変身人間シリーズ

美女と液体人間

「電送人間」の特撮は、転送する時などのチラチラくらいで、これと言って目を見張るようなものはないが、人間ドラマ部分で引き込まれた。「液体人間」の方は石鹸の泡ブクブクとか、スライムのようなネバネバが壁を伝ってとか、緑色に光るカゲとか、まあいろいろやってます。ネバネバの部分はフィルムの逆回しとか、カメラを横にしたり逆さにしたりしてるんだろう。人間ドラマの部分は、肝腎な部分があいまいなので、どうも物足りない。数年前感想を書こうと見直したが、文章が思い浮かばずそのまんま。今度こそはと思って見たけど・・注意して見ていたけど・・三崎がなぜ液体人間になったかは結局説明されてなかったような。・・南太平洋で核実験が行なわれ、第二竜神丸が消息を絶つ。途中で漁師達が漂流船に乗り込み、何人かが液体人間にやられ、生き残った者も原爆症になるんだけど、私はてっきりこの漂流船が第二竜神丸だと・・。そしたら違うのよ。漁師達の乗っているのが第二竜神丸。てことはあの漂流船は?その船の乗組員が放射能にさらされ、液体人間になったというのはわかる。でもそこからチンピラの三崎の液状化(←?)にどうつながるのかいな。雨の夜・・密売人の内田は、仲間が麻薬を運んでくるのを車の中で待っている。やっと現われたと思ったら妙なことになる。何かに襲われ、パニックになって発砲。近くには警官もいるし、内田は仕方なくその場を去る。このシーンに夏木陽介氏がちょこっと出ている。この麻薬からたどって富永捜査一課長らが三崎のアパートに踏み込むと、もう明るいのに女が一人でベッドに寝ている。ここから千加子の受難が始まる。たいていの人はカギもかけずに寝ているなんて不用心な・・と思う。私もそう思った。今回踏み込んだのは刑事達だったけど、泥棒やギャングだったらどうするのか。でも考え直した。彼女は三崎がいつ帰ってきてもいいようにカギをかけずにいたのだ・・って。部屋にはテレビもあり、刑事達は三崎が麻薬で儲けているのだと思う。千加子も三崎が何をやってるか知ってるはず。でもテレビはキャバレーで歌ってる千加子が買ったもの。三崎が何をしているのかは知らない。聞いても教えてくれなかった。今どこにいるのかもわからない。でも刑事達には信じてもらえない。千加子の話からわかるのは、三崎は仕事の話はせず、この四、五日帰ってこないことだけ。やさしかったのか、粗暴だったのか、そういうことは不明。

美女と液体人間2

それにしても美しいだけでなく聡明でもある彼女が、なぜ三崎と同棲しているのか。でも今回見ていて感じたが、千加子に目をつけている男はいっぱいいたはず。現に内田もそうだ。彼女が取りあえずは安全に仕事していられたのは、三崎の女だからうかつに手は出せないと思われていたからではないか。てなわけで、最初のうちはギャングの抗争と、それを追う刑事達という図式。服を残して人間が消えたなんて、何かのトリックだと思っている。そこへ現われたのが城東大学で生物化学を教えている政田。彼や真木博士は人間が消えたことと第二竜神丸の乗組員の話を結びつけ、放射能によって人間が液体化し、しかも人間だった時の記憶をいくらか残しているらしいと思っている。それを証明するためカエルを使った実験を富永達に見せたりする。ここらでいちおう登場人物が出揃う。とても助教授には見えない政田が佐原健二氏。真木博士が千田是也氏。研究所の助手をやってるのは白石奈緒美さんだ。警察側は富永が平田昭彦氏、宮下刑事部長が小沢栄太郎氏、田口刑事が土屋嘉男氏、坂田刑事が田島義文氏。この中で多少まともに千加子を扱ってくれるのは富永くらいだ。関刑事が中丸忠雄氏だが、アップでうつることもなく、印象に残らない。千加子が白川由美さん。キャバレーのシーンでは二回歌うが、口パク丸わかりでちぐはぐ感が漂う。ダンサー達はお色気を振りまき、ジャズバンドはいささかうるさい。内田が佐藤允氏。まだ若いがリチャード・ウィドマークばりの冷酷で不敵なムードをかもし出す。内田が千加子を拉致し、政田がタクシーで追いかけるというシーンがある。力が入っているらしく長い。当時の観客はハラハラドキドキしただろうが、今見る人は、カーチェイスよりもまわりの風景に目が行くことだろう。ああ60年前の東京はこんな感じだったのだ。高速道路も高層ビルもなかったのだ。最後の方の下水道での逃走、追跡は何となく「第三の男」思い出す。ガソリンをまいて火をつけ、液体人間を焼き尽くすという作戦だが、火が外に出てきて川が燃え、橋が炎に包まれているのを見て心配になったのは私だけ?下水道の炎の中に浮かび上がった二つのカゲは・・三崎と内田か?液体人間は、誰が残って誰が食われて消えたままになるのかはっきりしないので、もやもやするが、映画は終わってしまう。

電送人間

私は東宝の変身人間シリーズの中ではこの「電送人間」が一番気に入っている。印象に残ったことが二つあって、一つはいつもなら悪役をやる人達がいっぱい出てきて、みんな殺されてしまうこと。最初から命を狙われる者として出てくるので、悪事をやってる暇がない。もう一つは電送人間をやっている中丸忠雄氏のかもし出す冷たい薄気味悪さ。主演は鶴田浩二氏だろうが、見終わって目に焼きついているのは中丸氏の無表情。製作は1960年・・まだ戦争引きずってる頃。遊園地のスリラーショウ。ショーじゃなくてショウなのが何とも・・。その、”悪魔の洞窟”の中で塚本というブローカーが殺される。現場には彼を呼び出すメモと認識票が落ちていて、凶器は旧陸軍の銃剣。この時のお客の一人が児玉清氏らしい。東都新聞の桐岡(鶴田氏)は学芸部の記者だが、なぜか現場にもぐり込み、針金のようなものを拾う。桐岡のボスの井田が松村達夫氏、給仕が西条康彦氏。西条氏は「ウルトラQ」に出ていた。関係ないけど私は子供の頃「ウルトラQ」に出ていた佐原健二氏と、中丸氏の区別がなかなかつかなかった。さてスリラーショウの呼び込みでは女性が怖がるから男性には好都合みたいなこと言っていたけど、女性に助けてもらいながら出てくる男性もいて、そこが笑える。また、桐岡のデスクがごちゃごちゃで、いかにも飛び回っている・・鉄砲玉みたいなキャラなのが伝わってくるのがいい。これは私の勝手な想像だが、彼は元々は社会部の敏腕記者だったのではないか。何かへまをして学芸部へ回されたのではないか。でも本人は相変わらず何か嗅ぎつけては飛び出していくという・・。さて、あの針金のようなものは、桐岡の恩師三浦(村上冬樹氏)によるとクライオトロンというらしい。後で、戦時中仁木(佐々木孝丸氏)という国粋主義の学者が軍のために電気兵器を作っていたことも話す。立体テレビを進化させたもので、物体も転送できるとか何とか。日邦精機という会社の営業部にいる明子(白川由美さん)は、中本(中丸氏)という男と会う。彼は冷却装置を購入してくれたいわばお得意さんなのだが、どうも薄気味悪いところがあった。桐岡は塚本のアパートを調べに行った際、この明子と出会う。それにしても簡単に部屋を調べることを許す大家さんの寛大さときたら・・。ただ、部屋を調べていたら張り込んでいた岡崎捜査主任(土屋義男氏)が現われ、怒られたりする。また、大学の同窓生小林警部(平田昭彦氏)に再会したりする。

電送人間2

この・・追いかける方が主役級の三人というのは、多すぎる感じだ。散漫な印象受ける。二人でよかったのでは?白川さんは非常に美しい。明子は帰宅途中、逃走中の中本に襲われ、なぜか中本は気絶した彼女を抱いて運び、なぜか道路に置いていくなど、不可解な行動を取る。後で装置の不具合を理由に彼女を軽井沢へ呼びつけるが、実際はどこも故障してないと言う。ここもわけわからんが、たぶん彼は会社で明子を見て、その美しさに心を動かされたのだと思う。逃走中に明子を連れ去ろうとしたが、彼女に出会ったのは偶然だろうか。彼女を発見させて、追っ手を手間取らせようとしたのか。軽井沢に呼んだのは親しくなるつもりだったのか。だから桐岡がくっついてきたのがおもしろくない。まあ彼女と親しくなれなくても、アリバイ証人にはできる。話は前後するけど、「大本営」というキャバレーがあって、金粉ショーをやってる。何だか「三つ首塔」みたいだ。いちおう特撮物だから子供も見にくるだろうけど、こういう大人向けのシーンもある。おおらかと言うかアバウトと言うか。奥では経営者の隆(田島義文氏)と、貿易会社をやっている大西(河津清三郎氏)が認識票を送りつけられ、滝(堺佐千夫氏)の仕業に違いない・・なんて話し合ってる。ところが当の滝がやってきて、自分のところにも認識票が・・と言う。そこへテープが送りつけられ、聞いてみると・・14年前に殺したはずの須藤の声が・・。送り主の男は・・と、外を捜して見つからず、戻ってみるとテープがない。ここらへんの流れはうまい。で、予告通り須藤が現われ、隆を殺す。店で張り込んでいた桐岡と小林は、男を追いかけるが逃げられてしまう。途中で気絶した明子を見つけるという流れ。芝浦の倉庫では火事があり、焼け跡からは冷却装置のようなものが・・。怖くなった滝は警察へ訴え出ようとするが、大西は止める。しかし結局話すことに。終戦の8月15日、仁木の研究資料を隠すため、大西、滝、隆、塚本、それに当番兵の須藤が軽井沢の洞窟へ。ところが荷物のなかみは終戦のどさくさにまぎれて持ち出した金の延べ棒。それがばれ、怒った須藤は大西達に銃を向けるが、彼も仁木も撃たれてしまう。滝があたりを爆破し、いったん延べ棒を埋めてしまう。一年後、掘り出しに行くと・・二人の死体も延べ棒もなくなっていて。大西は麻薬の密輸をやってるみたいで、決して真っ当な人間ではないのだが、命を狙われているとなると、警察も保護するしかない。

電送人間3

隆の次に狙われたのは滝。彼は甲府に住んでいるのか。明子から冷却装置をいくつも購入した中本のことを聞いた桐岡は、前にも書いたように一緒に軽井沢の牧場へ。彼の存在が気に入らなそうな中本・・実は須藤・・が飲んでるのは・・牛乳か?牧場ならそれも当然だが、牛は出てきたっけ?ちょうどその頃滝は殺害予告の時刻が迫り、どうにも落ち着かない。小林や岡崎がそばにいるのだが・・。明子と桐岡は住居内を探るが、部屋の多くはカギがかかっている。誰かいるような気がする。うなるような音もするが、中本には浅間山のせいだと言われる。予告通り、滝は殺されてしまう。警官がいつの間にか須藤に入れ替わっていて。追いかけた小林達も結局は逃げられてしまう。しかも今回は警官二人も犠牲に。須藤が生きて復讐して回っているのも、軽井沢にいるのもわかっている。あとは証拠となる転送装置を見つければ・・と、一行は軽井沢へ。須藤は捜索を拒むが、仁木が姿を現わす。両足を切断し、車椅子だが生き延び研究を続け、もう九分通り完成している。須藤がこの装置を時々使っているのは知っていたが黙認していた。しかし殺人を重ねていたとは・・。ふと見ると須藤がいない。またもや逃げられた。その頃大西は怖くなって東京を離れ、愛知県の小島にある別荘へ。用心棒が三人・・そのうちの一人は天本英世氏だ。ここまで来れば大丈夫だろう・・しかし予告の手紙が前日に届いていた。大西は知らなかったが装置もすでに届いていた。滝の場合を見ていて、自宅ではなく全然別のところへ行って隠れていれば殺されずにすんだのでは?と思う。転送は一見便利そうに見えるが、現われる場所に大きな装置をあらかじめ置いておかなければならない。あちらにもこちらにも用意しておくのは無理だから、滝の場合は自宅の近くだ。だから全然別の場所にいれば、今回は何とかなったかも・・。でも小林達はそこまで考えてないと思う。まだ見張っていれば簡単につかまえられるさという自信持ってたと思う。でも失敗し、その後も仁木の話に気を取られているうちに須藤に逃げられるなど、同じ失敗くり返す。大西の場合も、須藤には彼が別荘へ行くとわかっていて。なぜわかるのかは不明。予知能力でもあるのか。手紙を見た時点で大西が別の場所へ移っていれば、須藤が現われても空振りだったが、結局動かない。もっとも動こうにも台風が近づいていて。

電送人間4

結局進路はそれて影響はなかったものの、大西は予告通り殺される。こういう設定の場合、最後の一人は失敗してしまった・・でもよかったと思う。最後の一人だから須藤も時間をかける。銃ではなく、銃剣で刺し殺すことにこだわっているから、銃を撃っている間は大西は殺されない。その間に桐岡達が駆けつけても・・間に合ってもよかったのに。全員が殺されてしまったのでは、復讐が成功したということより、警察は何にもできなかった、無能だったという印象が残るだけ。須藤だって、彼が死んだのは仁木が装置を壊したからで。桐岡達は何にもしていない。見てただけ・・。一度は須藤に首を絞められ、死んだかに思えた仁木だったが、息を吹き返し、装置を壊す。こういう装置の欠点は、中に入っている時は無力なこと。転送途中に何かあると、自分ではどうしようもない。浅間山の噴火で建物はつぶれ、仁木は死亡。装置も研究も無に帰する。いたとして、牧場の牛はどうなったのかな?おかしかったのは大西の部下の一人。誰か島に来るぞとなるが、別荘の窓からではよく見えないので海岸までひとっ走りとなる。そのうちボートが警官でいっぱいなのがわかり、うれしそうなホッとした表情になるのだ。本来なら須藤を殺すため銃を用意して待っているのだから警官を見れば「やばッ!!」となるところだ。でもうれしそうな表情。そこがよかった。さて須藤は大西のところへ行くため装置を使おうとして仁木にもう助手じゃないとかなじられ、首を絞めるんだけど、その時ゴムの仮面が取れる。今までのっぺりした感じでヒゲもシワもなかったけど、仮面のせいだったのだ。現われた顔には傷があって、ここはびっくりしたな。須藤だって元から異常な性格だったわけじゃない。国のため、大事な研究大事な先生を守るのだと純粋に思ってた。それなのに上の連中は欲のため金の延べ棒をくすねようとした。止めようとした自分や仁木を撃ち、生き埋めにした。復讐の機会をずっと待って14年。仁木にはもう復讐とかそんな気はないけど、須藤がこんなへんぴなところへ引っ込んで仁木の世話をしたのは・・。今回は殺す方殺される方どちらにも同情すべき点があって。大西達だって当てにしていた延べ棒は消え失せ、須藤達は生きているんじゃないか、いつか復讐されるんじゃないかとおびえて暮らしていたはず。だからいつもなら憎たらしい悪役の皆さんも、今回ばかりはちょっと気の毒で。一人くらいは助かってもよかったんじゃないかと。それにしても中丸氏の美しさ、不気味さ、悲劇的な感じはよかった。中本と明子が顔を合わせるシーンでは、中丸氏の美しさと白川さんの美しさにクラクラした。鶴田氏がかすんでしまうのも無理はない。

ガス人間第1号

「電送人間」や「美女と液体人間」は以前WOWOWでやったので見たことあるけど、「ガス人間」は初めて。銀行から金が盗まれるが、手がかりがない・・と言うか、人々には相手・・犯人は見えてるの?逃走する車を追ったものの、結局は逃げられてしまう。近くにあったのが日本舞踊の春日流家元の屋敷。家元の藤千代(八千草薫さん)は、この世の者とは思われぬほどの美しさ。これが洋画なら警部補岡本(三橋達也氏)は彼女に恋いこがれるところだが、こちらはやや朴念仁ぽいところがあり、そうならない。彼が以前下宿していた家の娘京子は、今では新聞記者。何か特ダネはないかと岡本をせっつくが、彼に恋してるのは見え見え。落ち目で金に困っているはずの藤千代が新車を買ったり、発表会をやろうとするなど金回りがよくなったのを、岡本は怪しむ。その後盗まれた金を持っていたことで逮捕されるが、何も関係ないじいや(左卜全氏)までブタ箱へ入れられているのは解せない。犯人だと名乗り出てきたのが図書館の事務員水野(土屋嘉男氏)。彼は実はガス人間。生物学者佐野の人体実験によって誕生。ここらへんは詳しいことは不明。注射を打たれ、10日間寝ているだけでそうなったと、アバウト。ガスだからどこへでも入り込めるし、撃たれても平気。こういうので困るのは衣服の扱い。途中で、着衣のまま一部ガスになって格子をくぐり抜けるという凝ったシーンも見せるが、服を残して逃げることも多く、元に戻った時には素っ裸で裸足で・・どうするのかね。彼は藤千代に恋していて、土地を売った金だとウソをつく。彼女のことを金のかかる女だと言っていて、でもだからこそ彼女に近づくことができたわけで。東宝の特撮物に日本舞踊が絡むのは珍しい。いつもならキャバレーで歌うとか色っぽい踊りとか。特撮目当てに子供も見にくるのに、日本はアバウトで・・。クライマックスは踊りが長すぎてだれる。ガス人間ならガスを充満させて火をつければ・・という作戦らしいが、なぜか失敗だ・・となる。でも結局藤千代がライターで火をつけて・・彼女ガスのことは知っていたの?全体的にはモタモタしていて、セリフも全然聞き取れなくて、いい出来だとは思えない。ただ、八千草さんの匂い立つような美しさだけは印象的。こういう形容が当てはまる女優さんには最近ではお目にかかれない。