海底世界一周

海底世界一周

今はすっかりさびれてしまったけれど、昔は通りにけっこう店があって、雁木だから雨の心配もなく歩けた。ある日何の店だったかそれとも普通の家だったか、学校へ行く時だったか帰る時だったか、もう覚えていないけど、映画のポスターが下がっているのに気づいた。それがこの「海底世界一周」。気づいたのなら映画館へ見に行けばいいのに行かないで、代わりに毎日そのポスターを見に前を通った。正確に言うとデヴィッド・マッカラムを見るためだ。ポスターの下の方に金髪で黒縁メガネをかけ、伏し目がちの彼がいた。たぶんポスターの少し前から歩くスピードを落とした。立ち止まってしげしげ見るのは恥ずかしい。ポスターを見た後は遠回りをして・・ポスターを見るためにすでに遠回りしているのだが・・美容院のウインドーに飾ってあるマネキンと言うか人形の顔を見るのがお決まりのコースだった。美容院だから首から上だが、その人形の表情が好きだった。ポスターの方は・・当時の映画館は二週間の上映とほぼ決まっていたから、すぐはずされただろう。テレビでもやったのだろうが見る機会はなく、私にとってはずっと幻の映画だった。たまに新聞見てオッとなっても「海底二万哩」の方。何十年もたって、スティーヴ・レイルズバックの作品を集めていた時、ネットで中古ビデオを見つけ、即ゲット。DVDやブルーレイは今のところ出ていない。ゲットしてすぐ見たが、そのままほったらかし。今回久しぶりに見た。マッカラムのことはずっと好きだ。年を取っても「NCIS」に出るなど活躍しているのがうれしい。そう言えば先日新聞にロバート・ヴォーンの訃報が載っていた。「0011ナポレオン・ソロ」でマッカラムと人気を分け合った彼も、80過ぎまでテレビでレギュラー持つなど元気だと知って、喜んでいたのだが・・。さて前置きが長くなったけど、最初にビデオを見て感じたのは、軽い失望感。パンフレットでもポスターでも(日本では)マッカラムが主役みたいに配されているからてっきり・・。そりゃ当時キャストの中で一番知られていたのはマッカラムだろうし。劇場に足を運んだのもたぶん彼のファン。でも彼は主役じゃないの。

海底世界一周2

主役はたぶんロイド・ブリッジス。今の人はあんまり知らないだろうけど、私くらいの年代だとテレビムービーの常連さん。遭難した旅客機の頼れる機長とか、そういうイメージ。でもたぶん一番有名なのは(一部の人にだろうけど)「戦闘機対戦車」の狂ったナチ将校。ボー・ブリッジスやジェフ・ブリッジスのおとっつぁんでもある。私は見たことないけど、「潜水王マイク・ネルソン」とかいうテレビシリーズに出ていたらしい。これは潜水士物だから「海底」のような海洋物はお手の物だろう。ブリッジス扮するダグとコンビ組んでるクレイグ役は、「わんぱくフリッパー」の父親役でおなじみのブライアン・ケリー。イルカが出てくるテレビシリーズで、こちらも海だから慣れたもの。紅一点マギー役がシャーリー・イートンで、「007/ゴールドフィンガー」で有名だが、私は見たことなし。「電撃スパイ作戦」のアレクサンドラ・バステードにそっくりなのには驚く。ハンク役がキーナン・ウィン、オリン役がマーシャル・トンプソン、それにフィル役マッカラム、この六人が潜水艇ハイドロノート号とやらで海にもぐり、世界中の海底に地震警報装置を設置する。世界一周ったって海底じゃここがどこだかわからない。魚の群れとかサンゴとかそれなりに見せてくれるわけだが、当時はともかく今見たって別にどうってことない。NHKBSあたりでよくやってる。それにくっきりはっきりの映像見慣れているせいか、こちらの映画は画質の粗さが気になる。公開時スクリーンではもっときれいにうつっていたのか。今となってはわかりましぇん。・・世界のあちこちで地震による被害・・津波とか・・が出ている。少しでも早く正確な予知ができれば・・と、装置を50基設置することに。ここらあたりで日本の科学者が出てくるのは、まあ妥当。ビデオの字幕ではハムラ教授だが、IMDbではハラムになってる。何を孕むんだ?あちこちに設置して、連動させて正確なデータを・・というのは、現実にも行なわれているだろうし、50年前(ひゃ~)にしては先見の明がある。でも・・50じゃ少ないでしょ。世界中ですぜ。まあ取りあえずってことなのかもしれないけど。

海底世界一周3

設置場所も、海底火山の火口のすぐそばとか・・近すぎる気も。一番アレなのは、上にも書いたがここがどこなのかはっきりしないこと。スリランカとか時々地名が出るけど、どこから出発してどのルートたどって、今どこまで来ているのかそれを見せてくれてこそ世界一周なんじゃないの?それがないから見ていても盛り上がらない。別に陸に上がって観光地めぐりしろとは言わないけど、全体的に単調。すでに出来上がっている装置を設置する・・そのくり返し。変化をつけるものと言えば三角・・いや、四角関係か。マギーはオリンと一緒に仕事していて仲がいい。それはオリンの方が自分の気持ちをおさえているからだろう。彼は彼女を愛していて結婚したいが、彼女にはその気なし。そうなるともうそれ以上無理強いはしない。大人しく穏やかなオリンはたぶん申し分のない夫になるだろうが、えてして女性はそういう男性には飽き足らず、欠点だらけだが刺激的な男性に引かれるもの。マギーとフィルは以前恋人どうしだったようだ。フィルの性格から言って、関係を長く保つのは難しい。彼はまだマギーに未練があるが、彼女にはその気なし。同じ間違いはくり返したくない。オリンと違い、フィルは天才だが一方で欠点だらけ。恋している時は欠点もステキに見えるが、そのうちがまんできなくなる。フィルが彼女に合わせることはありえない。三人目はクレイグだ。目が合ったとたんビビビとくる。普通ならすぐ仲良くなるところだが、大事な任務でこれから四ヶ月世界を回らなくちゃならない。しかも狭い潜水艇の中で、女性一人。彼の目に魅力的にうつるということは、他のヤローにも魅力的にうつるってことだ。独占したいけど、あまり態度に出すのも自分のプライドが許さない。彼はついついマギーに突っかかってしまう。マギーは当然反発する。自分が自分らしくふるまって何が悪い。男女平等のはずなのに、ちょっと何か起きると女を乗せるからだなんて言うし。・・二人の衝突なんか見せられたって、おもしろくも何ともない。好きなコにわざと意地悪する男のコ。どうせ最後にはくっつくってわかってる。

海底世界一周4

私はむしろオリンに目が行く。二人がくっつく時にそっと席をはずすところが何とも・・。マギーもクレイグもそばにオリンがいるのに全然気にしてない。相手しか見ていない。愛している女性のそういう姿見せられるのってつらいと思うよ。それにしても私が見たいのはこういうことじゃないのだが・・。せっかく若くて精悍なブライアン・ケリーも、ウジウジモンモンしてるだけなので魅力がない。ダグは家庭を持っていなければ自分も・・みたいなこと言ってるし、ハンクはもう少し若けりゃなんて言ってるし、男ってどうしてこうなのかしら。それにしても艇内でのマギーの仕事は医療と料理だ。医療はともかく料理なんか全員で交代でやるべきでしょ。彼女何で抗議しないのかしらね。最初の方でダグとクレイグが仕事しているとヘリが飛んできて会議に呼び出す。呼び出されたってすぐってわけにはいかない。クレイグは潜水艇でもぐっている最中だし、ちょうど鯨の群れが近くにいる。へたに動くと危険だ。ところがじれた操縦士はヘリを近づけ、そのせいで艇は鯨と接触し、クレイグはピンチに。そんなことがあったのだから、クレイグは操縦していたブリンクマンに殴りかかるとかするはずだが何もなし。何とか委員会に出席するのに一緒になごやかムードで歩いていて、ここでまずつまずいちゃったのよね。何で?クレイグの性格からして遺恨残るはずでしょ?何かカットされちゃったの?ちなみにブリンクマンやってるのはロン・ヘイズ。まだ若い。ブリンクマンのボスの本部長役やってるのがゲイリー・メリル。何に出ていたのか思い出せないけど、名前には聞き覚えが。そんなこんなで50基設置し終わる。途中巨大なウツボか何かが出てきて、撃退するために一基使う。装置を海底に固定する時、小さく爆発させるのだが、それを利用したのだろう。と言っても、見ていても何がどうなったのかよくわからない。巨大生物に襲われていると言っても、潜水艇がミニチュアだから大きく見えるってだけのことなので、ちっともハラハラしない。これに一基使っちゃって、後で足りなくならないのかしらと心配したが、全部設置した後で追加の任務入っても何も言ってないから、最初から余分に用意してあったのだろう。それにしてもちょっと説明が欲しかったところだ。

海底世界一周5

任務完了となって、フィルは宝捜しができると喜ぶ。元々この任務に参加したのはこれに潜水艇を使わせてもらうため。ただ、何の宝なのか、どこにあるのかよくわからない。宝捜しで話が盛り上がるのかと思ったら、すぐ追加の任務入っちゃうし。海底火山の噴火だが、艇を岩棚に置くので、上から岩が降ってきて埋まってしまうのは予想がつく。で、案の定埋まってしまい、爆薬で艇を分断して浮上しようというイチかバチかの賭けに出る。ラスト近くでこんな状態なので、浮上できず犠牲者が出ましたということはありえず、見ていてもハラハラしない。海底火山で付近は危険な状態だとフィルムなどでさんざん見せるのに、海水は全然濁ってないし、空は真っ青。噴煙で薄暗くなってるのが普通じゃないの?どうも最後まで盛り上がらずに、そのまま終わってしまう。感想を書いている私の気分も全然盛り上がらない。退屈でつまらない作品。とは言えマッカラムのファンにとってはありがたい映画。イートンの美しさではなく、マッカラムの美しさにため息をつく。まず金髪が美しい。サラリとしていて、輝いている。残念ながら黒縁メガネをかけていることが多く、青い瞳はほとんど拝めない。まだ若いから肌はすべすべ。真っ白なシャツに黒いズボン。青いシャツの時もあるが、たいていは金色、白、黒の組み合わせ。性格も複雑。ハンクとチェスをするが、後でフィルがコンピューターを使っていたことがわかる。つまりズルをしていたのだ。ただ、そのコンピューターを作ったのはフィル自身で。マギーに未練があってそれとなくくどくが、よそ見していたため、艇を岩に接触させてしまう。テレビや映画では車の運転中よそ見ばっかりしているが、海の底でもよそ見しているのね!気になったのは字幕で「〇〇なのよ」とか「〇〇ね」とかフィルの言葉がオネエになっていること。必要ないと思うが。せっかく宝を見つけたのに・・と言うか簡単に見つかりすぎだが・・移動しなければならなくなって文句垂れてたが、実際に火山を見るとすぐ納得する。わがままで自分本位だが、さほどいやなやつではない。それにしても・・もっと活躍して欲しかったな。あれこれ不満は残るけど、彼の映画はあまり見る機会ないから、この作品は貴重。