ナイトホークス

ナイトホークス

見るのは初めて。冬のニューヨーク・・ダシルバ(シルベスター・スタローン)とマット(ビリー・ディー・ウィリアムズ)のコンビは、今日も囮捜査に励む。長髪、ヒゲ、メガネ(あるいはサングラス)、ベレー帽にコートと、今回のスタローンは(冬のせいもあるが)重装備。くどい。濃い。これで女装して囮になるのだから・・せめてヒゲは剃ると思うが。ロンドンではテロリストのウルフガー(ルトガー・ハウアー)が店を爆破。直後新聞社に声明を送る。ところが雇い主は彼のやり方が気に入らなかったようで。自信たっぷりのウルフガーは自分勝手でもある。ヨーロッパでは仕事を頼む者もなくなる。他の地域ではテロリストは間に合っているから、アメリカへ渡って自分の腕をアピールするしかない。面が割れたので整形し、税関もすんなりパス。相棒シャッカ(パーシス・カンバッタ)も冷静で冷酷。ダシルバ達は急に国際警察・・インターポールに協力しろと言われ、不満たらたら。俺達は囮捜査を九年もやってるんだ!・・だったら女装する時はヒゲを剃りましょうね。特捜班のリーダーはインターポールのハートマン警部(ナイジェル・ダヴェンポート)。彼が話をしている時も、ダシルバとマットはつっつき合ってふざける。こんなところで座って話をしているなんて時間の無駄。さっさと動き回った方がいいんじゃないか?それでもダシルバはマットに比べれば真面目な方だ。でもハートマンに離婚のことを言われた時には反発した。やめると宣言したが、思い直す。ダシルバ達から見ればウルフガーもただの犯罪者。行く先々で女を引っかけ、女の家に荷物・・武器を隠す。用がすむと殺す。フランスでは整形外科医を殺した。要するに殺人鬼、警察のやり方で捜査し、逮捕すればいい。しかしハートマンは通常のやり方ではだめだと力説する。事前に相手に関する知識を頭に叩き込んでおかなければならない。相手は人殺しであるから、こちらもためらわずに殺さなければならない。でないとこっちがやられてしまう。ダシルバにはそれができない。後でわかるが、彼はベトナムで52人も殺していた。射撃の腕は一流で、それで今回特捜班に引き抜かれたのだ。でも彼はもう人を殺すのは嫌だと思ってるし、ハートマンはいざとなれば彼にはできると思っている。ここらへんの、イギリス的なやり方・・頭に叩き込んでから行動するってのと、アメリカ的なやり方・・考える間にまず行動ってのの対比が興味深かった。

ナイトホークス2

ビルが爆破され、声明が届き、ウルフガーがニューヨークにいることは確実に。クラブで引っかけた女性はスチュワーデス。いつものように彼女の部屋にトランクを隠すが、見つけた彼女は開けてしまう。何でカギかけとかないの?何でここに置かしてねって一言断らないの?言っときゃ彼女だって開けないのに。殺せば死体が残る。死体が見つかりゃ警察が来る。部屋を調べりゃ手がかりが見つかる。ウルフガーってあんまり注意深くない。俺様がつかまるわけないとたかをくくっているようなところがある。ダシルバ達はクラブを訪ね歩き、とうとう・・性懲りもなく女引っかけているウルフガーらしき男を見つける。ホテル代の節約か?それとも単なる女好き?整形後の顔は知らないけれど、ハートマンの教育のおかげで情報頭に叩き込んである。以前の写真もくり返し見て・・そのおかげで面影があるのに気づいて。こいつに間違いないと確信して。・・ここまではいいのだが、その後がいけない。この映画公開当時評価は今いちだったような。こうやって見ているとその理由がわかる。何かが提出されても、それがその後の展開にうまく生かされていない。込み合ったクラブでテロリストを見つけたら・・向こうが一人でこちらが二人なら・・二人して並んで相手に近づくなんてありえないでしょ。テロリストと言うことは武器を所持しているに違いないということ。人を殺すことを何とも思っていないということ。相手が女と連れ立ってここを出るのはわかってる。彼は早く新しい隠れ家を確保したいと思っているはず。こんな人がうじゃうじゃいるところではなく、ひとけのない場所へ移動するのを待つ。あるいは一人は正面から行くにしても、もう一人は取り逃がさないよう背後に回るとか。一般の警官だろうがテロ担当だろうがやり方は同じだと思うが。あんなふうにいかにも見つけたぞと言わんばかりに凝視しながら近づくなんてありえない。いつもの・・囮捜査の時の癖が出ちゃったのかしら。さあ餌だぞ!気づけ、見つけろオーラ出しまくり。案の定ウルフガーはいきなり発砲。出さなくてもいい犠牲者出してますぜ。ウルフガーを追って外に出た後も、二人して追っかける。地下鉄に通じる工事現場に逃げ込んだのだから、一人は近くの工夫つかまえてもよりの警察へ通報するよう頼むとか。地下鉄の駅に人員回すよう手配するとか。何にもしてないな。こっちが二人だってことが生かされていない。

ナイトホークス3

逆にマットが負傷するともうダシルバは追うのやめてしまう。二人とも騒ぎすぎ。わめき散らしてエネルギーと時間無駄にする。さて・・たぶんウルフガーは国連の慈善パーティ狙っているのだろうということになる。ダシルバも退院したマットも警備につく。ところが厳重なはずの警備のスキを縫ってシャッカが現われ、指揮を取っていたハートマンを撃ち殺す。どうやってすり抜けた?ウルフガーと違い彼女は顔が知られているはずだが。私一瞬女装したウルフガーかと思ったのよ。そしたらハートマンが「シャッカ!」と言ったので、ああ彼女か・・と。ハートマン・・あなたともあろう人が何で防弾チョッキ着てないのよ・・と思ったけれど、テロリストは頭撃つからチョッキじゃだめなのよね。てなわけでハートマン退場。一方ウルフガーはケーブルカーを乗っ取る。シャッカも一緒。乗っていたのは国連大使とその家族。ヘリで近づくダシルバ。ウルフガーは女性に銃を突きつけている。それを見たダシルバのセリフ・・「もっと近づいてみよう」・・だからぁ・・近づいたら女性殺されるに決まってるじゃん。アンタに見せるためにやってるんだから「そうですか、じゃもっと近くで見させてもらいます」とばかりに近づくなんてありえないでしょ。わざと遠くでホバリングして、見てませんよ~と知らんぷりすれば展開も変わったかも。あッ、案の定殺されちゃった。それにしてもウルフガーもバカだね。いつどこで何をやらかすかわからないから怖いのであって、こんなふうに人前に出てきたんじゃ、人質は別として他の人はテレビの前で観客気分。こういうのの常として、政治犯釈放などの要求通し、自分もうまく逃げ延びるなんてことは難しい。たいてい失敗し、つかまるか射殺されるか。ウルフガー自身失敗するかも・・なんてシャッカに言い出して弱気。見ている我々にも、こりゃあウルフガーは最後にはアメリカ政府でもニューヨーク市でもなく、ダシルバにさえ勝てばそれでいいやというところまでバーを下げるな・・ってのが見え見え。彼を苦しめるため、別れた妻アイリーン(リンゼイ・ワグナー)を殺すくらいがせきのやま。話を戻して・・夜になって、ウルフガーがバスを用意するよう要求。運転手にはダシルバを指名。自分を邪魔したのが彼だと知ると、念入りに下調べ。さんざん使った後は始末してやる、俺様の方が上ということを思い知らせてやる。

ナイトホークス4

ダシルバはハートマンの教育を思い出し、一計を案じる。まずはウルフガーを一人にすることが先決。シャッカのスキをつき、射殺。人質は助かったものの、ウルフガーはバスごと川に沈む。マットは早々と終息宣言。どこまでおめでたいんだ?ダシルバは死体を見るまでは安心できない。ウルフガーがアイリーンのことも調べていたと知ると不安になり、電話をかけてみるが出ない。彼とアイリーンは結婚したもののうまくいかず離婚。たぶん彼は仕事に忙しすぎ、家庭をおろそかにしたのだ。アイリーンは彼の身を案じながら待つことに疲れたのだ。ダシルバはよりを戻したいようだが、会えばケンカばかり。でもテロリストに狙われているとあっては・・。仕事から帰ってきたアイリーンは、家に入るとガウンに着替えてキッチンへ。ダシルバの電話と入れ違いになったのだ。今彼はここへ駆けつける途中なのだ。今と違ってケータイもなし。そう言えば警備でやり取りする時の無線機のでかいこと!今ならイヤホンにピンマイクですむ。こっそり家に忍び込むウルフガー。やっぱり生きていたんだ。何も気づかず動き回るアイリーン。気づけよ!いや、アイリーンじゃなくてウルフガーの方。後ろ姿ばっかで顔見せないじゃん。見ている方はうすうすわかってる。あわやという時振り返ったのは・・だからぁ、女装するならヒゲ剃れって!今までためらってばかりだったダシルバも、もう躊躇しません。ウルフガーの死体のそばに座るダシルバ。ここはちょっと意外。だってたいていの映画ならアイリーンが飛びついてきて「あなた大丈夫?結婚しましょう!」ってことになる。雪をも解かす熱い抱擁。でもそうならず・・今回のスタローンはキスシーンもなし。アイリーンはどこにいるのでしょう。ダシルバ君誰も応援呼ばなかったのでしょうか。てなわけでところどころにハートマンの影響が見られるものの、全体的にはお粗末な捜査で、そこが残念。ワグナーは「地上最強の美女!バイオニック・ジェミー」で一時大人気だったから、彼女目当てで見に来た人も多かったと思うけど、驚くほど扱いが軽くて・・失望したでしょうな。ダヴェンポートをちゃんと見るのはたぶん初めてだが、圧倒的な存在感だ。スタローンもウィリアムズもヒヨッコに見えちゃう。声もすばらしい。カンバッタはインド出身の美女で、「スタートレック」で丸坊主頭を披露し、話題になった。交通事故やら病気やらの末若くして亡くなった。音楽担当はキース・エマーソン。どうりでどこか「幻魔大戦」に似ていて。