ナイン・ライブス

ナイン・ライブス

これまたいかにも・・な映画。「リーサル」は800万ドル、こちらはさらに低予算で400万ドル。いかにも仕事なさそうな若手出してくる。仕事なくても平気なのはパリス・ヒルトンくらいか。舞台は全部屋敷の中。人里離れた屋敷に男女九人が集まってぐるぐるぐるぐるグーグル検索。その間に一人また一人と殺され・・。出演者も若いが監督も若い。自分で脚本も書いたし、作れてうれしい!ってのがインタビュー画面からも伝わってくる。私がこれを見たのはレックス・シャープネル目当て。スコットランドの大きな屋敷の若き当主ティムの21歳の誕生パーティに呼ばれた昔の学校友達。哲学を勉強しているローラ。演じているアメリア・ワーナーは黒い髪に黒い瞳。小柄だが美しくかわいくひときわ目を引く。きっと彼女は重要な役だろう。九人もいれば中には埋もれてしまって印象に残らない者もいる。アメリアのような個性的な美貌の持ち主は、きっと仕事のチャンスもつかむだろう。どことなく見覚えがあるのは「リトル・イタリーの恋」に出ていたからだ。私は見てないけど予告はどこかの館で見た。九人のうち、ピートを除く八人は金持ちの子弟。これが重要なポイントなのだが、最初の方ではまだわからない。ヒルトン扮するジョーが金持ちだというのはよくわかる。レックスは何とジョーの恋人トム役である。キスまでしちゃう!いや別にいいんですけどさ。レックスがジョンを演じたからってトムみたいな役やっちゃいや~なんて思わない。ドミニク・コレンソ君だったら思うけど・・って何のこっちゃ!まあとにかくレックスはうっすらヒゲを生やして、目のあたりはなかなか鋭くてステキなんだけど(二代目ストレイカー司令官十分いけまっせ!)、すきっ歯なのでどことなく間が抜けて見えるのが残念。トムとジョーはもう3年も続いていて、まわりのみんなは不思議がってる。ジョーは金のかかる女だし(高価なプレゼント大好き)、頭ヨワイし。車の試験何度も落っこちてるらしくみんなにからかわれるが、「標識が何の役に立つの」とか「運転手がいるからいいわ」みたいなとんちんかんな負け惜しみ言うわけ。ノーテンキでノータリンなんだけど何となく憎めない。彼女は真っ先に犠牲になるんだけど、まあそれもムリないのよ。

ナイン・ライブス2

すごくやせていて動作がゆっくりでちゃらちゃらした感じ。かかとの高いサンダルしかはかないから機敏に走り回る、逃げ回るなんていかにもだめそう。殺されるシーンそのものは出てこない。この映画は召使も含めると10人以上殺されるんだけど、血の量は少なめ。名作は血は少ししか見せない・・と監督は言っていて、彼なりにこだわりがあるようで・・。アメリアがインタビューで言っていたけど血のりにもいろいろあって、「かさぶた用をちょうだい」なんていう言葉が現場では飛びかっていたそうだ。そう、DVDには特典がついていて、これがなかなか楽しいのだ。屋敷のりっぱさには驚く。ぺネロープの屋敷もこんな感じなのだろうなあ。部屋の中とか階段にはびっしり絵が飾ってあって、廊下にもいろんなものが置いてある。廊下と言っても幅が一つの部屋くらいあるし、我々のような幅90センチ廊下とは違う・・と言うか、私の住んでるとこなんて廊下すらないんだけどさ。まあ、その広さ豪華さには圧倒される。当然迷子になるのもいて、「さっきも通ったろ」なんて言われるのがおかしい。建物の外観もすばらしいが、雪に埋もれつつあるところはいかにもCGっぽい。メイキングを見ると実際には雪なんかない。後からつけ足したから不自然に見えるのだ。さて・・久しぶりに再会すれば中には楽しいハプニングを期待する者もいて・・。ルーシーは前ピートとつき合っていたらしい。今のピートはローラと話がはずんでいるようだが、それでもルーシーは期待してしまう。訳知り顔のジョーも盛んにけしかける。他には医者志望なのがアンディで、後にルーシーが重傷を負うと懸命に看護する。メガネをかけているのがダミアン、残りがエマで、これで九人。エマとルーシーは区別つきにくい。個性に乏しい。最初のうちはそうおもしろいわけではない。まだ誰が誰だかよくわからないし、酒飲んでぐだぐだやってるだけだし。そのうち見る側で興味の持てそうな、好意の持てそうなキャラ捜し始める。この人はすぐやられそうだとか、この人には生き残って欲しいなあとか。生き残って欲しいと思わせることができたら演技成功なんじゃないの?こんなのどうでもいい早く消えろなんて思われたら最悪。私の場合はピートとローラに注目していた。

ナイン・ライブス3

ローラのキャラはかなり特異。どんどん犠牲者が増え、部屋の中には重傷を負ったルーシーと看護するアンディと自分の三人がいる。カギをかけて閉じこもっていて、取りあえずは安全なの。偵察に出ていたピートとダミアンが戻ってきて、部屋に入れてくれって頼むけどローラは断る。もちろんこの時点ではピートもダミアンも正常なんだけど、ドア越しに顔が見えるわけじゃないから、ローラには二人の様子はわからないわけ。だから二人をしめ出す。まるで「エイリアン」のリプリーみたい。用心深くて誰も信用しないのだ(しめ出すくらいなら最初から二人を出さなきゃいいのに)。ピートを演じているのはデヴィッド・ニコル。出演作は「バンド・オブ・ブラザース」くらいで、あんまり売れてないみたい。「バンド」はWOWOWでやったと思うけど私は見てない。IMDb見てもプロフィル何にも出てない。髪が短くヒゲも生えてなく着ているものは丸首のシャツ。実は彼だけ遅れて到着するの。自分で車運転して来る。どうも他の連中は飛行機で来たんじゃないか。そこからティムの差し向けた運転手つきのデラックスな車に分乗して屋敷まで来る。着ているものだって明らかに上等。ピートみたいに他とは違った現われ方する人物は、何か重要な役割果たすんじゃないか・・と思えて、彼に注目するんだけど、最初のうちは何てこともないの。でもそのうち少しわかってくる。彼だけ金持ちじゃないの。農場の息子で、農場での辛い仕事がいやだから勉強して他の仕事につこうとしているわけ。後でローラに「戦うスコットランド人」とか何とか言われていて、彼がスコットランド人なのも明らかになる。反乱を起こす方・・つまり先祖は農民だったのよ。大学へ行けたのは奨学金のおかげ。逆にティムは反乱を起こした農民達を破り、そのほうびでこの屋敷を手に入れた支配者の子孫。さて、夜も更けてほとんどの者は自分達の部屋に引き上げる。ティムとトムだけ残って飲んでる。そのうちトムは書斎の壁の後ろから古い本を見つけ出す。その本には反乱軍のマレーという男がつかまって目をえぐられ、それを食べさせられたという残酷な処刑の様子が絵つきで記されている。「私は戻ってくる」とも書かれていて、その本に取りついていたマレーの霊が抜け出してトムに取りつき、ジョーを殺す。

ナイン・ライブス4

トムがティムに殺されると今度はティムに取りつく(ああやっぱり・・レックス早くも退場)。取りつかれると目が空洞になる。それはマレーが目をえぐられたから。そうやって次々に宿主を変え・・ってエイリアンかよ!もちろん霊の仕業だなんてわからないから、最初みんな混乱する。突然気が狂って殺し始めたのか。でも信じられない。最初犯人はトムのように思える。でもトムは死んでる。じゃあティムが犯人なのか。ティムを捜せ。「何が何やら」というセリフが出てくるが、ホント彼らには何が何やら・・なのよ。見ている我々には霊の仕業ってわかってるけど。でもって前にも書いたけど屋敷の中をぐるぐるぐるぐる。一つの部屋にかたまっていれば被害は最小限ですむ。でも何だかんだと出入りするからやられる。こういう時は人里離れているってのが困る。ケータイは圏外。電話線は切られる。外は吹雪。車は雪に埋もれ・・って埋もれてないけど、車は使わないの。予算の関係だろうけどあんまり吹雪っぽく見えない。雪はまっすぐ落ちてる。見ていて気になるのはやっぱり窓やドアを背にしていること。窓を背にして・・一階だしガラスだし外からまる見え。入ってこないのが不思議なくらい(もちろん最後の方でぶち破って入ってくるけどスタントマンが)。ドアにもたれて・・そりゃドアは分厚い。でも・・何があるかわからないでしょ。斧とか打ち込まれるかもしれないし、すきまから薄い刃が差し込まれるかもしれない。話を戻して私が注目しているピートだけど、別に特別な人間じゃないの。平凡・・と言うかかなり意気地なし。ローラに叱咤されてやっと行動起こすとか、かなりとほほ。こういう映画だと貧しい出だから雑草のような強さがあるとか、いざとなるとリーダーシップ発揮とか、サバイバル技術にたけているとか、そうなるのが普通だけどそういうの全然なし。逆にぶち切れて死に急ぐってこともないけどね。このように感情移入できるキャラがいるので、盛り上がりに欠けるストーリーでもそれなりに見ていられる。それにしても生き残った人はどう説明するんだろ、あのおびただしい死体の山を・・。霊のせいだなんて警察は信じない。誰かが侵入して皆殺しにしたとか。でも何も盗まれてないから異常者の仕業とか。あるいは泊り客の間で殺し合ったとか。

ナイン・ライブス5

生き残った○○が警察に通報するのかどうか、そこまで映画はうつさないで終わる。○○が到着したのを知っている人はいない(みんな死んじゃったからね)。お客をここまで運んだ運転手達は雪が降る前に返されちゃったし、○○はここへは来なかったことに・・。指紋は残ってるけど・・。よく調べりゃ殺された順番わかる。トムにはジョーの血が、ティムにはトムの血が・・(中略)・・△△には××の血がついていて、△△は自殺しているから・・なんかこれの推理・検証でもう一本映画ができそう「裏ナイン・ライブス」!ところで見ていてここはおかしいな・・ってとこがいくつかある。トムが見つけた本から霊が抜け出し・・となってるけど、本を見つける前にマレーはすでにそこらをうろうろしている。トムは鏡を見た時自分の目が空洞になっているのを見てびっくりするし。それからダミアンが取りつかれた時、彼はメガネがなければ自分の手も見えないほどで、メガネが壊れた今行動は制限されるはずだ・・なんてローラが推理していて、目が空洞なら近眼もへったくれもないだろうが・・なんて突っ込み入れていた。取りつかれた連中目が空洞でもさっさと歩いていたし、空洞にする意味ないと思うが(目が空洞・・これがホントの洞(ホラ)ー映画・・なんちゃって)。さて、結局この映画のキモは農民の金持ちへの復讐ってことなんだけど(それとももっと大きくスコットランドのイングランドへの復讐なのかも)、どうせなら八人に共通の理由くっつければよかったのに。つまり八人の領主が手を組んで反乱軍を押さえ込み、富や権力をほしいままにした、八人はその子孫なのだ・・とかさ。単に金持ちだからという理由でティム以外の全然無関係な者まで殺しまくるのは見境がなさすぎる。第一ピートがスコットランド人で農民の出だって何でわかるのさ。会話を立ち聞きしていたのか。とまああれこれ欠点だらけのアホ映画だけど、私やっぱりこういうの好きです。大きな館、すっきりした容貌の若い男優達・・ムヒヒ。特に他の作品でのニコルぜひ見てみたい!レックス、ごめんねあなたじゃなくて。他ならぬジョンを演じたあなたを軽視するつもりはないんだけど、あなたやっぱり吸引力が乏しいんですわ(地味すぎて)。