殺しのナンバー

殺しのナンバー

これは日本でも公開されたようで。暗号という地味な素材。映画を見ていても何もわからないが、主人公エマーソン(ジョン・キューザック)はCIAらしい。指令を受けると標的を始末。国のためと信じて今日までやってきたけど・・。人間だから時にはミスをする。少女を殺すはめになった時は動揺する。そうなると精神分析を受け、配置転換になり・・。行き先はイギリスの田舎。元アメリカ軍の基地だったという送信局で、別のペアと交替で勤務する。一人はオペレーター・・ここからヨーロッパの仲間に情報を送信。明るく活発で美人のキャサリンは新米だが、たぶん有能。エマーソンの仕事は、彼女の警護や施設の見回り。他に掃除とかメンテナンスの係も必要なはずだが・・。施設はどことなく「D-TOX」風味。古いけど頑丈で実用一点張り。コンクリートだから寒々しい。ジメジメしていて薄暗い。登場人物は少なく、低予算ムード。キューザックはやや額が広くなってきたかな。薄暗いシーンが多いせいで、時々ニコラス・ケイジに見える。ケイジがやってもこの役似合いそう。若い頃のイメージのせいか、キューザックはひ弱できゃしゃなイメージがある。だから「アクターズ・スタジオ・インタビュー」で彼を見た時にはびっくりした。肩幅が広く、体の厚みがあり、昔より太ったのは確かだが、がっしりしている。ロマコメなどで見せる浮ついた頼りない感じはなく、知的で落ち着いた大人の雰囲気。本来はこういう人なんだ・・と、いっそうファンに。キャサリン役マリン・アッカーマンは、「幸せになるための27のドレス」でヒロインの妹役をやっていたらしい。キャメロン・ディアスとダイアン・クルーガーをミックスしたような感じだが、オーラはなく、あまり印象に残らない。知ってる人はこの二人くらいか。エマーソンのボス、グレイがリーアム・カニンガム。たぶんこの映画の主人公は数字。数字が人を殺し、助け、争わせる。システムがよくわからないのが、こういう素材の欠点か。でも簡単にわかったら暗号にならん。WOWOWでやったのを見て、サラッと感想書いたけど、でももう少し掘り下げたい感じがして、もう一度見直して、書き直して。それもこれもキューザックがいいからで。

殺しのナンバー2

エマーソンの行動が物足りないと書いている人もいるけど、私はそうは思わない。情報部員の仕事は地味で退屈で、あんな感じなのでは?長い間の習慣が身にしみついていて。まわりとはなるべく関わりを持たないようにする。会話も最小限。相手にしゃべらせ、情報を引き出す。常にまわりに気を配り、警戒を怠らない。非番の時は一人で過ごす。夜一人で食堂でコーヒーを飲む。モーテルで考え込み、悪夢を見る。交替の時、デヴィッドの手がメレディスのお尻のあたりにあるのに気づいたが、自分には関係ない。映画を見ていて不思議に思うのは、なぜあんなにもやすやす敵の侵入を許したのかということ。若い二人が仕事そっちのけでイチャイチャでもしていたのか。ラスト近くで敵の一人が元CIAだったことがわかるが、ここのシステムを知っていたということなのか。冒頭の標的も元CIAらしいが、円満退職や離職は難しいのか。使い捨てにされたのを恨んで敵側に回る・・回らないような工夫、ケアはされてないのか。冒頭の標的はなぜ始末されたのだろう。不正に金をため込んだということなのか。もうちょっとはっきりした説明が欲しいところだ。送信所から撤収する時に、オペレーターを殺せとなるのもムチャな話だ。それじゃあなり手がいなくなるぞ。・・とまあ残念な部分もあるが、全体的には私好み。キューザックが出ずっぱりなのがうれしい。このところ「フローズン・グラウンド」とか「コレクター」とか、彼の作品を見る機会が多いが、この作品が一番いいな。あとあまり目立たないが、デヴィッドのがんばり、骨っぽさも印象に残る。彼もCIAだからそれなりの訓練を受け、覚悟もできてるってことだ。最初出てきた時の”おさわり”は余計な気も。ラスト、エマーソンがキャサリンを助け出すのはいいとして、一緒に姿消すつもりなのは、お約束通りとは言えちょっと残念。一人どこへともなく姿を消すというストイックなラスト期待していたもんで。彼は自分にはない人間らしさを彼女によって取り戻したいというのがあるんだろうけど、感情の起伏が激しく、おしゃべりな彼女はそのうち重荷になるぞ。一人でいた頃の方が静かでよかった・・となるぞ。