パーフェクト・ストレンジャー

パーフェクト・ストレンジャー

この映画もWOWOWの「ハリウッド・エクスプレス」で見かけた。豪華な顔ぶれが売り物のようだが、ちょっと見ただけでも安っぽいと言うか・・出来は大したことなさそうな感じ。傑作・名作では絶対なさそう。でもこういうのに引かれてしまうんですの私。絶対見なくちゃ・・って思ってしまう。予想としては・・一回じゃよく理解できないだろう・・と。二回見るべきだろう・・と。近くのシネコンでもやってるけど、わざわざ新宿まで行った。ミラノ2は前「イルマーレ」を見て、画面の暗さにうんざりさせられたので、できれば行きたくない。他に入れ替えなしってところは上野東急くらいで、でもここは「ミニモイ」のせいで午後3時からだから無理なんだぜい。さて・・「映画の日」だったのでけっこうこんでいたけど、ここは広いからね。ラスト7分11秒がどうとか宣伝してて、まあどんでん返しがあって、私はだまされた方です。最初の方でグレースが変なこと言っていて、これが一つのカギなんだろうとは思ったけど、そのまま行って、ラストあらそうなの・・とびっくりしたわけよ。もっとびっくりしたのはパンフでネタばらししていたこと。ばらす必要ないと思うが・・。余計なことしてると思うが・・。これから見る人はくれぐれも映画見てからパンフ読みましょう・・ってもう遅いか。あ、私は家に帰ってから見ましたよ。館内は暗いし字は小さいし私は老眼だし・・って関係ないですけど。さて主演はハル・ベリー。彼女もう40だってのにシワもないし他のハリウッド女優とはだいぶ違うな。ギスギスしたところもたるんだところもなくてスタイルばつぐん。この映画ではやたら彼女のお尻うつしていたな。そのせいでヒロインが安っぽく見えるけど、意図的なのかな。新聞記者のロウィーナ(ハル)はスクープ(上院議員のスキャンダル)を物にするため6ヶ月もねばる。とうとう成功して同僚のマイルズと祝杯をあげていたら、上からの圧力がかかったとかで記事をボツにされてしまう。怒った彼女は社をやめてしまう。この導入部を見ていて、どうもロウィーナに好感が持てないのに気づく。がんばって働いている正義感の強い美しい女性なら普通応援したくなったり気の毒に思ったりするものだが、そういうのがわいてこない。

パーフェクト・ストレンジャー2

スキャンダルをあばかれそうになって困惑している議員の方がかえって気の毒に思えてしまったのは私だけ?それにしてもパソコンにうつっていた証拠写真がいかにも合成というか、うそっぽいというか、あれじゃ信憑性がないのでは?ここの部分で早くも予想通り安っぽさ全開。それはともかく、ロウィーナに対してのこういう感じはずっと続く。見終わってみればそれがなぜだかわかり、うまくできてるなあと感心するわけ。同時にこういう役を選んだハルもなかなかやるじゃん・・と思ったりして。私が見た彼女の映画って「ゴシカ」とか「キャットウーマン」とか、ちょっとオバカだったり安っぽかったり。今回もオバカではないものの、安っぽさの方はプンプン。でもそういうのにもちゃんと出るというのがいい。アカデミー賞とったけど、「キャットウーマン」ではラジー賞もとって、しかもちゃんと授賞式に出てスピーチまでしちゃうという物わかりのよさ。いいよなあユーモアを解する大人。さて話を戻して、怒って外へ飛び出したロウィーナ。呼びとめたのは幼なじみのグレース。チャットで知り合ったハリソン・ヒルという富豪とつき合ったが捨てられたらしい。メールなどを保存し、それでゆするつもりらしい。ロウィーナになぜそんな個人的なことを話すのか。グレースはロウィーナに何をさせたいのか、見ていてもよくわからない。その後グレースは惨殺死体となって発見される。犯人の心当たりはハリソンしかいないから、ロウィーナは調べ始める。なぜグレースから預かった資料(メールなどのコピー)を警察に渡し、ヒルのことを言わないのか。ロウィーナはグレースとは幼なじみだから独自に調査して個人的に恨みをはらすのか。ロウィーナは元同僚のマイルズにいろいろ助けてもらう。マイルズ役はジョヴァンニ・リビシなので、こりゃ一筋縄ではいかないぞ・・と予測がつく。とにかく怪しいし複雑。ただの同僚として力を貸してるのではなく、彼女にぞっこんなのがありあり。そういうのをちらちらと出しながらも、すぐ引っ込めて仕事の話になる。その切り替えがうまい。恋してるのを出さずにはいられないけど、あんまり出しすぎて彼女に嫌われたり警戒されたりするのもまずい。ストーカーっぽいけど、異常さやしつこさを寸前ですっと引っ込める。

パーフェクト・ストレンジャー3

ロウィーナにはキャメロンという恋人がいる。彼をめぐってはグレースと何やらあったらしいが、よくわからない。マイルズは当然のことだがキャメロンを嫌っている。ロウィーナはマイルズの気持ちに気づいているが、うまく受け流す。気持ちにこたえる気はないが彼がいないと調査ができないのも確か。みんなそれぞれ綱渡りしている。この映画は登場人物の他にペンネームやハンドルネームなども出てくるので、一回目は覚えきれないし名前と顔が一致しない。こういう映画こそノベライズが出て欲しいものだ。最近の映画らしくパソコン用語がいろいろ出てくる。キーを打つシーンも多い。こういうのでお客をドキドキさせるのって難しいかも。文章が出てくるまで時間かかるし動き少ないし、正直言って映画がだれる。尾行するとか手がかり求めて奔走するとか変装するとか、昔ながらの方法の方が動きがあるぶんドキドキできると思う。ネットはそりゃ効率はいいけどさ。チャットシーンも、夜、出会いを求めて(ロウィーナの場合は目的があってハリソンに接近するのだが)・・となれば内容は自然に下着の色は・・とか、そういうのに落ちてくる。そういうのを何時間もやって、次の日頭が痛い、肩がこる、眠い・・というのならリアルだが、ロウィーナは元気いっぱい。これってちょっとおかしくない?さてロウィーナは派遣社員としてハリソンの会社にもぐり込むのに成功。彼は社長としてやり手だが浮気が絶えず、しかも会社の実質的なオーナーは妻の父。つまり離婚されれば地位も財産もそれっきり。過去に浮気がばれて痛い思いしているのに、有能な監視ついているのに、それでもこりないスケベなオッサン。こういう亭主を監視するのにレズを採用するというのは安直な設定だと思う。ジョージィ役の人はモデル出身だそうで非常に美しい。男には目もくれない代わりに女性にはちらちら目が行く。ロウィーナも見られて、何かあるかと思ったら何もなし。「王様のブランチ」で「社長に近づかないで」と警告するシーンが流れたから、ジョージィの登場シーンはもっとあったのに削られてしまったのだとわかる。クールで謎めいた美女である彼女がもっと活躍していたら・・と残念。どうも見ていて印象が散漫な感じ。みんな怪しいように描写しているのだが、そのわりにはみんな怪しくない。

パーフェクト・ストレンジャー4

まあ真犯人が誰かってのは映画見てもらうのにして・・。それが待ちきれない人は見る前にパンフ見てもらって・・って何のこっちゃ!とにかくここではネタばれしないように書かなくちゃね・・と言うか、正直言って映画見ていても真犯人は誰?なんてあんまり思わないの。ロウィーナもそうだけどグレースにも好感持てない。ロウィーナはそれでもあれこれ犯人捜しに奔走するけどグレースは・・。既婚とわかっていて関係を持ち、相手が冷たくなるとゆすりにかかるというろくでもない女。殺されちゃったけど遅かれ早かれこうなるって予測つくような生き方してる女。さて、時々なぜかロウィーナの回想が入る。どうやら彼女は父親から性的虐待を受けていたようだ。映画を見ていて不思議なのはロウィーナのやってることがおかしいこと。幼なじみのグレースの仇を討つためとは言え、ハリソンへの仕打ちはひどすぎる。彼が一番怪しいのは確かだが、警察に協力して逮捕させ、裁判の頃になると、あまりにも一方的でかえって彼が犯人には見えなくなる。ロウィーナがハリソンの窮地黙って見ているのが理解できない。彼が怪しいって人一倍わかっていると同時に、怪しくないってことも彼女はわかっているはずだから。会社もぐり込んだ彼女はそれくらい・・つまり表の顔も裏の顔も知るほどにハリソンに接近したのだから。彼女はハリソンが有罪(おそらくは死刑)になっても平気なのか。彼が犯人だと本気で思っているのか。いやいやそうではあるまい。ハリソンが犯人かどうかなんて彼女にはどうでもいいのだ。一回目見ていた時はよくわからなかったけど、二回目はロウィーナの内面がわかってくる。最初の方で上からの圧力によって記事をボツにされたこと。少女時代父親から虐待を受けたこと。そして今度はハリソン。上司で大金持ちで女たらし。たいていの女は彼の思い通りだ。入社したばかりのロウィーナにも早速モーションかけてくる。とにかく彼女のまわりには圧力かけて屈服させようとする男どもが常にいて、それが彼女を怒らせるのだ。だから彼らに復讐してやるのだ。ハリソンを有罪にしてやるのだ。ハリソン役はブルース・ウィリス。彼は思ったほど活躍しない。ちっとも怪しくないしキャラ設定もあいまい。

パーフェクト・ストレンジャー5

ハリソンは女たらしではあるが有能なビジネスマンでもある。今度浮気がばれたら離婚されて一文無しというのは、会社にとっては手放したくないほど有能ではないってこと?つまり会社にとってなくてはならない存在だったら、浮気には目をつぶって表向きの夫婦生活を続け、会社を繁栄させていくか、そうでなかったら離婚して純粋に仕事上のパートナーとしてやっていくか、どちらにせよ会社のことをまず第一に考えると思うが・・。四六時中監視をつけて・・なんていうのは一番まずいやり方だと思うが。それとこの映画、ただの女たらしじゃウィリス持ってくる意味がないと思ったのか、ハリソンを信義を重んじる性格・・なんてことにしてある。広告業界は競争が激しく、抜け駆け、だまし合いなんて日常茶飯事。だからこそ彼はこれはと見込んだ人間を信用し、重用する。それだけに裏切られた時の怒りは凄まじく・・。怒ると何をするかわからないという描写を入れて、ハリソンを怪しく見せようとする。ロウィーナに対しても、だまされていたと知って怒りを爆発させる。でも・・ウィリスお得意の涙目になるので、見ているこっちは(ドキドキするんじゃなくて)大いにしらけるわけ。おいおいまた始まったよ~、どうも年寄りは涙もろくていけないねえ~・・いやいやそうじゃなくて・・あのさぁ~ハリソンにしゃべらせちゃだめなんだってば。作り手のやつらわかってないなあ。ロウィーナはハリソンに気のあるふりをしてデートに誘い出す。ところが席をはずした時にハリソンにケータイの着信(マイルズからのもの)を見られてしまう。ハリソンは自分がだまされていることに気づく(ただし彼女の正体、目的までははっきりわからない)。帰りの車の中、ロウィーナはまだ何も知らなくてしゃあしゃあとしている。ハリソンはさめた目つきで彼女を見、黙って車を出す。この「黙って」というのがいいのよ。しゃべらないから見ているこっちはいろいろ想像する。何考えているんだろう、これからどうするつもりなんだろう。ハリソンが優位に立ってるからおもしろいわけ。黙って車を出し、黙って走らせ、黙って道をはずれる。ロウィーナの運命やいかに!?次にケータイのことただすと、ロウィーナはもちろん弁解するけど、ハリソンは「ウソだ」と取り合わない。

パーフェクト・ストレンジャー6

そこまではいいのよ。でもその後がだめ。おまえはスパイかとか何とかペラペラ自分の方からしゃべっちゃう。スパイとか詐欺師とかそういった類の相手にそれをやっちゃあだめなのよ。情報与えたら相手はそれを利用して逃げ道考える。自分は黙っていて相手にしゃべらせなきゃ。黙っていれば相手は不安になり、あせってボロを出す。ハリソンが涙目になってペラペラしゃべり始めたとたん立場は逆転、今度はロウィーナの方が優位に立つ。もうハリソンが犯人じゃないってこの時点で明白。ウィリスみたいな大物わざわざ出してきた意味もなくなる。もっとギャラの安い他の男優でもいっこうにかまわない。さらにまずいのは裁判の最中ハリソン側は何も反撃しないの。かばってくれる人誰もいない。ハリソンがグレースのことどう思っていたのかすら不明。裁判をあまりにも軽く流してしまうので、見ている方はハリソン以外の犯人候補捜し始める。彼の奥さん?どうもこの人魅力に乏しいな。存在感もないし。一番怪しいのはやっぱマイルズ。何か裏がありそう。さんざん怪しい描写出てくる。特にチャットの時なんて、ロウィーナはハリソンとやってると思っているけど、実際はマイルズが相手している。ある日ロウィーナはマイルズの部屋訪ねる。彼は留守だったけどカギのありかはわかってる。入ってみるとどこからか声が聞こえる。しかも自分の声のようだ。そしてマイルズの秘密の部屋を見つける。彼の裏の顔を知る。まあここらへんはいちおうドキドキするけど、「コピーキャット」とか「ゴシカ」とか「将軍の娘 エリザベス・キャンベル」とかよくある設定だよな。ある意味うらやましいよな。こういう秘密の部屋私も持ちたいな。もちろんこういう怪しげなものは置きませんけどね。映画の資料置いて日がな一日パソコンに向かって・・はぁ~(夢)。さて・・映画の題名「パーフェクト・ストレンジャー」・・人には誰でも裏の顔があって、自分のよく知っている人でもそういう裏の顔見てしまうと全くの別人、見知らぬ人に見えてしまうと・・まあそういうことらしい。マイルズだけでなくロウィーナにもグレースにも他のみんなにも別の顔がある。でもってマイルズは異常だし、ロウィーナは知らなかったがグレースとつき合っていたようだし、かなり怪しい。

パーフェクト・ストレンジャー7

でも・・いいところまで行くんだけどやっぱり彼も今いち。ただウィリスと違ってリビシは見ている我々をうんと楽しませてくれる。はっきり言って出演者全員リビシに食われてまっせ。今まであんまり好きじゃなかったリビシだけど、今回はねえ・・好きになったとは言えないけど、でもすごく感心しましたよ。ただ者じゃない。さて、見終わって感じたのは、犯人はこんなことする必要あったの?ということ。グレースが殺され、警察が捜査を始めたのなら傍観してりゃいいじゃん。自分とは結びつかないんだし。あの状況だとまずグレースの地元での恋人疑われる。最近不仲だったらしいから。次に妊娠していたことがわかって、その父親候補が疑われる。現に元恋人キャメロンはDNA検査の呼び出し受ける。ただし検査の結果は映画では出てこない。ここらへん後始末不足。警察の捜査はなかなか進展せず、手口から見て未解決の連続殺人事件と同じ犯人の仕業では?なんていう説も出始める。これって真犯人にとっては願ってもない展開じゃん。他の犯人の勘定書につけて支払わせ、自分は安全なまま。何もする必要はないの。でもそれだと映画にならないから・・。てなわけで傑作でも名作でもないただの平凡な娯楽映画。でも気持ちよくだまされた。冒頭何やら奇妙なものがうつって、そのうち目の内部だってわかってくるんだけど、SF映画じゃあるまいし変な始まり方だなあ・・と。何かもったいつけてるみたいで。ラストはいやにノロノロと台所うつして、これじゃ始めの部分と同じじゃん。これまた何もったいつけて散らかった台所延々うつすんだ?と呆れていると・・ああ、そうですか、なるほどね・・となって、すとんと落ちるわけですよ。そりゃ「ウィッカーマン」のラストよりはうんとマシですよ。あっちはすとんと落ちないもん。で、また目の内部、視神経。最初と最後同じにしてケジメつけたいんですかね作り手は。それともこれを見てすぐには人間の目だってわからないように、人間も見かけだけではわからないんだよって言いたいんですかね。それとも人間は目にうつったものを見ているけど、実際には見てないものもあるとか。最後に・・お騒がせセレブ、ハリソン・ヒルという名前にパリス・ヒルトン連想したの私だけ?