恋人はゴースト

恋人はゴースト

WOWOWで何度かやったが、いつも時間が合わず見逃してばかり。DVDをレンタルして見た。主演の二人はとてもいいし画面もきれい。画面がゆれないのがいいな(私はアクションやホラーを見ることが多いので・・。あっちはゆれるゆれる。ゆれなくていい時もゆれる)。明るくて楽しい映画。でもちょっと物足りない。欠けているのは驚き。冒頭仕事に忙殺される、大病院で研修中の医師エリザベス(リース・ウィザースプーン)の日常が描かれる。26時間も働きっぱなし。でも骨身を惜しまない働きぶりが評価され、正式なスタッフとしてここで勤務できそうだ。うれしい!姉アビーの家での夕食にかけつける途中、彼女は交通事故を起こす。疲労、夜、雨、ケータイ・・そりゃ事故起こしますってば。画面変わって、沈んだ感じの青年デヴィッド(マーク・ラファロ)がアパート捜し。変な内装(実用的でない)のアパートなので、これって現実?彼や不動産屋の女性はゴースト?彼らは死んでいて、天国で部屋捜し?・・なんて思う。天国でだって住まいは必要でしょ?でも違った。これは現実。どの物件を見ても満足しなかったデヴィッドだが、ある物件をなぜか気に入る。早速引越しして住み始めるが、妙な女性が現われ、「ここは私のアパートよ!」と息まく。見ている我々は、彼女がエリザベスだと知ってる。彼女が事故にあったことも。私は見る前は男側・・つまりデヴィッドがゴーストなんだろうと思ってた。だってリースのゴーストじゃうるさすぎるでしょ。死んでるにしちゃ元気よすぎ。まあその通り、死んでいないんだけどさ。最初は反発し合っていた二人。エリザベスは自分の過去を忘れているが、デヴィッドと行動をともにするうち思い出し始める。でも我々はその過去を知っているから驚きも興味もない。残念な作りだと思う。彼女の過去を謎にしておいて、だんだんに明かしていけばいいのに。その不満を除けばあとはまあまあ。要するに二人は赤い糸で結ばれていたのだ。二人は出会って結婚するはずだった。事故のせいでその機会はいったんは失われる。でもエリザベスはゴースト状態になりつつもアパートから離れず、デヴィッドはこのアパートに吸い寄せられる。赤い糸はまだつながっている!実はエリザベスは昏睡状態が続いている。回復の見込みはなく、そのうち生命維持装置をはずされてしまうだろう。

恋人はゴースト2

その前に「体」を盗み出さなくては!クライマックスはドタバタ調。安楽死うんぬんはシリアスな問題なので、見てる人全員乗れるとは思えない。装置ははずれ(はずされ・・ではない)、あわやと思われたが何とエリザベスは自力で呼吸し、目も覚める。ありえね~。目覚めたエリザベスには昏睡中の記憶(ゴーストとしてデヴィッドと過ごしたこと)はない。デヴィッドは黙って姿を消す。一ヶ月後、アパートへ戻ったエリザベス。何かが欠けているような気がする。屋上へ行ってみるとデヴィッドがいる。造園家の彼は、屋上に見事な庭園を作っていた。妻をなくし、生きる意欲を失って仕事もせずにいた彼だが、エリザベスに会って変わった。最後はもちろん(記憶を取り戻し)ハッピーエンド。この映画は日本ではなぜか未公開。リース主演なら公開されてもおかしくないと思うが。ラファロはまだ日本ではあまり知られていないかも。私はこの人けっこう好きである。鋭さがなく、やわらかい感じのする人だ。「死ぬまでにしたい10のこと」「ハッピー・フライト」など、暖かい愛情でヒロインをくるんでくれるような役が多い。時には「コラテラル」「ゾディアック」のような刑事役もやるけど、どちらかと言えばほんわかした癒し系。この映画ではデヴィッドの方が謎が多い。妻のローラをなくしたせいで沈んでいる。生活を変えようと思って引越ししたのか。でも食事はビールやスナックですませ、部屋に閉じこもり、仕事もしない。それでいて彼はエリザベスに、「(妻は)面倒な女だった」と話すのである。決していい奥さんではなく、生きていた頃は悩まされっぱなしだったけど、ぽっくり死なれてみると、心にぽっかり穴があいたようで・・。死んでくれてすっきりした、せいせいした!・・とはならないのが、男女の仲の不思議なところ。最初はうるさくて閉口させられたエリザベスも、しだいに彼にとっては大事な存在になってくる。いつもはビールやスナックですませていた食事も、卵を焼き、ブロッコリーを添えてみる。「あなたになら言える秘密のこと」と同じく、一番先に変わるのは食事なんだな。大事な人が現われたせいで、自分を大切にするようになる。きちんと食器を整え、コップの下にはコースターを敷く。コップのあとがテーブルに残らないよう気をつける。自分自身だけでなく、身のまわりの品物も大事にするようになる。そんな彼の変化が心にしみる。

恋人はゴースト3

階下に住む魅力的な美女カトリーナの誘惑にも耐える。今の自分はエリザベスの方が大事。ぽわんとしていて頼りなさそうなデヴィッドだけど、この映画での存在感がぐんぐん増していってるのがわかる。最初はもちろんエリザベス中心に動いていたけどね。カトリーナ役はイワナ・ミルセビッチ。お色気の中にもちょっととぼけたところがあり、いつもいい味見せる。デヴィッドの友人ジャック役ドナル・ローグ、エリザベスの姉アビー役ディナ・ウォーターズともにいい。でも一番気になるのは、エリザベスに出くわしたデヴィッドがゴーストについて調べようと行ったオカルト専門書店の店主だか店員だかのダリル役ジョン・ヘダーだろう。エリザベスはデヴィッドにしか見えない。ダリルにも見えないが、感じることはできる。何となくうさんくさいが、それでいてけっこう本質を突いてくる。ダリルの言葉(忠告など)、行動(ラスト、結ばれる二人を水晶玉か何かで見てにんまり)はファンタジーっぽい映画お約束のものだが、ヘダー自身現実からちょっと浮いているような雰囲気の持ち主なので、はまり役と言える。さてDVDの特典では別ラストも見ることができる。本編では屋上で出会った二人、カギの受け渡しの際手が触れ、その瞬間エリザベスに記憶が戻る。デヴィッドと抱き合いめでたしめでたし。しかし別バージョンでは、手が触れ、記憶がよぎったものの通り過ぎて何も残らずエリザベスは去り、デヴィッドはしょんぼりというあんまりなラスト。何でこんなの考えたのかな。こういう皮肉なラストにして笑いを取ろうと思ったのかな。でも誰も喜ばないと思うよ、こんなの。第一こんな状況は起きるはずがない。デヴィッドがエリザベスのアパートに住むことになったのも、エリザベスが生霊になってアパートに出没するのも、「二人は出会って結ばれる運命だった」という大前提があるから。二人が結ばれず(エリザベスの記憶が戻らず)別れてしまうのでは、二人はアパートで出会う必要はないことになってしまう。そうなるとこの映画自体が成り立たないのさッ!まあ、手が触れても何も思い出さなかったけど、去り際にふとエリザベスが振り返って、お庭のお礼にお茶を一杯いかが?とか言って、二人の関係がここからスタートするみたいな感じでもいいな。デヴィッドの顔がぱっと明るくなって・・。ああいかん、もう完成した映画なのに妄想が次々と・・。