旧ミス・マープル(ジョーン・ヒクソン版)

復讐の女神

マクイーワン版のような脱線はせず、ほぼ原作通り。マクイーワン版では「復讐の女神」はやったけど、「カリブ海の秘密」はやらなかった。マッケンジー版でやるのかな。ラフィール役はプレザンスではなく、別の人。「カリブ」の時、ついでにとっときゃよかったのに。原作だと、「カリブ」から一年半ほどたってる。ラフィールが死ぬが、生前にある手配をすませていて。マープルをバス旅行に行かせるのもその一つ。旅のお供は甥のライオネル。妻とうまくいかなくて、伯母の家に転がり込んだところ。マクイーワン版では、老三姉妹がいつ出てくるのかと思っていたら、結局出てこなくて。でもこっちはちゃんと出てくる。ラフィールにはマイケルという息子がいるが、悪党で、婚約者のヴェリティを殺したと思われている。逮捕されたものの証拠不十分で裁判までは行かずにすむ。一時外国へ行っていたが、今はロンドンで浮浪者になってる。原作だと刑務所に入ってるけど、こっちは自由で。行方不明と言いつつ、弁護士達の前に現われたり、よくわからない。バス旅行も、最初のうちはちゃんとしてるけど、そのうちうやむやになる。途中で元校長テンプルが殺されるが、警察の捜査とかほとんど出てこない。あんまりドラマチックなのもうそくさいが、こちらは平板で盛り上がりに欠ける。ヴェリティが殺されたのは”愛”が原因。善意の塊であるヴェリティは、自分の愛でマイケルを変えさせられると信じてた。彼女をそのように育てたクロチルドの愛は、独占欲のようなもので、マイケルに渡すくらいなら・・と殺してしまう。もちろんその頃同じ年頃の少女ノラが行方不明になる。顔を潰された状態で見つかった死体を、クロチルドはヴェリティと証言。本物の方は顔を潰したりしない。花に囲まれるように葬ってある。他の誰にも渡したくない。マープルが彼女の仕業と暴き、マイケルの汚名は晴れる。この映画の特徴は、マープルが頼まれたのがマイケルの無実を証明することではなくて、真実を明らかにすることであること。つまりマイケルが犯人というのが真実なら、それはそれでかまわないということ。いかにもラフィールらしいし、マープルにはそういう彼の気持ちがよくわかる。マイケル役ブルース・ペインはなかなかのハンサム。ウェズリー・スナイプスの「パッセンジャー57」という映画に、悪役で出ているらしい。ブラバゾン大執事(副司教?)役の人は見覚えがある。「ポアロ」の「スペイン櫃の秘密」に出ていたらしい。

カリブ海の秘密

マープルは医者に転地療養を勧められる。太陽がいっぱいのカリブ海は、体にはよかったものの、退屈で仕方がない。客のパルグレイブ少佐は、同じ話をくり返すので、まわりから嫌がられている。でもマープルはこういう老人の相手は慣れている。編み物をしながら適当に相槌を打ち、適当に聞き流す。少佐が持っているという殺人犯のスナップ写真は、結局見ることができなかった。なぜか急に話をそらしてしまった。翌朝死体で見つかるが、病死ということに。マープルは殺人だと思っているが、ここは外国だし、自分はただの老女だ。彼女が目を付けたのは大富豪ラフィール。もうあまり長く生きられないし、車椅子生活だが、影響力はマープルの比ではない。彼の言うことならまわりは聞くだろう。ラフィール役がドナルド・プレザンスというのが、この作品の目玉。犯人役でないプレザンス。口が悪く気短だが、どこか憎めない。でも作品の出来は今いち。わりと原作に忠実だが、盛り上がりに欠ける。いろんなエピソードがだんだんまとまって、そうか、そういうことだったのか・・というのがない。エドとイーヴリンの夫婦はうまくいってない。少佐の言ってた犯人に当てはまりそうなのがグレッグ。妻のラッキーは、彼の前妻メアリーの死に関わっているようだ。しかもエドに手伝わせ、それをネタに今も束縛しているような。グレッグはメアリーの死で金持ちになれたが、今はホテルのオーナー、ティムの妻モリーに言い寄っている。イーヴリンは夫とラッキーの仲を知ってるし、グレッグはやっと妻の不貞に気づく。何やらぐちゃぐちゃしていて、何かありそうで、でも何も解決しなくて。途中でメイドのヴィクトリアが、終わり頃にラッキーが殺される。ヴィクトリアは少佐の薬品棚に、グレッグの薬があるのを見つける。置いたのが誰だか知っていて、口止め料を要求するつもりだったのか。ラッキーの方は人違い。本当はモリーが死ぬはずだった。死体の見せ方・・少佐の時もラッキーの時もわかりにくくて。また、ホテルのオーナーのわりにはティムとモリーはヒマそうで。普通はもっと駆けずり回っているんじゃないの?マープルに頼まれたラフィールが話をするのがウェストン警部。でも彼はクリザリングの教え子で、マープルの話さんざん聞かされていて。これじゃあマープルがラフィールの助け借りるまでもない・・ってことになっちゃう。原作にはこの流れはなし。

カリブ海の秘密2

この作品と「復讐の女神」は対を成している。ラフィールには、夜中に自分を叩き起こし、事件解決の手伝いをさせたマープルが印象的で。見かけはピンクのふわふわした老女なのに、ネメシスのように断固とした態度で正義を行なう。それに敬服したからこそ、「復讐」にあるような頼み事をしたわけで。でもこちらではヴィクトリアの葬式で、死者に鞭を持たせる風習を出してくる。死者が九日後に恨みを晴らしにくるとか何とか。で、マープルがヴィクトリアに代わって復讐したのが九日後・・と。少佐が言っていた殺人犯はティムで、モリーを殺そうとして誤ってラッキーを殺してしまったと。しかしモリーを生かしておくと、自分の犯行がばれてしまうので、自殺に見せかけて始末しようとしたところを、マープル達に阻止されると。いちおうマープルが謎解きするけど、わかったようなわからないような。それで仕方なく原作を読み返し、つじつま合わせに励むわけ。ラフィールの世話をしているのが秘書のエスターと、マッサージ係のジャクソン。ジャクソンはラフィールの書類(遺言書)を盗み見たり、モリーのバンガローに忍び込んで薬品棚を探ったりと怪しい。エスターはティムにだまされ、結婚する気になってる。彼女は知らないが、ラフィールは彼女に大金を遺す。遺言書でそれを知ったジャクソンがティムに話す。で、ティムはモリーからエスターに乗り換えようと・・。彼がモリーと結婚したのも金目当てのはずだが・・。また、この設定だとジャクソンが遺言書盗み見るのはもっと以前のはずだが。いくつかの変更はあまり効果的ではなく、かえってわかりにくくなってるのがこの映画の残念なところ。エド夫婦やグレッグのその後も不明で消化不良。モリー役ソフィー・ウォードは、金髪でまぶしそうな顔立ち。ういういしく、白が似合う。彼女を見たとたんサイモン・ウォードを連想した。兄妹か親子か・・親子の方だった。サイモンは若き日のチャーチルを演じて有名になった(たぶん)が、ソフィーはその頃の彼にそっくりだ。残念ながらサイモンは2012年に亡くなったようだ。エド役マイケル・フィーストはどこかで見たような・・。「無実はさいなむ」の私立探偵だ。ラッキー役はスー・ロイド。スカーレット・ヨハンソンも20年か25年たつとこういう顔になるんだろうなと思いながら見ていた。くすんで・・シワがよって・・。

スリーピング・マーダー

マクイーワン版はいじくりすぎて、何が何やらになっていたが、こちらはほぼ原作通り。ニュージーランドから帰国し、家捜しをするジャイルズ(ジョン・モルダー=ブラウン)とグエンダ(ジェラルディン・アレクサンダー)の新婚カップル。ディルマスの海の近くでグエンダが目に止めた売り家。初めてのはずなのに間取りとか壁紙とかわかっちゃって・・私って超能力者?でもロンドンで芝居見てる時、とんでもないこと思い出しちゃった。あの家の玄関ホールでヘレンという女性が首を絞められて殺されたのを!頭がおかしいのかしら、精神科医に見てもらわなくちゃ!ジャイルズがマープルの甥レイモンドといとこという設定。甥に招かれ、ロンドンにいたマープルはグエンダの話を聞き、昔のことは掘り返さない方がいいと忠告。でも若い二人は真実を突き止めると意気込んでいて。新聞広告を見て連絡してきたのが、元医師のケネディ(フレデリック・トレヴェス)。彼はヘレンの異母兄で、年はずっと離れている。ヘレンはグエンダの父ケルヴィンの後妻で、ある日突然誰かと駆け落ちし、行方知れずに。ケルヴィンはショックで妻を殺したと思い込み、精神病院で自殺したこともわかる。こんな辛いこと知らなきゃよかったと後悔しても後の祭。以後は父の潔白を証明したい・・となる。そんな二人の行動は、真犯人にすればひどく迷惑なことで。マープルが心配したのもそのせい。無実の人が犯人にされて投獄されてるとかいうのなら話は別だが、今回は違う。新しい犠牲者が出るおそれがある。マープルはほうっておけず、口実を設けてディルマスへ。そのうち当時のメイド、リリーが殺され、グエンダにも魔の手が伸びる。まあ出てきた時からケネディが怪しいので、謎解きの妙はなし。クライマックスも今いち。なぜあそこでケネディが錯乱するのか、なぜ原作と変えたのか。回想シーンももっと入れ、わかりやすくすべきだ。・・でも、1970年前後の美少年ブームの一角を担ったモルダー=ブラウンが出ていたので・・この頃は30代だが、まだあのもっちゃりした美貌は健在で・・。あたしゃそれだけで満足です。美少年もそろそろ60歳だが、画像検索したらまだまだ大丈夫な美中年ぶりに密かに驚嘆。また、目元のあたりがブラピそっくりなのも密かに発見。「早春」のDVD出ないかな~。ジェーン・アッシャーと二人でうつってる最近の写真もあって、対談でもしたのかな。この作品根強い人気があるのかも。

牧師館の殺人

たぶん私が「ミス・マープル」を最初に見たのは、テレビ東京でやったこの作品だと思う。登場人物のうち、レナードの甥デニスと、考古学者ストーンとその秘書のミス・クラムは省略されている。マクイーワン版のところであらすじを書いたので、ここでは最小限にとどめる。プロズロウ大佐が来ることになっているのに、レナードはニセの電話で呼び出される。行った先のアボット父子が笑わせてくれる。おやじが危篤?ぴんぴんしてますよ。かつがれたんですよ。早すぎましたね。来週までに俺が絞め殺しときます。牧師館へ帰ってみると、大佐が殺されている。捜査担当はスラックとレイク。マープルはスラックとはゴシントン・ホールで・・とか言ってたから、「書斎の死体」事件以来という設定か。彼女は庭にいて、ロレンスとアンを見ていた。銃は持ってなかったし、銃声が聞こえたのは、二人がアトリエの中にいた時だ。描写はわりとたんたんとしていて、時々なくてもいいようなシーンも挟まれる。レナードが二人の不倫に気づくところも、マクイーワン版のようなハデさはなし。原作通り、レナードとグリゼルダは20歳ほど年が離れている。しかし中傷の手紙でレナードが思い悩むシーンはなし。レナード役ポール・エディントンは、昔風の二枚目。グリゼルダ役シェリル・キャンベルは、「ポアロ」の「死との約束」のボイントン夫人。グリゼルダは家事が全くだめだが、メイドのメアリがまた出来損ないで。もっさりしていて頑固で、レナードやグリゼルダをなめてかかっている。レストレインジ夫人の境遇は、原作通り。不治の病で、一目娘のレティスに会いたいと、この村へやってきた。演じているノーマ・ウェストは、「ポアロ」の「物言えぬ証人」に出ている。副牧師ホーズ役はクリストファー・グッド。「鏡は横にひび割れて」にも出ていて、IMDbを見ると、同じホーズという名前だから、自殺未遂から立ち直り、レナードの後任の教区牧師になったということか。今回一番残念だったのはロレンス。もっと若くて魅力的なハンサム出してこなくちゃ。あれじゃあアンが夫始末してまで一緒になりたいと思いつめるとはとても思えない。原作と違い、こちらのアンは途中で気がくじけて自殺してしまう。アン役はポリー・アダムス。ラストはグリゼルダの妊娠に大喜びするレナード。まだ十分事件の説明ついてなくて、スラック(彼は見ている我々の代弁者でもあるのだが)が質問しようとするんだけど、うやむやのうちに終わってしまう。

鏡は横にひび割れて

クラドック目当てで早速再見。「書斎」から数年たって、アーサーは亡くなったようで、ドリーは未亡人に。アメリカにいる子供達を訪問して、帰ってきたところ。ゴシントン・ホールは彼女には広すぎる。それに元々はアーサーが生まれた家であって、自分にはあんまり関係なし。と言うことで、有名女優のマリーナ(クレア・ブルーム)と監督のジェイソン(バリー・ニューマン)夫妻に売り、自分は門番の家を改装して住むことにする。ある日、ゴシントンで恒例の慈善パーティが開かれるが、客の一人バドコック夫人が急死する。調べてみると酒にバルビタールが入っていて。原作を読み、「クリスタル殺人事件」を見、マッケンジー版も見たから、ストーリーは頭に入ってる。こちらのマリーナは、皇妃エリザベートの映画を撮影中。パーティで、みんながお風呂がどう改装されたか見たがるところがおもしろい。スターのお宅訪問はいつだって関心の的。さて、マープルもやはり年を取った。でも、付き添いのミス・ナイトのお節介にはうんざりだ。「私たち、○○をしましょうねえ」という言い方も嫌。ナイトとバドコック夫人は似たタイプ。親切で世話好きだが、相手の気持ちが全くわからない。マープルでさえ、ナイトを殺したくなるくらいだもん、バドコック夫人だって・・。前にも書いたが、バドコックはマリーナの夫の一人。でもこちらでもその設定は省かれている。この作品は、マリーナ役を誰がやるかが重要だと思う。若くはないが、美しくて悲劇的であること。精神的、肉体的に不安定であること。虚飾の世界に生き、気分屋で扱いにくいが、保護したくなるような魅力にあふれていること。でも・・これまで見たどのマリーナも、ただのヒステリックなわがままにしか見えないな。1992年だとブルームは60過ぎてる。全体的にくすんだ感じで、魅力に乏しい。もう10歳は若い人起用しないと。エラ役の人ははっきりした顔立ち。ジェイソンに片思いしていて、利口ぶってるけど愚かで、そのうち殺されてしまう哀れなキャラ。もうちょっと・・手当たり次第に脅迫電話かけて喜んでるところとかうつせばいいのに。あと、女性カメラマン・・実はマリーナの養女で、実子ができたとたん捨てられたと恨んでいるマーゴットも、はっきりした顔立ち。いや、ブルームがくすんでいるせいで、余計若い女優の美しさが目立つのよ。

鏡は横にひび割れて2

パーティでの重要なシーン目撃するメイド、グラディスはローズ・キーガン。全体的にメリハリがなく、単調な作り。マープルがバドコックから風疹のことを聞き出すところ、クラドックがみんなから事情聴取をするところ、またまたマープルがグラディスの話を聞くところ。でもその時点でもうジェイソンはマリーナが犯人だと気づいていて。安らかに死ねるよう時間稼ぎ。翌朝マープル達が行った時にはもうすべてが終わっていて。原作だと執事も殺されるけど、こちらはなし。パーティでのマリーナの犯行再現シーンも見せてくれない。ちょっとサービス悪いぞ。さて、事件の方はちっともおもしろくないし、マリーナもどうでもいいので、クラドックのこと書きますね。マープルのこと「私の伯母です」って言って、スラックをびっくりさせるけど、実際は血の繋がりはなくて。伯母甥みたいな関係ってことで。でもこの映画だけ見ると勘違いしちゃうかも。原作にはスラックは出てこない。彼は出世したらしく、クラドックより地位は上のようで。出世できたのはたぶんマープルのおかげだろうけど。デスクワークなんて嫌だろうけど、現場に戻りたがるそぶりはなし。彼の部下だったレイクが、今回クラドックと組む。彼がクラドックのことどう思ってるのかあいまいで。最初はあんまり好意持ってないふうで。でもいつの間にかマープルの家のこと”本部”なんて言っていて・・そこは笑えた。92年だとキャッスルも50を過ぎて、やや太り気味。銀髪はきれいになでつけられ、目は相変わらず鋭い。スラックによると、彼は警視庁では反逆児で、出世が遅れたとのこと。自分の意思を曲げない、権力におもねらないということか。原作にはそういうのはなくて順調っぽいけど。こちらの、スラックにさえ従わなければならない境遇ってのも悪くないけど。彼の方がよっぽど有能なのに・・!!って見てる人みんなが思う。今回は有名人が相手ということでてこずる。最後に・・ストーリーとは関係ないけど、教会などで一緒に活動するミス・ブローガンというのがいて、帽子とか顔立ちとか服の柄とかがマープルにとてもよく似ていて。マープルより少し若くて、まだ元気いっぱいだけど、とにかくよく似ている。ばあさんはみんなおんなじに見える・・ってどこかに書いてあったけど、それを思い出した。

バートラム・ホテルにて

マクイーワン版に比べると、かなり原作に忠実。向こうはがやがやうるさく、ごちゃごちゃしていた。マープルは娘の頃泊まった、思い出のバートラム・ホテルに滞在する。昔のままで、ちっとも変わってないのがうれしく、驚きだ。今は何でも変化してしまっているのに。愛想のいいドアマン、有能な受付、静かな客室、寝心地のいいベッド、よく躾けられたメイド、本格的なマフィンやシード・ケーキ(って何?)。いや、今回出てくる食べ物はどれもこれもおいしそうで!うわさ好きのセリーナがいろいろ話してくれるが、マープルとの関係は今いちはっきりしない。原作だと一時セント・メアリ・ミードに住んでいたらしいが。セリーナ役ジョーン・グリーンウッドは「SF巨大生物の島」から25年たって、面影はほぼゼロ。この作品の後ほどなくして亡くなったようで。冒険家として知られるべス(キャロライン・ブラキストン)はまわりの目も気にせず、ジャム入りのドーナツ食べて大笑い。娘エルヴァイラ(ヘレナ・ミシェル)は学校を終えてイタリアから帰国したところ。2歳で別れた母親が同じホテルにいると知り、会いにいくが、「何の用?」「他人よ」と冷たくあしらわれる。もしこの時べスが母親らしい態度取っていれば、この後の展開も少し変わっていたかも。落ち込んだエルヴァイラは、ベスとドアマンのミッキーの会話を聞き、不安になる。アイルランドへ飛んで調べたらやっぱりそうだった。16歳で駆け落ちしたべスの相手がミッキー。結婚届がそのままになっていた。その後のべスの数回の結婚は重婚。エルヴァイラの亡くなった父コーニストンとの結婚も無効になり、自分は遺産を受け取れないのではないか。彼女はレーサーのマリノスキーに恋をしている。彼が遺産目当てなのはわかっているが、それでも何とか自分に繋ぎとめておきたい。彼女は自分が狙われたと見せかけてミッキーを撃ち殺す。原作だと、例え法律的に結婚が無効でも、エルヴァイラが受取人に指定されている以上、遺産は彼女に行くのだが、彼女はそのことを知らなかった・・ということになってる。ろくな相談相手もいなかったということで、気の毒でもあるのだが、だからと言って殺人はまずい。ミシェルは「ポアロ」の「盗まれたロイヤル・ルビー」に出ていたらしい。とにかくゆっくりした作りで、ミッキーが殺されるのが1時間20分以上たってから。

バートラム・ホテルにて2

その前にある事件らしいものと言えば、忘れっぽい牧師ぺニファザーの失踪だけ。彼のことはほぼ原作通り。ミッキーの描写は、べスに対する態度がややしつこすぎる気も。もう少し孤独な感じにすると、エルヴァイラの非情さが際立つと思う。フレッド警部役ジョージ・ベイカーはどこかで見たような。「北海ハイジャック」に出ていたらしい。原作だとまわりから「おやじさん」と呼ばれていて。歌ばっか歌っていてつかみどころがないが、それでいて有能。キャンベル警部補はまだ若く、演じているフィリップ何とか君はなかなかのハンサム。デヴィッド・ボウイとかそっち系の顔立ち。フレッドの言動になじめなくて、時々眉間にピッと電気が走るみたいな・・。イラッとさせられるけど、上司だからがまんしてる・・みたいな青い感じ。さて、べスはエルヴァイラをかばって、自分が犯人だと告白。ホテルから逃走し、車を暴走させ、事故を起こして死ぬ。エルヴァイラは母親の死を聞かされてもさして動揺しない。原作だとはっきりした証拠はなし、マープルはべスの告白の証人という立場。若くて美しくて同情を集めそうな境遇のエルヴァイラが、有罪になることはなさそう。尻尾を出すまで見守っているしかないという歯がゆいラスト。しかし、マクイーワン版同様、こちらもけじめをつける。エルヴァイラの態度を見たマープルは、怖い女校長に変身する。彼女にだって若い頃はあったから、20歳のエルヴァイラの考えそうなことはわかる。恋やら秘密やら悩みやらの吐き出し口は普通なら友人のブリジットだが、エルヴァイラの場合はいいように利用しているだけ。となれば、あとは日記だ!マープルがにらんだ通りだった。すべてを書いた日記・・。うろたえるエルヴァイラ。何が書いてあったかは不明だが、これで間違いなく有罪に・・。今回もマープルは毅然とした態度を崩さず、てってー的にエルヴァイラ追いつめる。そりゃ・・べスは母親としては落第だった。でも最後は自分の命捨ててまで娘を守ろうとした。ところがエルヴァイラは金と男のことしか考えてない。反省もゼロ。そりゃマープルだって許せませんわな。ホテルは結局べスをボスとする大がかりな盗賊団の隠れ蓑だった。でも、従業員全部が一味というのはありえなくて、そこらへんはちょっと説明不足。

書斎の死体

1時間ずつ3話完結という作りらしい。ずいぶん余裕のある、ゆったりした作りだ。横溝シリーズのような水増し感がないのはさすが。バントリー夫妻の書斎で見つかった、見知らぬ若い女性の絞殺死体。うわさが立ち、アーサーが嫌な思いをするところが、ていねいに描かれる。あちこちの窓から、カーテン越しに外をうかがう女性達。小さな田舎町で、退屈してて、好奇心は人一倍。どこにでも見ている目があり、聞いている耳があり、情報をまき散らす口がある。そういうのが画面から伝わってくる。バージル役の人はなかなかハンサムで、どこかで見たような気も。ジェファーソンの悲劇も、原作通り飛行機事故。ただ、ルビーに残す遺産は5万ポンドから10万ポンドに変更されている。アデレイド役の人は、マクイーワン版のフィッツジェラルドとよく似ている。ジョージー役トルーディ・スタイラーは大きな目と口で、ペネロープのようだ。スティングの奥さんらしい。ルビーとは別に、車ごと焼かれた女性の死体が見つかり、これが事件解決のカギになる。ルビーと同じ頃行方不明になった、ガールガイドのパメラだ。マープルは、友達にきっと何か打ち明けているはず・・と確信している。数人の友達から話を聞き、そのうちの一人フロレンスに目を付ける。何かを隠しているらしいフロレンスを問い詰めるマープルの怖いこと。じっと見すえ、硬い態度を崩さず、白状するまで手をゆるめない。普通だったら厳しさの中にやさしさをまぜ、硬軟使い分けてじわじわいくものだが、そういうのなしのストレート。いざとなればマープルはそういう態度も取れるのね。で、ルビーと思われた死体は実はパメラで、焼かれた方がルビーで。こんな面倒なことしたのは、ルビー殺しのアリバイ作るためで。でも、すり替わりがばれちゃうと、自動的に犯人もわかっちゃう。だってジョージーは、パメラの死体を見て、ルビーだって証言しちゃったんだから。マクイーワン版と違い、こちらは原作通りジョージーとマークの犯行。ただ、マクイーワン版の方は犯行の再現シーンをちゃんと入れてくれたけど、こちらのヒクソン版はなし。セリフだけですませちゃったのがちょっと残念。本部長のメルチェット、引退したクリザリング、そしてばあさん猫マープルまで相手にしなきゃならないスラック警部。嫌なやつなんだけど憎めない。密かに応援しちゃったりして。

予告殺人

これは一回1時間で、3話完結という作りか。「書斎の死体」と同じだ。だから展開はゆっくりだし、わりと原作に近い。ギャゼット新聞は地方紙だが、それだけにどこの家庭でも購読している。その日の広告の中に、妙なのがあった。殺人の予告である。リトル・パドックスの女主人レティには全く覚えがない。同居している遠い親戚の兄妹の兄の方・・パトリック(サイモン・シェパード)の悪ふざけに思えたが、そうではないらしい。そのうち村人の何人かが好奇心にかられて次々に訪問。イースターブルック大佐と、その若い妻ローラ(シルヴィア・シムズ)。スウェットナム夫人と、その息子エドマンド。鶏や豚を飼い、女二人で暮らしているヒンチとマーガトロイド。ヒクソン版には、マクイーワン版のような余計なほのめかしはなし。ハーマン夫人は牧師の妻で、マープルの遠い親戚。リトル・パドックスの住人はレティ、パトリックとジュリア(サマンサ・ボンド)の兄妹、レティの古い友人ドラ、下宿人のフィリッパ、料理人のハナ(原作ではミッチー)。予告された午後7時(原作では6時半、マクイーワン版では7時半)、突然明かりが消え、男の声と懐中電灯のまぶしい光・・そして3発の銃声。一騒ぎの後、明かりがついて、みんなが見たのは倒れている男・・スパ・ホテルの受付ルディの死体・・と言うか、死体なのに動いていたけど。そばには銃が落ちていて。事故か自殺か。捜査を担当するのがクラドック(ジョン・キャッスル)。スコットランド・ヤードではなく、ミルチェスター警察だと言っていたな。マープルとも初対面のようだ。マープルの方は彼を知っていたようで。彼はマープルの古い知り合いクリザリングの名付け子なのだ。シェパード、シムズは前に書いたから省略するとして、ボンドはジョディ・フォスターによく似ている。「なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?」に出ていたらしい。ヒンチ役の人は「ハロウィーン・パーティー」に出ていたらしい。「らしい」というのは、思い出せないからなんだけど。でも今回はキャッスルについて書く。彼はこの作品と「鏡は横にひび割れて」にしか出ていないようだ。クラドックは「パディントン」にも出ているのに、スラックに変えられていた。いや、別に彼も好きですけどさ。とにかくクラドックファンにとっては、この「予告」はとっても貴重。長尺だし、はっきり言ってマープルと同じくらい出番がある!

予告殺人2

マープルはリトル・パドックスの住人とは直接関係がない。偶然スパ・ホテルに滞在していて・・それもこれもやさしい甥のレイモンドが、伯母のリウマチを心配して、奮発してくれたからなのだが・・受付のルディが彼女の小切手の金額を改ざんしているのに気づいた。そんな小悪党が、突然あんなハデなホールドアップなんかするだろうか・・と、興味持って。ハーマン夫人が知り合いなのを利用してホテルから移り、しばらく泊めてもらうことに。詮索好きな老婦人装ってリトル・パドックスを訪問。クラドックとは別の角度からいろいろ調べる。まあ彼女のやり方はもうわかってるから省略するとして・・クラドックだけど・・冷静で慎重で。感情的になることもなく、先入観も持たず。マープルの意見にも耳を傾ける。何度も書いているが、彼は金髪の美男で男性的で。それでいてマープルに何か言われて赤くなるとか・・純なところも。マープルは明らかに彼が大好き。彼を見ているのが好き。美しいものを見て楽しむというのはよくわかる気がする。いくら年を取っていても、未婚も既婚も関係ない。心はいつだって乙女のまま。見るだけでなく話ができたら、こちらの言うことに耳を傾けてくれたら・・もう最高の気分!彼がいくつなのかは不明だが、たぶんキャッスルよりは若いだろう。この頃の彼は40代なかば。美青年と言うには年を取りすぎだが、落ち着きがあり、端正な感じ。彼は「ロボコップ3」の悪役で知られているらしいが、私はまだ見ていない。「ポアロ」の「エッジウェア卿の死」では被害者役。残忍で冷酷という設定だったが、まあ顔立ちから言ってそういう役も似合うのだろう。若い頃の出演作としては、「冬のライオン」「ラ・マンチャの男」「欲望」などがある。偶然だが私はこの三本を大昔輸入ビデオで見たことがある。ピーター・オトゥールやデヴィッド・ヘミングスのファンだったので、通販で購入したのだが、もちろん字幕なし。「冬」は二本組で長たらしいだけだし、「欲望」はさっぱり意味がわからない。おまけに途中で何度か映像が切れてしまう。不良品かとも思ったが、ヌードシーンか何かをカットしていたのかも。当時のことだからかなり高価な買い物だったが、どれもこれも一度見て終わり。今考えればアホなことしたと思うが、DVDをレンタルして見直せば、少しは評価も変わるかも。それにしても・・いくらつまらなくても、キャッスルのようなハンサムが出ていれば・・気づくはずなんだけどなあ。

予告殺人3

話を戻して・・クラドックの出番は多く、いろいろな表情を見ることができる。スキのない冷たそうな表情の時もあるし、ニコッと笑ったりもする。でも彼が笑うと私は「あッ、違うんだけど・・」と思ってしまう。彼らしくないと思っちゃう。冷たく無表情な方が彼らしいと思うんだけど・・と言うことはやっぱり悪役向き?え?もっと事件のことちゃんと書け?・・私思うわけです。レティは実はシャーロット・・ロティだった。姉のレティは投資家ゲドラーの秘書をしていたけど、父親が死ぬと妹ロティの世話をするため退職。ロティは甲状腺の異常のため人前には出なかったが、スイスで手術を受け、成功する。ゲドラー夫妻には子供はなく、ゲドラーの妹ソニアは結婚を反対され疎遠に。彼の遺産は妻のベルに、ベルの死後はレティに渡ることになってる。ところがそのレティがあっけなく病死。ロティは姉に入るはずの遺産をあきらめきれず、レティになりすまし、今や重体のベルが死ぬのを待っている状態。姉妹両方を知っているドラにはわけを話し、協力してもらっているが、どうも彼女はおしゃべりだし不注意だし危なくて仕方がない。おまけにスイスにいた頃の姉妹を知ってるルディが現われ・・。と言うわけで、レティ・・いやロティ・・ええい面倒だ!犯人は・・ルディを、ドラを、さらにはマーガトロイドまで殺す。でも新聞に広告出すなんて・・。自分とルディの関わりは誰も知らない。密かに彼を呼び出し、イースターブルックから盗んだ銃で殺せばいいじゃん。彼は小悪党だし、警察はそっちの線で調べる。ドラの始末だって、彼女は体調悪いし頭はぼけ始めてるしで、誤って薬飲みすぎたで通せるじゃん。ああやって世間の目をリトル・パドックスに集めたり、狙われているのは自分だとお膳立てしてしまうと、もう誰も事故死とは思ってくれない。そのうちソニアの産んだ双子ピップとエンマの仕業ではないかということに。レティが死ねば遺産はソニアを通り越して双子に行く。パトリックとジュリアがその双子なのでは?・・で、あれこれあってラストはパトリックとジュリア・・実はエンマと、エドマンドとフィリッパ・・実はピップ、二組の美男美女カップルの誕生だ!ハッピーエンドだが、ローラのアリバイがウソなのを、なぜか原作も映画もちゃんと説明せず通り過ぎていて。それが気になって、クライマックス・・追いつめられる犯人・・の流れに、今いち乗り切れず。

ポケットにライ麦を

これはちょっと珍しいくらい、いろんなことをほうり出したまま終わってしまう。投資信託会社社長フォーテスキュー(ティモシー・ウェスト)が毒殺される。続いて若い後妻アデール、女中のグラディスも殺される。グラディスは以前マープルが仕込んだがものにならなかった。フォーテスキューの子供のうち、娘のエレインは省略されている。次男ランス役ピーター・デイヴィソンはどこかで見たような。マクイーワン版「バートラム・ホテルにて」に出ていたらしい。妻パット役フランシス・ロウは、「ポアロ」の「砂にかかれた三角形」のパメラ。パットは三度目の結婚で、「私は疫病神なのよ」が口癖。家政婦のメアリーは、原作とは容姿が違う。同じなのはグレーで統一した服装だけ。捜査を担当するのがニールで、演じているのはまだ若いトム・ウィルキンソン。でも部下のヘイの方に目が行ってしまう。ヘイ役ジョン・グローヴァーはなかなかすてき。内容はあまりおもしろくないので、彼でも見てるしかない。グラディスはかなりの太っちょ。「ポアロ」の「五匹の子豚」に出ているらしい。死体で出てきた時は目が動いていた。「マープル」に出てくる死体はたいていしっかり生きてる(とり直せよッ!!)。原作は犯人逮捕までいかないんだけど、こちらはなぜか交通事故死。その直前なぜか気がくじけて、ランスはパットに泣きつくんだけど、彼女は「私は疫病神なのよ」と言うしかなくて。メアリーの本性についてもあいまいなまま。長男パーシヴァルの妻ジェニファーは、フォーテスキューから4万ポンドせしめたのを機に、離婚すると明言。看護婦だったという過去は省略される。フォーテスキューの認知症もはっきりさせない。一番あいまいなのがランスとグラディスの関係。彼はアフリカとかパリにいた・・海外にいたおかげで容疑者リストからはずれる。でも彼はバートと名乗ってグラディスに近づき、誘惑し、父親殺しの片棒かつがせたのだ。そこらへんのことがちゃんと・・イギリスにいたことが・・説明されてない。たぶん見ている者は、マープルが自宅へ戻り、グラディスからの手紙読むラストを期待したはずだ。グラディスが手紙を書こうとしているシーンはちゃんとあった。手紙に同封されたバートの・・ランスの隠しどり写真。動かぬ証拠。でも映画はそういうのなしで終わっちゃった。もうランスは死んじゃったし、いいでしょ・・ってか?

パディントン発4時50分

こちらの方がマクイーワン版より原作に忠実だが、後半になるとだいぶ変更が・・。冒頭、教会で祈りを捧げる女性が出てくる。そのまま駅に向かい、誰かと会う。男の足だけ見せる。わざとらしくブライアンも見せる。教会は・・彼女が敬虔なカトリックで・・という暗示か。宗教上の理由で彼女は離婚を承知せず、そのせいで殺されるのだ。冒頭から見せすぎという気も・・。列車に乗ってて、偶然殺人を目撃したエルスペス。スラック警部達は信じないが(それでも一通りは調べてくれる)、マープルは信じる。どこかに死体があるはず・・と、以前肺炎になった時雇った家政婦ルーシーを、クラッケンソープ家に送り込む。こちらのルーシーはブルネットで、がっしりしていて、顔立ちもいかつい。乱雑な台所をルーシーがきれいにかたづけるシーンが好きだ。マクイーワン版では、調理のシーンがほとんどだった。原作によればルーシーは32歳。オックスフォードで数学を学んだ才媛だが、その能力を家事に向け、見事大成功。今では引く手あまたの高給取り。クラッケンソープ家でもてきぱき家事をこなし、午後はゴルフの練習と称して敷地内を歩き回り、マープルに頼まれた死体捜し。当主ルーサーが若い頃世界中を旅して集めたがらくたでいっぱいの納屋も、ちゃんと描かれる。石棺の中で死体を見つけるところも。マクイーワン版は霊廟でごまかしていたけど(古美術品・・がらくたを見せるのを省略できるからね)。兄弟の順番もいじってないが、ハロルドは妻と別居中ということにして、アリスを出してこない。彼の殺され方も変えてある。毒殺だと医師のクインパーが怪しく見えてしまうからか。アルフレッドは死なないが、クインパーがわざと黙っていて、ガンが手遅れになるよう持っていく。あと、ジェームズの母で、エドワードの妻でもあったマルティーヌは出てこない。ところでこの作品・・ラストのマープルとクラドックのやり取りのせいで、読者を悩ませる。いったいルーシーは、セドリックとブライアンのどちらを選ぶのか。マープルは見当がついているらしいが、目をきらりとさせるだけ。たぶんクリスティーは、この作品を読んだ女性達が、セドリックかしらブライアンかしら・・と、楽しい予想をくり広げるのを狙って、こういうあいまいな終わり方にしたのだと思う。

パディントン発4時50分2

男性はそういう議論はしないだろう。ネットでもそれをやっているところがあって、ブライアン派が優勢なようだ。金髪で青い目のハンサムで、見た目がよい。妻に先立たれ、息子を育てているという同情を引く境遇。戦争中は英雄だったけど、平和な時代では使い道のない、世渡りべた。ロマンチストでさびしがりやの善人。たぶんルーシーなら彼をうまく教育(調教?)し、ハデではないが円満な家庭を築くだろう。息子のアレグザンダーはしっかり者、その上甘え上手で、問題なし。でも映画でのルーシーは、頼りないブライアンにいら立つ。何かと言うと「君に言われた通りに」・・子供じゃあるまいし、自分で考えて行動できないのッ!!でもクライマックス・・ブライアンは銃を突きつけられてもひるまず、クインパーを取り押さえた。こういう緊急時にはさっと行動できるヤツなのだ。ここで大いにポイントを稼ぎ、ルーシーのハートを射止める。もっとも原作にはこういうエピソードはなし。彼は登場した時と同じ・・成長してない。ブライアン役の人はマイケル・J・フォックスに似ている。ひげなしなのがありがたい。次にセドリックだが、原作でのルーシーは確かに彼に引かれている。彼女は数学が得意だから、セドリックのプラス面、マイナス面を正確に把握していると思う。世間の常識にとらわれず、自由で楽天的。セクシーで、人生を楽しむすべを心得ている。しかしこれらはすべて同じくらいマイナスにも働くのだ。女にだらしがなく、自己中心的。刺激的だが、ケンカの絶えない毎日になるのは目に見えている。セドリック役の人は、どことなくシルベスター・スタローンに似ている。やや退廃的、不健康な感じ。「スペースバンパイア」に出ていたらしい。セドリックに傾いていたルーシーだが、彼が警察の事情聴取で、人妻との情事を得意になって話しているのを偶然聞いてしまう。それで一気に熱が冷めてしまうのだが、原作にはこの部分はなし。とにかく映画ではセドリックをはっきりと脱落させる。いくらルーシーでも、不道徳なことは容認できない。で、少数派としてルーサーと結ばれるという意見もある。結ばれると言っても愛情からではなく、現実的な面で。彼は遺産相続からははずされているけど、長年にわたってケチってためた財産がある。

パディントン発4時50分3

屋敷は長男・・この場合セドリックが相続する。すぐにでも売り払うような口ぶりだが、ルーシーやエマを追い出すほど非情ではあるまい。彼はどうせイビサで暮らしてるし。となれば管理をルーシーがやって・・。彼女の能力を生かすのに、これほど適切な場所があろうか、いやない。ルーサーのおもりだって、そう長くはせずにすむだろうし(おいおい)。で、意外と多いのがクラドック派。私も最初はびっくりしたのよ。ブライアンとセドリックのことしか考えてなかったから。実はクラドックがマープルの考える本命だったなんて。マクイーワン版でキャンベル出してきて、最後に彼が選ばれたのは、これを模しているなんて。ただの・・いつもの・・脚本の苦しまぎれの余計なひとひねりだとばかり・・。私みたいに「えッ、クラドックが!?」とびっくりした人は、そんな兆候あったかしら・・と、あわてて「パディントン」読み返すわけです。ええ、私も読み返しましたとも!!彼は二回、ルーシーと結婚を結びつけている。最初に会った頃は、「こっちがおじけづくほど有能な女性」で、「あれじゃ結婚しようなんて男は出てきません」と、マープルに言う。ラストでは「どっちを選ぶでしょうかね」と、やはりマープルに言う。この二回以外はあまり・・仕事絡みのどうってことない態度。いちおう興味は持ってるだろうけど、仕事が先に来るから、頭の中が女性のことで占領されることはない・・みたいな。彼のファンは私だけじゃないようで。みんな彼だったらいいな・・と思ってるようで。でも映画にはクラドックは出てこなくて、スラックが仏頂面して捜査する。彼の部下レイクがまたいいやつで。いつもちょっとニヤッとしてるような顔してて。クライマックスは原作通り。マクイーワン版みたいに列車の中でなんて奇をてらったりしない。その後の逃走はやりすぎだけど。まあ犯人はばればれなので、推理の妙はあまりない。はっきりブライアン選んで終わってくれたのはよかったと思う。今はまだ愛情はわかないけど、一緒になって三人目の子供が生まれる頃には・・と、マープル。そうそう、今だってブライアンとアレグザンダー、二人の子供抱えているようなもの。あと三人生まれて子供五人になれば、もうどうでもよくなるでしょうよ!!