ニュー・ワールド
最終日になってやっと見に行った。お客は20人くらいか。とにかくガラガラ。まあヒットしないだろうとは思っていたけどね。テレンス・マリックの評判はいろいろ聞くけど見るのは初めて。伝説的監督の七年ぶりの新作・・というだけではお客は来ないんだよなー。私が見に行ったのはコリン・ファレルが出ているから。最終日までぐずぐずしていたのは内容のせい。悲恋ものはどうも見る気がしない。アニメの「ポカホンタス」ももちろん見ていない。監督に関してはいろいろパンフに書かれているけど、本人の肉声ってほとんどなくて、まわりの人の証言ばっか。まあ確かにていねいに作られていて、誠実さは感じる。どっちが善でどっちが悪とかそういう色分けはしていない。前からいた者と後から来た者。そこには当然争いが起き、片方は追いやられる。生命誕生以来くり返し行なわれてきたことで、何も17世紀のアメリカに限ったことではない。美しい景色、鳥や虫の声が心地よい。その前日「ブラッドレイン」を見て大音量に悩まされたから、少しは癒されるかも・・という期待もあった。でも・・最初の船のところとかやっぱりうるさかったな。あーこれじゃ癒されるのムリかも・・ってガックリ。まあところどころ癒されたけど、全体的には期待したほどじゃなかった。ストーリーも、もたもたとまではいかないけどかったるい。見せられるのはジョン・スミスとポカホンタスの出会い・別れ・再会・別れ・再会・別れ・・このくり返し。見ているのにはかなり忍耐力必要。ジョン・ロルフが登場してやっと私好みのストーリーになった。スミスとポカホンタスは運命的な出会いをし、結ばれたものの、一生添い遂げるという運命ではなかった。スミスは「時期を逃した」と言うけど、彼は元々ひとところにじっとしていられない性格。映画を見ていても彼のことはよくわからない。罪を犯して処刑されそうになったかと思うと許されるし、つかまったり逆さ吊りにされたり国王から命を受けたり・・とにかく浮き沈みが激しい。性格にしても冒険家らしい豪快さとかなくて、うじうじしている。でもこういう男だからこそ生き残るのかも・・と、コリンの泣きそうな顔見て納得してしまうんだけどさ。スミス役をコリンにしたのは正解だったと思うけど、映画としては内へ内へと向かってひどく陰性になってしまった。
ニュー・ワールド2
ポカホンタス役のクオリアンカ・キルヒャーは、15かそこらでこの難役を演じた。感心したがああいう容貌なので映画はどうしても地味になってしまう。他の出演者はクリストファー・プラマー。高齢だが出てくれているだけでうれしい。ジョン・サベージは時々見かける。青春映画の主人公から25年くらいたって渋い脇役に変身。がんばってください。ロルフ役はクリスチャン・ベール。前にも書いたけどジャレッド・レト目当てで「アメリカン・サイコ」を見て、ウゲェ・・と思ったのよ。何ておぞましい映画!だから「バットマン ビギンズ」も見てないの。でも今回の彼を見て少し印象回復した。ロルフは最初から安定した生活望んでいたし、妻と子供をなくしていたから人間的に大人。人の悲しみ・喪失感がわかる。決して無理せず時間をかけてポカホンタスと向き合う。ポカホンタスもすでに自分の部族とのしがらみもなくなっていたし、ロルフと一緒になるのは容易だった。おだやかで誠実で深い愛情でつつんでくれるロルフ。こんなに幸せなのに、なぜ彼を愛せないのかしらと不思議に思うポカホンタス。数年後、死んだと聞かされていたスミスに再会した彼女は、昔と違う自分に気づく。スミスに会ったことによって、自分がロルフを愛していることに気づくのだ。辛抱強いロルフがやっとポカホンタスの愛を勝ち取るシーンが一番感動的だ。しかし幸せもつかの間、ポカホンタスは病死する。・・だからこういうの見るのいやなのよ、これじゃロルフがかわいそすぎるー!はーでもクリスチャン・ベールホントによかったですぅ。殺人鬼じゃなくてこういう役どんどんやってください!コリンはしめって重い感じ。ベールは乾いてムダなものがない感じ。どちらもそれぞれよかったですぅ。イギリス移民とネイティヴ・アメリカンの描き方はどちらに偏るということもなく、中立を守っているのには作り手の誠実さを感じた。変に美化したりおとしめたりしていない。さてポカホンタスの父親の名前がポウハタン。どうもどっかで聞いたような覚えが・・と思ったら船の名前でそういうのがあった。幕末ペリーが二度目に日本へ来航した時の軍船のうちの一隻がポウハタン号なのでしたとさ。ペリー達にとっても日本はニュー・ワールドだったのかな。私は「ニュー・ワールド」と聞くと「フランケンシュタインの花嫁」のプレトリアスのセリフ思い出すけど。