恋は邪魔者

恋は邪魔者

ベストテンに一度も顔を出さずに公開が終わったけれど、少しはヒットしたのかな。レニー・ゼルウィガーとユアン・マクレガーという人気者の共演だし、特にレニーは乗りに乗っている。今かかっている映画はアクションものばっかりだし、秋にふさわしいラブコメディーとして関係者はきっといけると思ったはずだ。60年代という宣伝文句に釣られて見に行く者もいるかもしれない。私みたいに。一回目は35人くらい、二回目は40人あまりってとこかな。歌の歌詞にもあったけど、この映画はロック・ハドソンとドリス・デイの路線を狙っているのだろう。レニーは歌も歌えるし、手の届かないような美女というわけでもない。庶民的な親しみやすさが彼女の特徴で、そこはドリスと似ている。違うのはレニーは肌が真っ白ですべすべなのに、ドリスはものすごいそばかす顔だというところだ。ユアンが演じる敏腕記者キャッチャー・ブロックは抜け目がなく、ずるい男。ユアンは小柄で線が細く、大柄なハドソンとの共通点はない。この役はユアンでなくてもよかったろうし、もっと年のいった大柄な俳優の方が60年代ぽくなっただろう。若いユアンにはこの映画を引っ張るほどの力はなく、内容もレニーの方に比重がかかっている。それを一番よく表わしているのが、バーバラの長い長い独白シーン。この映画は画面を分割したり、思わせぶりなセリフを聞かせたり、いろいろ凝った作りになっている。中にはやりすぎて品格を落としているシーンもあるが、それでいてこの時はレニーだけを延々とうつすのである。普通ならここでこそ画面を分割し、バーバラの話の内容につれて変化するキャッチャーの表情をうつすところだ。レニーの力量を見せつけるシーンであると同時に、比重のかかり具合を如実に表わしているシーンでもある。ところでこの映画はバーバラとキャッチャーの恋の他に、ヴィッキーとピーターの恋もある。この映画にユアンは合っていないような書き方をしたが、ピーターとの釣り合いを考えるなら、ユアンはちょうどいい。ピーターは跡継ぎというだけで社長の座にあるが、仕事ができて人生を楽しむすべも知っているプレイボーイのキャッチャーがうらやましくて仕方がない。キャッチャーへの劣等感やら嫉妬心やらあこがれやら複雑な感情をかかえている。ヴィッキーはそんな彼をホモでキャッチャーが好きなのだ・・と勘違いしてしまう。この部分はけっこう笑える。

恋は邪魔者2

ピーターを演じているデヴィッド・ハイド・ピアースは知らない人だが、ユアンを食ってしまうほど演技がうまい。ちょっと顔をゆがめる度に「ハワイ5-0」のジャック・ロードを思い出してしまう。「ゴッド」のケイちゃんが出ていたのにはびっくりした。60年代のコメディーなら、ゆったりかまえたハドソンのまわりをウロチョロする落ち着きのない三枚目役で、ケイちゃんみたいなのが出てくるところだ。だからもう少し出番があるのでは・・と期待したのだが・・残念。あとスチュワーデスのイベット役の人は「恋にあこがれてinN.Y.」に出ていた人。さて私がこの映画を見に行ったのは前にも書いたが60年代が舞台になっているから。「タイムトラベラーきのうから来た恋人」みたいに、見終わって心がほんわかする、それでいていろいろ考えさせ、気づかせてくれる内容を期待したから。でもそれは当てがはずれた。カラフルで楽しいコメディーだが、それだけ。ヴィッキーがコーヒーをいれさせられるシーンなどいい視点だと思ったのだが・・。もう一つの見に行った理由はユアンが好きだから。でもキャッチャーみたいな人はあんまり好きにはなれないな。私は結局「ナイトウォッチ」や「氷の接吻」みたいな映画でのユアンが好きなんだろうな。弱いけれどもけなげにがんばっているタイプ。バーバラに去られて、窓から外を見ている部屋着姿のキャッチャーは胸キュンでよかったけれど。さてこの映画、途中でバーバラが衝撃の告白をして、それまでの内容が引っくり返ってしまう。二回目はそれをふまえてバーバラの言動を見ていた。冒頭うまくタクシーをつかまえるシーンがあって、彼女が全くのおのぼりさんではなく、都会生活経験者であることが推測できる。しかしねえ、コメディー映画にまで衝撃のどんでん返しって必要なんですか?私は正直言ってこの設定にはがっかりしましたよ。バーバラという女性の魅力までうすれてしまったような・・。さて少しは知ってるナツメロでも流れるかと思ったんだけど「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」くらいでしたな。フランク・シナトラとアストラット・ジルベルトだと思うけど、実はジルベルトの声は子供の頃はあんまり好きじゃなかった。だっていかにもやる気のなさそうな歌い方なんだもの。でも今聞くと不思議なことに耳にスッと入ってきて、気持ちが癒されるのよね。それだけ年を取ったということなのかしら。