ミーン・マシーン
この映画は別に見るつもりはなかったんだけれど、「マン・オブ・ノー・インポータンス」を書いている時、デヴィッド・ケリーのことを調べていて、これに出ていることを知ったので見に行った。彼は1929年生まれだからもうかなりのオトシ。今のうちに見に行っておかないと。「少林サッカー」は大ヒットしたらしいけど、こっちはひっそりと公開。でも若いカップルとかけっこう見にきていたなあ。サッカーという内容のせいか、主演のヴィニー・ジョーンズという人が「ロック、ストックなんとかかんとか」に出ていたせいか。まあどちらにせよ私くらいの年齢で見にきている人っていないんだけどさ。ファーストシーンは「?」だった。まだ予告編の続き?主人公が刑務所に入るまでの経過が今いちよくわからない。でも二回目を見ていてわかった。冒頭のはCMだったのね、主人公のダニーがサッカーの花形選手だった頃の。・・で今は落ちぶれて酒びたりで、飲酒運転と警官への暴行でつかまってしまう。大したことないだろうとタカをくくっていたら見せしめのために重い刑を課せられてしまう。最初はこのダニーの性格がはっきりしなくて、しっかりした図太い性格(見かけはそう見える)だと思っていたらそうでもない。優柔不断だし、所長に刑期を延ばすぞと脅されてまた八百長をしそうになるし。何だか変だなあと思いながら見ていたのだが、二回目を見ているうちに考えが変わってきた。ダニーは性格にこういう気弱な甘い部分があるからこそ、借金を作り、身動きできなくなって八百長をやり、転落の人生を送るはめになったのだ。サッカー選手としては超一流だけれど、人間としては欠点もあるということ。看守との試合の時、単独行動を取るモンクに対して、まわりから「注意しろよ」と言われても(怖くて)言えないという笑えるシーンがあるが、あれだって彼の気弱な部分を表わしているように見える。さて映画の前半では刑務所でのさまざまな出来事が描かれるが、これがアメリカの映画だったらもうちょっと違った意味で暴力的な内容だったかも。入っている受刑者達もいろいろだ。ナイロトみたいにいかにも異常なタイプ、明るくて調子がよくて何事にもこだわらないように見えて、看守の一言でたちまち落ち込んでしまうマッシブ。見ていても何で刑務所に入ったのかよくわからないビリー。まあストーカーなんだろうけどそれほど異常ではないし。
ミーン・マシーン2
こういった若い連中の他にサイクスやドックのような古いタイプの犯罪者もいる。サイクスはダニーに「オレがここのボスだ」と宣言したりして、所内を牛耳る残酷なヤツに見えたけど、古いだけに秩序を重んじ、義理堅かったりする。暴動が起こらずにすんでいるのはこういう人がいるからかな・・なんて思えてくる。ドックは犯した罪はどんなことをしても償いきれないと悔やんでいるような善良な老人で、途中でダニーの身代わりになって死んでしまう。あらら、せっかくケリーさん目当てで見にきているのに・・残念。後半は囚人対看守のサッカーの親善試合がメイン。まあサッカーは試合時間が長いし、その間ずっと盛り上げるってのも難しい。V・ジョーンズはサッカーは本物だけど演技はうまいってわけでもない。八百長をするかどうかで悩んで所長の顔をうかがうシーンなど正直見ていてだれる。それを救ってくれるのがゴールキーパーのモンク。素手で23人も殺したという重罪人だそうだが、普通それだったら死刑になるんじゃないの?この変人モンクがキーパーの仕事をおっぽり出して前に出てきてゴールまで決めてしまうのがミソ。相手に点を入れられそうになって、ボールが一度それて、それが落ちてくる間に看守達をボカスカとやっつけて、落ちてきたボールを発止と受け止める。「モンク冷静でした」という実況係の言葉が最高に笑える。このモンク役のジェイソン・ステーサムは「トランスポーター」という映画の予告に主演で出ていたのでびっくりした。これは見に行かなくちゃね。ダニーと敵対する看守のバートンは最初血も涙もない冷酷な男に見えたが、そうではないことがだんだんわかってくる。仕事もきっちり、サッカーの練習も理路整然とやる。試合も正々堂々とやり、負けてもダニーに「いい試合だった」と握手を求める。これが本当のスポーツマンシップなんだわ・・と気持ちがすがすがしくなるシーンだった。これと対照的なのが所長で、ダニーが八百長をしなかったために大損をし、怒り狂う。演じているのは懐かしやデヴィッド・ヘミングスである。若い頃は目の覚めるような美青年だったのに「パワープレイ」の頃からぐんぐん太り始め、今は見ているこっちが息苦しくなるほど。大丈夫かね。でも出てるとは知らなかったから久しぶりに見てうれしかった。さて結論、内容もヴィニーさんも地味だけど渋くてなかなかよかったヨ。