ホステージ

ホステージ

例えガンガンのアクション映画でも、オープニングは静かという場合が多い。そういうのに慣れているから、この映画みたいに始まったとたんテンポの速い曲がガシガシ流れ、アメコミみたいな絵が出、まるで戦争映画みたいな雰囲気なのにはびっくりさせられた。息つくヒマなんか与えてやらないぞ、展開を予想させないぞ、ぐったり疲れさせてやるぞ・・そんな決意がひしひしと伝わってくる。監督は「スズメバチ」をとった人で、私はあの映画けっこう好きである。アクション映画としてうまくできている。欠点は事件が本格的に起こるまでがちょっとかったるいところ。「ホステージ」では冒頭からすでに事件の真っ最中。髪もヒゲもあるブルース・ウィリス扮する交渉人ジェフ・タリー。交渉人という仕事は我々にはあまりなじみがない。なじみがないと言えばSWATだってそうだが・・。事件が起き、そのうちのあるものは無事に解決するが、中には悲惨な結末を迎えるものも・・。起こさないでおこうと選択する機会はあるはずだし、起こしてしまったとしても後戻りする機会はあるはずだ。だがたいていの場合、人間(犯人)は周囲に追いつめられ、自暴自棄になってその機会を失う。ヘリコプターやSWAT、押しかけるマスコミ等で騒然となっている中で、どうして冷静でいられるだろう。時には人質となった罪もない幼児が犠牲となり、失われた命は永遠に戻ってこない。タイミングをはずしたせいで、判断ミスをしたせいで、うまくいかなかったとして、それは全部交渉人のせいだろうか。ある程度は運命なのでは?人はわかっていて破滅への道を歩む。自分から飛び込む。後戻りするチャンスを自ら放棄する。妻と息子を人質に取り、妻の不倫相手を連れてこいと要求する男。彼は誰かに自分の言いぶんを聞いてもらいたい。要求なんか本当はどうでもよくて、自分の置かれた不当な立場(寝取られ男)に怒り狂っている。そこに交渉人が存在する意味がある。男をなだめ、不倫相手を連れてくると約束し、便宜をはかるから人質に手を出さないよう説得する。使われるのは携帯電話だ。何度もやり取りする。・・でも、まわりに誰もいなかったら?ヘリも飛んでいない、SWATもいない、マスコミもいない。携帯もなくて誰とも話できなかったら?それでもこの男は妻と息子を殺し、自分も自殺しただろうか。いつ発見されるかわからなくても?

ホステージ2

冒頭の何とも騒々しい一連のシーンを見ながら私はそんなことを考えていた。まわりに何もない(例えば命綱としての携帯電話)のも困るが、ありすぎるのも考えものだって・・。必ず助けると約束した少年はジェフの腕の中で死んだ。彼の手は少年の血で染まる。仕事が一つ終わったわけだが、彼にはすべてが終わった瞬間だった。交渉人を辞し、小さな町の警察署長となって一年。凶悪な犯罪とは無縁な日々。目下の悩みは家庭内のこと。週末だけ家族と過ごす別居生活に娘のアマンダ(演じているのはウィリスの実の娘だそうだ)は文句ばっかり垂れる。すべてが気に入らない、思い通りにならない、わめく、ふてくされる。針で刺して空気を抜かないと爆発してしまいそうなくらい不満でふくれ上がっている。なぜ自分達が路頭に迷わずにすんでいるのか考えようとしない。ジェフの腕の中で死んでいった少年のことなんか、見ているしかできなかったジェフの苦悩なんか理解できないんだろう。もう一人、人質になる方のジェニファーも、14歳になって早くも色気づき、ムッチムチボディーをさらけ出し、「BURN it!」とプリントされたTシャツを着、そりゃ父親でなくたって一言言いたくなりますわな。自分から「襲ってネ!」と宣伝して歩いているようなもの。体は順調に発育しているけど、頭のなかみは、常識はさてどこへ置き忘れてきたのやら。父親ウォルターは金持ちである。いい車に乗っている。目立つ。普通なら家にはガードマンやら使用人やらがいるはずだが誰もいない。料理やそうじは?ウォルター、ジェニファー、そして10歳のトミーだけ。母親は死んだのか出てこない。ウォルターは会計士で後ろ暗いこと(マネーロンダリング)をやっている。二人の子供を愛しているが、基本的には人を信用しないタイプだと思う。崖を背にして建てられた豪邸を見た時にはホントにびっくりした。今まで映画でいろんな建物を見てきたけど、こんな異様な家は・・。異様と言っても建物の形ではなくて、立っている場所、建てられ方が異様。似ていると言えば「サンダーバード」のトレーシー邸くらいなものだ。パンフには難攻不落の家と書いてある。背面からは絶対に入れない。崖を形成している岩山にトンネルを掘れば別だが。もっとも後になってわかるが、上からは容易に侵入できる。崖のてっぺんからロープを垂らし、スルスルと下りてくれば屋根に到達できる。

ホステージ3

それはともかく、この家には完璧な防犯装置、安全装置・・えーい面倒だ、セキュリティ・システムと言っておこう!・・それがつけてある。ガードマンなど人間を置くのではなく、機械にお金をかけるのである。そりゃ機械はちゃんと動く。忍び込んだ三人組を監視カメラがうつす。しかしこの場合、犬の方がなんぼかマシである。犬が吠えれば何かあったな・・と気づく。カメラにうつっていたって気がつかなきゃ何にもならん!人を、犬を置かないのならせめて音声機能つけるとかさ。ピーッという音だけでもさ。・・結局後ろ暗いことやっているから、人を信用しないから機械に頼る。それでいて普段の生活で人の注意引かない配慮がついおろそかになる。いい車に乗っていて目をつけられる。車をいただく・・そんな単純な動機で行動を起こす若者三人組。ジェニファーと大して変わりはない。何も考えていないし、何も起こるはずがないとたかをくくっている。罪を犯したらどうなるか。泣いてあやまれば許してもらえるとでも?正確に言えば三人のうち一人はどうなるか知っていた。それと言うのも彼マースはすでに殺人を犯していたから。家に入り込み、大量の現金があるのに気づいたケヴィンとデニスの兄弟は狂喜するが、マースは違う。彼の心は闇である。彼の目の前で妻を殺し、自殺した父親。お定まりの転落への道。彼に興味があるとしたら、自分がどこまで堕ちることができるかくらいである。手にかけた人間が死んでいくさまをじっと見つめた時点で、彼はもう地獄へ堕ちているのだが・・。トミーが押したのは無音警報。これは警察につながっている。出向いた警官のキャロルは(なまじ有能だったために)命を落とし、犯人達は人質を取って篭城。ロサンゼルスでは珍しくもない出来事だ。ありがたいことに今のジェフは交渉人ではない。町の警察で手に負える事件ではなく、郡警察に引き渡し、家路につく。キャロルのことは、人質になっている三人のことは気の毒に思うが、直接向き合わないですむのはありがたい。妻と電話で話す。「僕達離婚するのかな」・・この映画で私が一番心にしみたのはこの言葉。普通なら「一人も死者を出さない!」とか、そういうのがぐっとくるんだろうけど。週末だけ一緒の別居生活していて、娘は荒れてるしさ・・。そんな状態でもやっぱり家族として暮らしていきたい。

ホステージ4

若い女性に手を出すとか、奥さんが離縁状突きつけるとか、そういう方向へ行かず、ジェフはやっぱり奥さんを頼りにしてるし、奥さんは今のジェフの状態に理解示している。そういうところにはホッとさせられる。これはつまり奥さんが、最悪の状況に陥る前に後戻りしたってことよね。別居から離婚へという図式に不安はあったけれど、アホな娘と一緒になって騒ぎ立てるのではなく、夫を理解しようと努めた。だからこそジェフは何者かに拉致された妻子を助け出そうと命賭けるわけで・・。いや例え疎遠でも命賭けるだろうけどさ。これで少しは父親のありがたみがわかったかな、あのバカ娘は・・。でもちょっとたつとまたぞろブーブー言い出すんだろうな。まあとにかく犯人が誰かと(例え交渉人とでも)つながっていたいと思うのと同様、ジェフも誰かとつながっていたい。だから奥さんに電話して暖かい言葉かけてもらって、幸せをかみしめ、買い物か何かをして車に戻ったところを・・。この映画原作はかなり長く、まだ読んでいないのだがおそらくは大部な量を換骨奪胎し、要するにかなり変更し、縮めてあるものと思われる。家で娘とニュースを見ているという妻から電話があって、そのすぐ後でジェフがとらわれの身となっている二人を見せられるのは時間的に不自然である。キャロルの家に寄ってお悔やみを言うとかするシーンがあって、とったものの長くなるからとカットしたのでは?・・そんな気がする。謎の男達はジェフに事件を担当するよう迫る。解決しないとおまえの家族の命はない。なぜジェフ?それは彼が元交渉人だから。人質事件だからもちろん交渉人がすでに来ているのだが、ジェフでなければだめなのだ。なぜなら彼は優秀な交渉人だったから。もう一人の交渉人だが、目のまわりが黒くなっている。元から黒いのか、やつれた感じを出すためのメイクなのか。いずれにしても精神的な負担の大きい仕事なのだと思わされる。ジェフは家族が人質になっているなんて誰にも言えないし、トミーからは彼当てに電話が入るし、事件は郡警察に移っているから手は出せないし・・。おまけにどういうわけかFBIまで突然現われるし・・ああもう世の中のトラブル全部しょい込まされて、めっちゃタフな状態。いったい彼が前世でどんな罪を犯したというのだ!ウォルターが後ろ暗い仕事をしていなければ・・。ケヴィンもデニスも真面目に働いていれば・・。

ホステージ5

ああでも人間はお金が欲しい。いい車が欲しい。・・で、ウォルターはかわいい我が子を危険にさらすこととなる。ケヴィンとデニスは底知れぬ泥沼にはまり込んだあげく、マースに殺され・・アーメン。この映画骨太な作りで、ワクワクドキドキ風味。残り時間が気になる。残り時間ったって救出までのタイムリミットじゃない。映画が終わるまでにあと何分?解決するの?・・というドキドキ。ただ・・気分は盛り上がるんだけど水を差される。一つはストーリーの不明瞭さ。FBIが乗り込んできて郡警察を追っ払い、ジェフに事件を担当させる。なぜFBI?そもそもウォルターが関係している犯罪のことがよくわからない。彼が作成した機密資料のROM。これがないと困る連中がいる。何やらの取引に支障が出る。ウォルターはデニスに殴られて意識不明の重体。何とか屋敷から運び出し(丸腰であることを示すためにジェフや救命士はパンツ一丁である。リアル~)、病院に運ぶが死亡。実はこれはウソで、こうしておかないと連中は病院にやってきてウォルターの口をふさぎかねない。警察に何かしゃべられたら困るのだ。その頃救急車の中ではジェフと救命士が大ゲンカ。どこにROMがあるのか薬を使ってでも聞き出したいジェフと、そんなことをすれば死んでしまうと反対する救命士。でも結局ウォルターの目を覚まさせ、ブツのありかを聞き出す。救命士のじいさんが折れたってことは、ジェフは自分の家族が人質になっていることを打ちあけたんですかね。病院に運ばず救急車の中で手当てして(重体のはずなのに)何とか歩けるまでにしちゃった。・・で、話は戻るけどあのFBIの連中本物なんですかね。登場の仕方はニセモノっぽい。ジェフは自分を車の中で脅した連中と同じだと思っている。ちゃんと仕事するかどうかFBIを装って監視するんだろう。ところが相手は「本物かもしれないぞ」などと思わせぶりなことを言うのである。あまりにも大きな犯罪だと真実は明かせなくて、闇で処理するということもありうる。つまりFBIでさえ、常に正義の味方とは限らないのだ。どんな世界にも裏取引はある(異星人との密約とかさ!)。ただ最後の方では本物ではなさそうにも思えるし(映画とは言えあんなにFBIの人員減らしちゃまずいよな。屋敷と宿屋とでいったい何人命を落とした?)、はっきりしたことはわからない。

ホステージ6

デニスがジェフの話に乗るところもおかしい。あんなおいしい話には普通は用心する。でもデニスは頭からっぽだし・・。とにかく三人をヘリで逃がすということに話はまとまりかけるが、マースがジェニファーを連れていこうとしたために失敗する。一方ウォルターの口から、ROMがDVDのコレクションの一つに隠されていることがわかる。FBIもどきが突入して全滅、DVDは屋敷とともに焼けてしまう。相手は怒り狂うが、どなったって事態は解決しないから相手が折れる。ここらへんはジェフの腕の見せどころ。相手はジェフが交渉人だということを失念していると思うよ。ジェフのペースにはまっているもの。ジェフのおかげでジェニファーとトミーは助かったし、ここで終われば「スズメバチ」と同じだが、彼にはもう一つ大事な仕事がある。閉業した宿(インという看板が出ていたから宿屋なんだろう)にウォルターと二人でやってくる。ジェフは屋敷での銃撃戦で負傷し、こんなことしてるバヤイではないのだが、父親だから家族を助けにゃならない。毛力を・・じゃない(毛はないから振りしぼりようがない)気力を振りしぼってウォルターに銃を突きつけ、中に入る。最初は何で?って思ったのよね。でも後でわかったわ。ROMがオシャカになっちゃったから生きたROM、つまりウォルターが必要なんだって。相手はウォルターから情報引き出すより他に方法がない。だからウォルターと妻子を交換する。ところがウォルターは急に態度を変え、相手方に回ってジェフを殺せとけしかける。自分や子供達の命助けてもらっておきながら何たるジコチューかと呆れた。最初から目隠しされて何も見てない妻や娘はともかく、ジェフのことは相手も始末する気でいたと思う。しかしまわりには仲間がいるし、ジェフは無力だし(負傷しているし)、優位に立っているから、そんなに急いでかたづけようとは思っていなかったと思う。おまえは交渉したり懇願したりする立場にはいないのだ。こっちが裁定を下し、おまえはそれを受け入れるしかないのだ。そう言って事態を楽しんでいたと思う。そんな時に横からやいやい殺せ殺せとわめかれたものだからペースが狂ってしまった。混乱し一瞬の迷いが生じる。今すぐジェフを撃つかどうか・・その瞬間何とウォルターがリーダーの頭を撃つ。後は銃撃戦。

ホステージ7

ふいを突かれた相手は全滅。これってジェフとウォルターは前もって打ち合わせしといたってこと?ウォルターは芝居してたの?そこらへんはっきりさせないまま親子三人涙の対面号泣つきシーンに怒涛のように突入する。しかもスローモーションで(気は確かかよッ!)。すみません、いちおうお客が見ているんですからはっきりすべきところははっきりさせてください。ウォルターは改心したんですか?改心したんですね?「あとはおぼろ~♪」じゃ困るんですけど。火事になった時、なぜスプリンクラー作動しないんですか?こういうの別配線にしないんですか?何のためにお金かけてるんですか。トミーはウォルターの銃を持ち出してマースに突きつける。でもそのまま固まってしまう。しばられているジェニファーは撃つのよ!撃って!・・と絶叫する。10歳の弟に殺人けしかけるわけです。そりゃ自分達は絶体絶命の危機にあるわけだから無理もないんだけど、助かるとか助からないとか、片方が悪で片方が善とか、そういうことを抜きにして、銃があって10歳の子供でも相手を殺せる状況がいとも簡単に存在するってことには嫌悪を覚えましたな。で、この銃は普段は箱に入れて金庫の中にしまってある。ケヴィン達は金庫の中の現金見つけたけど、箱の方は開け方がわからないからそこらへんにほうり出しておいたのだ。しかしトミーはなぜ箱のなかみが銃だって知っていたんですか?なぜ暗証番号だか何だかを知っているんですか?トミーはまだ世の中の悪にはほとんど染まっていない。しばられたけど何とか自由になり(三人組がアホのせいもある)、家の中にある通気孔などを利用して動き回る。「エイリアン2」の少女よろしく神出鬼没の大活躍。通路にポロリとおもちゃがころがったりして、そういうところは胸キュン。パパは後ろ暗いことやってるし、姉貴は色気づいて自分からドツボにはまってるし。彼は常に一人で遊ぶより他にないわけよ。あちこちごそごそやってるうちに通路の配置覚えたし、おもちゃ持ち込んで秘密の隠れ家作っちゃったし。ウォルターの銃もそんな探検の最中に見つけたのだろう。番号も・・。でも撃つためには安全装置はずさなきゃならないことまでは知らなかった。知らなくてよかったんだけどさ。テレビのニュースにジェフがうつっているのを見て、携帯で電話する。彼には見たまんましか理解できないから、郡警察もへったくれもなし。

ホステージ8

テレビにうつっている人に電話すればきっと助けてくれる。夢見がちな少年は、ジェフをマンガか何かのヒーローと混同する。最後にはきっと悪者を退治してボクや姉さんを助け出してくれる。事態は八方ふさがりでもトミーのような小さな子供は単純なだけに絶望も知らない。電話で話す声が興奮してついつい大きくなり、ジェフは何度も小さな声で話すよう注意する。そこが胸キュン。ごそごそしているうちに姉の部屋を通りかかる。姉貴は犯人の一人(マース)と一緒で、何やらトミーには理解できないムードになっている。姉さん一人なら助けてあげられるんだけど・・トミーは仕方なくそこを通り過ぎる。まあ変なムードになっていると言ってもジェニファーは14歳ですから、タバコの煙でむせるとかその程度。ここらへんはマースの悪の魅力にジェニファーがよろめくのか、母親のせいで女性不信に陥っているマースがその一方でジェニファーに母なる愛情を求めるのか(やめとけ)、そこらへん描きたかったんでしょうが、どうですかねえ・・。この程度にしておいてよかったという気はしますが・・。つまりあんまりマースの女性への屈折した感情に時間割きすぎると、アクション映画としてのテンポが鈍っちゃう。それでなくても・・。私がどうしても理解できないのはこの映画の号泣度。号泣、59、GOQ・・もー信じらんない。ええかげんにせーよ、こら。ジェフはつるつる頭である。徹夜である。夜が更けるにしたがって不精ヒゲも生えてくるだろう。動き回って汗かいて、皮膚はあぶらぎっててかてかしてくるだろう。その上泣いたらもうギトギトべチョべチョになるでしょ。何でお風呂上りにタルカムパウダーみたいなすっきりさっぱりお肌に涙だけ寒天みたいに浮かぶのよ。スローモーション号泣(爆泣ってのはどう?)シーンでは涙出てたっけ?汗もかいてないよね。あたしゃ感動するどころか目が点になりましたぜ。それと人質になった妻子見せられるところもねえ・・。車の中でいろいろ(つべこべ)命令されるでしょ。両手を天井に、それからハンドルに、それで手錠をかける。後ろからはがいじめにするが抵抗しない方がみのもんた・・じゃない、身のためだ。あたしゃてっきり「花と蛇2」でも始まるのかと思いましたぜ(見たことないけど)。このリーダーやんわり命令するのが好きなんですな。そうやっといて別の車に乗せられた妻子をミラー越しに見せる。

ホステージ9

ジェフはあばれて半狂乱。鼻水も出る。泣くシーンが多い。しかも長すぎる。「スズメバチ」でもサミー・ナセリが泣いていたけど、この映画はそれ以上。「シックス・センス」以来すっかりおなじみの、苦悩するウィリスをこれでもかとばかりに見せる。こらッ、男はビービー泣くなッ!こんな水分過多のハゲなんてほっときゃいいの。他に光ってる人いますから。そう、マース役のベン・フォスター!ケヴィンもデニスもそれなりにいいんだけど、強烈な印象残すのはマース。最初はさほどでもない。途中からじわじわ来る。見たことあるなあ・・とは思っていたのよ。で、パンフ見たら「パニッシャー」に出演、え?出てたっけ?ええーッ、あのピアス男?ウッソー!全然違う。絶対の孤独、悪魔のようなあいつ、夜の使者、闇の申し子、残忍さの中に小粒のイチゴみたいにプチッとはじける甘酸っぱさ(何のこっちゃ)。彼にくらべればケヴィンもデニスもド素人。特にデニス・・ジェフに自分がリーダーだと宣言する。リーダーってことは主犯、起こったことの責任は全部彼にあるってこと。でもわかってない。カッコつけたいだけ、ハクをつけたいだけ。自分が殴ったウォルターの生死さえ確認していない。傷害と殺人じゃだいぶ違うのに。ケヴィンと一緒に喜んだり(大金見つけたからね)動揺したりするだけで、あとはどうしたらいいのかわからない。マースに殺された時でさえ、自分に何が起こったのかわからなかっただろう。FBIもどき突入あたりがこの映画のクライマックス。アクション映画がホラー映画となり、ピアス男と同じく口のあたりをやられた血まみれマースは、まるでエイリアンよろしく通気孔をはい回る。FBIもどきと戦うところはランボー。とにかく人間と言うよりはモンスター。屋敷は火の海。長髪を真ん中から分け、炎の中にすっくと立つすらりとした姿は・・「クロウ」のエリック!壮絶でありながらも限りなく美しく、しかも悲劇的。今思い出してもブルル・・(胴震い)。マースの死とともにこの映画は終わる。少なくとも私にとってはね。「マースの味を覚えたらーマース入れなきゃしまらないーオリエンタルーマースカレー♪」いやーこの作品がアホ号泣映画で終わらずにすんだのはベン様のおかげですッ!タウンゼント様がムリなら彼で新「クロウ」をぜひ!・・と思っていたら、エドワード・ファーロング主演で新作できてたのね、オヨヨ。