アレックス・クロスシリーズ

コレクター(1997)

たぶんこれは最初民放で見たんだと思う。他の人同様私も最初は1965年のウィリアム・ワイラー版のリメイクだと。でも違った。とらわれたヒロインの強いこと!ついには逃げ出してしまうではないか。いかにも現代風だ。それにしても犯人は誰だったんだっけ?その後DVDを買った。原作・・「キス・ザ・ガールズ」が邦訳されていると知ったのはだいぶたってから。「スパイダー」の原作とこれとは読んだ。アレックス・クロス物は他にもあるようだが、読んでいない。モーガン・フリーマンはもう年だからクロス役はムリ。映画も作られないだろう・・と思っていたら・・DVDが出たようで。「バーニング・クロス」・・クロス役はタイラー・ペリーで、なぜかジャン・レノが出ている。年齢的にはペイリーの方が原作のクロスに近いが、彼はコメディーが多いからイメージが・・。さて、冒頭ちょこっとうつる少女はミーナ・スヴァーリか。カサノヴァの最初の犯行。独白が流れるので、声やしゃべり方から犯人わかっちゃうのでは・・と思ったが、うまくぼやかしてあった。これの次にジェントルマン・コーラー・・紳士の訪問者の初めての犯行が続くはずだが、映画ではカット。最初から犯人が二人いるとわかるとまずいからか。クロスはワシントン市警の刑事であり、心理学者であり、ベストセラー作家でもある。原作だと「スパイダー」の事件の方が先なので、ソンジのことを書いて売れたことになっているが、映画ではまだその事件は起きていないから、何を書いてベストセラーになったのかは不明。夫を殺し、自分も死のうとした女性を説得し、思いとどまらせるエピソードで、クロスがどんな人物かわかる。冷静で頭脳明晰、しかも温かい人柄。これがブルース・ウィリスだったら説得に失敗し、メソメソ泣き、頭を丸めて田舎に引っ込み、いつまでも引きずることだろう・・って「ホステージ」かよッ!ある時、クロスの姪ナオミが失踪。ワシントンにいるクロスにとって、ナオミの通ってる大学のあるノース・キャロライナは管轄外。しかしじっとしてはいられない。ナオミの母親でなくたって、警官が身内にいればどこへなりと飛んで行って、捜査に加われるはずと思うだろう。白人に比べ、黒人の捜査はいいかげんにされがちという不安もある。向こうへ着き、署を訪れるが2時間も待たされる。それもそのはずこちらでは八人の女性が失踪。そのうち二人は死体で見つかり、今また三人目が発見されたところ。

コレクター2

署長役はブライアン・コックス。若手刑事ラスキン役はケイリー・エルウィズ。この頃の彼はまだ若く、ハンサム。50年代60年代の雰囲気がある。好青年役は「ドラキュラ」くらいで、「ツイスター」では嫌なやつだったし、「ソウ」では太り始めていた。「花の命は短くて太る要素のみ多かりき」・・ヴァル・キルマーとかブレンダン・フレイザーとか、あんなに美しかったのにみんな豚まっしぐら。何でかね。エルウィズは・・まあ何とか踏みとどまっているな、よかった。ラスキンの相棒サイクス役はアレックス・マッカーサー。知らない人だが「ヒドラ」に出ているらしい。「午後のロードショー」でやったやつかな。まだ見てない。顔つきがいかにもいわくありげ。原作だとクロスはカサノヴァが警官だと気づき、サイクスを疑う。刑事が犯人というのは反則だが、映画はあまり隠していない。刑事にしてはラスキンもサイクスもやや不真面目な感じ。あんまり一生懸命やっていないように見えるので、二人のうちどちらか、あるいは二人とも犯人なのでは・・と思える。ラスト近くで、ラスキンがケイト(アシュレイ・ジャド)の家に現われ、食事作りを手伝うので、サイクスの方が襲ってくるのかな・・と思ってみたり。でも真犯人はラスキンの方だった。終わりの方ではサイクスは姿を見せず、思わせぶりなわりには出番なし。話を少し戻して、三人目発見現場でクロスはFBIのクレイグ(ジェイ・O・サンダース)に会う。彼は「スパイダー」にも出ている。私はこのサンダースのおっさんが好きだ。体がでかいが、顔もでかい。貫禄があって、頼もしい。クレイグによれば、今のところ手がかりは何もないようだ。後にカサノヴァと名乗るやつが、クロスに接触してくる。そのうちインターンのケイトが誘拐される。一人減ったから補充したのだ。ケイトはどこにいてもひときわ目立つ。美しさだけでなく、知性や強さがある。ジャドはまさにはまり役。女医と言うと「シティ・オブ・エンジェル」のメグ・ライアンを思い出すが、ああいうふわふわした感じではなく、地に足がついている。人の命を救うため常に全力を尽くすが、力が及ばない時もある。彼女はキックボクシング(原作ではカラテ)をやり、怒りを発散させる。ケイト役は大変だったと思う。とらえられた場所から逃げ出し、森の中を走り回る。大変さを出すためか、カメラをゆらしまくる。最後は追いつめられ、崖から身を投げる・・これじゃあ「ランボー」だ!

コレクター3

救出され、少し回復すると声明を発表する。その時の低い声が落ち着きと知性を感じさせる。犯人への怒り、まだとらわれている女性達への思いやりと危惧。気丈にふるまっていても、自分だけ助かったという罪悪感に苦しむ。逆に言うと、犯人にはこれらすべて・・他人への思やり、罪悪感などが欠如しているし、欠如していることにも気づかない。ケイトを治療する女医は「ミディアム」などに出ていたロマ・マフィア。さて、クロスはケイトが打たれたシストールという薬から、ルドルフという形成外科医に目を付ける。ここらへんから話はわかりにくくなる。一度見たくらいじゃルドルフがなぜいきなり登場するのか・・彼が紳士の訪問者だとして、カサノヴァとどう繋がってくるのかよくわからない。おまけにルドルフを見たケイトは、あいつがカサノヴァと断言。クロスは逮捕しようとするが失敗し、取り逃がす。FBIには内緒にしていたので、抜け駆けされたクレイグはかんかん。クロスはナオミが心配であせり、ケイトも思い違いしたということか。ルドルフの行動の意味もよくわからないし、ここらへんはもたつく。話を整理すると、女性を誘拐してハレムを作り、言うことをきかせ、従わないと殺すカサノヴァというのがいる。もう一人、若く美しい女性を狙うという点では同じだが、切り刻んで殺す紳士の訪問者というのもいる。最初のうちは一人の人間がやってるように思えた。ルドルフがシストールを大量に仕入れ、それがケイトに使われたのだから。しかしノース・キャロライナとロサンゼルス・・神出鬼没すぎる。クロスは二人の男が互いに成果を競い合っているのではないかと分析する。紳士の方はルドルフで間違いないが、カサノヴァの方はまだ不明。ルドルフの家にあった写真から、大学教授サックスがカサノヴァとして逮捕されるが、クロスは彼はただの変態で、身代わりにされたのだと思っている。原作には、カサノヴァ・・ラスキンとルドルフがなぜ結びついたのかが説明される。他の誰とも違っていて、自分のことをわかってくれる人は誰もいないと思っていた。孤独だったが、ある日突然仲間が現われた。双子のように心が通じ合い、二人でいて初めて完全になれるような存在。そのうちルドルフの方は町を出、ラスキンは残る。一緒ではなく、一人でやりたくなった。でもこっちとあっちとでそれぞれ獲物をつかまえ、メールで写真をやり取りし、競い合い、それがとても楽しくて。だからルドルフが倒されるとすごくショックで・・怒りがあふれ・・。映画の方はそういうの・・深い結びつきはなくて、ただのライバルみたいな感じ。

コレクター4

ルドルフ役トニー・ゴールドウィンは、俳優の他に「恋する遺伝子」の監督やってる。あれはジャド主演だったな。それにしてもこの映画でのジャドの美しさ・・まさに絶頂期。顔はすごく小さい。しかも丸顔。つんとした鼻、眉間のシワ、プリッとしたほっぺた、つぼみのような唇、知性を宿した瞳。でも最近の写真見るとびっくりする。プリッとしたほっぺたは、若い時はいいけど年を取ると始末に困る。他は重力に負けて垂れ下がるのに、目の下だけはふくらんだまま。キャロル・リンレーとかメグ・ライアンとか。他にも目のまわりには細かいシワ。あ~美女も年には勝てません。ラストの対決は、牛乳パックがうつった時点で先が読めてしまう。ほらほら・・抱き合うのは後にして・・まず、ガスの元栓しめろ!!クロスは自分は怒りや憎しみに左右されないなんて悟ったようなこと言ってたくせに、ラスキンの毒のある言葉に・・あらら、撃ち殺しちゃったわ。そりゃあナオミのことあんなふうに言われりゃどんな聖人だってがまんできないわさ。ケイトはそこまでいかずにすんだけど(原作ではレイプされる)、ナオミやその他の女性は・・。助け出されたとは言え、心の傷は深い。裁判になればラスキンは何を言い出すやらわからないし、今のうちに口封じってか?ところで私がこの映画で一番印象に残ったのが、ラスキンがケイトに話す防犯の心得。彼女は護身用にキックボクシングを習っているけど、それだけじゃだめ。夜も明かりをつけておく、時々行動パターンを変える、番犬を置く、防犯ベルを身につける、コードレス電話は盗聴されやすい、ゴミは夜ではなく朝出す。で、このゴミ袋のことからラスキンは正体あらわすんだけど、考えてみりゃゴミこそ個人情報の宝庫。その人の生活ぶりがわかる。でもほとんどの人が無頓着。最初にこの映画を見た時もこの部分が心に残って・・そうか、気をつけなきゃいけないんだと・・。そのぶん犯人誰だったか印象薄れちゃって。ちなみにこの部分は原作にはなし。例によってクロスとケイトは会った時から引かれ合い、ついには結ばれるが、別れる。お互い性格が強すぎてとてもうまくはやっていけないとわかってるから。それにクロスは次の事件でまた別の女性と仲良くなるだろうし・・。リポーター役で「ヒドゥン」などのラリー・セダーが出ていたらしいが、気がつかなかった。あと、ラスキンの声を池田秀一氏がやってるのがうれしかった。

スパイダー

これと「コレクター」には原作があると知って。古本屋で見つけて読んでみたら・・順番が逆なのね。「スパイダー」の方が先で「コレクター」が後。内容はかなり違っていて、それはたいていの映画がそうなんだけど。「テイキング・ライブス」なんか、他人の人生生きるっていう設定だけ同じで、あとは全然違っていたし。「D-TOX」も違っていたな。こういう類の小説は、読者を喜ばせるためか主人公は事件で出会った異性と結ばれる。事件そっちのけでいちゃつき、いい気なものだ。こちらの「スパイダー」の原作「多重人格殺人者」の主人公アレックス・クロス刑事も、シークレット・サービスのジェジーと恋に落ちる。クロスは38歳だから、32歳のジェジーと結ばれても違和感はないが、映画ではクロスはモーガン・フリーマンで、38歳と言うより83歳の方に近いから、ジェジーとは何もない。師匠と弟子、父親と娘的雰囲気。クロスは「コレクター」の原作「キス・ザ・ガールズ」では31歳のケイトと恋に落ちる。でもやっぱり映画(ケイト役はアシュレイ・ジャド)では何もない。まあ・・事件ごとに新しい女性と恋に落ちるなんて安易な設定だと思う。でも読者はそれを期待し、喜ぶんだろうなあ(私は期待も喜びもしないけど)。さて・・クロスはおとり捜査の失敗で仲間トレーシーをなくし、落ち込んでいる。そんな彼を引っ張り出そうというのか、電話がかかってくる。ワシントンD.C.の聖カテドラル小学校は、要人の子弟が通うので、シークレット・サービスが常駐している。そのスキを縫って上院議員の娘ミーガンが誘拐される。犯人は教師のソンジ(マイケル・ウィンコット)。クロスに電話をかけ、ミーガンの靴を送りつけ、彼が捜査に加わらざるをえなくする。ソンジは、自分がどんなに優秀か、まわりに誇示したいタイプのようだ。ミスをしたというので仲間はずれにされていたジェジー(モニカ・ポッター)を、クロスはソンジをよく知っているという理由で捜査に引き入れる。ソンジは身代金を要求してくるわけでもなく、狙いがよくわからない。そのうちクロスは学校でミーガンと仲のいいディミトリ(アントン・イェルチン)が、ロシア大統領の息子だと知る。ソンジの本当の狙いはディミトリなのではないか。彼はリンドバーグの息子の誘拐事件に興味を持っているようで、自分も誘拐犯として後世に名を残したく思っているようだ。

スパイダー2

原作だとクロスは妻のマリアをなくし、二人の幼い子供達を祖母ナナの助けを借りて育てている。つまりいつでも恋愛オッケー、再婚オッケー状態。映画だと長年連れ添っていると思われる奥さんがいて、二人暮らしのよう。ジェジーと出会っても恋には落ちない。題名からもわかるが原作ではソンジが二重人格なのかどうかがポイント。まあ「真実の行方」なんかもそうだが、こういうのに出てくるのは二重人格に見せかけるため演技をしているってのが多い。催眠術をもくぐり抜ける巧妙な演技。犯罪を犯したのは別の人格の方だからと、つかまっても死刑にはならず病院送り。その後脱走する。でも映画では人格障害は関係なし。大物の子供を誘拐し、有名になりたいと何年も前から周到に計画を練る。常に変装し、どこにも指紋を残さない。事件を大きく報道してもらうため、(「コレクター」で有名になった)クロスも引っ張り出す。凡庸なFBI連中だけじゃ自分にたどり着けない。原作だとミーガンと一緒にマイクルという少年も誘拐されるが、むごたらしい遺体で見つかる。この部分は映画ではまずいのでもちろん変更。マイクルに当たるディミトリは誘拐寸前助かる。その際二人の警官が命を落とすが、軽く通り過ぎる(少しは悼め!)。このディミトリがまあホントかわいらしくて・・お人形さんみたい。アントン・イェルチン・・ってどこかで聞いた名前だよなあ・・あれッ!「ターミネーター4」でカイルやった人?いやホントかわゆい~ん。ここで他の出演者のことも書いておく。ミーガンの母親役がぺネロープ・アン・ミラー。「ゴースト・ハウス」の人かな。FBIのマカーシーが「ザ・セル」で見たばかりのディラン・ベイカー。原作に度々出てくるFBIのクレイグはジェイ・O・サンダース。映画では出番ちょっぴり。シークレット・サービスのディヴァインはビリー・バーク。「ブラックサイト」の人かな。まあけっこう知ってる人出てたな。ミーガン役の子はかわいいし演技もうまい。原作だとミーガンはアンデスあたりに連れていかれて農場で労働させられる。救出されるまでに一年くらいかかるけど、その間クロスはジェジーと愛を育み・・ってそういうのは小説ではいいけど映画じゃ許されない(←?)。何やってんだ真面目にやれ!ということに。だから映画では救出されるのはもっと早い。

スパイダー3

ソンジはミーガンをボートに隠していたけど、ディミトリ誘拐に失敗して帰ってくるとミーガンがいない。彼には事情が呑み込めないけど、見ているこっちも「あれ?」となる。ミーガンはどこへ行ったの?自力で逃げ出した?誰かが連れ出した?その一方で身代金要求の電話が・・。マホービンに1000万ドル分のダイヤを入れ、犯人の指示にしたがって受け渡しが行なわれる。場所がめまぐるしく変わるのは「ダイ・ハード3」等と同じ。ハラハラするのは受け渡しが成功するかどうかじゃなく、年寄り(フリーマン)が走り回らせられるからだ。俳優も大変だね。ダイヤは犯人の手に渡るけど、ミーガンの行方はわからない。そんな時ソンジがクロスの前に現われる。公開当時毎日新聞の批評で「よくよく考えると、話に無理がある気もするが」と書いてあったけど、この時のソンジの行動の意味もよくわからない。クロスが1200万ドルと言ってもソンジは聞き流す。1000万ドルのはずなのに・・。で、原作と違ってソンジはクロスに射殺されてしまう。その後どんでん返しがあるが、見ている者にとってはソンジの役回りがあいまいなまま映画が終わってしまう。彼がミーガン、あるいはディミトリの誘拐を計画しているのを誰かが嗅ぎつけ、便乗したのだというのはわかる。誘拐先もわかっているから、ソンジの留守を狙ってミーガンを連れ出し、別の場所へ移す。ミーガンの誘拐は成功するよう仕組み、ディミトリの方は失敗するよう仕向ける。失敗するにしてもその場でソンジがつかまったり射殺されたりしないよう仕組む。ソンジのフリをして身代金を要求するのが狙いだから、彼には逃げてもらわなくちゃならない。身代金を受け取った後はもう彼には用はない。ダイヤのことなんか知らん、ミーガンはいなくなったなどと余計なことをしゃべる前に消さなくては。そのためにはソンジがクロスの前に現われなくてはならないが、彼がそうするであろうことは犯人達も予測していたようで。何回か見ているとこういうのもわかってくるが、最初見た時は結局ソンジは何だったの?という疑問だけが残る。そのせいで映画の出来も今いち・・となってしまう。ソンジがクロスの前に現われるよう持っていくところは、作り手も苦心したのではないか。ミーガンがいなくなり、ディミトリの方も失敗し、困惑しヤケになったソンジは、今度はクロスの前に現われるだろう。

スパイダー4

つかまるか射殺されるかの危険はあるが、最低でもクロスを道連れにしてやる。彼がミーガンのことを言わないのは、またクロスに聞かないのは自尊心のせいか。今までの彼はうまく立ち回り、自分は優秀とうぬぼれていたが、それも今ではぺちゃんこ。困惑し混乱し怒っていると同時になげやりでもある。何しろ切り札のミーガンがいないのだから!ここでのクロスは有能な分析官の面を見せる。それとなく1200万ドルと言い、反応を見る。途中で身代金を要求するなど、犯人の変化に不審なものを感じたからだ。また、ソンジの過去についても聞き出す。幼児期の虐待、その復讐としての家族殺し。これらはうっかりしていると見逃してしまう。いや、気づいたとしてもソンジの行動そのものがあいまいで説得力がないので、せっかくのクロスとソンジの対決もあまりうまくいっていない。うーん、ここらへんは文章にするのは難しいな。お金ではなく有名になることを望んでいるってのはわかる。ミーガンでもディミトリでもだめならクロスとの対決で・・ってのもわかる。彼は自尊心を取り戻したいのだ。それにしても・・何で最初からディミトリ狙わないのかな。学校でのディミトリはシークレット・サービスではなくロシア側に警護されているから、教師の彼でも近づけないのか。でもミーガンが誘拐された後ではロシア側の警護も強化されるはずで・・。さて、犯人にとってはダイヤは手に入れたし、罪はみんなソンジになすりつけられる。あとはミーガンさえ始末すれば、犯人の死による未解決の誘拐事件となる。重要な手がかりを殺してしまったクロスは非難され、ミーガンの両親は一生娘の帰りを待ち続けるだろう。でももちろんクロスはミーガンを助け出す。さて、今まで書いてきたことでもわかるだろうが、私の興味はソンジにある。・・と言うかウィンコットに。原作にくらべその存在感は半分くらい削られているが、それでも印象は強い。最初見た時は変装のせいで彼だとは気づかなかった。ウィンコットと言えば「クロウ/飛翔伝説」「エイリアン4」「三銃士」くらいで、あまりひんぱんに見かけるってわけじゃないが、出ているとしたら強烈な悪役であって欲しい。今回はちょっと中途はんぱだったかな。原作通りの二重人格者ぶりを見たかった!その点は不満だけど久しぶりに彼を見ることができてうれしい。まあ私は「コレクター」よりはこっちの方が好きだな。

バーニング・クロス

タイラー・ペリーと言えば、女装して出てるコメディーシリーズが有名だけど、日本では公開されてないし、DVDも出てないようだ。その彼がアレックス・クロス役だなんて驚きだが、考えてみれば原作でのクロスはまだ若いのだ。彼ぐらいでちょうどいいのだ。原作ではやもめで、子供二人の面倒を母親ナナに見てもらっている。映画ではまだ妻のマリアが生きていて、三人目の子供ができたところ。幸せの絶頂から、妻の死という絶望の淵へ突き落される。クロスはデトロイト市警からFBIへ移ろうと思っている。心理分析官になりたい。その頃ファン・ヤオという女性がボディガードともども殺される。次の狙いはヌネマッカー。こちらは何とか阻止するが、プライドを傷つけられた殺し屋ピカソは、クロスのチームの一人モニカを惨殺。続いてマリアも殺す。同じくチームを組んでいてクロスの幼なじみでもあるトミーは、ヌネマッカーの件の後、自分達も標的になるのではと危惧するが、クロスは一蹴。何が心理分析だよ!!大はずれもいいとこ!!トミーはモニカと恋仲だったから、クロスがみんな自分のせいだと悔やんでいるのを見て、「そうだみんなアンタのせいだ」と思ったことでしょうなあ。トミー役はエドワード・バーンズ。ちょっとおっさんぽくなってきたが、ペリーの隣りにいればまだまだステキに見える。モニカ役はレイチェル・ニコルズ・・「P2」のヒロインか。ピカソ役はマシュー・フォックス。今までのイメージを大幅にチェンジ。スキンヘッドのサイコ野郎。格闘技の試合にまで出ちゃう。最終的な標的はメルシエか。ファン・ヤオもヌネマッカーも彼の会社の重役。メルシエ役は珍しくヒゲのないジャン・レノ。クロスと話をするシーン・・自分がいかに金持ちか見せつけるだけで、(命を狙われているってのに)実のある話を全然しないメルシエと、こんなのは自分にとっては珍しくも何ともない犯罪だと思っているクロスとの、すれ違いが興味深かった。クロスにしてみればとんだ時間の無駄だった。電車を使ったピカソの攻撃はなかなかよかったが、黒幕は実はメルシエというのはありきたり。電話をかけるとかパソコンに向かっているシーンでカメラをメチャクチャにゆらしたり、ぐるーっと回したりバカなことをやってるのにはうんざり。思ったほどひどい出来ではなかったけれど、うつし方のせいでだいぶ減点。