キャンベル渓谷の激闘

キャンベル渓谷の激闘

これを見たのは数十年前だ。全部見たかどうかは不明。「月曜ロードショー」でやったのだとしたら、後半しか見ていない。なぜなら前半やってる9時から10時は、裏番組の「スパイ大作戦」見てたから。少し前500円DVDで見つけ、早速ゲット。数十年ぶりに見直した後、原作も読み返した。あとがきに「先頃TVの洋画番組で放映」とある。1972年9月とあるから、40年以上前だ、ひえ~。前回見た時の印象は、ダーク・ボガードがこんなアクション物やるなんて・・と、それだけ。この頃のボガードと言えば「ベニスに死す」。何かの雑誌に「鼻の下が無限大」と書かれていたのは彼だっけ。美少年によろめき、今にも泣きそうな顔をし、ふらふらさまようヘンなおじさん。他の出演作・・「地獄に堕ちた勇者ども」「愛の嵐」「唇からナイフ」・・いずれもさっぱりわけがわからない。さて・・舞台はカナディアン・ロッキー。キャンベルという老人が亡くなっているのが発見される。彼が持っている土地はキャンベル王国と呼ばれている。境界線の反対側では、ダムが建設中。王国は水没の運命にあるが、キャンベルは石油が出ると信じ、売却を拒否。以前、町の人達は採掘に出資したが、石油は出ず、金はキャンベルの相棒が持ち逃げしてしまった。最近の調査でも望みなし。山にこもって一人がんばっていた老人も、ついに力尽きたか。ダム建設を進めているのがファーガソンという大物。彼に雇われた建設業者モーガン(スタンリー・ベイカー)が指揮を取っている。そこへふらりと現われたのが、キャンベルの孫ブルース(ボガード)。顔色が悪く生気がない。後でわかるが、彼は医者に余命半年と宣告されていた。一人になりたくてここへ来たのだが、祖父の汚名もすすぎたい。調査データはモーガンによってすり替えられた疑いがあるし、祖父の死も病死ではなく殺人ではないのか。50年前ゴールドラッシュにわいた町はすっかりさびれている。石油の話がだめになった後はゴーストタウン状態。それがダム建設によって息を吹き返しつつある。人々に仕事をもたらし、人が集まれば商売も活気づく。願ってもないチャンスなのだ。ところが見知らぬ青年が現われ、土地は自分のもの、売らないと言い張るんだから、険悪ムードになるのも当然。どっちにも言い分はあり、どっちがよくてどっちが悪いとは言えない。それにしてもこの映画・・保安官とか市長とか出て来ないな。

キャンベル渓谷の激闘2

ブルースには未来がない。失うものがないから、脅されたって平気。石油が出て大金持ちになったとしても、自分が使えるわけじゃない。でも、石油はダム以上にこの町の発展に寄与するはずだ。モーガンの妨害が激しくなると、採掘用資材を運び上げるため、ブルースも荒っぽい手段を取る。爆薬を使って山崩れを起こし、道を通れなくしたり、橋を落としたり。モーガンの方もブルース以上に汚い手を使う。どっちもどっちという感じ。だがモーガンはダム用コンクリートの質を落とし、いわゆる風邪引きセメントを使っている。莫大な差額を着服しているに違いない。何ともないとうそぶくが、水が入って圧がかかればどうなるかわからない。石油を掘り当てるのが先か、ダムが完成するのが先か・・競争が続く。苦闘の末ついに石油が出るが、先を越されたモーガンは、法的な期限を守らず水を入れ始める。さっさと水没させ、石油が出たという証拠を消してやれという魂胆。案の定劣化していたコンクリートは水圧に耐えられず、ひびが入り始める。ダムの底で作業中の人夫は何も気づかない。上にいた者はさっさと逃げ出し、誰も知らせようとしない。ブルースはリフトに乗ってダムの底へ下り、早く逃げるよう叫ぶ。こんなことができるのも、どうせ自分はもう長くないという頭があるからだ。激怒したモーガンはブルースに襲いかかるが、大きな石が落ちてきてぺしゃんこに。決壊して流れ出した水の中からブルースを助け出したのはマックスだった。彼はモーガンの命令で老人を痛めつけたり(それが死に繋がったらしい)、調査データを破棄したりするんだけど、ブルースはとがめ立てせず、見逃してやる。そうやって情けをかけておけば、こうやって恩返ししてくれる。骨折したブルースは医者に見てもらうが、血液検査は異常なしと言われても信じられない。あの死の宣告は何だったんだ?何だか無理やりなハッピーエンド。映画では病名ははっきりしないが、原作では胃ガン。レントゲンにちゃんとうつっていた病巣がいつの間にか消え、医者も首を傾げる。山の空気のおかげか、何かを成し遂げようという強い意志が奇跡を起こしたのか。ブルースに協力するのが調査技師ブレーデン。彼はホテルで働くジーンに恋しているが、相手にしてもらえない。なぜならヒロインは主人公・・ブルースとくっつくと決まっているからである。

キャンベル渓谷の激闘3

ブレーデンのようなタイプはたいてい途中で命を落とす。彼の死によってブルース達はいっそう奮起する。でも・・死ななかったな、珍しい。まあ、わざと死者を出して盛り上げようという姑息な手段取らないのはいいけど。ジーンは、ホテルのオーナーの娘かと思ったら違った。実は彼女は金を持ち逃げした相棒の娘。イギリスで豊かで幸せに育ったけれど、それができたのは盗んだお金によってだった。それを知った時はショックだったろう。彼女は父親の罪滅ぼしをしなければならない。キャンベルが間違っていなかったことを証明しなければならない。ブレーデン役は「SF巨大生物の島」のマイケル・クレイグ。まだ(2013年10月現在)生きているようだ。ジーン役バーバラ・マーレイは、口紅をたっぷり塗った唇がやけに目立つ。それ以外は・・映画が終わるともう顔が思い出せないような特徴のないタイプ。悪役ベイカーも印象薄い。たいていの映画ならモーガンはジーンにちょっかい出す。でも・・小遣い稼ぎの方が忙しい。全体的になまぬるい感じ。小柄で目ばかり大きなボクチャンが主人公だからなおさら。クライマックスのダム崩壊でやっと活気づく。水のシーンは合成丸わかりだし、ダムの決壊もミニチュアばればれ。でもいちおうハラハラドキドキはする。人々に危険を知らせることの困難さ。それでなくたってブルースは、作業を邪魔してばかりの要注意人物だし。さて、原作はかなりの長編。当然のことながら大幅にカットしてあり、登場人物も整理されている。途中資金難に陥ったブルースを助けたのは老嬢サラ(映画ではサラの妹ルース)。町の人達はキャンベルにだまされたと恨んでいるが、事実は違う。彼らは欲に目がくらんで勝手に騒ぎ立てただけ。キャンベルは誰もだましてはいない。さて、銀行を信用していなかった老姉妹の父は、ゴールドラッシュの頃築いた財産を、形のあるもの・・金の延べ棒、金貨、砂金・・で残す。ルースは換金して婚約者に運用を任せ、すべてを失ってしまったが、サラは父親の方針を忠実に守った。若き日のサラはキャンベルに恋していたが、彼には妻子があったから実ることはなかった。でも今こうやって孫のブルースの窮地を助けることができた。・・こういうロマンチックな部分も映画には必要だ。時として金のかかったスペクタルシーンよりも心を打つ。