パリの連続殺人

パリの連続殺人

少し前、クリストファー・リーの訃報が新聞に載った。あたしゃてっきり彼は不死身だと思っておりました。いや、ホント。追悼で映画やってくれるかな・・と待ってたけど、何もやらなかったな、何で?ドラキュラシリーズとかさ、いろいろあるでしょうに・・。さて、「パリの連続殺人」だけど、何十年も前に一度見た。DVDが出るのをずっと待ってるんだけど、その気配なし。海外では出てるんだから、日本だって出せないことないと思うんだけど。見たのはもちろん民放だけど、おっそろしく画面が汚かった覚えがある。たぶん電波事情が悪かったんだと思う。室内アンテナとか。それともテレビがオンボロだったのか。たぶんリー目当てで見たんだと思う。他にジュリアン・グローヴァーが出ているけど、当時は知らなかった。それまで、「吸血鬼ドラキュラ」くらいは見ていたと思うけど、この作品で初めて素顔のリーを見て、ああ、こういう顔をしているのか・・と。ドラキュラじゃなくても怖い顔してるんだな・・と。びっくりしたのは彼が途中で殺されちゃうこと。主役だと思って見ているからさ、こっちは。姿消すけど、そんなはずはない、これっきりのはずはないと思いながら見ていると、やがて死体が浮かび上がる。あら~。もう一つびっくりしたのはヒロインがブスなこと。普通もう少しマシな女優さん出してくるでしょ。こんな目のまわりがパンダみたいな・・まつ毛バサバサの・・しかも若くもないし。パンチくらったような目をしているのは、うつりが悪いせいもあったと思う。調べてみたら、レリア・ゴルドーニとかいう女優さんで、当時30歳くらいで、決してオバンではないのだけど、それでも老けて見えたな。グローヴァー扮する恋人チャールズとのラブシーンもあるけど、なかなか色っぽい・・と言うか、何でこんなパンダと?という疑問の方が大きかったけど。とは言えこのダニは、女性らしい親切ないい人で。パリという題がついてるから舞台はパリなんだろうけど、リーもグローヴァーもイギリス人だし、英語しゃべってるし(たぶんね、見た時はもちろん吹き替え)。劇場の名前デ・モルテのモルテってイタリア語か何かで、英語のデス(死)のことらしい。テレビ放映もだいぶ前のせいか、ネットで調べてもあまり詳しい感想書いてる人もいなくて。

パリの連続殺人2

海外の映画サイトには梗概載ってるから、それを参考にする。と言っても翻訳機能は全然当てにならない。何でこんな意味不明な文章出てくるのかいな。予告では画面は横長で、映像はきれいだ。冬の寒々しいイメージは汚いテレビ画面のせいだったことがわかる。全然冬じゃないじゃない!ダニまできれいに見える。このゴルドーニさんはレナード・ニモイの「SF/ボディ・スナッチャー」に出ているらしい(出てたっけ?)。写真をググると、モノクロでいっぱい・・フランソワーズ・アルヌールとかレスリー・キャロン系の美人なのね。ブスに見えたのは汚いテレビ画面のせい・・以下省略。冒頭若い女性がギロチンにかけられる。頬には涙。お客は顔をそむけ、心配するが、カーテンコールで今のヒロイン、ニコール(ジェニー・ティル)が出てきてホッとする。拍手がいちだんと高まる。その夜内輪のパーティが開かれるが、劇場でやってるのだと思ったらダルヴァシュ(リー)の自宅のようだ。自分(それとも父か先祖?)の肖像画の目の部分から、パーティの様子をうかがう。そう、この家には隠れた部分がいっぱいあるのだ。たぶんパトロンのマダム・アンジェリークの要望だと思うが、ダルヴァシュはダニとニコールを中心にした出し物の一部を見せる。これは「セイラムの魔女」とかいうのらしいが、あのギロチンの出てくるやつとは・・さっき劇場でやっていたやつとは違うのか。「セイラム」はアメリカの事件だから、ギロチンが出てくるのはおかしいが、わからないことはスルー。さてニコールは有望な新人だが、ちょっと自信ないところもある。ダルヴァシュは彼女に暗示をかけ、役になり切らせる。みんなが見ている前で催眠術かけるのはちょっとおかしいが・・。そうそうダルヴァシュは指輪を使うんだよな、わざとらしく。芝居とは言え、ニコールが本当にダニの顔に火かき棒を当てそうになったので、チャールズは止めに入る。その頃町では女性が三人殺されるという事件が。首を刺され、血を抜かれている。チャールズは警察医らしい。彼は凶器が、小道具で使われる鋭利なナイフのようなものではないかと考え、ダルヴァシュを疑う。その後も催眠術をかけたのか、ニコールはキャラバンとか、アバランチとか、口走っている。ここでもう謎の一部が披露されているようだ。

パリの連続殺人3

もう一つ、ラストの伏線になっているのが、踊りの稽古。ごていねいに槍で突き刺すシーンまで見せる。ダルヴァシュがもっとちゃんとやれと団員達にがみがみどなりまくるが、そのおかげで本番では・・。ダルヴァシュの父も監督で、彼は父がそうであったように自分も劇場に人生を捧げると誓っている。と言うことは、公演を成功させるためなら何でもするということだ。ニコールに目をつけたのもそのせいだろう。彼女の秘密を探り出せば、いい脚本が書けそうだ・・とか。ただ、どういうきっかけでそれを知ったのかは不明。彼女はダニと一緒の部屋を借りているが、ダルヴァシュのところへ移ることになる。ダニは、彼女はダルヴァシュと関わるには若すぎるし、純粋すぎると心配するが、ニコールは聞かない。ダルヴァシュに直談判に行くと、嫉妬しているんだろうとか、ダニが二年間精神病院にいたことを持ち出し、はずかしめる。ここでダルヴァシュに顔をいじられたのと涙とで、化粧が崩れてパンダ顔になるんだな。四人目の犠牲者は年寄りの酔っ払い。たぶん浮浪者。いくら何でもこんな古い(←?)汚れた(←?)アルコールまじりの血なんか飲まないと思うが・・。何で若い女性オンリーで通さないのかな。ここまでいかにもダルヴァシュが犯人・・吸血鬼ですぜ・・と思わせといて、退場。そう、この後リーは全然出てきません。血のついた彼のケープが発見されるが、肝腎の死体はなし。本当に殺されたのか、それとも自分が疑われていると知って、被害者を装って姿をくらましたのか。ここで映画はちょうど半分くらい。不思議なのは、警察がダルヴァシュの家を捜索するシーンがないこと。ちゃんと調べれば、家の秘密の部分が見つかったはず。秘密の扉、秘密の階段、広い地下室。何だか「オペラ座の怪人」みたい。ダルヴァシュ失踪後も、ニコールは彼の家にとどまる。例の肖像画が彼女に暗示を与え続ける・・って「犬神家の一族」みたいだな。手がかりをつかむためと、ダニも一緒。チャールズもいて、二人きりになると、イチャイチャが始まる。他人の家で何やってるんだ。もちろん次の殺人が起きる。そのうち池だか川だかで(梗概ではpondだから池か)腐乱死体が浮かび上がる。ダルヴァシュのである。だから彼は殺人犯ではなかった。吸血鬼でもなかった。

パリの連続殺人4

この作品は直接的なシーンは全くと言っていいほどない。ホラーにしては血の量も少ないし、残酷なシーンもなし。おまけにリーが後半不在。物足りないという批評が(海外では)多いようだが、それも仕方ないか。とは言え、大柄で力も強そうなダルヴァシュが、やすやすと殺されてしまうというのは・・よっぽど油断していたのかね。公園で子供と無邪気に遊ぶニコール・・このシーンは、よく覚えている。その後池の淵にたたずみ、ダニ達を心配させる。精神科医みたいなのが出てくるけど、どうなってるのかはわからないのでスルー。ある晩、ダニとチャールズとニコールの三人でレストランへ行き、ニコールは愛用のギターを弾く。オーナーの妻はそれがルーマニアの曲であることに気づく。そのギターが店に置き忘れられ、刻まれた名前・・アンナ、コンスタンティン・・を見て、あることを思い出す。1946年2月、ルーマニアから逃れたジプシーの家族が、アルプス越えの途中雪崩にあう。大人は馬を殺してその肉を食べたが、赤ん坊はそういうわけにはいかない。で、母親アンナは男の子を殺して、その血を赤ん坊に飲ませたと。その赤ん坊がニコールだと。この部分は印象に残っている。オーナー夫婦はこの話をチャールズにする。同じ頃ダニはダルヴァシュの書いた脚本を見つけて読み、彼を殺したのがニコールだと知る。脚本の題名は「キャラバン」。梗概には、自分の秘密を守るためダルヴァシュを殺したとあるが、私にはニコールは彼を愛していたのに、思いをはねつけられたからのように思える。利己的なダルヴァシュは脚本を完成させ、公演を成功させることしか考えていなかったと思う。ここでニコールがナイフを手に現われ、ダニ危うし・・となるが、彼女に催眠術をかけ、自白書を書かせるなど、余計なことをするので、チャールズが間に合う。ニコールもダニの過去は知っていて、精神的なことが原因で・・というふうに持っていきたかったんだろう。それにしても・・ニコールが犯人と明らかになった時点で、ダルヴァシュ殺害の様子が出る・・と、誰もが期待したはずなんだよな。あれっきりでリーが出てこなくなるなんてありえない、絶対もう一度回想シーンででもいいから出てくるはず・・って。いや、ホント何で登場させなかったんだろう。

パリの連続殺人5

ニコールはチャールズの邪魔が入ると、表へ飛び出し、走りに走る。逃げ込んだのは劇場。チャールズや警官の目をかすめ、舞台の下に潜り込む。ここで舞台がうつって、びっくらこく。私ずっと劇場と言っても半分はストリップみたいな、あまり品のよくないところだと思っていたのよ。それと言うのも半裸のダンサーが出ていた記憶があるから。IMDbにはヴードゥーダンサーとか書いてあるから、そっち方面なのだろう。前に稽古していたのがこれで、でもその時は普段着のままでやってたから。とにかく男性は目を奪われるだろうけど、私は目を丸くしていましたとさ。このクライマックスの場面は鮮明に覚えている。ニコールはなぜか舞台下の狭い空間に潜り込むのだ。もがいているように見えるのは、警官の目をくらますために着た衣装が、どこかに引っかかって動けなくなったのか。音楽はなく、ずっと太鼓の音がしている。それが緊張感を盛り上げる。そして槍がブスリ・・あがる悲鳴。公演終了後、団員が言う・・「叫んだのは私じゃないのよ」・・聞きとがめたチャールズが槍を抜いてみると・・そう、ここも記憶に残ってます。死体を見せたりしないのが・・想像させるにとどめるというのが奥ゆかしくていいですな。こういうハマーなどの古典的なホラーはだんだんすたれて、もっとショッキングなものがこの後主流になるらしいが、私にはこれくらいがちょうどいいです。今回書いていて気づいたけど、ダニとニコールって「血とバラ」のジョージアとカーミラを模している気が・・。ブルネットでほっそりしたエルザ・マルティネリのジョージア、ブロンドで肉感的なアネット・ヴァディム(ストロイベルグ)のカーミラ。ね?似てるでしょ。ゴルドーニさんは今も活動しているのかな。ネットで検索すると、すごい顔が出てくるけど、面影はある。ティルの方は活動期間は短かったようだ。色が白く、ややふくよか。足も太い。白いセーター。ゴルドーニさんみたいに目をいじくったりせず、ほとんど素顔のまま。・・はあ~ちゃんと内容知りたいので、DVD出してくださいな。もう一度見たいと思ってる人は他にもいると思うよ。