プレステージ

プレステージ

こういう長いのは見るのが大変。文庫の厚いのは好きだけど、映画は短い方がいいです。だいぶ前WOWOWで見た時の印象は「変なの」。その後原作を買ったが、ずっとほったらかし。NHKBSだかでやってくれたので録画して、それを機に一気に読んで、その記憶が薄れないうちに映画見て感想書くぞ~って思ったけど、あっという間に数ヶ月たって。原作の記憶も薄れ・・。まあいいや。原作は双方の手記がメインだが、同じことについて書いていても少しずつ違っていて。どちらかがウソを書いているのか、マジシャンの性(さが)で、後世この手記を読む人さえだまそうとしているのか。映画はけっこう種明かしをしている。マジックのだけでなく、ラストへのヒントもそこここに。ボーデン(クリスチャン・ベール)は、アンジャー(ヒュー・ジャックマン)殺しの罪で死刑にされようとしている。長年憎み合っていたし、現場にいたしで、ボーデンは不利だ。彼の心残りは娘が孤児になって施設に入れられてしまうこと。ある日コールドロウ卿の代理オーエンスが訪ねてくる。マジックの種を明かせば娘さんの面倒は引き受けるとのこと。このオーエンス役の人「エレメンタリー」でホームズの父親だと偽ってワトソンと会ったロジャー・リースだな。ボーデンはオーエンスからアンジャーの手記を渡される。これが現在の出来事で、あと過去が二種類。まだ有名になる前から、あることが元で仲違いし、実りのない争いを続けるくだり。もう一つはアンジャーのコロラドでの日々。ここでは彼はボーデンの手記を読んでいて。だからかなり入り組んでいて。アンジャーをいろいろ助けてくれるのがカッター(マイケル・ケイン)。仕かけを考えたり劇場側と交渉したり。まだ駆け出しの頃、ボーデンとアンジャーはミルトンというマジシャンのサクラをやっていて。アシスタントのジュリア(パイパー・ペラーボ)はアンジャーの妻。ところがある日マジックの最中ボーデンのせいでジュリアは溺死。しかもボーデンの態度はあいまいで、ちゃんとあやまらない。アンジャーは彼を深く恨むようになる。一方ボーデンはサラ(レベッカ・ホール)と結婚し、娘も生まれる。争いはやめろというまわりの忠告も二人の耳には入らない。

プレステージ2

ボーデンがやり始めた”人間瞬間移動”マジックは大評判。よく似た男を用意し、二人でやっているのだとカッターが言ってもアンジャーは納得しない。種を探るため、アシスタントのオリヴィア(スカーレット・ヨハンソン)をスパイとして送り込む。そのうちボーデンとオリヴィアは愛し合うように。彼女もボーデンの替え玉がいるのだと思っている。アンジャーが対抗するには同じ方法を取るしかない。オリヴィアは売れない役者で酒浸りのルートを連れてくる。役者だけあってアンジャーの代わりはお手のもの。ただしマジックは任せられない。マジックが成功しても、客の喝采を浴びるのは現われる役のルートの方。消える役のアンジャーは舞台の下だ。何という皮肉!中国人の金魚鉢のマジックや、「消えた人間には誰も注目しない」というアンジャーの言葉、ボーデンの口癖・・「今日は〇〇だ」などなど、ラストへのヒントはそこらじゅうにある。アンジャーはアメリカへ渡り、テスラ(デヴィッド・ボウイ)という科学者を訪ねる。彼は電気を使った研究をやっている。ボーデンのマジックにも電気が使われている。これで”人間瞬間移動”の謎が明らかになるのでは・・。しかしこれらはボーデンの仕組んだこと。アメリカまで無駄足を踏ませ、時間と金を使わせてやれ・・という。最初の方でアンジャーは家名がどうの・・と言っていたから、家は裕福なのだろう。そのうち、コールドロウ卿ってもしかしてアンジャーのこと?って思えてくる。それと、いつもボーデンに影のように寄り添っているファロンは、実はボーデンなのでは?とも思えてくる。さてテスラ役のボウイだが、金髪でない彼を見るのは初めてかも。こうして見るとジャミー・リー・カーティスに似ている。助手のアリー役はアンディ・サーキス。すばらしいキャスティングだ!テスラの実験はなかなか成功せず、アンジャーはあせる。資金不足に悩むテスラをアンジャーが援助するはっきりしたシーンはなし。でも、金は出していたようで。後で実験はすでに成功していたことがわかる。物体の移動ではなく、コピーの出現という想定外の結果だったけど。テスラとアリーは突然姿を消すが、マシンとトリセツは残す。のめり込むことへの警告もされるが、アンジャーは無視。

プレステージ3

イギリスへ戻った彼はこのマジックで大評判を取るが、実際は一回やるごとにオリジナルの方を消さなきゃならない。でないとアンジャーだらけになってしまう。最初の方でカナリアのマジックが出てくるけど、これが伏線か。消えたカナリアは実は押し潰されて死んでいる。現われるのは別のカナリア。でも誰も区別つかない。カナリアの死骸ならゴミ箱へポイだが、人間はそうはいかない。トリックがどうしても見抜けないボーデンは、とうとう舞台裏へ潜入。そこで見たのは水槽で溺れ死ぬアンジャー。で、アンジャー殺しで裁判・・となるわけだ。カッターはアンジャーがコールドロウ卿として生きているのを知るが、ボーデンが死刑になるのは阻止しない。なぜ?刑の執行後アンジャーの前に現われたのは死んだはずのボーデン。アンジャーの方は最新の科学・・電気を使って自分の分身を作り出し続け、その一方で殺し続けるというものだった(マジックは百回だけと区切ったのは、無限にやり続けるわけにはいかないからだろう。苦痛を伴うし、死体の始末も大変だ)。ボーデンの方は科学でも何でもない。金魚鉢のマジック同様、とにかくまわりの目をあざむき通す。一人の人生を一卵性の双子が分担して生きる。夫が入れ替わってるとは夢にも思わないサラは混乱し、そのうち自殺。オリヴィアの心も離れる。彼女には真実を話しているんだけど、双子だってことは言わないから理解してもらえるはずもない。要するに片方はサラを愛し、片方はオリヴィアを愛してたってこと。顔が同じでも考えることは少し違う。ボーデンは時にファロンを演じ、ファロンは時にボーデンを演じた。処刑されたのはどっちの方?ジュリアを溺死させたのはどっちの方?ネットで、ファロンはテスラの機械で生じたコピー(ただしテスラはこのことは知らない)と書いてる人がいて、なるほどそういう考え方もできるのかとびっくり。ジュリアの死をあやまらなかったこと(自分がやったのではないから)、サラを驚かしたこと(片方が先回りした)などから、私自身は原作通り双子だと思ってる。原作ではボーデンもアンジャーも嫌なやつで好きになれないが、映画はそこまでいかない。どちらか一方が悪者にならないよう、平等と言うか。看守役はジェイミー・ハリスか。