去年の夏 突然に

去年の夏 突然に

こういうのやってくれるからテレビ東京の「午後のロードショー」って好きよ。保険のCMがうるさく入るのにはうんざりさせられるけどね。「アンドロメダ・・・」のところでも書いたけど、昔の吹き替えのままでやってくれるのがいい。白黒だっていいんです。カットされていたっていいんです。文句なんか言いません。キャサリン・ヘップバーンが山岡久乃さんですよ。惜しくももう亡くなられたけど。前同じくここで「ミス・マープル」シリーズやってくれて、三作ほど見たけど、マープルの声がやっぱり山岡さんで。アニメの八千草薫さんとはまた違うちょっと俗でそっけないしゃべり方がよかった。アニメの方は暖かくて上品で、これもまたいいんですけどね。エリザベス・テイラーが武藤礼子さん。美女専門、甘い声の持ち主。モンゴメリー・クリフトが山内雅人氏で、私この人の軽快な声が好きです。他にゲイリー・レイモンドが出ている。この人テレビの「ラット・パトロール」で知られているけど、「アルゴ探検隊の大冒険」にも敵役で出ていたな。声は・・広川太一郎氏ですかね。さてこの映画、もうずーっと前、30年以上前だと思うけど一度見たことがあるのよ。何で見たかと言うと・・きっと題名のせいでしょう。「去年の夏 突然に」・・突然どうしたんですか?元々はテネシー・ウィリアムズの舞台なのね。彼の作品てみんな題名がいいと思わない?「欲望という名の電車」・・どんな電車だろう。「熱いトタン屋根(の上)の猫」・・肉球こげそう。「ガラスの動物園」・・何が飼われているのやら。ロマンチックな題名にそそられて見たものの・・正直言って意味さっぱりわかりませんでしたの。セバスチャン、セバスチャン・・ってやたら連呼されるから、そのうち絶対セバスチャンが出てくるんだと思ったの。セバスチャンは去年の夏突然に死んでしまったのだけど、回想か何かで出てきて、さっぱりわからないこの映画の内容をうまく説明してくれるんだ・・って期待しながら見ていたわけよ。そうとでも思わなきゃ見てらんないわよ、こんなわけわからん映画。そしたら結局最後までセバスチャンは顔を見せず、後ろ姿だけ。何じゃこりゃ~と思ったわよ。まあ当時は私もまだ半分子供で異常な世界なんてわかるはずもなく・・。またこういう映画の作り方も理解できず・・。つまり舞台の映画化ってことだけど・・。

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元が舞台だからこんなにセリフが多いのだ。特にヘップバーンとリズはものすごくしゃべるから、山岡さんと武藤さんは声をあてるのが大変だっただろう。逆に言うとこれだけのことができるという力量をはっきり見せられた(と言うか聞かされた)わけだ。さすがだなーと感心しきり。時々ちょっと人気があるというだけで声優に挑戦して、よれよれのしゃべり聞かされるが、そんなのとは段違いです、いやホント。普通なら言わないことまでしゃべること、場所があんまり移動しないこと・・今見ればああこれは元は舞台だなってすぐわかる。このシーンは舞台の時はきっと省略されているんだろう、セリフや効果音で表わし、お客に想像させるんだろう・・などと思いをめぐらしながら見ていた。脳外科医役のモンゴメリー・クリフトは、すごい美貌だったけど交通事故で・・って映画の本には書いてある。この映画は事故の後だけど整形手術がどうのなんてわかんない。事故前の「陽のあたる場所」も見ているんだけど、よく覚えていない。私にはなぜモンティ・・とか言って女性達が胸をこがしたのかよくわかりましぇん。きっと当時はああいうタイプが好まれたんでしょうなあ。ああいうタイプって・・たぶん清潔で知的で母性本能をくすぐる・・ってことだと思いますが・・。えッ?攻撃的でセクシーだからなんですか?あッそうですか、へぇ~。この映画での彼はヘップバーンとリズという二大女優につぶされて・・じゃない、はさまれてもっぱら聞き役・引き立て役に回っております。盛んに目が美しいというセリフが出てきますが、彼の一番の魅力は澄んだ瞳なのでしょう。白黒なので何色かわかりませんが。もう一人看護士で大柄でハンサムなのが出てきます。目が移っちゃうほど、モンティはどちらかと言うとさえない役なんですよ。でもきっと当時映画を見ている女性の目はモンティに釘づけだったんでしょうなあ。そう思って見ているとだんだんよくなってきます。確かにきれいな目をしています。でも名前がよくないわ。クックロウィッツですって?何じゃそりゃ。「だーれがころしたクックロビン♪」じゃないですかそれじゃあ。名前を呼ばれる度に私の頭の中は「パタリロ」のクックロビン音頭モード。ところでコミック「ガラスの城」のヒロインの夫の名前が確かモンゴメリー・クリフトだったと思うんですけど・・。

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きっと作者のわたなべまさこさんはモンティのファンなんだろう・・って思ったっけ。アブシンベル・ツタンカーメンなんていう謎の人物も登場したりして・・。あと「サンダーバード」のバージルにはモンティ入っていると私は思っている。話はそれたけど元に戻して・・ヘップバーンは・・カッパみたいです。顔中口の印象。それとちょっとひからびている。リズは・・モロ美女です。彼女は七回も八回も結婚したとか太ったとかやせたとか、そんなことばっかり話題になるし、私もただのスキャンダル専門の女優かと思っていた時期もあった。でもこうして演技を見ると・・大熱演と言うか体当たりと言うか・・モンティなすすべもなくつぶされておりますぅ・・あ、キスシーンでしたか。さて・・キャサリン(リズ)はいとこのセバスチャンの死のショックで発狂し、精神病院に入れられている。狂暴で庭師に色目をつかうなど、手にあまるようになってきたので、クックロビン(違うって)にロボトミー手術の依頼が来る。彼のいる病院は資金難で困っており、富豪のべナブル夫人(キャサリン・ヘップバーン)のこの依頼を受ければお金ががっぽり入る。しかしいくらお金が欲しいとは言え、クイックルワイパー(違うって)は危険な手術をホイホイほどこすほどバカではなく・・。本当に手術が必要かどうかキャサリンに会ってみることにする。会えば・・ものすごい美女だもん・・もっと彼女を知りたくなるわけよ、お約束ですな。この映画元々は114分あるらしい。ってことは20分くらいカットされているってことで、そのうちノーカットで見てみたいと思っている。DVDも出ているのだが買おうかどうしようか迷っている。こういう「セリフで全部説明します」映画は見ているのが大変。「ハムレット」もうるさかったな。ケネス・ブラナーのハムレットが死んだ時には「やれやれやっと静かになったぞ」とうれしかったほど。感動もへったくれもないのよ。まあ見たのはルーファス目当てだからハムレットはどうでもいいんだけどさ、ウフ。「去年」もべナブル夫人がニュークイック(違うって)に話すシーンがやたら長くてうんざりさせられる。キャサリンの告白(セバスチャンの死の真相)も長いです。もっとセリフを少なくし、間を置くことでサスペンスが盛り上がるような・・そんな作り方でリメイクできそうだ。ああ、でもカラーにするとだいぶ感じが変わるかも。

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この映画もクライマックスでそれなりに盛り上がる。リズの熱演でね。リズには二つの面がある。手の届かないようなものすごい美女でありながら、どこか庶民的でもある。最初出てきた時のキャサリンは、入院中であるから化粧はしていない。髪は無造作だし服装はヤボ。ウエストのあたりはキチキチで今にも裂けそう。寝起きみたいなボーッとした顔。次に出てきた時はちゃんと髪をセットし、ウエストはきりりと締まり、顔も冷水でバシャバシャやったみたいに引き締まっている。回想シーンでは白い水着姿を見せる。キャサリンはこの水着が恥ずかしくてたまらない。水にぬれると透けてしまうからだ。いやがるキャサリンを、セバスチャンは無理やり海岸へ連れ出す。ぐいぐいと乱暴に手を引っ張る。必死で抵抗するキャサリン。彼女を見ようとまわりに土地の男どもが群がる。その時のキャサリンは・・水着から肉がはみ出しそうだ。白黒だからこんがり焼けた小麦色(たぶん)の肌と、白い水着とのコントラストが強烈だ。しかもセクシーと言うよりは動物的な、だぶついているようにさえ見える体。ゆれる肉はまるで牛かブタのようで・・。いや、けなしているわけではない。感心しているのだ。肉のゆれ方までが強烈な印象与えるなんてそんな女優さんめったにいませんぜ。作り手のうまさを感じる。見せ方が上手。ヘップバーンもモンティもすっかり忘れていたけど、男達に追われるセバスチャンの後ろ姿と、肉のゆれる白い水着のキャサリン、この二つだけはしっかり覚えていましたの。セバスチャンの見せ方は、今思えば効果的で、顔を見せないからこそ印象に残る。普通に出てきてあれこれやったのではキャプテンクック(違うって)同様記憶に残らなかっただろう。キャサリンはゆれる肉を必要以上に見せることで記憶に残り、セバスチャンは顔を見せないことで記憶に残った。内容の異常さは・・記憶に残らなかったのね、子供(?)にはムリ。さて・・べナブル夫人は息子セバスチャンを溺愛していた。二人きりでこの世界は完全なものとなるから、他のものは何もいらないの。夫もキャサリンもみーんな邪魔者。夫なんか死んだって何とも思わない。余計なこと知ってるキャサリンには何もしゃべらないよう早く手術を受けさせたい。セバスチャンが成長するにつれて別のことを考え始めたのはべナブル夫人にもわかっていた。

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自分にそれを止める力がないこともわかっていた。わかっていたけど・・認めたくない。認めたくないけど力は貸す。そのうち力を貸すこともできなくなる。セバスチャンは今度はキャサリンを利用するようになる。若く美しい女性は男を引きつける。かつてのべナブル夫人、今度のキャサリン、二人ともエサである。魚を釣り上げるためのエサ。そして魚とは・・若い男性。セバスチャンの目的は好みの男性を見つけること。お金さえばらまけば彼の望みはかなった。去年の夏・・セバスチャンは逆に男達に追いかけられた。追いつめられ、お金をばらまいたがムダだった。お金ももちろん欲しいが、男達にだって感情はある。お金さえあれば何でもできると思い上がっている金持ち男への反感。暴挙を何とか止めようとするキャサリン。この時もキャサリンの黒い肌には油のような汗が光り、肉はゆさゆさと重たげにゆれ・・象までいかないけど、とにかくたぽたぽしてます。事実が明らかになった時、恐怖の記憶を洗いざらい吐き出した時、キャサリンは落ち着きを取り戻していた。彼女は過去から抜け出すことができた。もう大丈夫、手術も入院の必要もない。逆に・・べナブル夫人は過去へと、狂気へと踏み込んでしまった。今まで危ういところでかろうじてとどまっていたけれど、今や完全にバランスを崩し、自分の世界に逃げ込んでしまった。誰にも邪魔されない自分と息子との二人だけの世界。そこでのセバスチャンは自分を裏切ったりしない。魅力的で才能にあふれた輝かしい息子のまま。彼女は幸せだ。一方3分間クッキング(違うって)とキャサリンはすでに恋に落ちている。キャサリンの体当たりには誰も勝てませんてば・・。べナブル夫人の莫大な遺産も、そのうちキャサリン一家のふところへころがり込んでくるはず。・・てなわけでハッピーエンドどす。よかったね、キャサリンと私の青い鳥(クッククークー♪←アホ)。さてと・・スペースあまっちゃったぞ。ここ一週間実家に帰っていたんだけど、ヒマつぶしに「ピンク・パンサー3」を見たのよ。レスリー=アン・ダウンとオマー・シャリフが出てるやつで、おもしろかったんだけど、びっくりしたことにウンパ・ルンパことディープ・ロイが殺し屋役で出ていたの。シワがないだけで今と全く同じ顔してた。この頃はまだ子供だったのかしら。今いくつなのかしら。