必殺マグナム

必殺マグナム

マグナムとあるけど、「スーパー・マグナム」などのデス・ウィッシュシリーズとは無関係。「必殺マンダム」でもいいんじゃない?刑事のマーフィ(チャールズ・ブロンソン)は、酒浸り。嫁さんに逃げられたせいでそうなったのか、酒浸りだから逃げられたのか。小娘に車盗まれそうになるわ、つかまえたと思ったら股間蹴られて逃げられるわで、もうさんざん。関係ないけど、「スーパー」にしろこの「必殺」にしろ、大きな紙袋抱えて歩くシーンがよく出てくる。今の我々だとレジ袋で、紙袋はほとんど使わない。時代を感じる。さて、離婚成立の書類が届いたってのに、マーフィは元妻ジャンが働くバーへ通う。娘ほども年が下の、若くて美しいストリップダンサー・・あの~これって設定ムチャですってば。結ばれるはずないし、別れるに決まってる。演じているエンジェル・トンプソンは・・あら、この頃もう40過ぎてる。それであの曲線美はすごいね。もうちょっと前なら・・病気じゃなかったら・・ジル・アイアランドがやっていそう。話を戻して、ジャンにしてみれば、未練たらしく通ってこられるのは迷惑。くどくど文句言われるのも腹が立つ。私はダンサー・・ストリップだろうが何だろうが踊るのが仕事。酒に溺れてるそっちよりマシって感じで、こりゃ嫁さんの勝ち~。彼女は支配人といい仲で、同棲しているようだ。帰宅する二人のあとをつけるマーフィ・・これじゃあストーカーだ。今マーフィが仕事で追っているのが、愛人殺しのビンチェンゾ。抵抗したので撃ち殺すが、兄のフランクはマフィアのボス。年老いた母親は、恨みを晴らせ、刑事をなぶり殺しにしろと命令。・・このばあさん、自分が子供育て損なったことに気づいてないぞ!その頃ジョーンという女性が町にやってくる。私立探偵を雇って何やら調べさせていたようで。バカな探偵は欲を出して料金上乗せを要求。即始末されましたとさ。どうやら彼女はマーフィを始め、自分を(病院に)ぶち込んだやつらに復讐する気のようだ。手初めにジャンと支配人を殺し、罪をマーフィになすりつける。うん?待てよ、なすりつけて刑務所に送って・・それだけでいいの?酒による心神喪失で数年で出てくるぞ。もちろんマーフィはスキを見て脱走するが、たまたま手錠で繋がれていたのが例の小娘アラベラ。

必殺マグナム2

ヘリで飛んでみたり、納屋の屋根に着陸してみたりの珍道中(しかも納屋では大麻か何かを栽培中)。昔の相棒ベンにかくまってもらうが、そのベンも殺されてしまう。判事も、最後には検事も殺される。ようやく彼も、昔つかまえたやつが殺して回っているのだと気づく。それまでは、フランクの仕業に違いないと思い込んで痛めつけてみたり。女性の声で脅迫電話があったというのに、何も思い当たらず、電話があったことさえ忘れているようで。まあ今回のブロンソンはさえないです。アルコールのせいか血のめぐりが悪い。と言うか、もうじいさんなんだからいいかげん退職させてあげてください!いったいいくつの設定なのか知らんが。ブロンソンがボーッとしてるぶん、女性達ががんばっている。アラベラは、男か女かわかんないような未成熟な感じ。威勢がよくて口が悪くて意地っ張り。チンピラだが、素はわりと純。生意気で憎たらしいんだけど、そのうち何てけなげでかわいいんだろうと思えてくる。顔が四角くて目が小さくて、とても美人とは言えないが、不思議な魅力がある。ちょっとサラ・ジェシカ・ハーパーに似ている(サラには何の魅力もないが)。キャスリーン・ウィルホイトという人で、「メンタリスト」のシーズン2の最終話に出ていたようなので、早速確認。大学の講師か何かの軽い役。ジョーン役はキャリー・スノッドグレス。この映画はサイコ女の復讐ってのがメインなんだろうけど、ジョーンがぶち込まれるはめになった事件は、あまりはっきり説明されない。そのせいで、彼女の恨みが今いち伝わってこない。おまけにフランク達マフィアが絡むせいで、彼女の存在が後ろに押しやられる。彼女が泊まっているホテルに現われたマーフィとアラベラを見て、フロントの男はぴんとくる。新聞に載っていた二人だ。・・今ではアラベラも共犯にされてしまっている。彼女がマーフィにくっついて離れないのは、彼の濡れ衣が晴れない限り、彼女の無実も証明されないからだ。ただ、それ以外にも理由はある。最初は嫌っていたのに・・。親子以上に年は違うけど、私年取っててもオッケーな方だしぃ・・なんて言い出す。時間を見ると案の定1時間10分。マーフィの法則ならぬ、1時間10分の法則。たいていラブシーンやら告白やらが始まる時間帯。

必殺マグナム3

もっとも、せっかくコクッたのに邪魔が入って尻切れとんぼ。鼻白んでいるアラベラが気の毒。でもいくら何でもこんなおじいちゃんにぞっこんというのはムチャでしょ。「おませなツインキー」の頃ならまだしも。・・話を戻して、フロントの男がすぐ電話かけるので、てっきり警察に通報してるんだと。すぐ二人組が来るので、てっきり刑事だと・・そしたら違うのよ。フランクの手下。後でマーフィは相棒のアートに電話かけるけど、あいにく不在。電話に出たのは普段から仲の悪いエド。でもこの際そんなこと気にしてられない。殺人鬼をつかまえるには応援が必要(もたもたしてる間にアラベラも人質に取られちゃったしぃ)。いくらエドでも刑事としての本分は果たすはず。ところがな、何とエドまでフランクと通じていて。いくら何でもそこまでは予想してなくて驚くんだけど、こういうのがあるせいでジョーンの出番はますます少なく・・。いちおう風呂を使った判事殺しとか、様子見にきたドクターをくびり殺すとか、異常ぶりアピールするけど、パンチ不足は否めない。こういう映画だと、主人公は出てきた時はよれよれでも、ピンチ切り抜けていくうちにだんだんしゃんとするのが普通。でもそれにも限度があって。若けりゃ何とかなるけど、ブロンソンみたいなじいさんじゃ無理なわけ。ますますよれよれ。一晩たってもきのうの疲れが抜けない・・みたいな。こんなしおたれたじいさんの対抗相手として、タフガイ出してきたんじゃやられちゃう。「必殺ナンマンダブ」になっちゃう。だから敵はおばさんにしとけ・・と。さて、スノッドグレスと言うと「わが愛は消え去りて」。受賞はならなかったけど、アカデミー主演女優賞にノミネートされた。この作品はフランク・ランジェラが出ているので見たいのだが、ソフトは出てないようで。昔手に入れたパンフレット、数年前古本屋で見つけた原作・・これでがまんするしかない。細くてエキセントリックだったスノッドグレスも、「ワイルド・シングス」ではがっしりしたいかついおばさん。同じ頃スティーヴ・レイルズバック版「エド・ゲイン」にも出ている。今回の作品は、シワが目立つものの、まだほっそりしている。ゴールディ・ホーンやジャネット・マクティアに似ている。58歳という若さで亡くなったのが残念。さて、ジョーンがマーフィとの対決の場所に選んだのが、昔彼女が事件を起こしたビル。

必殺マグナム4

このビルは古風な感じですごくいいが、画面が暗くて何やってるのか全然見えない。エドからの知らせでフランクも乗り込んでくるが、マフィアのボスなのに連れている手下がたった二人と言うのは・・。アラベラがエレベーターに押し潰されそうになったのを、間一髪救出して、ホッとしたとたん、彼女の背中に矢がズブリ。あらッ、死んじゃった?その後何やらかにやらあって(暗くて見えん)、ジョーンはいつの間にか手すりにぶら下がってる。目の前に突っ立っているマーフィに、助けろって命令するんだけど、彼は動かない。あらッ、燃料切れ?電池切れ?これだからおじいちゃんは困るのよ。日が暮れると動かなくなる・・ってそういうことじゃなくて!妻を友人を、そして今また孫・・もとい、アラベラまで殺しやがって、このクソ女。地獄へ落ちろ・・ってことなのよ「必殺マジギレ」。そのうちジョーンは力尽きて落ちるけど、落ちそうになるところも、ぶら下がっているところも、落ちるところも、落ちた後も、暗くて全然見えん。クライマックスだってのに何でだよ「必殺ナンモミエン」。ラスト・・霊柩車・・もとい、救急車に運び込まれたマーフィ。隣りに収容されたアラベラがモゾモゾ動いて・・あらッ、生きてたの?思いっきりズブリと刺さったのに・・ありえん。実はクサリカタビラ着込んでいたとか・・そういうことにしないと不自然。また、今ここで見せるんじゃなくて、エンドクレジットの後でおまけとして見せるとか・・。実は生きてましたよかったよかったハッピーエンドとか・・ひとひねりしろッ!まあ・・もたもたしてて、じれったい映画なんだけど、ウィルホイトのおかげで何とか。ジャンもなぜか好感持てたし・・(悪妻とは思えない)。ジョーンに殺されるドクターは、「怒りを胸にふり返れ!」のジャネット・マクラクラン。彼女も、この作品に主演したカルヴィン・ロックハートも故人。ブロンソンも愛妻ジルも故人。スノッドグレスもエド役ジェームズ・ルイジも故人。ルイジは見覚えがあるが、「ヒドゥン」に出ていたようだ。フェラーリのセールスマン役。まあとにかく昔の映画(1960~1980年代)見ると、何となくやるせなくなるね。みんな若かったのに・・元気だったのに・・ってね。映画の出来がどうのこうのと言う前に、そういうこと考えちゃう。私も年だな「必殺ナムナム」。