする。しかしその行為もちょぼちょぼしているので、すぐブリュンヒルデにやられてしまう。圧倒的な悪が存在してこそ、善の側も引き立つのに・・。フユルマンは変わった感じの人だ。どこかで見たような人だが、見ている間は思い出せない。後で調べたら「悪霊喰」の罪食いだった。
ニーべルングの指環4
うつる度にヘンリー・シルバに似ているなあ・・と。シルバをうんとハンサムにするとフユルマンになる。青く澄んだ美しい瞳が印象的・・でも鼻がシルバなのだ。一昔前こういう顔立ちでこういう髪型(真ん中分けまっすぐヘア)ならインディアン役。昔の西部劇によく出てきた青い目のインディアン。フユルマンは背はあまり高くないが、均整の取れたいい体をしている。「悪霊喰」からは想像もつかない。さすが、どんな映画に出ても大丈夫なように体を作っているのだわ。ターザン役もできそう。この映画・・顔ぶれ見ると大スターっていなくて。大スター持ってくると製作費に食い込むから、地味な面々集めて節約。ハーゲン役のサンズは、「アラクノフォビア」や「メダリオン」に出ていた。鼻やあごがやたらとがっていて目立つけど、今回は黒ずくめで渋くてカッコいい。悪役なのに全然憎たらしくない。別にハーゲンがいなくたってこの悲劇は起こった。ジークフリートもグンター王も単純。根が善人だからドラゴン倒して宝が手に入っても争ったりしない。ジークフリートは宝を王に献上するし、彼とグリームヒルドの結婚が決まると今度は彼のものになるような・・(はっきりしないけど)。宝があるのはうれしいけど、欲の皮は突っぱっていない(それでいて元々の持ち主である幽霊連中・・ニーベルング族?・・に返す気もないけど)。それにくらべるとグリームヒルドは興味しんしん。ジークフリートと結婚すればこの宝は自分のものになる。彼女には欲がある。彼女がつまずきの石となるのは目に見えている。最初彼女はかなわぬ恋に苦しむ。見ている者は同情する。ブリュンヒルデを思い続けるジークフリートを自分に振り向かせるため、ハーゲンの誘いに乗る。そんなハーゲンは悪人に見えるか。いや、見えない。本当に悪人ならグリームヒルドを自分にほれさせる。その方が王の義弟になれるから都合いいはず。さて、表向きは二組のカップルが誕生し、めでたい限り。しかしこんなごまかしだらけの結婚がうまくいくはずがない。グンターは楽な方法があるとそっちへ流れ、全然後ろめたさ(ブリュンヒルデをだましているという)を感じていない。ジークフリートもまた、グンターに頼まれると断れない。グンターはなぜ正々堂々とブリュンヒルデと戦わないのか。最低限剣の練習するくらいの努力しろッ!
ニーベルングの指環5
ベルトの件でグリームヒルドに問いつめられたジークフリート・・どうしてぴしっと言えないのか。グンターとの男の約束、例え妻でも口外はできないのだよグリームちゃん。でも・・しゃべっちゃう。そうなると今度はつまらない意地の張り合いからグリームヒルドがブリュンヒルデに秘密をばらすのだ。しかも大勢が聞いている前で。うわー何て浅はかな女なのだろう。ブリュンヒルデに恥をかかせ、得意になるグリームヒルド。しかしこれって大変なことなのだ。ブリュンヒルデだけでなく、グンター王も面目を失うことになるのだ。そんなこともわからないのか。もちろん後になって後悔して、ジークフリートも許してくれるが、事態は好転しない。物事が悪い方へ悪い方へところがっていく。ジークフリートをなき者にしようという動き。狩りに出かけ、スキを突いて殺してしまおう。一方自分の行動を反省したグリームヒルドは、ブリュンヒルデにあやまりに行く。そこで彼女とジークフリートとの関係を知り、実は媚薬を・・と告白する。ハーゲンにそそのかされて・・って人のせいにするな!!真相を知り喜ぶブリュンヒルデ。しかし時すでに遅くジークフリートは・・。これだって自分の秘密・・体に一ヶ所ドラゴンの血を浴びていないところがある・・を王や王子に打ちあけるのをハーゲンが聞いていたのだ。だからぁ・・みんなよくしゃべるよなあ。誰にも言うな、秘密だぞと言いつつぺちゃくちゃぺちゃくちゃ。王子役パティンソンは今や「トワイライト」シリーズで人気沸騰だが、ここでは若くて未熟なガキ。自分ではもう一人前のつもりだがなかみが伴わない。ジークフリートになつくところは子犬みたいでかわいいが、たいていは仲間はずれ。おまえは残ってろ・・と置いていかれる。剣術とか学問に特にすぐれているわけでもない。それでいてレナとくっつくなど、そっちの方は早いようで・・。まあとにかくフユルマン、サンズ、ウェスト、パティンソンというタイプの違う四美形が画面に揃っているところなんてアナタ・・(じゅる)。よりどりみどり、早い者勝ち、売り切れ御免、豪華絢爛、四天王。でも私はやっぱりウェストだわ。パーマの取れかけたオバサンに見えたとしてもやはり彼が一番。お安くしときますぜ、ただですぜ・・なんて言われてもパティンソンなんかいらない。前にも書いたけどウェストの出演は希少価値があるの。
ニーベルングの指環6
あっちにもこっちにも出ている、はまり役はこれだ・・みたいなところのない人。そりゃある程度出演作はあるけど、イギリスのテレビ番組じゃ見る機会なし。あ、でも最近わかったのよ。彼スーシェポアロの「オリエント急行殺人事件」に出たらしいの。私は何となく「オリエント」は一番最後だろうって思っていたの。スーシェポアロの集大成。一番最後だからうんと豪華ににぎやかにはでやかに・・ってね。そしたらいつの間にか作られていて。いつこっちで放映してくれるかそれが問題だけど。だってアダム・クローズデルの出ている「鳩の中の猫」もまだ。早く見たい~。ウェストは医者役か。ヒゲなんか生やしていたらどうしよう、せっかくの美しい顔が少しでも見えなくなるのはいやだぁ~。太ってたらどうしよう、たるんでいたらどうしよう。他にわかったことは、彼「ナルニア国ものがたり」にも出ているの。「ナルニア」ったって最近やり始めたやつじゃなくて、88年頃のテレビシリーズ。彼何とカスピアン役やってるのよまあどうしましょう。と言っても私内容全然知らないんですけどさ。退屈だとか眠くなるとか子役がかわいくないとか評判は悪いみたいだけど、いつか見ますわウェスト目当てで。80年代ならウェストも20代・・きっと美しいわ~ん。話を戻して中盤の見どころは前にも書いたようにグンターとブリュンヒルデの一騎打ち。フユルマンのアクションと肉体美に感心したように、ここではウェストのアクションに感心するわけ。肉体美は・・ウェストは見せません。さすがは英国俳優・・剣を使ってのアクションちゃんとできるんです。ウェストとアクションなんて一見関係なさそうだけど、それにしたってちゃんとやってるじゃありませんかうくく。ちょっとほんのりかすかにうっすらたるみかけたほっぺでさえ、戦いの最中はきりり。目つきもきりり・・うくくカッコいい!これらよりどりみどりの美形達の相手を一手に引き受けているのがブリュンヒルデのローケン。この映画自体彼女が主役!みたいな扱い。そりゃフユルマンじゃ誰もレンタルしませんてば。フユルマンは途中までは地味ななりにも印象強烈で、映画をぐいぐい引っ張っていくけど、そのうち輝きが失せてしまう。グンターのパシリだしグリームヒルドの言いなり。ブリュンヒルデの出番はさほど多くない。だが印象は強烈で、それは最後まで変わらない。
ニーベルングの指環7
彼女はまっすぐである。こうと思い定めると最後まで貫き通す。きっと彼女には媚薬も効かないだろう。彼女はまわりにだまされ、グンターと結婚するはめになる。しかし彼女は愚かだという感じはしない。他のグンター、ジークフリート、グリームヒルド、ハーゲンは愚かだが、彼女は純粋なのだ。彼女はいつでも戦う用意がある。結婚式の祝宴で、グリームヒルドの余計な口出しのせいでジークフリートと戦うことになった時もすぐに準備オッケー真剣勝負。グリームヒルドを黙らせることもたしなめることもできずにいるグンター、ジークフリートの情けなさときたら。ローケンはウィットのような細かい演技はできない。大ざっぱである。毛皮を着た肉食系。野菜なんて食べたことなさそう。アクションで見栄を切るところが数ヶ所あるが、さまになっていない。スキだらけじゃん・・と思う。でも動いている時はわりといい。代役も使っているだろうが、がんばってる方だ。それにしてもブリュンヒルデがこっちへ出てきて領国アイスランドはどうなっているのかな。いつもそばに女占い師がいるけどほとんど何の役にも立っていない(クビにしろッ!)。グリームヒルドの告白によりジークフリートは心変わりしたのではなかった・・と喜ぶブリュンヒルデ。直後いとしい人の死を感じて吠える。ガオーウォー・・いや、大きな口だなあ。前にも書いたけどあたしゃ生き返るって思ってたんです。「紀元前1万年」でも「ゴッド・アーミー3」でも「ドラキュリア3」でも「ミラクル7号」でもぽこぽこ生き返っているじゃん。ブリュンヒルデがジークフリートのピンチに間に合う、間に合わなくても何らかの力で生き返るって確信していたのよ。でも・・ぜ~んぜん。死んだままでしたとさ、ちぇッつまんねーの!でもってジークフリートの遺体の前で悲しみにくれるグリームヒルド。でも私は捜していたんですのグンターの遺体は?どこ?どこにあるの!?人々にとっては王の遺体の方が大事でしょ?でも出てこなくて・・。ブリュンヒルデの姿も見えない。彼女はアイスランドへ帰るのか・・あら?火の中から突然姿を現わしたわ。CGバレバレでっせ。でも彼女らしい壮烈な最後。これでますますジークフリートかすんじゃいます。一瞬意味不明のシーンがあって、あのマントかぶってたの誰?最後に題名にもなってる指環だけど、物語を左右することもなく別に何ということもありませんでした。