人喰い人魚伝説

人喰い人魚伝説

スタン・ウィンストンがプロデューサーと視覚効果を担当。「クリーチャー・フィーチャーズ」とか言うシリーズの一本。全部で五本ほどあるらしい。昔のB級C級ホラーのリメイクと言うか、そう見せといて実はなかみ全然別とか。テレビムービーで、予算も撮影期間も限られていて、でもその中で何とかがんばってやってる。ずっと前深夜に放映されたのを録画して、数年間ほったらかし。録画したのはルーファス・シーウェルが出ているから。でもファンとは言えないかも・・数年間ほったらかしにするくらいだから。ごめんねルーファス、まだ「アウレリオ・ゼン」も見てないわ。NHKBSでやった何とかってのは録画すらしなかったし。これを見た時は・・大部分はいいんだけど終盤は・・何が何だか。あのモンスターもひどすぎるし。で、DVD出てると知って。コメンタリーもついてるから少しは謎も解けるかな・・と。1905年のアイルランド・・興行中の見世物小屋は今日が最終日。ゾンビだの人魚だのみんなニセモノだけど、何とか金を稼ぎ、次はアメリカへ進出だ!団長アンガス(シーウェル)は人魚役リリー(カーラ・グギーノ)と夫婦同然。客の一人に変な老人がいて。ウーリッチと言って元船長らしい。彼の家には何と本物の人魚が!冒頭老女が襲われるが、彼の妻で、襲ったのは人魚らしい。アンガスは戻ってからも眠れない。本物の人魚がいれば大儲けできる。がまんできず深夜ベイリー達と忍び込む。邪魔しようとしたウーリッチは発作を起こして死亡。これ幸いと人魚を盗み出し、船に積み込み出発。人魚は貨物室に隠し、ベイリーが番をしているが、そのうちばれてしまう。疫病神だ・・と騒ぐ船員達。アンガスは船長に金を渡し、何とか航海を続けるが・・。リリーは最初見た時から不吉な予感がしている。彼女は女優と称し、淑女を装っているが、男をだまし、金を奪っては姿を消すという過去の持ち主。船員マイルズもだました一人で、気づいた彼はリリーにうるさくまとわりつく。そのうち姿が見えなくなるが、どうも人魚が彼を食べてしまったらしい。人魚と言えばアニメや「スプラッシュ」等を思い浮かべる。人間の男性に一目ぼれする無垢で一途な美少女。でもここでは何と人喰い。見かけは美しく神秘的だが、超能力(テレパシー)があり、人間を操る。

人喰い人魚伝説2

船長を操り、航路を変えさせ、人魚の島へと向かわせる(船員が針路変更に気づかないのはおかしいが)。何も食べなくても生き続け、食べる時は人間丸ごとという大食い。ウーリッチも操られ、人間二人を餌として与えたらしい。人魚は一年に一回、満月の夜人間に変身。その間は無防備だが、そのうちモンスターに変身。クライマックスではリリーを除く全員を殺し、人魚仲間に肉を投げ与える(節分の豆まきにしか見えなかったが)。彼女はクイーンなのだ!彼女がリリーを守る(マイルズを殺すとか)のは、リリーが妊娠しているから。おなかの子は人魚の子?ウーリッチ夫人も、老齢でそんなことありえないのに妊娠したらしいが、詳しいことは不明。いつどうやってリリーが妊娠したのかも不明。普通なら人魚がアンガスとか他の男連中操り、自分が身ごもる。でもこの映画では人魚とリリーの強い結びつき描くのが目的。人魚が守るのはリリーだけで、男どもはただの餌。数時間だけ人間に変身というのも意味不明だ。こういう時ほど妊娠のチャンスのはずだが、そっち方面には行かない。設定はかなりユニークだけど、ちゃんとした理由付けはほとんどなく、コメンタリーでも都合が悪くなると超常現象だから何でもアリなのさ・・と逃げる。「エイリアン」シリーズでのリプリーとエイリアンの関係まねているのは明らかで、見ていても既視感ありあり。見る者の関心は、じゃあどういう子が生まれたのかとそっちへ移るが、これまたあいまい。数年後、海に浮かぶ小舟でのリリーと、娘らしき少女。この子は半分人魚のはずで、下半身は・・足?ヒレ?でも見えません。見せてくれません。あいまいにしておいて「2」作るつもりだった?「人喰い人魚の娘」・・キャッチコピーは「伝説は続いていた!?」。でも私には作り手のイマジネーションが尽きたように思えたんですけど。足にするかヒレにするかなんて面倒くさいから見せないで、勝手に想像させておけ!・・ってなもんよ。ネットで調べると評価は意外と低いんだよな。このDVDにはシリーズの予告も入ってるけど、みんなチープな感じ。見る前から「あ~」ってな感じ。「人魚」はその中でも最低な出来らしいんだな。

人喰い人魚伝説3

こういうのを見る人ってあのスタン・ウィンストンだから・・とか、チープなホラーが好きだからとか、ハードル低いと思うんだけど。つまり傑作とか名作は初めから期待してないと思うんだけど。それでも気に入ってもらえなかったと。船の上でもたもたやってるとか、何が言いたいのかわからんとか。クリーチャーの造形も大事だけど、ちゃんとつながるわかりやすいストーリーも必要ってことで。作り手はわかるはずと思ってるけど、見ている方はわからないことだらけ。そういう”ずれ”は確かにあるな。さてお目当てのルーファスだけど、「ダークシティ」で初めて見て、それから10年以上たったけど、彼の魅力を存分に引き出している作品って、あんまりないよな。そんなこと言えるほど彼の作品見てないって承知してるけどさ、顔中ヒゲだらけだったりすると、もう見る気失せるわけ。主人公カップルの恋の障害となる地位のある年上の夫の役とかさ。「ダークシティ」みたいな、眼力出しまくりの異色SF、チリチリヘアーで、ヒゲなしで、顔全部見せてくれて。アクションありーの、バトルありーの、超能力ありーの。ジョン・マードックの再来希望!ヒゲに埋もれて妻の不倫に悩んでる・・なんてのじゃなくて!!その点アンガスはまだマシなの。「ダークシティ」からいくらもたっておらず、まだ若くてういういしい。眼力もそれなりに。あんなに瞠ってて乾燥しないかしらうるおいも必要よルーファス!!コメンタリーでは「すべてはアンガスの欲から」って悪者扱いされてるけど・・確かにそうなんだけど・・でも根っからの悪人では決してないの。ウーリッチが現われたせいで、リリーが一緒だったせいで、運命がそっちへずれた。人魚を手に入れようとしたのだって、見世物小屋の団長なら誰だってそう考えるでしょ。ウフン、ルーファスだからどうしても弁護してしまうわ。この映画で私が一番感動したのは、絶体絶命のピンチに陥って・・つまりリリーと二人になってしまって・・彼が神に祈るところ。祈りも空しく殺されちゃうけどね、ああ!とにかく彼はリリーを心から愛するやさしい人間なのよ。グギーノは他にも書いてる人いるけど、ジュリア・ロバーツに似ている。横顔なんか特に。ただ、ロバーツのようなスケールの大きさ、表に出てくる華やかさはなく、こぢんまりと地味。演技力があり、適度にエロい。

人喰い人魚伝説4

まあクリーチャーの出現を今か今かと待ちかまえている人にとっては、彼女の一人芝居なんかうざい、もういい・・となるんだろうけど。コメンタリーによると、彼女は監督のセバスチャン・グティエレネと恋仲だそうで。もう10年もたってるけど、今でもそうなのかな。彼女は「ブラッド」に出ていて、何でこんなのに出てるのかと不思議だったけど、この作品の監督がやはりグティエレネで。人魚役リア・キルステッドもすばらしい。マイルズ役ギル・べローズはテレビの「アリー・myラブ」で知られてるらしいけど、そんなことはどうでもよくて。でもこのリアと結婚してるのだそうで、それにはびっくり。彼女はミラ・ジョボヴィッチに似ている。どこか北欧系、東欧系、中欧系。セリフはほとんどなく、裸で水に浸かりっぱなし。大変だったと思う。私が感心したのは、髪や貝殻で隠すようなことはせず、ちゃんと上半身裸で通すこと。水から顔を出したり沈んだりしてるだけなのに・・何考えてるかわからない不気味さがよく出ている。残念だったのは、水槽から出た直後なのに濡れてないとかそういう初歩的なこと。ミスと言うより手抜き。顔にホクロがあるのも気になる。人魚にはホクロなんてないと思うのだ。変身してからは別の人がやってるようで。でも正直言ってどうでもいい。たぶんこの映画で一番大変だったのはモンスターの造形だろう。苦労して作り上げたのだろう。でも怖くもないし驚きもない。別にこんなふうに変身しなくたって・・。一番怖いと感じるのは、人間に近いけど人間じゃないみたいだ・・そういう状態でしょ。モンスターになっちゃうと、あっちの世界の生き物、作り物。怖がるより、よくできてるなあとかチープだなあとか、そっち方面に行っちゃう。でも作り手はよくできた、満足してると自画自賛。まあいいんですけどさ。クイーンは結局どうなったのかな、豆をまいて・・じゃない、肉をまいて。銃で撃たれたけど平気なの?それともあの後死んじゃったの?後継ぎもできたし。・・てなわけで、確かにいい出来とは言えないけど、と言って最低とも思わない。映像は茶色っぽい落ち着いたトーンで通し、服とかセットにも安物感はなし。俳優も手堅いの揃えてるし、よくやった方だと思う。せめてラストもうちょっとはっきりしたものにするとか。もうちょっと何とかなったと思うよ。ルーファスに関しては満足です!