マイ・ブックショップ

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フローレンス(エミリー・モーティマー)は夫を戦争でなくして16年たつ。海辺の小さな町で書店を開くが、たやすいことではなかった。銀行は融資を渋り、慈善家のガマート夫人(パトリシア・クラークソン)はあそこは芸術センターにするつもりだったのにと、いやがらせしてくる。孤軍奮闘のフローレンスだが、そのうち助手として小学生のクリスティーンを雇う。彼女は本は嫌いと公言してはばからなかったが、仕事はちゃんとやってくれて頼りになる。町のはずれの高台にはブランディッシュ(ビル・ナイ)という偏屈な老人が住んでいる。彼には様々なうわさがあったが、いいお得意様だった。フローレンスは彼が気に入りそうな本をせっせと送り届ける。そのうち彼女はベストセラーになっている「ロリータ」を店で売るべきか迷い、ブランディッシュの意見を聞くことにする。映画の前半は書店を開き、経営が軌道に乗るまでの上り調子なので安心して見ていられる。しかし後半は下り調子。ガマート夫人は法律を盾に次々にフローレンスを追いつめる。クリスティーンがやめさせられる。代わりに助手として入り込んだミロは裏で強制立ち退きに手を貸す。フローレンスをだまして恥じるところがない。ガマート夫人に直談判に行ったブランディッシュは、その帰りに発作を起こし、帰らぬ人に。何もかも失ったフローレンスは傷心のうちに町を去る。舟を見送ってくれたのはクリスティーン一人だが、彼女は一冊の本を抱えていた。本が嫌いだったはずなのに。監督はイザベル・コイシェで、見るのは三作目だが、はずれがない。海辺の町の景色、本の並ぶ店内、荒れ果てた感じのブランディッシュ邸の門。設定は1959年らしい。いくら話題でも「ロリータ」を250部注文というのは多すぎないか?ブランディッシュは自分が急死するとは思っていなかっただろうけど、遺言でフローレンスにお金残してやろうとは思わなかった?冒頭とラストにナレーションが入るが、これは成長したクリスティーンだとわかる。成長した彼女は書店のあるじだ。フローレンスがその後どうなったのかは不明。原作は日本でも出ているが、かなり暗い内容らしい。映画の方はフローレンスが書店のあたりから火の手が上がっていることに気づく。これはクリスティーンの仕業で、放火は犯罪だけど、見ているお客は溜飲を下げる。少しは心が晴れる。ミロ(ジェームズ・ランス)の髪型が「サンダーバード」のバージルみたいなのが笑える。顔も似ている。ナレーションはジュリー・クリスティ。