蟲師
レディス・デーだったので若い女性の二人連れが多かった。公開二週目のシネコン、お客は35~40人。あまりヒットしていなさそうで(公開前は「どろろ」並みにヒットするのでは・・と思ったけど)、すぐに回数減るだろうと思って早めに行きましたよ。毎日新聞の批評には視点を変えて見た方がいいみたいなことが書いてあった。ストーリーは追わず、映像を楽しんだ方がいいらしい。日本映画のネックはセリフ。何言ってるのか聞き取れないのがいやで見に行かない。でもこの映画はわりとゆっくりしゃべってくれるので助かった。それでも男達がしゃべるところは何言ってるのかわからなかったし、聞いても意味のわからない言葉もある。いちおうパンフには光酒(こうき)とか光脈とか書いてあったけど、原作(コミック)読んでない人には何のことやら。ギンコ(オダギリジョー氏)が旅をする部分と、母をなくした少年ヨキが不思議な女ぬい(江角マキコさん)と暮らす部分が交互に出てくる。このヨキが少年時代のギンコだというのはすぐわかる。今のギンコは記憶を失っているのでぬいのことは覚えていない。まああれこれあって最後の方で再会するんだけど、その頃になるとストーリーは全然わからなくなる。現象と人間の行動がかみ合っていない。ラストも・・おそらく見ている人全員「はぁ?」って思ったはず。ダルデンヌ兄弟も真っ青の唐突プッツンラスト。これから何か起きる・・って全員身がまえる。でも終わっちゃう。いくら無心に見ていようと思っても答を求めてしまう。光脈捜しはどうなった?・・と言うか、光脈ってそもそも何?ぬいはどうなる?ぬいの連れ合いが小屋の中から引きずり出していたのは誰?ギンコはどうなった?ウッソー全然わかんな~い。今まで2時間以上かけて見てきたことはどうなった?知りたきゃコミック見ろってか?角の生えた少女のエピソードや淡幽(蒼井優嬢)のエピソードも説明不足。ほとんどの人は退屈したとか眠くなったとか金返せとか書いている。その気持ちわかる。今の時代白か黒か、AかBか、勝つか負けるか、はっきりしてなくちゃみんな承知しない。答はあるようなないような、病気は治ったような治らないような、事件は解決したようなしないような、生きているようないないような、どっちつかずの状態。ぬいの「皆、ただそれぞれがあるようにあるだけ」という言葉。わかったようなわからないような。
蟲師2
例えばゲームのスイッチを入れて何もしないで画面だけ見ているようなもの。スイッチを入れたんなら撃ち落とすとかよけるとか、点数入れるとかクリアーして前に進むとか、何かしらして結果を出さなければゲームが存在する意味がない。でもこの映画って・・蟲との関係って・・攻撃するとか破壊するとかじゃなくて、場所を変えるとか共存するとか。蟲の存在は悪ではなくて「そこにあるもの」。自分が今ここにいることとイコールなの。そしてそこにあるものを最新のVFX(視覚効果)使って美しく幽玄に、あるいは恐ろしげに見せてくれるのがこの映画なの。もちろん作り物でない実際の風景もすばらしい。冒頭の山々に霧が流れるシーンからして、えッこれが今私達の住んでいる日本の一部?って驚くと同時にうれしくなる。時代設定は100年前だけど、今の日本にも100年前と言って納得できるようなこんな場所がまだある!流れてくる音楽も何と言う楽器かブォーブォーと腹に響く。篠突く雨、恐ろしい山崩れ、音を吸い込む雪、暑い夏・・映画はこれらの自然と最新のVFXが違和感なく溶け合う。もちろん蟲の描写ははっきり合成・作り物ってわかるんだけど、それですら自然現象と錯覚してしまうような・・。全体的に世界観等が「陰陽師」と似ているような気がする。で、「陰陽師」でも日本独特のもの、オリジナリティーを感じたんだけど、小道具や特撮の中にはちゃっちいとかしょぼいとかそういう部分がかなりあった。アイデアはいいんだけどいかんせん予算が・・。でもこの映画にはそういう部分がほとんどない。ほころびを見せず、ちゃちさとかしょぼさを感じさせない堂々とした作り。そこにとても感心したし、うれしくもあった。やればできるじゃん!・・ってね。もう一つ強く感じたのは「怖さ」。いくら蟲はそこにあるもの、共存するものと言われたってやっぱり怖い。少女の頭の中で音が鳴り響く有様。それまで音を吸い込む雪の世界にひたっていたので、突然の大音響と渦を巻く映像には仰天し、恐怖を感じた。あるいは阿とうん(漢字出てこん)。一つだけならかわいいカタツムリ・・ですむが、天井にびっしり・・じゃ怖いですってば!いや~ん中から何か出てきた、広がってるぅ~!沼から立ち上る黒い闇トコヤミはまがまがしい。巻物の文字が溶け出すところ・・うッけっこう怖い。文字が壁や床をはい回る。手や足に・・いや~んムズムズしてきた!
蟲師3
文字が溶けて巻物が真っ黒になってる、ウワッ怖い!見せられるものがこれまでになく新鮮。おぞましいゾンビ、グロテスクなエイリアン、血がどぴゅーとか内臓びろーんとか首が、手足がチョッキンチョッキンとか(←普段どういう映画見てるんだあたしゃ?)、そういうものにはもう慣れっこ。作り物にしてはよくできてるじゃんとか、CGで何でもできるからってやりすぎなんだよ!ちっとも怖くないんだってば・・とか、そういうのがもう普通になってる。でもこの映画はねえ・・体の内部でゾワッとするんですの。目で見てあッ怖い・・それで終わり・・じゃなくてね。体の中心部が怖さでゾワッと固まるような、それから内部から皮膚に向かって寒気がしみ出てくるような。逆に空を飛ぶ虹蛇(こうだ)のような美しいシーンの場合は、暖かいものが皮膚にしみ出してくる。感動ってことだけど。まあとにかくストーリーは今いちで、これで見た人がちゃんと話の流れがつかめて納得できるオチがついていれば・・ものすごい傑作になっていたと思うな。それほど映像的には申しぶんなかった。出演者もおおむねよかったし。何たって作り手に大根のアイドル使わないだけの分別あってよかった。は~見てよかったわ。日本人でよかったわ。今この時代に生きていてよかったわ。ああいうラストってことは「2」も視野に入れてるのかしら。でもあまりヒットしていないみたいだし、こういう映画はお金かかるだろうしでムリかな~。主演のオダギリ氏はやたらいろんなのに出ているから、そのせいでかえって見る気失せちゃう。「オペレッタ狸御殿」の写真見てブレンダンに似ているなあ・・と興味持ったけど、せっかくの甘い二枚目なのにたいていはヒゲ生やしてむさくるしい。今回も生やしてる。どこと言って特徴のない演技で、ギンコ自身はっきりしない性格。どうやって蟲師としての知識得たのかも不明。他には気丈なたま役の李麗仙さんがよかった。淡幽の腕に刀を突き立てるシーンでは、女性客の一人が何やら口走っていましたな。アッアッいや~いや~やめて~とか何とか。あのねお嬢さんホントに刺すわけないじゃん。でもよくできていて本物の腕に見えるけどさ。黒い血がドロ~リ。そのうち赤い血がどぴゅー。あんなに飛ぶってことは動脈切ったんじゃないの?死にますぜ。