名探偵ポアロ3

負け犬、ホロー荘の殺人、グランド・メトロポリタンの宝石盗難事件、エジプト墳墓のなぞ、死人の鏡、夢、海上の悲劇、クラブのキング、エッジウェア卿の死、なぞの盗難事件

負け犬

レンタルする前に原作読んで予習。いや、読むのは二度目だから復習か。でも見始めてしばらくは?だった。あまりにも変えてあるので別の話見てるよう。結局また読み返すこととなった。話の骨格はいちおう残ってるけどね。例によって原作ではポアロがかかわるのは事件後、映画では事件前からである。

アストウェル化学のルーベン卿が殺される。甥のチャールズが逮捕されるが、ルーベン夫人ナンシーは信じない。アストウェル化学は兵器にも利用できる強靭な合成ゴムを開発。ルーベンはドイツに売り込むつもりだった。国際情勢ではドイツに不穏な空気があるが、ルーベンは金儲けのためなら敵国に売ることも辞さない。ルーベンはものすごくいやなやつ。後でこのゴムの発明も、ネイラーという男から盗んだものとわかる。ますますいやなやつだ。弟のヴィクターはルーベンのやり方に不満を持っている。原作だとヴィクターは気性が激しいが、映画ではおだやかである。今回の犯人像は、ルーベンにいじめ抜かれていたのがついに爆発し・・ということなので、大人しいヴィクターが怪しいように見える。彼は兄に激しい怒りを感じており、食事の席でナイフをテーブルに突き立て、先が折れてしまうほどである。あら?じゃあ映画では彼が犯人?原作だと別の人がやってて、その人が犯人である。トレファシスは原作ではルーベンの秘書、映画では化学者である。ナンシーの話し相手リリーは産業スパイのように見えるが、実はネイラーの妹。ルーベンの悪事をあばこうとアストウェル家に入り込んだのだ。原作だとリリーとヴィクターが婚約するが、映画ではナンシーとヴィクターが密かに愛し合っているオヨヨ。原作にはアストウェル化学も合成ゴムもドイツもなし。ネイラーが見つけたのは金鉱、事件が起きるのは「塔の家」である。古くてちょっと変わった作りの家・・こっちの方がいいのに。

原作でのナンシーは直観を信じており、○○が犯人!と決めつける。最終的には彼女の直観通りなのだが、やっぱりね・・と勝ち誇る夫人は、ルーベン同様いやな性格である。原作ではルーベンとナンシーは愛し合っているのだが、二人ともいやなやつなので、犯人が気の毒で同情してしまう。映画の方は犯人の(追いつめられたという)印象がうすく、どうってことなく終わる。変に化学だの何だのとやらない方がよかったのでは?

ホロー荘の殺人

ポアロは友人の勧めでコテージを買う。隣りのホロー荘のアンカテル夫妻や客達とも知り合う。その客の一人ジョンが殺され、そばには妻ガーダが銃を持って立ち尽くしていた。彼女から銃を取り上げたヘンリエッタは、プールに落としてしまう。そのせいで指紋が消えてしまった。ジョンはヘンリエッタの名前を呼んで息絶えた。現場の状況ではガーダが犯人に見えるが、彼女は夫を崇拝していた。そのうち犯行に使われたのは別の銃とわかり、ガーダの疑いは晴れる。ジョンはなぜヘンリエッタの名前を呼んだのだろう。

彼女の行動にはおかしなところがある。彼女とジョンは愛人関係にあった。隣りに越してきた女優ヴェロニカは、12年前ジョンと婚約していた。エドワードはヘンリエッタに恋しているが相手にされない。ミッジはエドワードに恋している。アンカテル夫人は奇妙な性格の持ち主で、とらえどころがない。原作だとこれにデヴィッドという青年が加わるが、映画では省略されている。原作はジョンの苦悩にページが割かれている。ハンサムで有能な医師。だが彼は疲れている。要領の悪いガーダにはいらいらさせられっぱなしだ。ヘンリエッタを愛しているが、彼女は結婚を拒む。個性の強い者どうしだから、一緒になれば衝突をくり返し、傷つくだけだろう。ヴェロニカは恐ろしく自分かってな女で、ジョンを思い通りにしようとする。さすがのジョンもあいそがつきて突き放す。今までの自分を反省し、これからはガーダにやさしくしよう・・などと考える。しかし撃たれて死ぬ。新しい一歩を踏み出そうとしたとたん命を落とす・・というのはよくある。ただこの映画の場合、ジョンの心の変化をはっきり見せないまま死なせてしまっている。ガーダをもっと大切に・・と決意するところをはっきりさせれば、見る人が好意持つのに・・。また、ホロー荘へ出かける前、幼い娘がトランプ占いをしてくれて、不吉なカードが出てしまうエピソードも省略されてしまっている。このシーン、あってもよかったのに。

ミッジとエドワードが結ばれるのも映画では簡単すぎる。誠実だが覇気に欠け、ジョンと一緒だとカゲがうすくなってしまうエドワード。ヘンリエッタに求婚しては断られている。そのうちミッジの存在に気づく。美しさや才能ではヘンリエッタに劣るが、人柄はいい。婚約してしばらくは幸せいっぱいだが、そのうち二人とも自分の気持ちを偽っていることに気づく。エドワードが本当に好きなのはヘンリエッタだし、ミッジにはそれがわかっている。この先ずっとそんなエドワードと暮らしていけるのか。こんな気持ちのまま結婚してうまくいくはずがない、やめよう・・ということになる。夜、眠れないでいたミッジは、何とガス自殺しようとしていたエドワードを助ける。それでやっとエドワードも目が覚め、ヘンリエッタへの思いを断ち切る。自分が本当にミッジを愛していることに気づくのだ。今度こそ二人は幸せになれるだろう。

このちょっといい話が映画には全然ない。映画の比重はヘンリエッタにかかっている。ジョンを失ったが、今はガーダを守らなければならない。ジョンが最後に自分の名前を呼んだのは、自分しかガーダを守る者がいないからだ。ポアロとの頭脳合戦が続く。ヘンリエッタ役はミーガン・ドッズ。美人で知的だが、ちょっと線が細い。彫刻家に見えない。作品を作る時の情熱・・みたいなものを感じさせない。「ミューズ街の殺人」のジェーン役の人のようなタイプの方がよかった。アンカテル夫人役サラ・マイルズは「ライアンの娘」などで知られている。エミリー・ワトソンによく似ている。ジョン役ジョナサン・ケイクはジム・カヴィーゼルやベン・チャップリンのような顔立ち。ハンサムと言うにはクセがあり、こういうタイプは興味が持てない。私はむしろエドワード役の人の方が好み。控えめで内気でモロ草食系。ただし、エドワードのように働く必要がなく、好きなことして暮らしているお坊ちゃまなんていやだけど。他に執事役でエドワード・フォックス。何となくわざとらしくて、いかにも怪しげ。もっとさりげなく存在した方がいい。ガーダは原作だと気がきかなくてのろま。髪なんかもうまくまとまっていないような、服も似合っていないようなイメージ。でも映画では目のぱっちりしたなかなかの美人。髪型もぴっちり決まって(ぴっちりしすぎ)、何だかイメージが違う。てなわけでヘンリエッタもガーダも私から見るとイメージが違っていて・・別にそれでもいいんですけどね。あと、東屋でのジョンとヴェロニカのシーンは余計だったな。

グランド・メトロポリタンの宝石盗難事件

過労のため医者に二週間の静養を命じられたポアロは、ヘイスティングスとともに海辺のグランド・メトロポリタン・ホテルへ。町ではロシア皇帝の真珠の首飾りが売り物の新作芝居が初日を迎えていた。同じホテルに泊まっていた製作者オパルセン、主演女優マーガレットの夫妻は、ポアロに気づくと早速宣伝に利用する。ポアロはおもしろくないが、どうも昨年は出し物がみんなコケてしまい、夫妻は今度の新作に賭けているらしい。上演後のパーティの間、メイドのセレスティーンが首飾りの番をしていた。一人でいるセレスティーンを気遣って、ホテルのメイド、グレースがつき合ってくれる。ところが夫妻が帰ってくると首飾りがなくなっている。疑われたのはセレスティーン。ホテルの前でウロウロしていたアンドルーも怪しい。彼は脚本家だが、オパルセンにかってに書き直された上、金もろくに支払ってもらえなかった。借金取りに追われているし、彼がセレスティーンの共犯か。二人は恋仲だが、アンドルーには賭け事が好きという困った欠点があった。

今回はポアロが意外と執念深い・・根に持つ性格だとわかる。ちやほやされるのが好きなポアロだが、だまされたり利用されたりするのはがまんならない。首飾りはニセモノで、盗難はオパルセン夫妻が仕組んだ狂言・・ポアロの指摘で夫妻は逮捕される。これで事件は解決。いや、これらすべては犯人への罠。首飾りがニセモノと報道されれば、真犯人は心配になって確かめようとするだろう。もくろみ通り犯人が現われ・・。結局オパルセン夫妻はポアロのウソでとんだ目に会ったわけだが、ポアロは(自分をかってに宣伝に利用したのだから)当然のむくいだと思っている。もちろん二人にあやまったりしない。まあ首飾りは無事に戻ったし、芝居の宣伝にはなっただろうけどね。謎解きに関しては、運転手のソンダースがやたらうさんくさいので、何かあるな・・とわかってしまう。もう少し控えめの方がよかった。

今回の拾い物はアンドルー役サイモン・シェパード。ヴァンサン・ペレーズに似た甘いハンサムで、目の保養になる。ポアロの「マギンティ夫人は死んだ」にも出ているようだ。いつになったら見られるか知らんけど。ジュリエット・ビノシュ主演の「嵐が丘」にも出ているようで。セレスティーン役ハーマイオニー・ノリスは「魔女の館殺人事件」に出ていた。

エジプト墳墓のなぞ

これはNHKのアニメで見ていたので、話の流れはわかる。初めて見たのでは誰が誰やらわからないだろう。古代エジプト王メンハーラの墳墓が見つかる。手つかずの大発見だ。ところが墓を開いた直後、考古学者ウィラード卿が急死する。心臓発作だが、墓を侵したための呪いでは・・と、うわさする者も。ウィラード卿の夫人は、父親の事業を引き継ぐ息子ガイのことが心配で、ポアロに相談する。しかしガイはそんな迷信は信じていない。そのうちスポンサーのブライブナーが死に、結婚のためアメリカへ戻っていた、ブライブナーの甥のルパートも自殺する。再び心配になった夫人の頼みでポアロとヘイスティングスはエジプトへ。その頃にはメトロポリタン美術館から派遣されていたシュナイダーも死に、さすがのガイもとほうにくれていた。

宝の発掘なのでそっち関係が殺人の動機かな・・と思うが、実際は金。ある人物の死によって得をする人が犯人。ただ、ストレートにその人物を殺したのでは目立つので、いろいろ細工をする。死ぬ人が多ければ多いほどメンハーラ王の呪いに見える。ついでに殺された人が気の毒だ。犯人の手違いはポアロが到着したこと。それとガイが来て発掘を続けようとしたこと。犯人としては呪いを恐れて発掘をさっさと中止し、一行がロンドンに戻って欲しかったところだ。スポンサーのブライブナーが死んだのだから、ガイさえ続行を主張しなければ・・。

短編なのに発掘現場などかなり大がかりだし、宝もちゃんと見せる。そのわりには距離感・・イギリス、アメリカ、エジプト・・がうまく出ていない。もっと移動に日にちがかかり、その間に犯人のもくろみが成功してしまうのでは?現場人夫が騒ぐとか逃げ出すとか、そういうシーンがあってもよかった。原作を読んでいなくても犯人はすぐわかる。医師のエイムズは、アニメの印象があるせいか、老けすぎのような気も。彼はブライブナーの秘書ハーパーや、ルパートと同じ年代だから、もっと若い俳優の方がよかった。ポアロが起こす茶番劇はよくわからないし、事件の顛末を聞いたウィラード夫人が、夫が(殺されたのではなく)病死だと聞いてホッとして喜ぶのはいいが、他の三人の死を全く悼まないのは変である。

死人の鏡

ポアロはオークション会場で出会ったシェヴニックスという男から仕事を頼まれる。ポアロが手に入れようと思っていた鏡を競り落とした、横柄で嫌な男だが、ポアロは行ってみることにする。しかし彼は死んでいた。部屋にはカギがかかり、書置きがあり、ピストル自殺のようだった。だがポアロは納得がいかない。シェヴニックスは、建築家のジョンが金だけ取って仕事をしない、詐欺だ・・と怒っていた。ジョンは受け取った金をどこへやったのか。シェヴニックスの養女ルースは、シェヴニックスの甥ヒューゴーと結婚しなければ遺産をもらえない。しかしルースはジョンと密かに結婚式を挙げていた。一方ヒューゴーもスーザンという女性と恋仲で、しかも金に困っていた。シェヴニックスの夫人ヴァンダは、古代エジプトの女予言者サフラを信じている変わった性格の女性。他に家にはシェヴニックスの助手ミス・リンガードがいた。シェヴニックスを殺したのはこの中の誰?

映画は原作のようなはっきりしない状態はまずいと考えたのか、ポアロに依頼した理由(詐欺)をはっきりさせてある。ジョンが陥っている苦境など余計なものをくっつけている。サフラも原作には出てこない。見ていてルースとスーザンの区別がつかん。どっちがルースだっけ。顔立ちは似ていないのにごっちゃになる。ヴァンダとミス・リンガードも似ている。ヒューゴー役は何とジェレミー・ノーザムだ。これにはびっくりしたな。まだ細くてういういしい。ノーザムでなければジョンとヒューゴーの区別もつかなかっただろう。こういうの何て言うのかしら。方向音痴ならぬキャラ音痴?ラストのサフラのお告げシーンはばかばかしく、こんなのない方がよっぽどいいのに。ジョン役の人は「マギンティ夫人は死んだ」にも出ているようだ。

ポアロはファーリーという男から手紙をもらい、会いに行く。ファーリーはパイなどを作っている会社の社長で、大金持ち。彼の話によると、毎晩同じ夢・・自分がピストル自殺をするという・・を見るのだそうな。しかし自分には自殺する気なんて全くない。夢を見させて人を自殺に追い込むなんてことができるものだろうか。とりとめのない話で、ポアロには答えようがない。ファーリーの態度はごうまんで芝居がかっているし、部屋が暗くてファーリーがよく見えない。そのくせポアロにはまぶしいくらい照明が当たっているしで、何とも不快な会見であった。その後ファーリーは夢の通りに自殺するが、ポアロには引っかかるところがあった。

まあ原作を読んでいなくても、ポアロと会ったのがファーリー本人でないことは察しがつく。原作だとファーリーは金持ちだというだけで、何で儲けているのかはっきりしない。それではまずいと思ったのかパイを持ち出してきている。殺す方法(ファーリーを窓に近づける方法)も変更してある。ちょっとびっくりするのは、ポアロが自分の頭の働きが鈍ったのを「若い頃の放蕩のつけ」とつぶやくこと。それを聞いたヘイスティングスはびっくり。ポアロと放蕩なんて全く結びつかないからだ。見ている我々にも想像がつかない。まあとにかくポアロがこういうセリフを吐くなんて非常に珍しいことだと思う。もちろん原作にはこんなセリフはなし。ヘイスティングス、ミス・レモン、ジャップも出てこない。

ファーリーの娘ジョアナ役で「イベント・ホライゾン」などのジョエリー・リチャードソンが出ていてびっくり。きれいな人だが、背が高く、あまりお色気を感じさせない。ストーリーには無関係だが、彼女のフェンシングのシーンが出てくる。ファーリーの秘書コールワージーは、原作では美青年だが映画ではさえない中年。そのぶんジョアナの恋人ハーバートを出してきて、目の保養(?)をさせてくれる。

海上の悲劇

原作は「船上の怪事件」。ヘイスティングスと船で旅行中のポアロ。ヘイスティングスは原作には出てこない。お客にはいろんな人がいて、中には感じの悪いのも。クラッパートン大佐の妻アデリーンは、夫をバカにし、他の人も不快にさせる。あんな人死んじまえばいいのに・・と誰もが思うタイプ。大佐はやさしくて大人しい性格。ただ、夫人を昔から知っているフォーブス将軍によれば、大佐というのはでたらめで、元芸人らしい。大佐は一人旅のオールドミス、ヘンダーソンと引かれ合っているようだ。若い娘キティとパメラも大佐が大好きだ。そのうち船はアレキサンドリアへ着く。お客のほとんどは上陸するが、アデリーンは船に残る。帰ってきた大佐は、胸を刺されて死んでいる妻を発見。そばには首飾りが落ちていた。船に入り込んだ土産物売りの行商人の仕業か。

殺人のトリックは、大佐がドア越しに夫人としゃべっているシーンでわかってしまう。ヒントは「元芸人」。ポアロが人形を使った謎解きをするシーンは大げさでわざとらしい。原作だと何で人形があるのか説明されず、ご都合主義もいいとこだが、映画ではちゃんと人形遊びの好きな大人しい少女を登場させ、彼女から借りたことにしている。

クラブのキング

女優(原作ではダンサー)のヴァレリーは、ある国のプリンス、ポールと婚約しているが、現在撮影中の映画のプロデューサー、リードバーンに何やら弱みを握られているらしい。リードバーンは撮影に口を出し、俳優をクビにするなど強引な男で、敵も多かった。彼が自宅で殺されているのを発見したヴァレリーは、隣りのオグランダー家に助けを求める。ポアロはポール公からスキャンダルにならぬよう極秘調査を頼まれる。

この話の肝は家族の結束だが、わりと強引なのであまり説得力はない。なぜリードバーンとオグランダー家が隣りどうしなのか。偶然か、昔からか。昔から知っていたからヴァレリーが弱みを握られることになったのか。ジャップ達はヴァレリーの(ウソの)証言を元に捜査を続け、結局は迷宮入りとなるのか。高貴な人に頼まれるとポアロも真実をあばくのは控えるのか(殺人じゃなくて事故だしぃ・・、謝礼たんまりもらえるしぃ・・)。

ヴァレリー役ニーアム・キューザックはどこかで見たような人。調べてみたら「ミス・マープル(新シリーズの方)」の「パディントン発4時50分」に出ていた。化粧っけなしだと地味で平凡だが、化粧映えする顔立ち。顔が小さく整っており、やや中性的な雰囲気がある。男装して剣劇とか似合いそう。中世物・・ジャンヌ・ダルクとか似合いそう。今はもう年齢的にムリだろうけど。彼女を見ながら何となくJ.J.フェイルド思い浮かべていた。他の出演者で気になったのはオグランダー家の息子ロニー。出番はわずかだが、どこかで見たような・・ショーン・パートウィー・・おおッ!「イベント・ホライゾン」に出ていたじゃん!この頃はまだ若いねウヒ。彼「ソルジャー」とか、けっこういろいろ出ているのよね。

エッジウェア卿の死

これは「ミス・マープル(旧シリーズの方)」のクラドック警部役ジョン・キャッスルが出ている。私にとってはこれだけが目玉で、他は大したことなし。と言うのも犯人がバレバレだから。キャッスルはエッジウェア卿役なので、すぐ殺されてしまい、出番終了。でもすごくいやなヤツなのでその方がいい。

エッジウェア卿は二度目の妻ジェーンとうまくいっていない。元々冷たい性格で、何でジェーンと再婚する気になったのやら。ジェーンは女優で、夫とうまくいかなくなると俳優仲間のブライアンと浮気。今は彼を捨て、マートン公爵と恋愛中。結婚したいと思っているが、エッジウェア卿が承知しないのでポアロに泣きつく。ポアロが卿に会ってみると、すでに離婚承知の手紙を出してあるとのこと。しかしジェーンは受け取っていない。妙な話だが、とにかくこれで自分は自由だ・・と気分がよくなったジェーンは、出席しないつもりだったコーナー夫妻主催の夕食会に出席する。同じ頃エッジウェア卿が殺される。執事や秘書はジェーンの姿を見ているが、彼女には夕食会に出ていたというアリバイがある。物まねを得意とするカーロッタという芸人がすでに出ているので、彼女がジェーンに化けたのはすぐわかる。そのうちカーロッタが殺されるので、犯人はジェーンとしか思えない。いろんなカップルが出てきてうさんくさくふるまうが、ただの目くらまし。

今回のポアロはジェーンにやたら頼られる。彼の方も彼女のためなら例え火の中、水の中という感じである。ぼーっとしているポアロを見て、ヘイスティングス達はさては年甲斐もなく恋に落ちたか・・と勘ぐるが、当のポアロは謎の解明を考えているだけ・・というのがおかしい。いつもはわりと早く犯人に行き着き、あとは決定的な証拠や動機というのが順番だが、今回はヘイスティングスがふともらした言葉を聞くまでからくりに気づかなかったようで。やはりジェーンを見る目がどこかくもっていたのか。エッジウェア卿は金持ちだから、彼の死で一番得をするのは誰か問題になるはずだが、今回は珍しく遺言とか出てこない。犯行の動機が遺産目当てでなかったのは後でわかるが、それにしたって少しくらい触れられてもよさそうなものだ。

なぞの盗難事件

原作はさほどおもしろくない。屋敷の中で書類がなくなった、誰が取った・・ってそれだけ。おもしろくないのは盗難だけで殺人事件が起きないから?・・いや、そうでもなくて。材料が乏しいからいろいろくっつけて何とかまとめ上げて・・作り手の皆さんご苦労様。

新型戦闘機の設計図がメイフィールド邸から盗まれる。ポアロは彼の妻に頼まれて屋敷にいた(原作ではメイフィールドは独身。ポアロが登場するのも事件後)。他に秘書のカーライル、役人のサー・ジョージ、何かと黒いうわさのあるヴァンダリン夫人などが泊まっている。メイフィールドは怪しい人影を見たと言うが、他の人は見ていない。ジョージはヴァンダリン夫人を疑い、ジャップを呼び出す。しかしいくら調べても書類は出てこない。機嫌を損ねた夫人は疑いが晴れると屋敷を出ていくが、ポアロとヘイスティングスはあとをつけ、彼女がドイツ大使公邸へトランクを届けるのを見届ける。どうも設計図はメイフィールド自身の手でドイツの手に渡ったようだ。彼は裏切り者なのだろうか。

原作と違うのはメイフィールドの過去のうわさに日本軍が出てくること。その後政府によってかかわりは否定されたが、いったん起こったうわさはなかなか払拭できない。その上これは事実だった。ドイツはメイフィールドが日本あてに出した書類を握っており、これを返すのと引き換えに今度の設計図を要求したのだ。運び役はドイツシンパのヴァンダリン夫人が受け持つが、表立っては行動できない。それで怪しい人影をでっちあげ、ヴァンダリン夫人に疑いがかからないよう芝居をしたのだ。まあ○○がない!と騒ぎ立てたり、怪しい人影が・・と言い張る人が実は・・というのはお約束。原作だと過去メイフィールドがかかわったのはヨーロッパの強国・・つまりドイツ。日本は全然出てこない。内容がバラエティーに富むよう努力しているんだろうが、元々がつまらない話なのでさしたる効果なし。

ヴァンダリン夫人はすばらしく美しい金髪の女性のはずだが、映画では黒髪。すごい美人というので期待していたら、ティム・ロスそっくりだったので笑ってしまった。背中の大きく開いたドレスはアルミホイルみたいな色で、歩く度にピラピラ音がしそう。ゴージャスと言うより滑稽だった。それにしても・・メイフィールドにとっては、夫人が(夫のことを心配して)ポアロを連れてきたのは迷惑だったのでは?