二重誘拐
オランダで実際に起きた誘拐事件ヒントにしているらしい。誘拐される会社社長ウェインがロバート・レッドフォード、その妻アイリーンがヘレン・ミレン、息子がアレッサンドロ・ニヴォラ、犯人アーノルドがウィレム・デフォー、FBIがマット・クレイヴン。それで終わり。エンドロールで流れる音楽がよかったな。それで終わり。ああんもう他に何を書けってのよ。地味です。どんでん返しなし。天が味方してくれることもなくウェインは殺されちゃう。身代金は取られ損。犯人は結局はつかまる。身代金が入ったって何かできるわけじゃない。妻と二人でどこか別の土地へ行き、贅沢三昧・・なんて、頭で思うだけで実行できる性格じゃない。やけっぱちになれない性格だから入念な計画立て、冷静に実行し、犯行後も尻尾をつかまれなかった。でもお金を使い始めて目をつけられる。身代金はダイヤと現金。ダイヤ用意するのに三日間の猶予与えるなんて・・、その間にお札の番号控えられちゃう。100ドル札だからスーパーで買い物する度に両替しなくちゃならない。目立つ。ダイヤだって換金する裏ルート知ってるとも思えん。要するにこの男何かやってみたかっただけ。失敗しても別にぃ。成功しても別にぃ。逮捕されても別にぃ。・・だったら最初から事件なんか起こすな!ウェインの家族は別にぃ・・とはいかない。幸せな生活が足元から崩れる。夫が愛人とまだ続いていたことがわかる。それでもウェインが無事に戻ってくれればいいが、行方不明のまま。レッドフォードは見ているこっちも辛いですよ。年を取るってこういうことなのね。他の俳優ならもちっと何とかするでしょ若作り。あまり正面から老いを見せられるといやでも若い頃思い出しちゃって、見ている間頭ん中で比較の連続。あんまり若い頃ハンサムすぎるのも年取ってからマイナスなのね。逆にミレンは老いが効果出してる。朝起きた時のスッピンの顔、シワシワカサカサ。胸は垂れてるし腰まわりには肉がついてる。要するにオバサン体型。思慮深く、夫が誘拐されても取り乱したりしない。この映画は実力派俳優三人の演技合戦だが、一番印象に残るのはミレンである。ニヴォラは今回初めて気がついたけどルーファス・シーウェルに似ている。丸い顔、眉毛、目、口・・ホントよく似ている。違いは・・眼力のなさ。クレイヴンは若いんだか老けてるんだかよくわからない人だ。役も有能なんだか無能なんだか。
二重誘拐2
最後には犯人つかまえるけど、自分からつかまりに来たようでもあるし・・。ウェインと犯人、家族とFBIの描写が交互にうつされるが、そのうちに時間の経過が両者では違っていることに気づく。ウェイン達の方は誘拐当日(二人ともヒゲが全然伸びていない)だが、アイリーン達の方は何日もたっている。ああやって犯人からの指示が届くまでに日数たってるということは・・。犯人が素顔を見せ、手袋もしていないということは・・。先が予測できちゃう。・・で、その通りで何とも後味が悪い。ラストはアイリーンがウェインの手紙受け取る。愛人はいたものの夫が愛していたのはやはり私だけ・・とわかって、アイリーンは微笑むわけ。ほんの小さな幸せ感で、この先彼女は生きていける。夫の安否を気遣うところ、愛人と続いていたことに対するショックと怒り、進まない捜査へのいら立ちとそのまぎらわし方(孫の誕生日をきちんと祝う)、夫の死を確信した時の絶望感、取調べを受ける犯人を見つめるまなざし、そして手紙や思い出によって浄化された夫への思い・・それらをミレンはすばらしい演技で見せてくれる。他の二人もがんばってはいるものの、この映画はミレンの一人舞台。部分的にはいくつか気になるところがあった。最初の方の引き出しの中にあった4200万ドルって何?小切手?債券?ウェインはコンサルタント会社を設立したものの失敗したとかで、それから二年しかたっていないのに大金持ちなわけ?あたしゃてっきりあの4200万ドルは後ろ暗いお金かと・・。あるいは豪勢な暮らししているけど実は火の車で、アーノルドの当てがはずれるのかと。いろいろ勘ぐったけどそういうの全然なし。とにかく大したこと起こらずに終わるから、批評読むとたいていの人はけなしてますな。二重誘拐なんて意味深な題名だし、名優出ているからひねったサスペンス期待する。それが・・誘拐された殺されたお金取られたつかまった・・それだけなんだもん、お客怒るに決まってる。先に書いたようにミレンの演技だけですよ見どころは。それにしてもこういう役はレッドフォードだからやるんだろうな。ハリソン・フォードだったら犯人倒して生還する。アル・パチーノだったら死ぬ前に延々と演説する。ブルース・ウィリスだったら助かるにしろ殺されるにしろ号泣シーンがつく。レッドフォードだから撃たれてあっけなく死んじゃう。