メッセンジャー

メッセンジャー

これはけなしている人が多いようだ。まあ最後まで(がまんして、あるいは期待して)見て、何かを得られたかというと何もない。ここからが出発点と言われて終わられてもなあ・・。まあ私は時間を無駄にしたとまでは思わないけど、たいていの人は・・。ちなみに私二回見ましたけどね。アメリカの宇宙船マゼランで土星の衛星タイタンへ向かうネルソン大尉。そもそも二年半前、NASAのプロジェクトディレクター、ベックや国防長官に呼び出されたのが始まり。タイタンとトリトン、エリスの三ヶ所から電波が発信されていると。地球外生命体によるものと思われるから、キミ一つ行ってみてくれんかね・・というわけ。すでに国防問題になっていて、中国と競争していると。妻アビゲイルとの別れはつらいけど、こんな任務逃す手はない。約10年かかるし、危険だし、一人だから孤独だけど。もちろんアビゲイルは怒る。自分に相談なく即決めちゃうなんて。まあ任務を受けようが断ろうがこの時点でこの夫婦は終わりなんですけどね。たぶん相談していたら初めは反対しても結局は折れたと思う。でも向こうの人って一緒にいてこそ夫婦だから、距離があって時間がたつと、心も離れると思う。いくらさびしい、会いたい、愛してると言葉をかわしていてもだめなのだ。目の前に実物がいないと。逆に辞退していてもだめになったと思う。この先一生ネルソンは後悔し続ける。アビゲイルの顔を見る度に引き受けていれば・・と思ってしまう。さて、タイタンではメタンの湖の中で発信源の球体を見つける。100円ショップで売っていそうな・・なんて言っちゃあいけないんだろう。でもどうしてもそう思ってしまう。この作品の酷評ではセットがチープとか書いている人がいて、確かにAIとかコンパクトだ。と言うかコンパクトすぎる。と言うかコンパクトにもほどがある。ビートルには計器類あったっけ?マゼラン内部もフェルディナンドに「〇〇しろ」と言うだけでみんなすんじゃうし、うつるのはほとんど一つの部屋だけ。操縦室その他何もうつらない。と言うかあるんだろうか、操縦室。まあ私は別にセットがお粗末とまでは思わないで見ていたけど、ミニマリストの部屋みたいだと思ったのは確か。

メッセンジャー2

逆に凝っていたのはマゼランの形。タイタンではお約束の大嵐の接近。でもビートルは吹き飛ばされもせずそのまんま。で、ネルソンは早速球体に素手で触れるというアホな行動に出る。一人だから止める者がいない。次のトリトンでは二個目を見つけるが、崖を下りたりよじ登ったり。大嵐と同じく、一度球体の入った入れ物を落とすというお約束を律儀に守る。絶対15分じゃ無理だと思うけどクリアーしちゃう。何かリモコンで30秒早送りボタン押したみたいに、次の瞬間には立ちはだかっていた崖を上りきり、ビートルの中にいる。ところで目的地から目的地までの間はスティシスとかいう睡眠装置に入る。眠っている間は夢を見ないはずだが、タイタンで球体にさわったせいか、イメージのようなものを見る。「夢を見ましたか?」というフェルディナンドの言葉。夢とかチェスとかHAL以来お約束になってる。それとフェルディナンドが正常かどうかという思わせぶりな描写。エリスから帰還し、ドッキングしようとした時の異常は、ネルソンをヒヤッとさせる。音声が突然中国語になったりして、見ているこっちもびっくりだ。結局何がどうなっていたのかよくわからないが。エリスではDNAを持つバクテリアを発見して有頂天になるが、見ているこっちはそろそろネルソンの顔に飽きてくる。アビゲイルとの交信にもうんざりだ。確かにこの手のシーンは時間稼ぎになるだけじゃなく、お金もかからないな。ひんぱんにはさまれるそのシーンの間、ストーリーは進展しないで止まったまま。こっちが知りたいのは球体の正体、地球外生命体の正体。球体に素手でさわる度に浮かぶイメージは何を意味しているのか。いや、もちろんくり返されるイメージを見ながら、これらの意味が明かされることはないとわかっているけどさ。作り手にはそこまでの独創性はない。とは言えアビゲイルのことなんか見ている人みんなどうでもいいと思ってる。精神的に不安定になってきているし、ネルソンのことが心配だし、詳しいことを教えてくれないNASAや国防長官達には怒りを感じている。それがどうした。そんなことのためにこの映画見てるんじゃないぞ。地球外生命体の意図は!?

メッセンジャー3

エリスでの任務が完了したわけだから、これからは地球目指して一直線に帰ることになる。球体やバクテリアなど成果も十分。こっちに向かってるとなれば、アビゲイルの心理状態も好転する。希望は何よりの薬だ。ところが・・ネルソンは球体三つを一度に持ってみる。そのとたん厖大なデータが入ってくる。フェルディナンドは何でパンクしないのだろう。と言うかネルソンは何でフェルディナンドがパンクするかもしれないような危険おかすのだろう。長官は以前からネルソンが勝手な行動取るので怒っている。莫大な費用と期間をかけて入手した標本は厳重に保管し、地球へ・・と言うかアメリカへ持ち帰らなければならない。すでに中国の計画は失敗しているから、成果は独占できるのだ。正体のわからないものをむやみにいじくるのは危険でもある。この頃になるとネルソンは暗号化もせず発信しているから、他の国にも筒抜けなのかな。とにかく彼は情報の発信源がオールトの雲あたりと知ると、そこを目指す決心をする。宇宙は会話している、人間は相手がいても聞こえなかっただけ・・何だかわからんがそういうことらしい。タイムスタンプとか量子もつれとか難しいこと言われても何が何だかわからん。時間的にラストが近いのはわかるので、今更宇宙人が現われて何か説明してくれるとも思えない。球体捜しとかアビゲイルとの交信とか、そういうどうでもいいことに時間使って、肝腎のところはスルー。任務を即引き受けたように、この時もネルソンは即別れを告げる。君は君の道を進んでくれとか、あっさりしたもの。オールトの雲までは約38年かかるそうな。ネルソンの年齢は不明だが、着いた頃には70過ぎてるはず。何か行動起こせるとは思えんが。それとこのマゼランはそんな長期の航行想定して作られていないはず。こうなったらネルソンが眠っている間に、遠隔操作で地球へUターンさせたら?あるいは途中まで宇宙人が出迎えに来てるとか。まあどうでもいいか。ネルソン役ブランドン・レイ・オリーヴはラッセル・クロウ風味。彼の髪を刈るのは誰という疑問を書いてる人がいたけど、全くそう思う。私が一番気に入ったのはフェルディナンドの声をやってるマシュー・マーサー。声優の仕事が多いようだが、顔を見せないのがもったいない。