北国の帝王

北国の帝王

これは題名がねえ・・。そりゃ原題通りであって日本でかってにつけたわけじゃないけど・・勘違いさせますわな。大恐慌時代のアメリカ。無チン乗車の帝王と、そうはさせじと奮闘する貨物列車車掌との壮烈な戦い・・あら、そうなんですか。疾走する列車を舞台にヒーローと悪党との死闘がくり広げられる超アクション映画じゃないんですか。冒頭の無チン乗車うんぬんで期待は早々としぼみ、萎えました。レンタルしたの後悔しました。でも見ましたけど。主演は帝王がリー・マービン、車掌がアーネスト・ボーグナインという汗臭い顔合わせ。これじゃあんまりなので、若くてつるんとしたシガレット(キース・キャラダイン)をプラス。年寄り二人はどっちも頑固で負けず嫌い。執念(無賃乗車する、させない)で凝り固まっている。特に車掌の方は同僚からも嫌われていて、殺人も平気。彼に落とされ、列車にひかれて死ぬ者もいる。死体は・・きれいすぎるかも。実際はぐちゃぐちゃでひどい有様だと思う。二人に対しシガレットは青二才。威勢がよく怖いもの知らずでうぬぼれや。後先考えず口から出まかせ言うので、自分で自分をピンチに追い込む。チャンスさえあれば裏切り、出し抜き、得意がる。どうしようもないバカで、帝王に同行することで少しは成長するかと思ったら全然。こいつ長生きできない。トラブル起こし遠からず命落とすだろう。「燃えよ!カンフー」での兄デヴィッドの代役みたいな印象しかないキースだが、なかなかの熱演。デヴィッドと言えば先頃世にもアホな方法で事故死したな。さて、帝王はどこどこへ行かなくちゃならないというわけでもない。無賃乗車は仕事、趣味、生きがい。不況だから仕事のある者も浮浪者も生活は苦しい。共通しているのは少しでも金があると賭けにつぎこむこと。帝王が車掌の列車に乗れるかどうかを賭ける。やりすぎで狂気さえ感じる車掌だが、無賃乗車を取り締まるのは彼がちゃんと仕事しているってことでもある。非は無賃乗車する側にある。そのせいで車掌の方を応援してしまう。郵便車と危うく衝突しそうになるところ、渓谷と橋、疾走する貨車の上、レールすれすれの下・・など、CGのない時代だからちゃんとやっていてものすごい迫力。こういう映画だとシガレットは女性客と恋に落ちるのが普通だがそういうのはいっさいなし。男の映画に徹しているのがいい。他にサイモン・オークランドが出ていた。