カオス

カオス

公開最終日、何とか滑り込みセーフ。ん?けっこう入ってるじゃん。これならもう一週間いけるのでは?・・と言うか、この顔ぶれならもっと別の大きなところでやって欲しかったな。うまく宣伝すりゃ(そりゃ新聞に広告出してちゃんと宣伝していたけどさ)それなりにお客来ると思うよ。何しろジェイソン・ステイサム、ライアン・フィリップ、ウェズリー・スナイプスというタイプの違ういい男三人、それこそ夢の顔合わせ。「カ」ッコイイ「オ」トコ「ス」リー・・略して「カオス」って、もちろん冗談ですけど。お客は二回とも30人くらいか。私はいつも一番後ろに座っていて、始まるまでの間退屈しのぎに人数数えるんだけど、今回は後ろの方座れなかったからな。ざっと見てそれくらい。女性、それも若いのがわりといた。ライアンのせいかな。ライアンと言えば「ライアンを探せ!」というアニメがもうすぐ公開されるんだよな。どこかの記事で間違って「ライオンを探せ!」になっていて、そりゃライアンはライオンだけどさ。で、こちらのライアンだけど、リース・ウィザースプーンと離婚しちゃったのね。今年のアカデミー賞の番組見ていて何となく妙な感じしたのよ。去年のヒラリー・スワンクもそう。「あれ?」ってとこがある。しばらくしてから「やっぱり・・」となる。今年のアカデミー賞で一番印象的だったのは「クラッシュ」の受賞。リースが主演女優賞とって、さあこれで超一流の女優としてのハクがついたぞ。ギャラもアップだ。それにくらべ、夫ライアンのぱっとしないことと言ったら。かわいい顔してるだけに何だか気の毒でねえ・・。いつもスポットライト浴びてるのはくちゃっとつぶれたような顔立ちのリースの方。彼女が輝いて見えるのにライアンはいつもくすんで陰気・・。でも「クラッシュ」が受賞して、それこそ飛び上がって喜んでいて・・。この喜びの輪の中にブレンダンがいてくれたら・・と思いつつも、ライアンよかったね、マット(・ディロン)よかったね・・と祝福しておりましたの。俳優である以上、仕事の結果が出るのはやっぱりうれしいよな。いくら奥さんでもリースにばかりスポット当たるのではおもしろくないと思うよ。彼はものすごくかわいい顔していて(演技がどう・・って言う前にまずそれが来る)、時にはそれがマイナスな場合もあるけど、地味でもいろんな役やって、これからも成長していって欲しい。

カオス2

美しい顔立ちだからかえって冷酷な役や汚れ役が引き立つということもある。アラン・ドロンみたいにさ(ライアンで「サムライ」のリメイクを・・とふと思ってしまったわ!)。あるいは彼がどういう顔立ちをしていようが気にならないくらいストーリーがすばらしいとかさ、そういう映画待ってます。「クラッシュ」の後は「父親たちの星条旗」が公開されたし、彼も仕事運上向いてきているんじゃないの?「カオス」は作られたもののアメリカでは公開されなかったようだけどさ(何で?)。彼って何となく子犬のようで、応援してあげたくなっちゃいますのオホホ。さて・・この映画・・予告を見た時から気になっていましたの。ストーリーは・・ある事件が起き、犯人も人質も刑事二人によって撃ち殺されてしまう。人質が死んだので刑事二人は処分される。しばらくたって銀行強盗が起き、人質を取って立てこもるが、一味のリーダー、ローレンツ(スナイプス)は交渉役に(例の事件で)停職中のコナーズ(ステイサム)を指名する。コナーズは復職するが、彼の才能をねたむ上司ジェンキンスは、ルーキーのデッカー(ライアン)を監視役につける。いざ銀行に突入・・という時にトラブルが起き、人質達は助かったものの犯人一味はまんまと逃走。しかし不思議なことに銀行からは何も盗まれていなかった。いろいろ調査して犯人の一人デーモンをつかまえるが、逃走資金として彼が持っていたお金にはにおいがついていた。警察では証拠物件として押収したお金には、間違って指紋などつけないよう区別するためにおいをつける。つまりこのお金は他の事件の証拠物件として警察の保管庫にあったもの。それがここにあるということは警察内部に一味と通じている者がいるということ。それは誰?お金や宝石が目的でないとすれば、ローレンツ達の目的は何だったのか。題名通りカオス・・混沌・無秩序に見えたものがだんだんはっきりしてきて、最後にぴたっとすべてのピースがはまる。そんな緻密なストーリーになっている・・と言うか、なるはずだったの。しかし実際には「あれ?」な部分があちこちにある。まあ仕方ないけどさ。この映画はストーリー詳しく書いちゃうと、これから見る人の興味そぎかねないのであんまり書くわけにはいかない。途中でステイサムが××しちゃって、そんなぁ間違いだってことにしてよ。実は○○だってことにしてよー、だめ?

カオス3

ふんじゃーしょーがないライアンの演技見てよーっと。このコかわいいよなあ・・。そのうち実はスナイプスが△△だってことがわかって、ああそれで冒頭の事件につながるわけね。かなりムリがあるけど。今までもつながっていたけど、別の意味にとらえていましたの。それというのもそう見えるよう作り手がわざとやっているんです(これはまた後で書く)。最後には正義が勝つ・・これで終わり・・と見せといて、また引っくり返る。エッ!やっぱり○○たの?しかも正義は勝たない。無力で犯罪はうまく成功?そんなぁ・・最後の最後、つまりエンドロールの後でもうひとひねり出るか!・・出ませーん、終わっちゃいましただ。うーん、でも□□だからこういう結末も許せるかな。そりゃ□□が××より○○の方がいいもんねー←何だこのカオスな文章は!主要人物三人のうちコナーズは「トランスポーター」のフランクっぽいキャラなので、見ていてすんなり受け入れられる。いつも通りハゲ・濃い・シンプルの外見三点セット。頭脳明晰・沈着冷静・一匹狼の内面三点セット。フランクと違うのは警察という大きな機構の中に組み込まれていることだけど、コナーズのようなタイプはどうしてもそこからはみ出してしまう。同僚には信頼されるけど上司にはにらまれるタイプ。前の人質事件にしろ今回の強盗事件にしろ、彼に落ち度はなかった。しかし人質が死んだり強盗一味に逃げられたりすれば責任は彼が取らされる。彼がいつしか警察に不満をいだくようになったとしてもムリのないことで・・。ステイサムはこういう役にぴったりだ。一筋縄ではいかないしぶとさ、鋼鉄の意志、こざっぱりとしてムダなものを感じさせないところがいい。今回はあまりアクションがないが、私は別にかまわない。「トランスポーター」でのようなやりすぎアクションはこの映画には不要である。ライアンは何度も書いてるけどすっごくかわいくて一途。鑑識のコとか早速目をつけて寄ってくる。電話番号渡される。彼女が初めてってことはなくて、今までもどこにいても彼が誘わなくたって女のコの方から寄ってきていただろう。こういう状態で気を散らさず仕事するのって大変だろう。でもデッカーはうぬぼれたりしない。利口だから、ハンサムなのを利用するとしたら捜査にいかす。女性がコロリとまいって、ついつい親切気を出しちゃう・・というのは「エンパイア・オブ・ザ・ウルフ」のポールと同じ。

カオス4

あっちもハンサムだったし・・(今原作読んでるとこ)。ライアンもいつの間にか30過ぎた。顔立ちは整っているけど、肌はさすがにつるつるぴかぴかとはいかない。それなりに人生の長さ表わす肌になってる。でもちょっと見は20そこそこのかわいさ。後半になると傷ついて顔も汚くなるし、いろんなことが起こって(しかも一日のうちに!)くたくたになるんだけど、それでも気力ふりしぼって事件に食らいつく。最後は一人で奮闘する。あの時だって誰か仲間がいれば何とかなったかもしれないけど、何しろ一人でしょ。混雑した空港一人で駆けずり回って・・気の毒になっちゃう。デッカーの父親は伝説の警察官で、今でも尊敬されているけど、彼が12歳の時に死んでしまった。いくらヒーローでも死んでしまったのでは何にもならない。幼かった彼にはちっとも理解できない。まあこういう過去は、別にわざわざくっつける必要はないと思う。思い出話なんか入れるとスピード感が鈍る。まあとにかく困っている人を助けたいという単純な、しかし崇高な思いからデッカーは警察官になった。今でもその純粋さは失われていない。その一方でそれらをすでに失った者も出てくる。かわいらしくて胸キュンのライアンが純粋なキャラをやるからこそ、純粋でない濁ったキャラとの差が際立つ。いやホントライアンはよかったんですよ。女のコにナンパされても、コナーズにきわどいこと言われても表情を変えない。怒ったり笑ったりしない。何かと言えば「お父さんは・・」と言われてうんざりしているけど、だからと言ってそれを表に出したりしない。こういう映画では珍しく仏教の「悟り」について話されるんだけど、ちょっとかじっただけと言いつつ、こういう知識が彼の性格に影響及ぼしているのでは・・みたいに感じられるのが興味深かった。普段わりと無表情でいながら、かなり行動的で思いきったこともする。時にはコナーズもびっくりするくらいにね。デーモンをオートバイで追跡するところ(ここはどうせスタントマンだろうと思いながら見ていた)、病院で尋問するところ(かわいらしい顔をしているからデーモンも最初は見くびっているの。それを逆手に取って、ついには屈伏させてしまうのよ!)、ローレンツの録音テープを聞こうとするところ(仲間のデックスがさわるな壊すなといろいろ言うのがおかしい)。まあかなりムチャをやるんですよ。

カオス5

コナーズの沈着冷静と対照的なんだけど、ただムチャをやっているという感じはしない。エリートの優秀さとも違う。一流大学出たわけでもないし、父親早くになくして生活も楽ではなかったはず。でも彼には彼なりのやり方があって、他から何か言われても動じないけど、自分がこうするぞと決めた時には思いきった行動を取るという・・そこがすごく印象に残った。ラストはその彼もすべてのことに裏をかかれて頭に血が上っていたけど、相手が□□だからしょうがないわな。さてスナイプスの方は、出番も少なくキャラ設定もあいまい。最初の方はノリノリでスナイプスらしさ全開。銀行強盗だから黒ずくめ、セクシー、キュート、ミステリアス、スマート・・この上なく適役に見える。でも・・逃走後がだめ、動きがなくなる。正体わかってからも、目的わかってからも・・説得力が感じられない。なぜ彼がこうなってしまったのか説明されても、それが彼のキャラとすんなり結びつかない。元は良心的だったけどコロリと悪の方に回ってしまったのか。元々ワルだったけど、あの事件のせいでいっそうワルになったのか。強盗仲間は最初からみんな殺すつもりだったのか。デーモン達はそれぞれ前科のある悪党だが、ローレンツ自身とは感情のもつれがあるわけでもない。殺さなければならないような恨みがあるわけでもないのに、利用した後簡単に殺すってことは、ローレンツの方が彼らより悪党だってことでしょ。前半こそスナイプスは適役だったけど、後半は別に彼でなくてもいいみたいな・・。デッカーと対決するところも・・とたんにおしゃべりになって・・その前の電話でもたまにしゃべりすぎていたけど。何かはっきりしないキャラで、そのせいで肝腎のタネ明かしの部分で説得力なくなってしまったのが残念。他の出演者ではコナーズの元恋人ギャロウエー刑事にジャスティン・ワデル。どっかで見たような人だが「ドラキュリア」に出ていたらしい。他にテリー・チェンが出ている。一回目見ている時は、出てきたと思ったらセリフ二つで終わりかよ!・・とびっくりした(ローレンツに殺されちゃう)けど、二回目見ていて、強盗一味として出ているじゃん!・・と気がついた。気がついたけど一味はみんな顔隠しているから誰が誰だか全然わかりませーん。スナイプスだけは顔隠していてもわかりますけどさ。

カオス6

シネパトスだと二回見られるので、こういうひねった内容の映画を見るのに都合がいい。一回だけだとかなりの部分見落としてしまう。どんなに注意して見ていても、我々が見るのはわりと表面的な部分。こういう事件が起こり、こういう人物が登場し、こういうふうに見えたことの裏には実はこういう真の目的があり、こういうふうに見えた人物は実はこう考えており、一見混沌として無秩序に見えたさまざまな出来事は、最後にはパズルが完成するようにするするっと形を整え、完全犯罪成功・・ジ・エンド。後味がいいかどうかは別として映画は終わる。お客は何となくわかったようなわからないような・・。これが結末知った上で見ると、今度は別の視点で見るので物事が違って見える。デッカーは裏のないキャラなのでそのまま見ていられるが、コナーズやローレンツには裏がある。彼らの表情、言葉、行動に、一回目とは違う意味を感じ取ることができる。そしてそれらを特にステイサムは実にうまく演じているのだ。ほんのちょっとした表情に心の動きを見せ、二重の意味(一回目は普通にお客が「こうなんだろう」と感じ取る意味、二回目は「ははーん」とお客を納得させる意味)を持たせることができる。例えばレストランでの食事のシーン。途中でコナーズは席をはずし、ギャロウエーも頃合を見てあとを追う。トイレから出てきたコナーズを待ち受け、よりを戻そうとする。誤射事件で人質を死なせてしまったコナーズは停職。ギャロウエーは上司のジェンキンスに乗り換えたものの、ジェンキンスはコナーズの能力に嫉妬する無能な男。コナーズが復帰すれば彼女にも「やり直したい」という気持ちが起きる。しかし・・コナーズは「もう遅い」とそっけなく拒絶する。彼の方はもう彼女のことは何とも思っていないのだ。失恋の痛みを乗り越え、事件解決一直線なのだ。男らしくてステキ!・・と、表面上はこう見える。しかし!「もう遅い」には別の意味合いがあるんだぜベイビー!そう思って見ると彼はケータイを持っている。トイレに行ったのはどこかへ電話するためなのだ。デッカーがカオス理論やローレンツの名前を持ち出した時の表情。お札ににおいがつけられていると知った時の表情・・。俳優の演技だけでなく、作り方もわざと真相が見えにくくなるようにしてある。冒頭の事件からして我々の目に見えているのは全部ではない。

カオス7

カオス理論のうち、「初期データには必ず誤差があり」の部分がここで出てくる。「そのわずかな誤差は運動の中で増幅され」・・つまり我々お客はローレンツが冒頭撃ち殺された犯人の兄だと思い込まされる。兄だから弟を殺したコナーズを憎み、強盗事件を起こしてコナーズを引っ張り出し、何やら復讐するつもりなのだ。いちおう筋は通っている。しかし実は・・。コナーズにとっては、デッカーという監視役がつくのは予想外だったろう(誤差)。しかもデッカーは若いかわいいに似合わずかなりのしっかり者。一緒に行動しているうちについつい愛情もわいてきて・・(誤差の増幅)。お客が思い込まされているもう一つは時間である。一味のアジトに踏み込んだ時、爆発物がしかけられているのをギャロウエーが発見。みんなが避難したとたん爆発する。これはわりと小規模だったけど、次に大爆発が起こりアジトはこなごなになる。ああ、じゃあ爆発物は(なぜか)二ヶ所にしかけられていたのだ。見ているお客には爆発は立て続けに起きたように見える。しかし実際はいくらか間があいている。その「間」はわざと描写されないのだ。ラストのタネ明かしまで・・。発見された死体も警察バッジによって表現されるが、それも細工されたもの。見ていても死体がいくつあったのかもあいまいである。あらかじめバスルームに用意されていた死体すら見逃しそうになる。二回目見ている時はちゃんと目にとまるけどね。検死すれば別人てわかるはずだけど、取りあえず・・。別人てわかる頃には本人高飛びしているから。まあこんなこといろいろ書いても、映画見てない人にはちんぷんかんぷんだろうけど、とにかく二回楽しめること間違いなしの映画なので、むしろビデオ向きかもね。俳優の演技、作り手の細工にうまくだまされてください。その方が楽しいよ!ラスト・・私としてはからくりがわかったのだから(コンピューター操作による、銀行からの10億ドル強奪!)、完全犯罪成功に一片の黒雲が差す・・って感じにして欲しかったんだけど・・。うまく成功しちゃったんだろうなあ。ゆうゆうと飛び立つ飛行機見ながら、思わずスクリーン右下注視しちゃいました私。「つづく」・・って出るんじゃないかって激しく妄想。だってぇ・・作れますぜ「カオス2」。デッカーだってこのままやられっぱなしじゃ悔しいもん。リベンジして欲しいんだもん。