ぼくのエリ 200歳の少女

ぼくのエリ 200歳の少女

これはWOWOWでやったのを録画してそのまま数年間ほったらかし。やっと古本屋で原作が108円で出ているのを見つけて読んで、その内容忘れないうちにと見たわけ。映画の中でブレジネフという名前が出てきたので、現代の話じゃないのだとわかる。1982年の設定らしい。原作は読んでいても薄汚い感じで。タバコにアルコール、体臭、猫のおしっこの臭い。高福祉、スマートでモダンで知的という北欧のイメージが次々と引っくり返るわけ。働いている女性が出てくる反面、ぐーたらぐーたらしているだけの男ども。凄まじいいじめ、日常現象になってるみたいな万引き。主人公オスカーは12歳。色が白く美しいプラチナブロンドで唇が赤い。あんまり整っていないけど、時々美少年に見える。両親は離婚し、母親に育てられている。コンニという悪ガキに目をつけられ、いじめられるけど誰も助けてくれない。オスカー自身母親にも教師にも言わない。ある晩隣りのアパートに中年男と少女が越してきた。建物は別と言っても壁を通して隣りの物音が聞こえる。中庭で出会ったエリはちょっと変わっていて、時々臭う。この寒いのに薄着だし、ルービックキューブも知らない。エリは実際には女の子ではなく、元男の子だったけど、オスカーにはあんまり気にならない。学校へ行ってないことを不思議に思うはずだが、それもなし。これがアメリカなら必ずどこかのお節介なおばさんが「学校はどうしたの?親は何をしてるの」とうるさく聞くはずだが、そういうのもなし。一緒に暮らしているのは父親ではなく、血の調達係。彼ホーカンは以前教師だったけど、少年が好きという性癖のせいで転落の人生。要領が悪く失敗ばかりしていてエリに怒られたりする。原作だと塩酸かぶって病院に運ばれた後、エリに血を吸わせて、高いところから落下して死ぬけど、吸血鬼として甦ってしまう。顔も体もグチャグチャのゾンビ状態で動き回る。そんなの見せられたって困るよなあと思っていたら、ありがたいことにこちらではちゃんと死んだらしく、甦りはなし。オスカーより少し年上のトンミ、その母親の恋人で警官のスタファンなどは全部カットされている。

ぼくのエリ 200歳の少女2

エリに血を吸われ、本来ならばそこで殺されて終わりのはずだったのに、恋人のラッケが助けに入ったせいで生き延びてしまったのがヴィルギニア。だんだん吸血鬼の徴候が現われ、苦悩した末太陽の光を浴びて死ぬ。ラッケは父親の残した珍しい切手を売って暮らしているような男。ろくに働かず、気の合う仲間と酒を飲んでおしゃべりして過ごす。ラッケは友人のヨッケを殺され、今度は恋人のヴィルギニアをなくし、復讐のためエリのアパートに忍び込む。原作だとエリは昼間はバスルームにいる。カギをかけているので、オスカーにもどうなってるのかわからない。でもラッケはカギをこじ開ける。血の入ったバスタブは、中に何があるのかわからない。ラッケは手を突っ込み、底を探る。もちろんエリが血の中で眠っていて、ラッケは一番搾りを提供するはめに。どこまでバカなんだ!映画ではバスタブの中でエリが普通に寝ているだけで、血はなし。いいシーンになるだろうと期待していた私がバカでした。掃除が大変だからかな。もう一つ省略されちゃったのはオスカーがエリの過去を体験するシーン。おまけに日本ではモザイクやらボカシやらのせいであるシーンが意味不明になっちゃってる。原作を読んでない人は疑問抱えたまま家路についたことだろう。オスカーの両親は、たぶん亭主の方の飲酒癖のせいで離婚したのだろう。週末に父のところへ行って、楽しい時間を過ごしていると、客が来る。そうなるともうオスカーは仲間はずれ、一人ぼっちだ。映画だけ見ていると、父親は同性愛者かな?と思える。離婚の原因はそれかな?って。でも違うのだ。仲間が来ると飲んでしまう。暴力をふるうわけではないが、別の人間になってしまう。それがオスカーにはいやでたまらないのだ。いじめの方はだんだんエスカレートする。オスカーが気の毒に思えるが、その彼でもエリに意地悪をするのだ。コンニと同じような表情や言葉遣いをするのだ。それを見ていると、あ、彼も同じなんだ・・と思う。万引きもするし、ある意味したたかに生きている。

ぼくのエリ 200歳の少女3

オスカー役はカーレ・ヘーデブラント。今頃はさぞ美青年になっていることだろう。エリ役は、元々男の子だし・・男の子が演じているのだと思ったら・・リーナ・レアンデション・・あら?女の子?写真を見ると顔の真ん中に大きな鼻が鎮座していて・・もっとやせてピリピリした子の方が合ってるって思ってたので、何かイメージと違う。でも見ているうちにだんだんよくなってきた。今では成長して、出るべきところは出て、なかなかの美女になっている。クライマックスはちょっと変わったうつし方をしていて、よく考えたなあと感心した。吸血鬼には招かれないと中には入れないというのがあって、無理に入ると目や耳から血が流れてえらいことになるのだが、この場合はどうやって入れてもらったんですかね。水に沈められているオスカーしかうつってないので、エリの行動は何も見えない。原作ではプールにいた子達は、オスカーがコンニの兄インミに頭を押さえつけられ、水に沈められるのをなすすべもなく見ていて。いじめに加担した子でさえ怖くなって。そしたら外から声がして。「中に入ってもいいと言って!」と言っていて。事件が起きた後・・二人が殺され、一人の行方がわからなくなって、目撃者はいたのに彼らは天使の仕業だと思っていて。ここを読んでどんなふうに映像化されるかと期待してたら・・水の中だけ。感心と失望と・・複雑な思い。そりゃあ空を飛ぶとなったら金かかるし・・。特殊効果は猫でやったからもういいでしょってか?あの猫はちょっとお粗末だったな。コンニとインミが殺されたのはわかるけど、マッティンはどうなったの?彼も殺されたの?別に不明のまま終わる必要ないのに。ラストはエリの入ったトランクと旅するオスカー。年月がたてばオスカーだけ年老い、ホーカンと同じ運命をたどるのだと書いてる人が多い。まあ私にはオスカーと出会ったことによってエリの運命も少しは変わるのではという気がしますけどね。ところで感想書くためネットでいろいろ調べていて、当然「モールス」の方も調べるんだけど、主人公の男の子が壁に耳を当てている写真を見たら「氷の接吻」のユアンを思い出してしまった。よく似てる~!リメイクの方も見てみたいが、いつになるやら。