海底二万哩

海底二万哩

これは前に一度見たことがある。127分あるらしいが、今回は民放で吹き替え。かなりカットされているだろう。いつも「SF巨大生物の島」のネモ船長と混同してしまう。今回も、いつホラ貝しょって出てくるかと・・。ジュール・ヴェルヌの原作も古本屋で見つけて読んだ。文庫だがかなり分厚い。薀蓄と言うか羅列が多く、寄り道ばかりしている。1868年、船を襲う怪物のうわさが広まる。その調査に加わったのがフランス人の学者アロナクス(ポール・ルーカス)。助手のコンセイユ役はピーター・ローレ。この二人は原作の設定より20歳くらい年が上だ。銛打ちのネッドはカーク・ダグラス。発達した上半身をこれでもかとばかりに見せびらかす。どちらかと言うと禁欲的な登場人物が多いが、ネッドは違う。酒好き、女好き、音楽好き。最初に登場した時には両脇にきれいどころを抱いている。ネモ船長役はジェームズ・メイソン。顔が四角くて、太い眉と口のまわりのヒゲは真っ黒。両目の間が離れているのは原作通り。文庫本のあとがきによると、ネモはインド人らしい。このあとがきで興味深いのは、ネモの部下に関する記述である。確かに顔の表情、言葉、自分の意志や欲望のない、幽霊のような存在。原作ほどではないが、映画での部下達も無個性。昔奴隷のように働かされていて、一緒に逃げた仲間ということになっているが、ネモにはりっぱな居室やたくさんの収集物があるのに対し、部下達はどういう暮らしをしているのか全然わからない。不平等じゃないかという気もするが、艦が損傷を受けた時、ネモがてきぱきと適切な指示を出し、ピンチから抜け出したのを見て、ああやっぱり彼は上に立つ人物なのだ・・と、納得できた。撃たれて死期を悟った彼は、基地も艦も爆破する。部下は何も言わずに従う。死ぬ時は一緒、すでに覚悟はできている。でも、乗組員ではないアロナクス達にまで死を強要するのはひどすぎるな。もちろんネッドの奮闘で三人は逃げ出す。一等航海士役のロバート・J・ウィルクはどこかで見たような人だ。ちなみに二万リーグとか、二万里とか二万海里とか、二万哩(マイル)とかいろんな題名がついているが、1リーグは3マイルなので、マイル表記にするなら「海底六万マイル」が正しいのだそうな。

海底二万哩2

先日NHKBSでノーカット字幕でやってくれた。今回見て、オットセイと歌ったりアルコール飲ませたりのシーンはなかったよな~と思ったけど、あとはどこがカットされてたか全然わからない。民放のは30分近くカットされていたはずだが。オットセイの芸達者ぶりには恐れ入った。毛布にくるまるところは特に。当時30代のダグラスはともかく、ポール・ルーカスやピーター・ローレは水に浸かるなど大変だったろう。ローレはかなり太っており、見ているだけでヒヤヒヤする。ダグラスは1916年生まれだから100歳になったのか。何年か前アカデミー賞授賞式に出てきた時にはだいぶ縮んでいたけど元気だった。今はどうしているのかな。SF冒険物ならせいぜい90分で十分。それが127分。すごく力が入っているのだ。冒頭きれいどころが二人出てくるが、あとはヤローばっか。女性はネッドの歌にしか出てこない。とは言え「海底世界一周」の後でこれを見ると出来の違いは歴然。次々に何か起こって、見る者を飽きさせない。ネッドのキャラは類型的。表ばっかで裏のない薄っぺらさ。アロナクスは世間知らずの理想家。ネモの発明した動力エネルギーは世界を変える、悪用されないよう説得できるはず。ネモはそこまで楽観的にはなれないが、未来を信じたい気持ちはあるから、心は揺れ動く。動力の仕組みは結局説明されてなかったような。以前「フランケンシュタイン」を読んだ時も、いろいろ書いてあるように見えて結局はっきりしなくて。それ以来、ああこういうのは追及しちゃいけないのだ・・と思うようにしている。ごまかしてやんの・・なんて思っちゃいけない。ネモのキャラは暗く複雑で、それは彼の過去を思えば当然。爆薬の原料を積む船を攻撃して沈めるのはわかるけど、それ以外の船も襲うのはなぜかな。最後に島に建設した基地も吹っ飛ばしていたけど、大勢の兵士が巻き添えになっていて。オットセイ君は助かったのだから、それでいいってか?この映画のハイライトは大イカとの死闘だろう。「禁断の惑星」とか、映画でアニメを使うことは多い。だからこの映画でも、ノーチラスに絡みつくところとかはアニメだってわかる。でも向こうのアニメは動きがなめらかだからね。違和感なし。