クリムゾン・リバーシリーズ

クリムゾン・リバー

「2」を見たのを機に、一作目も見直した。前WOWOWで見たけど、ストーリーが全然理解できず、何でこんなのがヒットしたのかと理解に苦しんだ。原作を読めば少しは話がつながるかなーと思ったら、こっちはかなり複雑だった。今回見て感じたのは・・とにかく難しいことは抜きにしてハデなとこだけ取り出し、あるいはつけ足し、見る人を楽しませてやれという作り手達の意気込み。無残な死体、チンピラとのファイト、カーチェイス、墓あばき、謎の修道女、りっぱな大学、氷河、雪崩・・とにかくてんこもり。それでいて事件のことは今いちわからない。犯人がなぜあそこまで憎しみをつのらせるのかわからない。それもそのはずちゃんと説明されていないんだもの。主人公ニーマンスやマックスの内面もほとんど切り捨てられている。ニーマンスはジャン・レノで、原作を読んでいても彼の顔が頭に浮かぶほど。はまり役で彼しか考えられない!ただ映画でのニーマンスは原作ほど暴力的でも破滅的でもない。ヴァンサン・カッセルは・・最初見た時はあのファイトシーンが気にくわなかった。ストーリーとは関係ないし、いかにも見せびらかしているという感じ。カッセルも監督も入れたくてしょうがなかったんでしょうな。DVDでメイキングを見たけど、あのマチュー・カソヴィッツ監督のうれしそうな顔ったら!あの顔に免じて許してあげるわ!ジャン=ピエール・カッセルってヴァンサンのお父さんですか。映画を見ていてあの眼科医がなぜ殺されなきゃならないのかわかる人います?もう一人懐かしのスターが出ている。ドミニク・サンダである。しかし・・何じゃありゃ?ナディア・ファレスは今回見直して、あれッこんなに出番少なかったっけ?・・と意外に思った。この映画で一番印象的なのは彼女である。美人ではないが面構えがいい。ニーマンスの捜査に協力するファニーはしっかりした性格、がっちりした体格、ぶっきらぼうだが頼りになる。フランス映画によく出てくる軽薄で殴り飛ばしたくなるような女性と違って重みが感じられた。さて・・ゲルノンでは大学という狭い社会で近親結婚をくり返したため目に疾患のある子供が生まれるようになった。これではいけないと大学教授の赤ん坊と周辺の村人との赤ん坊をすり替える。しかし大都会の大病院ならいざしらず、小さな町で大学教授宅と村人宅に同時に(血液型等も問題ない)赤ん坊がそうそう生まれますかね。

クリムゾン・リバー2

村人の赤ん坊は大学教授の子供として育てられ、ひ弱な大学教授の赤ん坊は突然死ということで殺されちゃう(原作ではね)。生まれたばかりで遺伝的疾患があるかどうかもはっきりしないのに殺しちゃうなんてそんなムチャな。そんなことするくらいなら村人に大学の門戸を開いてすぐれた知能の教授の子供と肉体的に頑健な村人の子供とのカップル作ることを画策した方がよっぽどマシだと思うけど。そうやってナチスみたいな優生学を実践していた連中の子供(彼らは親の仕事を引き継いだ)が今回の被害者。連中に父親を殺されたこと、自分の運命を狂わされたこと、それが犯人の動機だが映画ではその怒りがあんまり伝わってこない。犯人捜しという点ではファニーしか考えられず、最後に真犯人が現われた時にはけっこうびっくりした。・・それにしても真犯人って結局は二重人格とか双子とか身内(警官)なのねぇ・・。指紋のこともよくわからなくて、一卵性双生児の場合は指紋もほとんど同じってこと?眼科医の家でニーマンスを撃ったのは(指があったから)ファニーである。その後ニーマンスに会ったファニーは4時間も事情聴取を受けていたと話す。ではファニーは同時に二ヶ所に存在していたのか。ニーマンスにウソを言ったのか。あるいは事情聴取を受けたのはジュディットなのか(指を隠していればばれないし、話すったって元々自分とファニーのやったことだし)。一方のマックス、墓あばきの件で地元に戻る。地元サルザックと大学のあるゲルノンは200キロ離れている。往復400キロもあるのにマックスはあっという間に戻ってくる。早すぎる。しかも彼の車はゲルノンヘ来る途中民間人から盗んだものである。盗難届が出ているはずで、何でつかまらないの?とにかく勢いがあるので見ている間はそれなりに楽しめる。でもクライマックスの大雪崩ですべてを押し流して、アラも矛盾も何もなかったことにしてくれったってそうはいかないわ。犬嫌いのニーマンスが救助犬のおかげで助かって、みんな掘り出されてハッピーエンド、いがったいがったで終わらせようったってそうはいかないわ。いちおうサスペンス映画なんだからちゃんとして欲しいわけよ。・・でも土台のないスカスカの、勢いだけは十分ある映画でしかないのよ。人間の改良ってのがそもそもねぇ・・エンドウ豆やネズミと違って人間は何十年もかかるわけだし・・題材からして説得力不足ですぜ。

クリムゾン・リバー2 黙示録の天使たち

「2」が作られたと知った時にはびっくりしたな。原作ではニーマンスは死んじゃうんだけど、映画では死ななくて、その上大ヒットしちゃった。ジャン・レノのニーマンスはこれ以上ないほどのはまり役だもん、「2」は作られるわなやっぱ。ぜひシリーズ化してください。主人公が死んだのにその後続編が書かれたのって「ランボー」シリーズがあるな。「2」の原作はないのかな。読んでみたいけど発売されてないみたいだな。映画は一作目ほど話題にもならず、いつの間にか公開終了。ブノワ・マジメルが出ているから見たいとは思っていたのよ。それでDVDをレンタルして見てみると・・やっぱりステキ・・手元に置きたい・・で、例によってDVD購入と・・いつものパターンだわ。「スズメバチ」以来マジメルのアクション映画ははずすわけにはいきませんの。恋愛ものは別に見たいとは思わないけど。恋愛ものが似合う彼がアクションやるからいいのよ。ひ弱に見えるけどガッツのある役やって、さすが役者、こういう役もこなせるんだ・・ってそういうところがいいの。ちゃんと自分でやっているのがいいの。ありゃスタントマン、こりゃスタントマン・・なんていうようなアクション映画は見たくない。マジメル扮するレダ(何となくなまめかしい名前だよな、白鳥寄ってきそう)はちょっと突っ立ったような髪をしていて、神経質そうな顔立ちで(サッカーのカズ選手に似てますな)、細身でチンピラ風なんだけど、でも刑事なの。麻薬の売人追っていて、三人で張り込みしているんだけど、他の二人はやる気があるんだかないんだか・・。おしゃべりしたり居眠りしたり(交代で見張るために複数で行動しているのに、二人して居眠りしてどーする!)たるんでいるわけ。この事件解決したってまた別の同じような事件が控えている。目の前の事件急いで解決する必要ないわけ。適当に長引かせておけばいいの。忙しく事件かたづけたってそのぶん給料もらえるわけじゃなし、犯罪が減るわけでもない。でもレダは違う。さっさと売人の女のところへ乗り込み、危ない目に会うけど、でも事件をかたづける。女に色目使われても受け流すところがいい。現われた売人とのファイトシーンがいい。カッセルのよりこっちの方が好き。カッセルの武術好きは知られているから意外でも何でもない。

クリムゾン・リバー2 黙示録の天使たち2

年下の恋人役専門の甘い二枚目マジメルがやるから意外なの。ええ偏見ですってば。面食いですってば。美男には点が甘いんですってば、ぐふふ(否定しません)。相棒がかけつけるまでに時間がかかりすぎだが、でも助太刀なんかいらないんですってば。その後おしゃべり運転していて人をはねちゃうし、ロクな刑事じゃないわ、相棒達。さてストーリー・・のっけから雨・雷・修道院・十字架・壁からしみ出る血・埋め込まれた死体・・とテンポよく話が進む。わけわかんない殺人事件(つまみ食い殺人事件)がはさまれるけど、後でちゃんと話がつながる。フランス映画だが、たくさんの具を強火で短時間に仕上げる中華料理見ているような感じなの。手際がよくて見とれちゃうけど何が何だかさっぱりわからない。具の中には正体不明なものやなくてもいいものまでまじっている。穴あきオタマ以上にストーリーはボコボコ穴だらけなのよ。でもスピードで無理やり最後まで持ってっちゃうの。一作目と同じ手口。さて・・ニーマンスは修道院の壁に埋め込まれた死体を発見(修道院など古くさいものの中に最新鋭の機械をさりげなく組み込んでいるのがいい)。この男フィリップの友人の妻を訪ねる。妻の話によれば、夫や友人達は新興宗教みたいなのを作っていて、自分達をキリストと12使徒になぞらえていたのだそうな。何勘違いしとるねん、「最後の晩餐」みたいな写真までとって・・。一方レダ達の車にぶつかった男はキリストみたいな格好をしていて、錯乱していて、しかも銃で撃たれていた。どうもこの男が行方不明中の夫らしい。ニーマンスとレダは警察学校での師弟の関係で8年ぶりの再会。二人がそれぞれ追っていた、偶然関わった事件がここで結びついたわけだ。普通の映画なら妻と夫の再会場面があるはずだ。「奥さん、この人が行方不明だというキリスト似のご主人ですか」「はい、これが私のキリスト似の主人です」というわざとらしいシーンが。でも省略されちゃうの。あのー奥さん夫のこと何も知らされないまま?キリストと12使徒だの、黙示録だの何やら思わせぶりな設定が出てくるんだけど、それらはさして重要じゃない。さっき書いた中華料理の具じゃないけど、ただ量を増やすためのつけ足し、まぜものであって、あったとしても意味をなさず、なかったとしても別に困らない。

クリムゾン・リバー2 黙示録の天使たち3

とにかく12人殺すことで冒頭とクライマックスの間、1時間あまりを埋められればいい。だから殺人もただの人数合わせに思えてきちゃう。一連の事件の黒幕はドイツの文化・宗教担当大臣へメリッヒで、求めるものはやっぱり財宝・秘宝・・ついでに秘法。ドイツ人ということでナチスみたいな組織作って邪魔者を消すわけ。この邪魔者がキリストと12使徒である必要は別にないんだけど、映画を持たせるために、ややこしくするためにわざわざ強調するわけよ。殺された人の名前と職業が12使徒と一致している!・・とかさ。ドイツの偉い人がフランスで何やらやらかす時には、もっと秘密にこそこそとやるはずでしょうが。警察署の前で11人目を焼き殺すなんてドハデなことやるはずがない。あれじゃ警察への正面きっての挑戦になっちゃう。隠したいんだか見せびらかしたいんだか、やってることは矛盾だらけだけど、つじつまを合わせる気なんて作り手にはこれっぽちもない。一作目でそれがわかってるから、私もどうでもいいの。マジメルが活躍してくれるんならそれでいいの。彼の見せ場はファイトシーンの他にもう一つあって、修道士追跡シーン。アクション映画だと必ずあるのがカーチェイス。でもこの映画では車の代わりに人が走る。入院中のキリスト似を殺そうとした謎の修道士をレダが追いかける。修道士は撃たれても平気。高いところへ飛び上がり、高いところから飛び降り、とても人間とは思えない(たぶんYAMAKASIだろう)。しかも顔がない。フードの中は暗黒。レダは生身の人間だから苦しいが、ガッツのある男だから気力をふりしぼって追跡する。その骨身を惜しまない走りぶりに拍手!超人的な修道士がレダを振り切れないのはおかしいという指摘もあるが(追いつかれてるじゃん!)、それは服のせいだろう。修道服は正体(人相)を隠す利点はあるが、重くて動きにくいという欠点もあるのだぜい。たださすがのレダも高いところから飛び降りることはできず、相手に逃げられてしまう。この時の下を見るレダがいい。そこには墜落した修道士の死体があるはずなのだ。でも・・ない。ふと横を見ると修道士がスタコラ逃げて行くところで・・これじゃコメディー映画じゃん。レダが疲れきって病院に戻ってくると、相棒は受付嬢とムダ話(ナンパとも言う)。

クリムゾン・リバー2 黙示録の天使たち4

今また警視が面会に来てると言うが、身元もよく確認せず通したのは明らか。その警視がニーマンスだったからよかったものの、ニセモノだろうと何だろうといらっしゃいませ状態。病院にいてもちっとも安全じゃないのよ。ニーマンスはニーマンスで医者に内緒(でしょ?)で自白剤(でしょ?)使うし。でも薬使ったってキリスト似からは意味のある情報出てこないんだけどさ。だってほら事態を謎のままにしておかないと映画が持たないのよ。そっち方面の知識のある助っ人として登場するのがマリー。演じているカミーユ・ナッタはきれいに整った美貌の持ち主。清楚で知的だが残念なことにそれだけ。存在感がうすく、マリーの役そのものも添え物程度。いてもいなくてもストーリーにはあんまり関係ない。でもそこが逆に好もしいんだけどね。パーティ会場中央に盛られたゴージャスな大輪の花・・ではなくて、部屋の隅にひっそりといけられた可憐な花・・という風情がね。その場の空気をやわらげてくれる、清らかにしてくれる・・そんな感じの人。普通ならレダといいムード・・とか、ニーマンスへの尊敬の念が転じて淡い思慕に・・とかさ、そんなシーンあってもいいのにぜーんぜんなし。何しろ12人殺さなきゃならないしぃ・・。さてニーマンスの方は一作目とか原作である程度性格や背景わかってるけど、レダの方は・・。DVDには未公開シーンとしてニーマンスとレダがクラブみたいなところで話すシーンが収録されている。字幕がないので(音声もなし)何しゃべってるか不明だけど、こういうシーンが本編にもあれば、レダのこと少しはわかるのになあ・・。入れて欲しかったよなあ・・。でもアクション・スピード・人数合わせ・・なんだよな。レダのことでわかっているのはニーマンスの教え子だということだけ。キリスト似に面会に来たのがニーマンスだとわかる前は、銃を出して「クソ警視」なんて呼びかける。ヘメリッヒに対した時の態度でもわかるが、彼って位が上の人にも屈しない。相棒はがんばらない、やる気ない、仕事しないのナイナイ男だけど彼は違う。彼はいつかすり切れてボロボロになってしまうかもしれないわ。彼がなぜ一生懸命仕事をするのかは不明。悪を憎んでいるのか、世の中を浄化したいと願っているのか。そこらへんは描かれてないけど(作り手にその気なし)、でもそれでいいの。

クリムゾン・リバー2 黙示録の天使たち5

レダはきっと若い頃のニーマンスに似ているのだろう。ニーマンスの場合は自分でも抑制できない内側からの怒りや凶暴性が行動を後押ししていただろうけど、レダにもそういう部分があるのだと思う。違っているのはニーマンスはそれを外側に出して有効に使えるほどの体格にめぐまれているけど、レダは小柄で細身であるということ。彼を見ていると内側へ内側へとこもっていくような、そんな感じを受ける。この映画で言うと売人とのファイトで痛めた手をじっと見ているところとかさ。若いニーマンスなら何かうまくいかないことがあれば、まわりにあたりちらしたことだろう。備品ぶっ壊すとか。まあそうやってあれこれ妄想する余地はありますな、この映画。ヘメリッヒを演じているのはクリストファー・リー。さすがドラキュラ、フランス語もドイツ語もペラペラです。だてに何百年も生きていません・・って違うがな!他にはジョニー・アリディーが出てる。ちょびっとだし、顔半分見えないし、言われなきゃ彼だってわかんない・・と言うか言われてもわかんないよ。実は私ずーっと前「冒険また冒険」という映画で彼を見たことあるの。リノ・ヴァンチュラ主演で、ジャック・ブレルが出ているから見に行ったのよ。ストーリーもへったくれもないオバカアホ映画だったけど、この頃のアリディーは「フランスのプレスリー」とか言われてカッコよかったの。主題歌も歌っていて・・。でも30年以上たって、あの頃の面影はじぇんじぇんありませんわ、当然ですけどね。さて、クライマックスは一作目の雪崩の代わりに洪水です。固体→液体と来たから「3」はきっと気体ですね、大風でしょうかね。洪水の中でファイト~イッパーツ!のCMになっちゃいます。よくきくドリンク剤ですが、よい子のみんなは飲んじゃいけませんよ。ニーマンスとレダはヘメリッヒ一味につかまったのに何で殺されないんですか?なぜイヤホンとか無線の装置取られないんですか?でも一番の謎は修道士の血液から何も出なかったことでしょうな。ドーピングにも引っかからない。それじゃあオリンピックでも使いほーだいじゃないですか。でもこんなこと追究するのやめましょうね。まあいいじゃないですか。マジメル君のアクション見ることができたんだから、ウフ。ぜひ!このコンビで「3」作ってください。右の眉だけ上がるマジメル君、キュ、キュ、キュートですぅ(←アホ)!