風の波紋

風の波紋

何年ぶりかで映画館へ行った。「ふみ子の海」以来か。場所も同じ。平日昼間ということでお客は五、六人か。その前に上映された「ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります」も同じくらいだろう。要するにガラガラ。「風」はドキュメンタリー。豪雪地帯妻有(つまり)の四季を追う。しゃべってることの半分以上聞き取れないが、ストーリーを追わなきゃならない映画と違って、こっちはただ見てりゃいい。製作中に地震が起き、傾いた古民家を修復するシーンが入ることに。東日本大震災の翌日に新潟や長野で起きた地震ね。家をおこすと言うと、それなりのこと思い浮かべるけど、こっちのおこすは興すではなく起こすの方。文字通り傾いた家を引っ張って起こす。なまじ頑丈にできてるから、倒壊せず何とか立ってる。だから傾きを直し、補強し、何とか住めるようにする。こういう作業にしろ農業にしろひんぱんに休憩する。そのたんびにお茶と漬物。夜は日本酒に漬物に味の濃い煮物。アルコール、塩分、重労働。今は機械のおかげで昔ほど重労働ではないかもしれない。その代わりに運動不足。私のまわりの人は、ほんの数百メートルの距離でも車を出す。町中を歩いていても誰ともすれ違わない。みんな郊外の大型店に行くから商店街は閑散。話を戻して漬物にかかっていたのは何だろう。味の素かな。タバコを吸うシーンも多かったな。禁煙なんてどこの世界の話?ヤギのシーンが楽しくも悲しい。お乳を飲む子ヤギの尻尾が左右に忙しく振られるのが笑える。草を食べてるのがのどかでいい。でも解体して食べるシーンで一気に気分がどよ~んとなって、ああ見に来るんじゃなかったと後悔した。何にも気づかずついてきて、いつものように草を食べるのだと思ってる。その後の宴会ではたぶん後ろめたさもあると思う。笑い声とかしらじらしくて。いいとか悪いとかの話じゃない。そういう伝統、風習。でもやっぱり気分はどよ~ん。泣けるという感想もあったけど、そんなでもなかったな。歌とか余計な感じで、ものすごく感動とか新鮮とかそういうのはなかった。雪との果てしない戦いとか、いちおう経験してるしね。