メアリーの総て

メアリーの総て

これは前々から見たいと思っていた。ゴドウィン書店・・ここはロンドンか。メアリーは16歳。母親は出産後亡くなった。自分が母を殺したようなもの。妹クレアと弟ウィリアムがいるが、後妻である義母の連れ子か。ウィリアムはだいぶ年下だが。この他にメアリーの母の連れ子ファニーがいるが、映画ではカットされている。生活は苦しい。メアリーは店番が退屈で、墓地で怪奇小説を読むのが好き。自分でも書いてみる。父も亡き母も作家だし。義母とうまくいかないメアリーはスコットランドへやられる。父の友人ウィリアムには同じ年頃のイザベルという娘がいて、仲良くなる。イザベルも母親がいない。詩人が作品を披露する読書会で、メアリーはパーシー・シェリーと出会う。コールリッジもいるが、演じているのはヒュー・オコナーらしい。全然気がつかなかった。パーシーは21歳。若い二人は引かれ合う。クレアが重病という知らせで、急いでロンドンへ戻るが、メアリーに会いたいがための仮病だった。また店番の日々が始まる。しかしパーシーが父の弟子になりたいと言ってくる。彼は金持ちなので、家計が助かる。二人は急速に接近。ところが彼には妻ハリエットと、娘アイアンシーがいることがわかり大ショック。もう五年もたってるとか。パーシーは、もう愛はさめてるとか勝手なことをぬかす。メアリーはパーシーと駆け落ちするが、クレアもついてくる。そのうちパーシーは父親に勘当され、三人は貧乏暮らしに。臨時収入があると新居に移り、召使を雇う。そのうち子供ができる。パーシーの友人ホッグに言い寄られ、拒絶するが、パーシーは好きな男と付き合えと気にしない。その代わり自分も自由に恋愛するとぬかす。娘クララが生まれ、幸福感に浸るが、病気で死んでしまい、ショックで抜け殻のようになってしまう。クレアがバイロン卿に招待されたからと、三人でジュネーブへ。しかしバイロンは招待しておらず、彼の子供を身ごもったクレアが勝手に押しかけたようだ。医者のポリドリもいて、パーシーともバイロンとも違う穏やかな性格なのがメアリーには好もしい。雨続きで退屈なので、バイロンが怪奇譚を書こうと言い出す。これが「フランケンシュタイン」が書かれるきっかけとなる。

メアリーの総て2

クレアはバイロンに恋人じゃない遊び相手と言われ、深く傷つく。メアリーは「傷ついたら負け」と励ます。パーシーはハリエットが自殺したとの知らせに動揺する。この後メアリーとパーシーは正式に結婚するはずだが、そのシーンはなし。人の不幸の上で幸せになるというのでは見る人に応援してもらえないからかな。それにしてもアイアンシーはどうなったのだろう。ロンドンへ戻ったメアリーは、猛然と書き始める。書き上がったものをパーシーに読んでもらう。彼の忠告に食ってかかる。出版社へ持っていくが、若い女というだけで断られる。やっと出版してもらえるが、匿名で、パーシーの序文つきならというのが腹立たしい。ある日ひょっこりポリドリが訪ねてくる。彼は「吸血鬼」を書いたが、バイロンの作品として出版されるという屈辱的なことに。バイロンも否定したのに。こういう、不誠実な、売るためにはウソも辞さないという出版社の話は、ブロンテ姉妹の伝記、研究書にもよく出てくる。ブロンテ姉妹も詩集を男性名義で出したし、女性が自分の名前で本を出すというのは本当に難しいことだったのだ。ラスト・・メアリーはちゃんと自分の名前が印刷された「フランケンシュタイン」が、父の書店のウインドーに飾られているのを見る。実際は、「フランケンシュタイン」の出版が1818年、名前が公表されたのは1831年。パーシーの事故死は1822年で、メアリーは25歳で未亡人に。ジュネーブへ行った時はまだ18歳くらい。何とまあ若くしていろいろな経験を積んだことか。ポリドリは25歳で自殺したのだそうで何とまあ気の毒な。彼の「吸血鬼」読んでみたいけど・・。映画は一人の女性の波乱万丈の・・という内容だけど、そのわりには平板な印象。エル・ファニングはちょうどメアリーと同じ年代で、大熱演。クレア役はベル・パウリーで、ファニングとは全然違うタイプながらこれまた大熱演。パーシー役はダグラス・ブースで、不精ヒゲなのか、ヒゲが濃すぎるのか、美形と言うにはちょっとむさくるしいのが残念。まだ20代なのに、早くも老けてきたなという感じ。大人しそうで誠実そうなベン・ハーディのポリドリがよかった。