木洩れ日の中で

木洩れ日の中で

ピーター・フォンダの訃報にはびっくりした。時々思いがけなく出演していて・・「CSI:NY」とか・・ああ、まだ元気でやってるんだと思っていたから。彼の代表作はもちろん「イージー・ライダー」だが、私は見ていない。どこかで追悼放映してくれないかしら。私が最初に彼を見たのはたぶん「世にも怪奇な物語」。出番は少なかったけど印象は強烈で。どの批評見ても彼のことなんかほとんど触れてないけど、あの貴公子ぶりにノックアウトされたのは私だけではありますまい。したがって、あまりにもかけ離れた「イージー・ライダー」は見る気になれませんでしたのオホホ。さて、この映画のことは全く知らなかった。日本では未公開で、DVDも出ていない。こんないい映画がなぜ?彼がアカデミー賞にノミネートされていたことも知らなかった。だって彼ほどアカデミー賞と無縁に見える俳優もいないでしょ?でも彼にこんなすばらしい出演作があったなんて。しかも堂々の主演!!今回見るのは二度目。いつももう一度見なきゃって思ってはいたけど、他に見るものいっぱいあって。でも今回は見ましたよ。見ながら何となくクリント・イーストウッドあたりがやりそうな役だな・・なんて思ってた。この時のピーターは50代後半で、今考えりゃ若いけど、最初に見た時は老けて見えた。今回見て、そんなに老けてもいないじゃん・・と。最初に見た時から今日までの間に、もっと年を取った彼を(他の作品で)見たからかな。う~ん、でも待てよ。この映画とあまり変わらない頃、「エスケープ・フロム・L.A.」で波乗りやってたんだよな。あまりの落差に唖然。で、話を戻すと、50代後半のイーストウッドなら、こんな枯れたキャラなんかやらないだろうと。もっと現役バリバリでギラギラしていて。70か75過ぎりゃ観念してこういう役やるだろうけど。それにしてもアカデミー選考委員のバカ。何で彼を選ばないのよ。誰が選ばれたんだっけ?ジャック・ニコルソン?オエッ!!でもいいんだ、選ばれなくても。演技のすばらしさに変わりはないんだから。製作にジョナサン・デミの名前がある。この人も数年前に亡くなったんだよな。冒頭は美しい風景。川の流れ、木々の間を洩れる太陽の光。だからこういう邦題つけたんだろうな。何となく「いつかあなたに逢う夢」を連想させるけど、違うのは養蜂の仕事がていねいに描かれること。

木洩れ日の中で2

素人からみると巣箱を置いておけば後は蜂が勝手に蜜を集めてくれるように思えるけど、実際は咲く花によって、時期によっていちいち巣箱を移動させなければならない。人を雇うこともあるけど、たいていは一人でやる。ユーリー(フォンダ)は六年前に妻を病気でなくした。息子のジミーは刑務所にいる。嫁のヘレンは家出。そのため孫娘のケイシー(ジェシカ・ビール)とペニーを育てている。安い中国産の蜂蜜のせいで、国産は押され気味。害虫など問題も多い。生活にゆとりはない。ユーリーは寡黙で世捨て人のようなところがある。保安官のビル(J・ケネス・キャンベル)にもそっけない。どうやらジミーが有罪になったのは彼のせいらしい。と言って彼は当然のことをしたまでで。後でわかるが、ジミーはエディ(スティーヴン・フリン)、フェリスと組んで現金輸送車を襲ったらしい。つかまったのはジミーだけ。ユーリーはエディ達には関わりたくないが、家出したヘレンが彼らのところへ転がり込んだらしい。ジミーの頼みで家に連れ帰ることにする。最近ケイシーはボーイフレンドができて、出歩くようになった。髪を染めたりチャラチャラした態度で、厳しいユーリーに反抗的。ユーリーからするとこのままじゃジミーとヘレンの二の舞だ。たぶんヘレンが妊娠したせいで、ジミーを結婚させざるをえなくなったのだろう。若すぎて愚かな二人は片方は刑務所行き、片方は子供を捨てて家出。戦争を生き延びたユーリーだが、足を痛めた。重労働のせいで腰痛もある。時々床に寝る。ソファで休むよりこっちの方が楽。やっとエディと会い、クスリで眠らされているらしいヘレンを車に乗せる。酔って騒ぐ彼女を、エディ達も持て余したようで。疲れてほとんど居眠りしながら運転するユーリー。目が覚めたヘレンは騒ぎ出すし、家に戻っても一騒動。ペニーはコニー(パトリシア・リチャードソン)に助けを求める。彼女は看護師で、しばらく前からユーリーが家を貸している。彼女は入院を勧めたが、ウーリーは断る。彼はコニーのことが気になっているが、一歩を踏み出す気になれない。彼は幼なじみと結婚し、父の仕事を継いだ。これから少しは楽ができるかという矢先、妻は死んでしまった。

木洩れ日の中で3

一方コニーの方は二回離婚し、幸い子供はなし。この映画を見ていてちょっと残念に思うのは、コニーのキャラ。聞かれてもいないのに自分のことしゃべるが、今はフリーだし、子供とかしがらみもないから、付き合ってもオーケーよ・・と、売り込んでる感じ。静かで落ち着いた性格と言うより、よりよい人生を求めて・・それこそダンナを三度でも四度でも取り替えそうな感じ。そういうテキパキしたタイプというのなら、それはそれでかまわないけど、そのわりには表情やしゃべり方が、いちいち重い。かぶさるような、垂れこめたようなヘアスタイルも重い。一見ユーリーにお似合いの伴侶に見えるけど、今回見たら違和感を感じた。ヘアスタイル一つで女性の印象は違ってくるのだ。さて、暴れていたヘレンもそのうちクスリが抜けて、落ち着いてくる。反抗的だったケイシーも、ボーイフレンドに会いたいのをガマンして、いつの間にかいい子に。元から祖父思いのペニーは別として、ヘレンとケイシーの変化は都合よすぎ。ユーリーは巣箱の移動や採蜜を黙々とこなす。時には深夜まで。生き物相手だし、納期も決まってる。そのうちヘレン達も手伝ってくれるように。ただ、もう一つ厄介なことがある。輸送車を襲った時、エディやフェリスは気がつかなかったが、ジミーはバッグに入った10万ドルをくすねていた。銀行が申し立てた被害金額との差に、エディ達は不信感を抱き、ジミーが持ってることをヘレンから聞き出してしまった。自分達に渡さないと家族に危害を加えると脅す。再び面会に行ってジミーに話すと、彼は自分の行動を悔いるどころか怒ったり嘆いたり。しかしどうにもならないので、ユーリーに隠し場所を教える。警察に助けを求めるわけにはいかない。ジミーの余罪がばれてしまう。あと少し耐えれば、出所した後その金で楽ができると考えているジミーには呆れてしまう。この三人の起こした事件のことはあまりはっきりしない。ジミーはエディ達のことは黙っていたのか。襲われた方は犯人が複数だとわかっているはずだが。また、ジミーが金を隠したということは、つかまるまでにいくらか時間があったってことだ。つかまったのはなぜなんだろう。

木洩れ日の中で4

あと、何年かすれば大金が入るとわかっていてヘレンは家出したことになる。よほどユーリーがつらくあたったのではないか。普段は寡黙な彼だが、時々言いすぎてしまう。コニーにも言いすぎたけど、結局あやまっていなかったな。仕事のせいですぐには金を捜しに行けずにいると、待ちきれなくなったのか、エディ達がやってくる。隠し場所は養蜂場だとユーリーが言うのを聞いて、蜂でエディ達をこらしめるのかと思ったのは私だけ?でもそれをやっちゃうとコメディーになっちゃうからな。この映画はあくまで真面目、ふざけたりしない。暗い中を車で沼まで行く。金はジミーが言った場所にちゃんとあった。有頂天になってる二人。ユーリーはスキを見てエディの銃を沼に蹴り入れる。フェリスはナイフを取り出すけど、ここで彼を殺しちゃうと、帰れなくなる・・とエディが止める。夜だし、彼らには道がわからない。で、戻るけど、エディはユーリーの背中を刺す。あらッ、大変!その頃にはビルに連絡が行っていて、エディ達はつかまる。ただ、ビルには彼らが銃を持っていないことはわからない。もしかしたら持ってるかもしれない相手に、一人で近づいていくのは危険すぎるね。ユーリーは入院。コニーはどう見たって看護師ではなく、医師に見える。金の件はビルがうまく取り計らってくれる。ジミーやユーリーが関わってるとわかるとややこしくなる。さすがにジミーも心を入れ替え、真っ当に生きたいと宣言。たぶん来年には出られるだろう。家で母子三人が楽しそうなのはいいが、そうなるとユーリーは自分の居場所がない。でもコニーがいるから大丈夫。刺されたユーリーが死んじゃうという結末もありだと思うけど、それだと悲しすぎるから、こんなハッピーエンドにしたのだろう。てなわけで静かでたんたんとしていて、人によっては退屈で眠気を催すかも。でも私は一つ一つていねいに描かれる養蜂や採蜜の仕事は見ていて飽きなかった。ユーリーは長身で、足が長く、ちょっと猫背。いかにも腰や膝が悪そうな感じ。機敏な動きはできないけど、一つ一つ着実にやっていく感じがよかった。また、ピーターはネットをかぶっているけど、手袋はせず、腕は剥き出しのまま。そこは感心した。私だったら蜂が怖くて・・。