メイフィールドの怪人たち

メイフィールドの怪人たち

この映画、要するに男はいくつになってもバカだと言うことである。バカと言って語弊があるならガキでもよろしい。会社を休む、あるいはリタイアしているから子供で言えば夏休み状態。半ズボンをはき、秘密の隠れ家を作り、合言葉に暗号、秘密作戦にワクワクした少年の日が今甦る。もちろん女の子(今だったら奥さん達)なんか仲間には入れない。こういうのは男だけでやらなくっちゃ!人の家に忍び込み、ゴミを調べ、地下を掘り返し、あげくにガス管を傷つけて爆発、火事にする。彼らは大人だからもう犯罪である。主演はトム・ハンクス。青く澄んだ瞳が印象的だ。何てきれいな目をしているの!今は年のせいか太ったせいか目のキラキラ度は昔ほどじゃない。ハンクス扮するレイは、最近隣りに引っ越してきたクロペック一家が気になる。全く姿を見せない。変な音がする。謎の光がもれる。怪しいゴミを出す。庭を掘り返す。家に近づこうとすると風が吹いて異様なムード。レイの友人アートは歩く軽犯罪みたいな男で、トラブルの元。レイの家にやってくると、いつの間にかレイの代わりに朝食を食べていたり冷蔵庫あさったり。近所の退役軍人マーク役はブルース・ダーン。退役と言うよりやめさせられたのでは?・・と思いたくなるような変人ぶりがばかばかしくもおかしい。作戦・計画を立て、その線に沿ってきっちりやる。命令し、報告を聞くのが大好き。つまり実際に動くのはレイやアートで、彼は上官だから汚れ仕事はしないのだ。待つのは何時間でも平気。全く苦にならない。戦場では待つのなんて日常茶飯。とにかくずれまくっているマークだが、そんな彼がものすごくセクシーな若い美人の奥さん持っているというのがまた笑える。レイの奥さんキャロル役はキャリー・フィッシャーで、こちらはうんと地味め。アホでガキそのまんまの男どもとは違い、女性は現実的である。近くの老人コーネルが突然行方をくらまし、レイの犬が人間のものらしい骨をくわえてくる。コーネルの家に忍び込んでみるとカツラが残されていた。あの怪しい一家に殺されたに違いない。疑惑は疑惑を呼び、男どもは浮き足立つ。いいわ、ケーキを焼いて、それを持ってあいさつに行きましょう。もっと早く行くべきだったのよ。この映画で一番印象に残ったのが、キャロルのこの分別のある言葉。妄想にかられている男どもとは見事に対照的。

メイフィールドの怪人たち2

本当に怪しいのか、レイ達の思い込みなのかどっちつかずの前半が何とも楽しい。みんなで押しかけ、別に化け物ではないクロペック一家との対面もいい。正面から当たってみれば、風変わりで取っつきにくくはあるものの、静かに暮らしている男三人。ところがコーネルの家にあるはずのカツラを、この家で見つけたことから疑惑は決定的なものとなり、レイ達は女どもを追い払い、行動を開始する。ちょっと考えれば高齢のコーネルは事故か病気で病院に入っているのかもしれないし、人間があんなふうに簡単に骨になるわけもない。しかし男は、とりわけこの三人の男はバカでガキであるから、クロペック一家の留守を狙って忍び込み、探りまくるのである。人間にはこういう欲望ってあると思う。真実の追究と言えば聞こえはいいが、やってることはすでに犯罪。もう一人、自分は加わらないけど彼らの行動を見物して喜ぶ若者も出てくる。自分一人じゃもったいないからと友達も呼ぶ。覗き趣味、高みの見物、何かあっても自分は安全。怪しい一家のうち若いハンスは「メンフィス・ベル」に出ていたコートニー・ゲインズ。老人の一人はヘンリー・ギブスンという人で、この人はすばらしい妖気の持ち主。小柄でお化粧したような顔立ちで女性っぽい。狐のお面みたいな感じ。怪奇屋敷のホスト(ホエールの「魔の家」にぴったり!)、人体実験に夢中なナチの医師・・。あまりにもすばらしいキャラクターなので、この映画のありきたりな結末のつけ方には失望させられた。高名な医学博士の家を火事にし、コーネルは急病で入院していたことがわかり、地下からは何も見つからず、自分達のアホさかげんを思い知ったレイ。アートやマークは全くこりていないが、レイは善人なので自分の行動を後悔する。そこらへんうまくまとめて、クロペック一家を怪しいままで終わらせて欲しかった。正体不明のまま突然姿を消すとかさ。それを、やっぱり彼らは殺人鬼だったと正体をあらわにし、バカに見えたアート達が一躍ヒーローになってしまう結末にがっくり。それまでやった彼らの迷惑行為がみんな帳消しになってしまうことには首を傾げたくなる。彼らの行為は犯罪だし、彼らのクロペック一家に対する態度は礼儀に欠ける。ほとんどいじめ、嫌がらせなので、見ていてクロペック一家に同情してしまったくらい。人は理解できないもの、よそ者を恐れ、結束して排除にあたるのだ。