パニック・フライト

パニック・フライト

題名だけ見ると「フライトプラン」や「スネーク・フライト」の二番煎じか・・なんて思ってしまう。「スネーク」と言えば、アカデミー賞の授賞式の中で、パフォーマンス集団が去年話題になった映画を影絵みたいな感じで見せてくれていた。「ハッピーフィート」のペンギンとか。でも私が一番気に入ったのは飛行機にヘビが二匹絡みついている「スネーク・フライト」の影絵。あの構図好き。さて「パニック・フライト」はWOWOWで見た。日本で未公開なのは主演のレイチェル・マクアダムスがあんまり知られていないから?「きみに読む物語」や「幸せのポートレート」に出ていたらしい。でもキリアン・マーフィ出てるし、監督あのウェス・クレイヴンだし・・公開されてもおかしくないと思うが。ストーリーはだいたい三つの部分に分けられる。飛行機に乗る前、乗っている時、降りてから。あるホテルで働く(マネージャー?フロント係?)女性リサ(レイチェル)は、祖母の葬式を終え、ダラスからマイアミに帰るところ。飛行機は遅れるが、ジャックという青年と知り合う。感じがよくて話もはずむが、演じているのがキリアンだからただじゃすまないはず。キリアンはこの時点では「バットマン・ビギンズ」しか見てなかったけど(その後いろいろ見ましたよ)、こういう冷酷で計算高いキャラが似合うな。体つき、ヘアスタイル、顔立ち・・いずれも非力な感じ。175センチだから外国人としては小柄だし首も細い。だけど頭のよさで人の上に立つタイプ。登場してすぐ、遅延に文句言ってる男を眼力で黙らせる。冷たく透き通った瞳が何とも印象的。色が白く唇が赤いのも目立つ。飛行機では席が隣り合わせ。うれしい偶然・・のわけがない。ロマコメや韓流ならありうるけど。離陸するとジャックはすぐ正体あらわす。ちょっと早すぎ・・と言うか、あんまり隠してもいない。リサに職業聞かれて政府転覆とか高官暗殺とか言うし。両親殺したというのも冗談ではなさそうだ。その後延々とリサをいたぶる。ジャック達は大物政治家キーフの命を狙っているらしい。キーフはリサが勤めているホテルを常宿にしている。リサの権限でいつもの部屋から別の部屋に変更しろというのがジャックの要求。・・ってことは、暗殺するにはその部屋の方が都合がいいということ。

パニック・フライト2

暗殺方法は後でわかるがかなり荒っぽい。リサはもちろん断るが、父親の命がかかっているとあっては承諾せざるをえない。この承諾し、実行するまでが長い。彼女けっこうしぶとくねばるのだ。座席でのやり取り、駆け引き・・狭い空間だから演ずる方も撮影する方も大変だったろう。乱気流やら雷やら、場所をトイレに移すやら、携帯電話や石鹸水を小道具に使うやら、あれこれ工夫している。でもやっぱり単調。レイチェルは泣いたり笑ったりおびえたり絶望したりするわけだが、どんな時でも私美人でしょ光線、私けなげでしょ光線出しまくり。ジャックの頭突きくらって気絶する時も超美しく気絶する。「気絶するほど悩ましい~♪」じゃなくて「気絶したって悩ましい~♪」なのよ。うるんだ大きな瞳とぼってりした唇で迫る。そりゃそうでもしないとキリアンの美しさに負けてしまいますからねえ。でも絶望してトイレの中でくずおれるシーンでも、便器のフタはぐって吐くところでもやっぱり美しく、悩ましく、けなげに・・っていいかげんにしろ!さてようやく着陸するという段になって状況ががらりと変わる。それまで劣勢だったリサが突如反撃に出る。まあ何とか電話して部屋を変更させるのに成功したので、ジャックも気のゆるみが出たんだろうけどさ。リサの胸には傷あとがある。それは過去駐車場で男にナイフ突きつけられた時のもの。はっきりしないがどうやら暴行されたらしい。その時の辛い経験から、「絶対負けるものか」と決心しているわけ。・・で、見ている方は「そうかそうだったのかがんばれよ」と応援するかってーとそうでもなくて、「あれッ?」と思うわけ。ジャックは8週間もかけてリサのこと何から何まで調べ上げた・・って自慢していた。その彼がリサの過去の重大事件知らないのはおかしくないかい?でもそんなことおかまいなしで、後半はリサが先手を取り、ジャックはやられっぱなしなのよ。あんまりやられっぱなしなので、しまいにはジャックがかわいそうに思えてくる。リサはまずボールペンでジャックの喉を突く。いつの間にボールペン盗んだの?喉に命中させるのは至難の技だが普段から練習しているのかね。飛行機を降り、車を盗み(うまくいきすぎ)、自分の家に向かう。父を狙うジャックの仲間を車でぺしゃんこにする。ホテルにいる同僚シンシアに電話し、暗殺を危機一髪回避する。ここらへんはスリリングでなかなかよかった。

パニック・フライト3

リサを追って家に現われるジャック(早く着きすぎ)。余裕こいてた前半と違い後半はみじめ、ボロボロ。何たってリサは職業柄ありとあらゆるトラブル、アクシデントを経験ずみ。頭の回転は速いし決断も速い。最初ジャック相手に何を振り回しているのかわからなかったが、どうやらホッケーのスティックらしい。彼女は元選手らしい。と言うことは体力もあり、瞬発力もあり、駆け引きもうまく・・こりゃジャックは不利だわ。と言うわけでここでまた「あれッ?」と思うわけ。リサの意外な強さに?・・いえいえ家の広さにね。あの部屋この部屋、いくつものドア、階段、バスルーム、納戸・・隠れたり走ったり・・かくれんぼや鬼ごっこしてるよおい。そんなことできるほど家広いんだ・・すごいなぁ。えッラスト?キーフにお礼言われてたけど、今回はたまたま運がよくて助かっただけ。これからも命狙われる。自分だけでなく家族も・・。いつも厳重に警備されてるけど、そんな生活、そんな職業、そんな国っていやあねえ。出演は他にリサの父親役でブライアン・コックス。彼いろんなのに出てるけど、不思議なことに映画見ている時には全然気がつかないの。クレジット見て、ああ出ていたんだって気づく。最近では「ゾディアック」もそう。今回は珍しくいい人役。退職してヒマで、娘の心配ばっかりしている父親。たまにはこういう役もいい。シンシア役ジェマ・メイズは、安達祐実嬢そっくり。目が大きく手足が長く体は細い。コメディー向きの容姿。最近公開された「鉄板英雄伝説」に出ていたらしい。他にはレイチェルをそれとなく助ける一人旅の少女レベッカがよかった。大人しいが状況をよく見ることができるしっかりやさん。原題は「RED EYE」で、「パニック・フライト」とは無関係。何で赤い目なんだろう。飛行機の機体に赤いランプでもついているのか。それともレイチェルを脅すジャックの目が血走って赤いのか。ある人がレッドアイとは最終便のことか?と書いていて、なるほどそうかも・・と思った。最終便→深夜のフライト→よく眠れない→着いた時には目が充血して赤い目・・それでレッドアイ・・などと妄想してみたり。まあとにかくヒロインが後半いきなりスーパーウーマンになってしまうのは不自然だけど、ヒマつぶしに見るには十分おもしろい。公開されていればキリアン目当てで見に行ったと思う。