グレートレース
これを最初に見たのは民放の深夜で、確か大晦日と元旦の二回に分けて放映したと記憶している。その後も見る機会はあったが、最初の時が一番笑ったな。今回NHKBSで久しぶりに見たけど、最初に見た時からピーター・フォーク扮するマックスに目が行った。無表情だし小柄だし、いつも横に歩いているようなイメージ。白ずくめでぴっかぴかのトニー・カーティスや、黒ずくめで大声のジャック・レモン、はち切れそうなくらいいきのいいナタリー・ウッドに比べ、明らかに異質。前に出てこない・・でも気になる。実務的と言うか・・教授(レモン)を助けることしか頭にない単純さ。それにしても何と金のかかった贅沢な映画なのだろう。世界一周旅行でもしたような気分にさせてくれる。自動車でニューヨークからパリまで競争。「キャノンボール」みたいだが、他の参加者はすぐ落伍し、レスリー(カーティス)と教授だけになる。カーティスは上半身裸になって、悪い男爵(ロス・マーティン)と剣で戦うが、筋肉モリモリ、サイコロ腹筋とは明らかに違う肉の付き方で、そこが時代を感じる。でも身が軽く、動きは俊敏。CGとかない時代だからちゃんと実写、セット、合成。剣だって今なら細切れにし、カメラを揺らしてごまかすところだが、ちゃんとやってる。それにしてもこの数年後フォークは「刑事コロンボ」で大ブレイクするのだ。マーティンは「二枚のドガの絵」で犯人役をやるのだ。誰が予想しただろう!酒場の歌姫リリー役はドロシー・プロヴァイン。金髪が美しいが、歌はあまりうまくない。彼女は「0011ナポレオン・ソロ/地獄へ道づれ」に出ていたと思う。後でマギー(ウッド)が歌うが、こっちの方が上手。新聞社社長がアーサー・オコンネル、レスリーの相棒がキーナン・ウィン。彼は「ピラニア」に出ていたと思う。後半レモンは某国のアホ皇太子と二役をやる。笑い方やしゃべり方が「ポリアカ」のゼッドみたいで。・・まあ160分もあって、多くの人が書いているように長すぎる。テンポもゆるい。子供の頃見て大笑いしたのに、大人になって見ると退屈でちっともおもしろくない。ところがさらに年月を重ねて老いの時期に入った頃見ると、意外と笑えるのだ。こういう笑いにホッとする。映画は作られた時と変わってないのに、それを見る側は変化しているのだ。今の映画はどぎつすぎるし、せわしない。ちょっと見にはすばらしいけど、ごまかしが多く、なかみがない。