パッセンジャーズ

パッセンジャーズ

こちらでは少し遅れての公開。二週間限定だしお客が詰めかけるとも思えない内容。二週目からはどうせ夜だけだろうから・・と早めに見に行った。ここ二ヶ月ほどシネコンから足が遠のいていたけど、また通い始めた。この映画のことはほとんど知らなくて、トンデモ映画らしいということだけ。と言うか私リヴ・タイラーとスコット・スピードマンの出ているやつだと勘違いしていて。見逃すかもしれないからパンフだけでも確保しておこうと前もって買ったのよ。シネコンに通い始めてわかったんだけど、パンフが売り切れということがよくある。東京や神奈川なら、ここがだめでも他のシネコンで・・という手があるけど、こっちはなくなったらそれっきり。だから早め早めに確保しておくのよ。パンフを買ってしまった後で自分が思っていたのとは別の映画だって気がついたわけ。こっちはアン・ハサウェイ主演。あっちは「ストレンジャーズ」・・まぎらわしいなあ(←どこが?)。何ぼーっとしてたんだろ。でもまあ同じ間違えるにしても「パッセンジャーズ」でよかった。パトリック・ウィルソンも出ているようだし見てみよう・・と。その日は「天使と悪魔」の初日だったので、少しはこむかな~と思ったけどそうでもなくて。朝の10時、お客はいたけどみんな「余命1ヶ月の花嫁」の方に吸い込まれ、こちらは四人。「おくりびと」みたいにいっぱい入ってるのもいいけど、私はこういうスカスカの方が気分が落ち着くなあ・・。私以外は男性。きっとハサウェイのファンだろう。冒頭墜落事故が起きるけど、なごやかムードの乗客うつしてすぐ事故現場。あらッ!省略しちゃったのね。こういう映画なら特撮駆使してこれでもかと描写するのが普通だと思うけど。まだ燃えている残骸のそばをさまよう生存者のエリック(ウィルソン)。寝ているところを電話で起こされたクレア(ハサウェイ)。彼女は心に傷を負った人のケアをするセラピストらしい。上司ペリー役はアンドレ・ブラウアー。病院にかけつけたクレア。ベッドに横たわる女性シャノン(クレア・デュヴァル)。そばにいるのは母親か。クレアとすれ違う老人は「ゴースト・ハウス」の銀行の人(ウィリアム・B・デイヴィス)か。カーテンのすきまからベッドに腰掛けているエリックが見える。全裸なのが奇妙な感じ。ペリーから生存者五人のうち注意するよう言われたのが彼。確かに躁状態だ。

パッセンジャーズ2

この病院のシーンで、勘のいい人は設定わかってしまうかも。クレアが看護婦に話しかけても無視されるところ、シャノンにつき添っている女性、すれ違った老人の感じで。特に老人は「ゴースト」でこの人○○じゃないの?と思ったくらい薄気味の悪い人だし。さて、五人をまかされたクレアだがどうもうまくいかない。事故に関する記憶も人によって違う。そのこと自体は珍しいことではないが、ディーン、ノーマンと来なくなり、外に怪しい男が立っていたり尾行されたり。航空会社の代表アーキン(デヴィッド・モース)の態度もおかしい。航空会社の陰謀ではないのか。事故原因は他にあるのに、パイロットのミスということで死人に口なし、事実をもみ消そうとしているのでは?シネコンのロビーで流されている予告を見ると、墜落事件の真相を一人の女性が果敢にあばこうと奮闘する内容のように見える。私も他のお客もそう思って見に来ていると思う。ところがどうも違うムードなんだよな。エリックがやたらクレアにアタックしてきて、明るくふるまっているけど悪夢にうなされたりする。クレアの仕事ぶりも熱心にやっているように見えるけど、きれいごとすぎると言うか。うわべだけ。主流は謎解きのはずなのに、明らかにクレアとエリックのロマンスに比重かかっている。とうとう二人は結ばれ・・その間にも患者(生存者)は減り・・。見ていて疑問がわく。作り手は何を見せたいのかしら。クレアがエリックに引かれていく過程?でも二人が結ばれようがどうしようがこちとらどうでもいい。ラブロマンス見にきたわけじゃない。墜落の原因探って欲しい。なぜ生存者が姿消すのか明らかにして欲しい。患者の力になるはずのクレア自身何か問題をかかえている。姉とケンカして、本当は仲直りしたいけど電話をかけても通じない。家を訪ねても留守。ウーム「サイレントヒル」や「レストストップ2」連想してしまうじゃないの。でもこの映画でアレをやっちゃうの?ディーンやノーマンの消え方が変。現実的じゃない。彼らに対するクレアのアプローチの仕方が変。騒ぎ立ててるわりには消極的。警察もマスコミも出てこない。このゆるい作りは何?変な描かれ方をしているクレアだが、ハサウェイの演技はよかったと思う。映画の中での季節は冬なのかコートを着ていたりブーツをはいていたり。色も黒が多い。それが肌の白さによく映える。

パッセンジャーズ3

体つきはボリュームがあり、太っているわけじゃないけど「お肉食べてます、体力自信あります」という重み、安定感を感じる。目も口も大きく眉の太い鬱陶しい顔立ち。でも顔が小さいのでくどさはなく、清潔感、すっきり感が漂う。見ながら「おくりびと」の広末涼子嬢とくらべていた。あっちはいかにも軽くてキャピキャピフワフワ。しゃべりもまだオムツしているみたいにたどたどしい。ハサウェイみたいな重みを感じさせる若手女優っていないのかよ。風が吹けば飛びそうな広末嬢みたいなタイプしかいないのかよ。さてウィルソン君は額が広い。潮が引き始めたところか(引くだけで満ちてくることはないけど)。何の話?生え際のことです。ハンサムだけどこれと言って強烈な印象はなし。エリックは明るくて、それでいていらついたり沈んだり。カウンセリングを真面目にとらえず、クレアに近づくことしか考えてない。悪人ではないがとらえどころがない。超能力があるようにも見える。ん?オカルト方面に行くの?車や列車の前に飛び出すなど自分の命を大事にしない。大事故の生存者がそういう行動を取るのは珍しくないが・・。列車のシーンは明らかに変だ。ひかれたと思ったら無事。線路じゃないところに立っていたの?まあこれは後でなぜ無事なのかわかるけど、見ている人の中にはもう気づいていて、助かって当然でしょ・・と思った人もいるはず。いきなり屋上から飛び降りるシーンもある。クレアが仰天してかけつけると、エリックは一段低いところへ飛び降りただけ。けろっとしていて、クレアがなぜあわてているのかわからない・・みたいな。このシーンは「バーディ」のラストシーンと全く同じなのでおかしかった。他の出演者で印象的なのはデュヴァル。シャノンはどことなく暗くてなげやりな感じ。夜よく眠れないと聞いたクレアは「薬を出しましょうか」と言うが、セッションが終わってから「薬、薬って言わないでよ」みたいなこと言われてしまう。うかつな物言いだったと気づいても後の祭。考えてみれば姉とケンカしたのもこういう性格のせいかも。自分の言動が相手の神経を逆なでしていることに気づかない。同じ失敗をくり返し、自分に自信が持てない。それが時には誰かへの攻撃となって現われる。今回の件だって、ペリーやアーキンの言うことに耳を貸さず、会社の陰謀だと信じ込むのはクレア自身の心に問題があるからなのでは?

パッセンジャーズ4

しかしこういったモロモロのことも、クライマックスでいとも簡単に引っくり返る。「驚愕の真実」という謳い文句だが、お客は誰もそう思ってくれない。「やっぱりね~」「またかよ~」・・その後の説明のつけ方もかなり強引。説明されてもつじつまの合わないところ多数。何で冒頭での墜落シーン省いたのかここでわかる。実はクレアも飛行機に乗っていたのだ、えーッ?突然エンジンが火を噴き、直後爆発で機体に穴があく。乗客はパニック。この瞬間パイロットは何とかしようとがんばってるはずだが、実は異常が起きた時彼アーキンは操縦席を離れ、スチュワーデスといちゃついていたのだ。あら、アーキンはパイロット?最初に彼が出てきた時、クレアが彼のブリーフケースに目をとめるシーンがあって。でも何でこのシーンがあるのかわからない。でも後になって、彼が会社代表ではなくパイロットだとわかって。だからケースには飛行計画とか乗客名簿が入ってるわけで。その名簿を見たクレアが驚愕するわけで。席が隣り合わせになったクレアとエリック。初対面なのになぜか気が合い楽しくおしゃべり。この出会いを大切にしたい・・そんな幸せな気分を吹き飛ばす突然の事故。パニック状態のクレアをはげましたのはエリックだった。彼だって怖いはず。でも冷静で決して希望を捨てない。・・何も気がつかないうちに一瞬で死ぬのとは違い、こういうのは間がある。泣き叫ぶ人もいるだろう、祈る人も、家族への思いを大急ぎで手帳に書きつける人も・・。恐怖と絶望の数分間。セッションをしている時外から見ていた謎の男性も実は乗客だった。なぜか記憶をなくし、自分が誰だかわからない。生存者は六人だった。彼が登場した時には、ゆるいロマンスモードはもう終わり、後半はサスペンスモードだぜい、これから突っ走るぜい・・と期待したんですけど・・彼もすぐいなくなる。何だよ~作り手やる気あるのかよ~。彼は事故の後何日もさまよっていたわけで、どうやって暮らしていたのかなという疑問も残る。でも事故のシーンでなぜ彼が記憶なくしたのかわかる。彼はちょうどトイレに行っていたか何かで、席に座っていなかった。機体がゆれて何かが頭に当たり、打ちどころが悪くて記憶が・・。さてパニックにおそわれていたクレアだが、エリックのはげましにかすかな希望をいだく。このまま死ぬかもしれないけど一人じゃないという安心感。彼女の微笑で画面は白く薄れていき・・。

パッセンジャーズ5

ここで終わってもいいのになあ・・。甘くきれいごとすぎるかもしれないけど、美しく感動的。でも映画はその後も続く。クレアが姉に残した手紙。これを見せたいのね。二人してボートのへさきに立ち、「タイタニック」状態のクレアとエリック。これでもかとばかりに幸せぶり見せつける。くどい。こんなシーンいらん。さてまたデュヴァルに話を戻すけど、シャノンは事故が起きてもクレアのように騒ぎ立てたりしない。イヤホンで音楽聞いてたのかとまどった表情。しかしすぐ状況を悟り、またイヤホンをはめる。彼女は何も期待しない。あきらめている。両親は幼い頃死んでしまった。自分を置き去りにした二人を彼女は許せない。いつも怒ったような顔をし、人を寄せつけない。セッションには来るが効果はないと思ってる。そんな彼女だが死の淵に立たされて何を思っているのだろう。きっと両親も突然こんな目に会う理不尽さに悲しみや怒りを感じたのでは?でもその一方で・・もうすぐ両親と会える・・とか。デュヴァルも30を過ぎ、ハサウェイとは全く違うが美しさ、女らしさがにじみ出てきたように思う。発散するのではなく奥へ奥へと向かう深みの出せる女優さん。出番が少ないのがもったいない。もったいないと言えば他にもいろいろ。クレアの描写が一面的なこと。エリックの設定もあんなふうな一定しない不安定なキャラではなく、例えばすべて承知していてクレアの導き手になるとか・・。「シティ・オブ・エンジェル」のセスのような存在であってもよかったのでは?クレアのアパートの隣人トニ役はダイアン・ウィースト。これがまたどう見てもまともじゃないわざとらしいキャラ。親切すぎる。詮索しすぎる。お節介すぎる。不気味。ホラー映画的ムード出したかったのか。だとすれば失敗もいいとこ。まあ・・とにかく残念な出来。あれこれ欲張りすぎだしどう見たって某映画の二番煎じ。でもまあところどころ私の心を引きつけるものはあった。事故のシーンは本当に怖かった。冒頭省かれていたからこのままいくのだろうと油断してたらいきなりの爆発。大きな穴、外がまる見え。来るぞ来るぞよりいきなりドッカーンの方が効果あるのね。その怖さの中でのエリックのりっぱさ。シャノンのやるせない表情。恐怖、癒し、達観・・何となく「ステイ」思い出す。音楽もよかったし、思っていたのとは違うもの見せられたけど、満足しましたよ。