プラダを着た悪魔

プラダを着た悪魔

見たのは昨年暮れ。もうほとんどのところで公開は終わっていたが、みゆき座でやっていたので見に行った。近くのシネコンでもやっていたのだが、伯母の件で帰省したりしているうちに上映時間が夜に移ってしまったのだ。ちょうどその頃ちょっと落ち込むことがあったので、こういうのを見れば元気もらえるかなーなんて思っていたのだが、夜じゃムリだし見なくてもいいや・・なんて半分あきらめていたのだ。でも・・行ってよかった。平日午前、お客は70~80人はいただろう。この後有楽町スバルに移ってきのうまでやっていたから、かなりヒットしたのでは?内容は若くてきれいな女のコのどうってことないサクセスストーリー。私自身はファッションには興味ゼロ。着るもののほとんどは甥のお下がりか20~30年前に買ったものだ。だから映画を見てファッションに目を奪われるとか、ため息つくとか、そういうことはなかった。見るとしたら「生き方」。彼や彼女はどういう生き方をするのか。どのように変わり、どのように変わらないのか。ヒロインのアンディ役アン・ハサウェイは感じがいい。ピカピカ輝いている。鬼編集長ミランダ役メリル・ストリープは納豆が糸引くようなしゃべり方が印象的。パーティでの肩と胸を出した黒いドレスは悪趣味の一歩手前。よっぽど自信がないと着れない。肉づきのよさが目立つ。でも一方で、シミ一つない美しい肌を誇示しているようにも見える。ネックレスすらつけない。ミランダの片腕で、一見冷たいように見えるが実は親切なナイジェル役がスタンリー・トゥッチ。「プラダ」を見に行こうと思ったのは予告で彼を見たから。別にファンではないが、彼の役どころはヒロインを変えるきっかけ。落ち込み、グチをこぼすアンディをやさしくなぐさめるのではなく、冷たく突き放し現実に気づかせる。世の中そんな甘いもんじゃない。ましてファッション業界は食うか食われるか。毎月出す雑誌は一冊一冊が真剣勝負。アンディは甘えを捨て、仕事に立ち向かう。・・まあ立ち向かう、成長すると言ってもそこはそこ、あくまでもファッショナブルにゴージャスにお気楽に・・だけどね。先輩エミリー役エミリー・ブラントもいい。意地悪なようでいて憎めない。恋人もなく仕事一筋なのは滑稽でありながらどこかいじらしい。交通事故にあうところは、いかにもスタントウーマンがやってますという感じで気になった。

プラダを着た悪魔2

アンディの恋人ネイト役エイドリアン・グレニアーもステキ。アンディは変わっていくけど彼は変わらない。浮わついたところがなく地道に暮らす。他に有名デザイナーやモデルが出演しているらしいが、ジゼル・ブンチェンしか知らん。彼女もっと出てくるかと思ったらあれだけ?何かもったいなかったな。服・靴・バッグ・アクセサリー・・とにかく一流のものがじゃんじゃん出てきて、明るく楽しくゴージャスに展開する。ただ私には、大学出たばっかの女のコが高級ファッションとっかえひっかえそんなお金どこにあるんですか?・・と疑問に思っちゃいましたけどね。ファッションにお金かかるから食費節約するとか、そういう苦労や工夫はたいていの人がしているはずだけど、この映画はそういうのなし。みみっちくなるから無視。だから楽しくはあるけど一方では非現実的。そのうちアンディはあまりの忙しさにネイトとうまくいかなくなり、有名エッセイストのクリスチャンと一夜を過ごしてしまう。この映画で私が引っかかったのはこの浮気と、ミランダが子供達のために「ハリー・ポッター」の最新作(まだ出版されていないもの)を入手させるところ。ミランダは鬼編集長ではあるが、一方では子供を溺愛する母親でもある。仕事がパーフェクトなぶん、家庭には手が回らない。鬼の目にも涙・・ということで、観客の同情を集める姑息な描写。アンディにだってやたらめったら辛くあたっているわけではありませんよ。こういういかにもな作りは別にあってもかまわないけど、私自身は「ハリー」の難題出した時点でミランダへの同情はほとんどなくなりました。子供がまた憎たらしいガキで・・。あれじゃロクな大人にならん。現時点でミランダは明らかに子育て失敗してます。さて・・クリスチャン役はサイモン・ベイカー。私としては映画だけ見て、パンフは買わないつもりでいた。どうせ映画のことよりファッション満載だろうし。ところが・・クリスチャンが登場したとたん、誰ッこの人!・・って目が覚めて・・買いました。名前と経歴知りたくてね。「レッド・プラネット」に出ているんですか・・よしッ!早速レンタルして見ましたよ。ついでにノベライズ本も読み直し・・。前WOWOWで見たけど印象に残っていないのよね。今回見たら・・印象に残らなくて当然かも・・と納得。彼って押し出しが弱いのね。

プラダを着た悪魔3

「プラダ」を見ている間ずーっと誰かに似ているなあ・・と思ってたのよ。トーマス・ジェーンとかね。アンディの成長なんてどーでもよくなっちゃった。どーせなるようにしかならないんだわさ。それよりこのクリスチャンだわさ。敵か味方か・・。あッ!スコット・スピードマンにそっくりなんだわ。垂れぎみの目がやさしそう・・。態度も控えめで押しつけがましさがない。もちろん出てきてすぐ、あッアンディに気があるなってわかる。プレーボーイだなってすぐわかる。でも誘うにしても決して無理はしない。アンディのピンチ(「ハリー」の新作の件)それとなく助ける。そりゃあ一晩過ごせばもう興味うすれるし、裏でミランダ追い落とし企んでいる。でもミランダの方が上手だから失敗するんだけどね。このミランダのピンチが映画のクライマックス。それまで家庭内に問題かかえてるにしても、仕事面では磐石に思えたミランダ。その彼女を編集長の座から落とそうとする陰謀。何も知らない彼女に危機を知らせようとあせるアンディ。ところが・・。どうなるかと思って見ていたが、ここらへんの捌き方はよかったと思う。どの仕事にも表と裏がある。裏はたいてい人事だが・・。とにかくクリスチャンはアンディが一時的にのぼせたものの、決して誠実な男ではなかった(全くの悪人でもないけど)。華やかな世界の裏を知り、自分が切り捨ててきたこと(家族や友人、恋人との時間)の大切さに気づき、アンディは今の仕事をやめる。はあ~やっぱりやめるんですか。人は人生の岐路に立たされ選択する。ミランダは仕事を選びアンディは恋人を選んだ。ネイトは受け入れてくれるかしら・・受け入れてくれるに決まってるじゃん。ハッピーエンドに決まってるじゃん。でもアンタ浮気したのよ。ネイト裏切ったのよ。黙ってるの?告白するの?でももちろんそんなことは無視して映画は明るく終わるのよ~。お気楽だし虫がよすぎる。まあいいんですけどさ。・・てなわけでとても楽しみました。殺人もエイリアンも悪霊もなし。たまにはこういう映画もいいんでないかい?お金をかけてしっかり作ってある。ただきらびやかなのではなく重厚さもある。出演者もよかったし。「私の頭の中のアンテナ」も反応したし。このアンテナ、イケメンに反応するんですの。「私の頭の中の湖」から二本、V字型に突き出しているので、私はこれを「スケキヨアンテナ」と命名いたしますッ!