コープスブライド

コープスブライド

「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」はテレビで見た。よくできているし音楽もいいが、私にはちょっとうるさすぎ。落ち着くヒマがないという感じ。「コープスブライド」は普通のセリフ仕立てだと思っていたら歌が始まったので「ありゃー」と思った。またうるさいのかよーってね。でもまあそれほどでもなくて・・ホッ。ガイコツとかにぎやかだったけど。この映画には笑いとかにぎやかさよりも不気味な静けさを期待していた。「ナイトメアー」だって悪夢だからそういう怖さ期待していたんだけど。最初歌っていたのはアルバート・フィニーなのね。いい声してるのね。デップは歌わないのね。彼がほんのちょっと歌ったのは「シークレット・ウインドウ」のエンドロールだったっけ。私が今回見に行ったのは字幕版。もちろんデップの声目当て。吹き替えじゃデップの声聞けないじゃん、誰が見に行くのよッ!あ・・お子さんが見に行くんですか。あの「ビクトーリア!」という声が忘れられないわ。鍋料理食べてて、熱くなっているお豆腐口に入れちゃって、吐き出すわけにもいかず、ヤケドしそうになって、アチチオットットとやっている時のようなしゃべり方よね。細くてとがっていてとっても内気で繊細で、やさしくて善良な声。若くて実力も人気もあって声優もやっちゃう・・と言えばユアン・マクレガーあたりが頭に浮かぶ。彼なら歌が入ってもへっちゃらね・・なんて想像してみるのも楽しい。何をやってもドジなビクターは何度もため息をつく。そのため息聞くこっちも、彼の行く末案じて身の細る思い。開けっぴろげで女性の愛らしさ全開の花嫁エミリーの声はヘレナ・ボナム=カーター。カーターと言えば「フランケンシュタイン」で女のモンスターやったけど、あれはひどかったな。私あの映画は好きじゃないな。死体の花嫁と言ったら「フランケンシュタインの花嫁」がある。あれの足元にも及ばないもんね。カーターの演技はいいんだけど、映画の作り方・姿勢がね、私の好みに合わない。「コープス」は「花嫁」の他に吸血鬼映画もほうふつとさせる。血を吸うわけじゃないけど全体的なムードがね。吸血鬼映画って生者と死者の世界がそれぞれ描かれるでしょ。行ったり来たりの世界。この映画非常に手のかかる作りで、動きのなめらかさには本当に驚かされる。よくできているなあ・・と思いながらも、最初のうちは何ということもなく普通に見ている。それが・・。

コープスブライド2

花嫁には死者であるため、生者とは少し違う動きをつけてあるのだろうか。地中から起き出し、ビクターを追いかける花嫁。ホラー映画はたくさんあるけど、こんなにも美しくまた恐ろしいシーンは・・あんまりお目にかかれない。音楽との相乗効果で、私あのシーンにはホントゾーッとしましたの。追いかけられる恐怖(ブルル・・)。花嫁の髪、ベール、ウェディングドレスのたなびき方がすばらしい。とほうもなく時間と手間がかかったことだろう。人間に扇風機当てた方がよっぽどラクだ。地中から起き出すところは「ドラゴンvs7人の吸血鬼」思い出しましたよ。あっちは地中からわらわらと・・。ビクトリアに会いに行ったビクターを追って、エミリーが窓の外に姿を現わすシーンも怖かった。ホントはここ笑うシーンだと思う。よっこらせやっこらせ何としてでもよじ登るゾ・・という感じでエミリーは現われる。優雅でも何でもなくコミカルな動き。・・でも怖い。エミリーは死んでいるから何かこうしようと思ったらいつまででもできるのよ。疲れるってことがないし、例え足を踏みはずして落ちてもこれ以上死なないし、ケガもしない。夜、窓から入ってくるのは吸血鬼映画のお約束。「コープス」では入ってくるのは女性だけど(普通は男性が入ってくる。フランク・ランジェラとかクリストファー・リーとか)。ビクターが弾くピアノにブランド名として「ハリーハウゼン」の名前が使われていることはパンフにも書かれているが、私が目を引かれたのは冒頭外でそうじをしている背の高い無表情なおじさん。ムルナウ作「吸血鬼ノスフェラトゥ」のマックス・シュレックそっくりじゃん。あッそう言えば「コープス」にはクリストファー・リーも出ているんだっけ。どうも最近ドラキュラよりウォンカパパのイメージ強くて・・。さてビクトリアの声はエミリー・ワトソン。しっかりと落ち着いていて行動力があって適度にユーモアもある。何よりも豊かな常識は道を誤る心配ゼロ。あんな両親からよくこんないい娘が生まれたもんですな。ビクターもそうなんだけど。彼女のハート型の顔に注目して欲しい。ハート型の顔と描写されている女性と言えば「風と共に去りぬ」のメラニー。一見弱々しいがスカーレット以上に強靭な精神力の持ち主。いろんな才能があり、いざとなれば勇敢でもあるビクターあるいはアシュレイは、一方でとほうもなく優柔不断でもある。

コープスブライド3

二人の女性の間で心がゆれ動く。でもどうして彼を責められよう。ずるいのではない、善良だからゆれ動くのだ。どちらの女性も傷つけたくないのだ。ビクターにもアシュレイにも生活能力はさほどない。ロマンチスト、夢を見ているような性格。でもビクトリアあるいはメラニーは、いざとなれば夫を引きずってでも生きていく。さて・・いよいよという時、エミリーはビクターとの結婚をあきらめる。いくら結婚したいからってビクターを死者にするわけにはいかない。例えビクターがそれ(死)を望んでいたとしても。自分は結婚相手に殺され、夢を命を散らされてしまった。同じことをビクトリアにしてよいのか。彼女の夢を希望を散らしてよいのか。エミリーの涙でいっぱいの目を見た時にはこっちまで涙がこぼれそうになりましただ。何と純粋な涙(私のじゃありません、エミリーのです)!ビクトリアはバーキスという怪しげなオッサンと結婚させられるし、ビクターはエミリーとの結婚に同意するしで、一時はどうなるかとオバさん心配しましたけど、最後は一件落着よかったね。実はバーキスこそエミリーを殺した犯人。ビクターが飲むはずだった毒(死ななきゃエミリーと結婚できませんのじゃ)を飲んでしまい、死んでしまう。恨みがはれたエミリーは昇天する。ただバーキスはビクトリアの家は裕福だと思い込んでいたわけで、結婚詐欺師にしては下調べ不足。ビクター、ビクトリア、その家族など生きている者は皆肌を衣服がしっかりとおおっており、いかにも窮屈そうだ。いろんなしがらみを背負い、しめつけられていることを表わしている。逆に死者達は開けっぴろげだ。とは言えエミリーのウェディングドレスは、ビクトリアのそれとくらべ、露出度高すぎという気もする。まあいくつか疑問点はあるけれど、それはよしとしましょうよ。時間が短いのも大目に見ましょうよ。天国と地獄、天使と悪魔というおなじみの図式とは違う世界を見せてくれたのだもの。ビクターとビクトリアは手を取り合って堅実な家庭を築くでしょうよ。両親の悪影響は受けないと思う。ビクターは多少受けるかもしれないけど。彼はこれからもドジで優柔不断のままだろうけど、大丈夫ビクトリアがついている。彼女はビクターを引きずってでも前進することだろう。ハート型の顔をした女性は強いんです。ビクターは・・ラッキョウですかね。皮をむいていくとなくなっちゃうような頼りない存在。